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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科11巻9号

1956年09月発行

雑誌目次

綜説

門脈圧亢進症—成因と病理(要旨)

著者: 鈴木忠彥

ページ範囲:P.571 - P.581

Ⅰ.Presbyterian学派の主張点と之に対する批判
 Presbyterian学派(Whipple,Thompson,Ro—usselot,Blakemore)の主張によると門脈圧亢進症は肝内性閉塞即ち肝硬変に由来するものと,肝外性閉塞に由来するものとに大別され,所謂Banti氏病は肝外性機械的閉塞(先天性門脈形成異常,血栓,炎症性狭窄)に由来する鬱血性脾腫(Co—ngestive Splenomegaly)と解され,これは特に米国に於ては定説といつてよい。然し肝外性門脈機械的閉塞実験による門脈圧亢進並びに脾腫の作製不可能なる事実,人体剖検例で門脈・脾静脈に血栓があつても,脾腫の見られないものが存し(Lu—barsch,Jäger)脾腫が見られたのは一部に過ぎない(Dawson)事実,又Banti氏病で機械的閉塞部位なくして門脈圧亢進の存する事実,は上記の説に対する反証と云わねばならぬ。又Banti氏病末期で肝硬変が発現し来る事実をPresbyterian学派は如何に説明しようとするのであろうか?Banti氏病で肝硬変の発現なしとする以外にこの難点は回避出来ないであろう。

外科的脾腫疾患に於ける輸血の検討

著者: 有吉巍

ページ範囲:P.583 - P.587

I緒言
 脾臓は血液臓器であり脾腫疾患々者の多くが貧血を示すことが知られているが,かゝる脾腫疾患の摘脾手術に際しては手術時ショック,其の他の関係上貧血の問題が考慮されねばならない.元来脾臓疾患は血液疾患として内科領域より観察治療されているものが多く,軽度乃至中等度貧血の状態で内科医より外科に廻されるものが多いが,最近に於ては脾臓外科の進歩,普及に伴い術前処置を考慮せねばならぬ様な高度貧血をもつて直ちに外科医を訪れるものもみられる様になつた.斯様な場合術前処置として鉄剤其の他の貧血治療剤の投与も行われるが,貧血に加えて血漿蛋白量の正常化を計る処置として輸血の行われる機会が多い.然るにこの場合の貧血の成因には骨髄成熟障碍因子の外に循環血漿量増多因子,肝障碍因子等も関与している関係上,輸血量が相当大量となるにも不拘貧血恢復の遅々たることが多く,其の間には長時日が経過する上に輸血による経済的負担も生じ且大量輸血により脾腫患者に併存する肝機能障碍の悪化等が招来され,却つて逆効果を招くことも経験されるので,かゝる場合の輸血の問題に関して2,3の症例を示し考察を加えてみたいと思う.

保存血大量輸血の血液免疫学的研究

著者: 德沢邦輔 ,   高橋宏 ,   梶谷恵佑 ,   関谷錦治

ページ範囲:P.589 - P.594

はしがき
 最近,外科手術の進歩にともない,大量輸血,殊に保存血輸血が行われるようになり,その副作用もしばしば報告されている.われわれも保存血大量輸血時のクエン酸中毒1)や,出血性傾向2)の発現などに関して,報告してきた.
 供血者血液に関しては,同型輸血を行うことが勿論望ましいが,所謂万能供血者としてのO型保存血の輸血が行われることが少くない.

術後亢奮作用について

著者: 高橋浩

ページ範囲:P.595 - P.596

1 緒言
 精神病素質を有する者の手術後に精神障碍のおこることは既に成書1)にも記載されているところである.即ち手術後の精神障碍は躁揚性亢奮状態を呈したり,また憂鬱状態に陥つたりすることがある.手術後数日にして起ることがあり,またかなりの日数を経過して発病するものがあり必ずしも一定しない.多くは突発的に発症するが時に緩慢に起るものも認められ区々の様である.
 私は乳糜尿患者に治療の目的で尿管カテーテリスムス施行し腎盂洗滌後.数時間にして精神躁揚状態を呈した症例および腎結核のため1側腎摘出後3日目に月経の発来と共に突然同様の精神発作を認めた症例を経験したので之について卑見を述べてみたい.

デスモイド(Desmoid)について

著者: 田辺憲一 ,   古本雅彥

ページ範囲:P.597 - P.602

Ⅰ.緒言
 デスモイドは筋肉筋膜組織から発生する良性線維腫で稀な疾患である.そのほとんどは前腹壁に発生するが,身体の他の部分に見られることも少くない.
 従来欧米では,Ledderhose,Pfeiffer,Power,Stone,von Klot,Stewart,Pearman and Mayo等によつて多数例が報告されている.しかし本邦での報告は意外にすくない.最近Pack,Strodeはデスモイド性ホルモンの関係に注目した報告を行つた.

下腿骨々折に於ける統計的観察

著者: 幾野政和

ページ範囲:P.603 - P.607

 骨折は炭鉱外傷として日常屡々遭遇する所であり,中でも下腿骨骨折は,其の発生頻度も高率であり,且治療の困難なもの或は,予後に重大なる障害を胎するもの等のある事は,衆知の如くである.骨折一般に関しては,岩崎氏(九州労災病院)松崎氏等(之井砂川病院)及び本田氏(九大整形外科)等,多数の報告があるが,下腱骨々折に限定せるものは比較的少ない.私は筑豊地区の一中炭鉱である.九州採炭中央病院に於て,過去満4カ年間(昭和26年1月より昭和29年12迄)に来院治療せる.炭鉱労務者公傷骨折患者679例中,112例の下腿骨々折を集計し,これについて統計的観察を試み,多少の知見を得たので発表し,諸賢の御批判を仰ぎ,且御参考に供したい思う.

症例

悪性横紋筋腫の経験

著者: 勝見正治 ,   田中敏夫

ページ範囲:P.609 - P.612

緒言
 悪性横紋筋腫は極めて稀に見られる腫瘍であるが,我々は最近其の一症例に遭遇し而も特異な臨床症状を呈したので報告する.

興昧ある脊椎腫瘍の一例

著者: 大沢光彥

ページ範囲:P.613 - P.615

緒言
 脊髄外科の発達と共に脊髄腫瘍はそれ程稀なものではなくなつた,未だあらゆる種類のものを経験しつくしたともいえない.
 わたくしは珪肺第二度の患者で,椎弓及び棘状突起部の線維性骨炎様病変より二次的に発生したと思われる血管皮細胞腫の一例を経験したので,こゝにその症例を記載し,諸家の御参考に供すると共に御教示を仰ぐ次第である.

右上腕部正中神経に発生したノイリノームの1例

著者: 朝永正

ページ範囲:P.617 - P.619

 末梢神経に発生する腫瘍として従来V. Reck—linghausen氏が唱える所謂神経線維腫(Neuro—fibrom)に対し,Verocay氏は1910年神経鞘腫(Neurinom)を提唱し,其後多数の学者の研究により本腫瘍の本態は一層明らかとなり現在同氏の説を支持する者が多い趨勢となつている.
 神経鞘腫(Neurinom)は比較的稀有な疾患であるが,本邦に於ても本腫瘍に関してかなりの報告がなされている.著者も最近其の一例に遭遇したので,こゝに其の詳細を報告し,諸賢の御参考に供し度しと思う.

外傷性膀胱破裂の4例

著者: 川俣建二 ,   幕內春義 ,   橋本司 ,   広瀨堯

ページ範囲:P.621 - P.624

 我々は外傷性膀胱破裂の4例を経験し総べて全治せしめ得たのでここに報告する.症例は第1表の如く壮年の男子に多く,交通事故によるものが殆んどであり,何れも副損傷として骨盤骨折を伴つている.

脊椎カリエスに合併せる糞瘻の処置

著者: 沢田フサ ,   岩瀨康信 ,   相沢千代子

ページ範囲:P.625 - P.627

 腰椎カリエスに屡々みられる腸骨窩の瘻孔は他部位の瘻孔に比較して一般に治癒の困難なものであるが,之が更に糞瘻と合併した場合には致命的な合併症とされている.化学療法の発達した現在でも,その治療は極めて困難で,もし治癒に導き得たとするならば,それは甚だ幸運な症例である.
 この腸骨窩の瘻孔が糞瘻と合併した症例に就いては第178回整形外科集談会東京地方会で村島氏の報告があり,また,小平氏,八木氏は外科雑誌に発表している.我々も斯様な症例に遭遇し,一般外科医の協力を得て糞瘻部を含む腸切除を行い,之を治癒に導き得たのでこゝに報告する.

生後10カ月乳児の子宮頸癌の1例

著者: 富田卓

ページ範囲:P.629 - P.632

 子宮癌の発生年齢は,周知の如く30歳乃至60歳にその頻度が最も多く,30歳以前及び60歳以後には甚だ少数である.殊に20歳以下の者に子宮癌を発見する事は稀有であつて,その報告例数は僅少である.こゝに市立小樽病院外科に於いて経験した10カ月乳児の子宮癌の一例を追加報告致し度いと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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