icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科11巻7号

1956年07月発行

雑誌目次

綜説

人工心肺による直視下心臓内手術—本邦に於ける最初の成功例

著者: 曲直部壽夫 ,   藤本淳 ,   星田嘉朗 ,   佐藤安正 ,   森永堯 ,   國枝亮 ,   久武昌一 ,   芝卓彌 ,   安藤一 ,   豊田裕三 ,   西山実 ,   位藤昇三 ,   岡部安生 ,   田中衞 ,   玉置博 ,   川上厚志 ,   一宮源太 ,   小林芳夫 ,   沢田知 ,   田辺玄三 ,   淸水宏 ,   高橋義直

ページ範囲:P.443 - P.449

 直視下心臓内手術の可能性は昭和15年日本外科学会に於て我々の教室より発表し,小沢教授は心臓内手術は肉眼直視下に行うべしと主張された1)2)そして昭和29年11月ファロー氏四徴症に対して常温下血流遮断,直視下漏斗部切除術に成功し昭和30年日本医学会総会に於て発表した3).然し之等の方法は常温下で血流遮断をすると云う条件の為に時間の制限があり,所期の目的を果すには高度の技術と術者のチームワークを必要とするもので,誰でも容易に行う事は不可能である.そこで直視下心臓内手術の完成には心内血流遮断時間の延長と技術の修練及び心疾患の形態の把握を必要とする.技術の修練は外科医として当然負わされた問題である.心疾患の形態は心カテーテル法,左心房穿刺法,心臓血管撮影法及び心疾患の認識と共に解明せられて来た.即ちファロー氏四徴症,心房中隔欠損症等の成書の一隅にあつた心疾患が我々の日常臨床によくみられる様になつた.之は従来は不定の心疾患と云われていたものが各種検査により治療の対象になつたことに他ならない.斯る診断的問題も大切であるが,外科医に問題となるのは適確な手術を遂行するために充分な血流遮断時間を得ることである.

陣内外科教室最近7年間の胃癌手術成績

著者: 水野悟 ,   黑住公明 ,   加地重博

ページ範囲:P.451 - P.455

1.緒言
 従来胃癌の遠隔成績は多数発表されているが遺憾乍ら満足の域には程遠く,吾々外科医の最も関心を置く処であり,当教室に於ても退院後といえども絶えず患者と連絡を保ちながら胃癌統計表を完備しその手術成績の向上に資している.そこで今回は陣内教授御赴任の昭和23年4月より昭和29年12月31日迄の約7年間に教室に入院し,胃癌の確定診断を受けて退院せる251例に付きその遠隔成績,主として生存率を報告する.

先天性胆道閉塞症

著者: 葛西森夫 ,   渡辺薰 ,   山形昭 ,   関井千弘 ,   澁井誠

ページ範囲:P.457 - P.464

 先天性胆道閉塞症に関しては1828年Donop1)の症例報告に始まり,爾来その数を増して来た.我が国に於ても1893年(明26年)弘田2)の報告以来,臨床的観察並びに最近はその手術経験例が報告されているが,その予後は手術を施行せる者に於ても良い結果を得ていない.吾々の教室に於て最近数例の先天性胆道異常症例を経験し手術によつて可成りの成績を得たので報告する.

大量輸血に性う急性クエン酸中毒

著者: 德沢邦輔 ,   高橋宏 ,   関谷錦治 ,   柿沼昭司

ページ範囲:P.466 - P.470

 十数年前には輸血に際して,血液凝固阻止剤として用いられるクエン酸塩の中毒現象については殆んど報告が見られない.
 1940年以後はじめて輸血副作用のある種のものが血液凝固阻止剤として,供与者血液に加えられたクエン酸塩の中毒作用によるものであろうということが注目されてきた.Kilduffe1)は実験的に多量のクエン酸塩を急速に静注すると中毒現象が発現することをあきらかにした.ついで,Adams一派2)はイヌの実験から,クエン酸加血液の安全注入速度はヒトにおいては1000cc/時間であろうとのべている.

原爆被爆者638名の皮膚毛細血管像

著者: 眞鍋欣良 ,   猿渡和彥 ,   重信文男 ,   添原治夫 ,   今井維準

ページ範囲:P.471 - P.474

緒言
 原爆被爆者の皮膚毛細血管に"荒癈失調状態"が観られることは既に数次に亘り発表して来たが今回は広島に於ける原爆被爆者の10年後の皮膚毛細血管像について調査した成績を大略記載し皆様の御参考に供し度いと思う.
 扨て原爆被爆者の皮膚毛細血管像について観察した成績は今迄に幾つか報告がある.即ち被爆後早期の検索では東大坂口内科,粥川,熊取,椿,尾山,京大真下,舟岡及び富田,横田の記載があり所謂後遺症期に於ける観察では吾々の成績のほか東大中泉津屋の報告がある,粥川等は原爆後81日目の被爆者について皮膚毛細管抵抗を検査しその中異状のある者13名に皮膚毛細管像の顕微鏡観察をなして6例に出血を認めたと云つており,真下,富田等は被爆1ヵ月後の15例について火傷部の皮膚毛細管像を観察し中央部では毛細血管の荒癈,周辺部では乳頭毛細血管の延長,その中間移行部では乳頭毛細血管の増加,口径拡大,延長異常屈曲,充盈度増強並に血流遅延を観たと云い火傷中央部及び周辺部は治癒過程を示し移行部は炎症が存在すると述べている.此の両者はいずれも特殊例についての早期の観察であるがその後の後遺症期に於てはどうであろうか.此れについては吾々の今迄の発表や津屋の報告でも明らかなように被爆後数年を経た者にも猶皮膚毛細管像の変化が多数に観られており,津屋は形態上からその変化を数型に分類して考察している.

外傷性横隔膜ヘルニヤ—附:稀有な眞性ヘルニヤ及び誤診例

著者: 飯塚積 ,   早川和夫 ,   新井賢一

ページ範囲:P.475 - P.483

 外傷性横隔膜ヘルニヤは,外傷に依つて生じた横隔膜の欠損や裂隙を通して腹腔臓器が胸腔内に侵入した状態を云うが,我々は調査可能だつた本邦33例の統計的観察を(第1表)基礎として,いさゝか考察を加え,更に吾々が経験した稀有な真性ヘルニヤ及び誤診した各一例を追加する.

ブチルカインによる脊椎麻酔の経験

著者: 岩月賢一 ,   上田尚

ページ範囲:P.485 - P.487

I.緒 言
 従来,本邦においては脊椎麻酔に主としてペルカミンが使用されているが,最近ブチルカインが使用される様になつた.吾々も最近は脊椎麻酔には専らブチルカインの高比重液を用い良好な成績を得ているので,報告する.
 症例は5月20日より9月20日迄の64例,内男子25例,女子39例で,部位別にすると下腹部手術例58,下肢手術例6で患者の年齢は9歳より65歳迄である.

新局所麻酔剤Xylocaineの使用経験について

著者: 長野政雄 ,   小泉俊郞 ,   竹田純一 ,   石田茂年

ページ範囲:P.489 - P.491

緒言
 近年麻酔の発達は外科領域の進歩発展に多大の貢献をなし,殊に全身麻酔の進歩発達は著しいものがある.然しながら全身麻酔に比して局所麻酔にはなお捨てがたい長所利点が存し,現在外科外来に於ては殆どすべての手術が局所麻酔のもとに行われているので,将来薬剤の改良手技の向上があれば局所麻酔も外科領域の進歩発展に資することは大なるものと考える.1884年Karl,Kaller及びSigmund Freudが局所麻酔剤としてCocaineを使用して以来Dibucaine(Nupercaine,Percaine)Metycaine,Tetracaine(Pontocaine)その他種々の局所麻酔剤が発見合成使用されて来たが,1905年EinhornがProcaine(Ethocaine,Novocaine)を紹介して以来本剤は最も信頼し得る局所麻酔剤として今日一般に広く使用されている.Procaineは毒性はCocaineより低いが麻酔時間が短く且つ不安定であり,Dibucaine及びTetracaine(Pontocaine)はProcaine,Cocaineよりも麻酔持続時間は長いが毒性がかなり大きい等々現在使用されている局所麻酔剤にはなお一長一短がある.1943年StockholmのLöfgren及びLundquistらによつて新しい局所麻酔剤Xylocaineが合成された.

骨関節結核に対するバイオマイシン(VM)の臨床経験

著者: 高山瑩 ,   大戶輝也 ,   三好邦達 ,   小泉格 ,   井上仁

ページ範囲:P.493 - P.498

 骨関節結核に於ける抗結核化学療法の施行は,数年来片山教授1)が指摘されているように,強力且長期の使用により初めて所期の成功を收めるものである.しかも余等がかつて報告した如く骨関節結核に於ては長期,且強力な化学療法を施行しても耐性菌の発現率は極めて少なく,又抗結核剤の単独投与に於ても略々同様の事が言い得るのである.この理由については,骨関節病巣への化学療法剤の滲透性の問題と,病巣部に於ける酸素供給の問題,病巣内に於ける結核菌の活動性などが論議される理であるが,(詳細は臨床外科11巻3号参照),何れにしても骨関節結核に於いては同一薬剤を相当長期に使用してもその治療目的を達する事を意味するものである.併し,骨関節結核の抗結核剤療法に於いても全く耐性菌の出現がないという訳でなく第1表の如く,極く少数例ではあるが,その出現を証明出来2),また今後,化学療法の歴史が長くなるにつれ骨関節結核患者に於いても耐性菌出現の多くなる可能性が充分に考えられるから,骨関節結核に於いてもこの問題は極めて必要である.

Phenothiazine系薬物の全身麻酔に対する応用に就て—第一報

著者: 秦野滋 ,   河野光雄 ,   福田邦雄

ページ範囲:P.499 - P.505

1.まえがき
 全身麻酔を行うに当り麻酔者が常に念頭に置かなければならないことは,ほゞ次の3点に要約される.即ち(1)何れの麻酔剤を用いる場合にも術中麻酔そのものゝ生体に及ぼす影響を可及的僅少にとゞめること,(2)麻酔剤を種々組合せ又は麻酔補助剤を巧みに用いて出来るだけ円滑な麻酔を行い,術者に満足な手術操作を遂行させること,(3)最後に麻酔後の副作用の発現を充分な管理によつて防止する,ことである.此等のことは麻酔技術と直接関連することであつて,以上を完全に行うには多くの経験と熟練とを要するは言を俟たない.
 この目的のために,近時全身麻酔が急速に普及するにつれ前投薬,導入,挿管等に就いて種々の工夫改良が行われ,その試みについての報告も枚挙に遑まがない.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?