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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科12巻1号

1957年01月発行

雑誌目次

綜説

副腎庇護の研究—殊にその概念と2,3の新知見に就いて

著者: 八田秋

ページ範囲:P.1 - P.7

 副腎皮質機能の外科臨床に於ける意義は,本機能が極度に障碍されない限りは臨床的に捉え難いため,何か漠然としてはいるが,今日,その臓器が生命の維持に必須のものであることを疑う者はいない.その広範且奥深い生理作用は,Cortisone等の皮質ホルモン並びにその誘導体の殆んど万能に近い生体作用からも窺い得る所である.殊に外科手術の様な外来障碍が加わる場合に,生体防衞反応の主軸をなすものは間脳下垂体副腎系であつて,このことは多数学者の夥だしい業蹟によつて各方面から実証されて来た.
 我々も過去数年間の臨床的並びに実験的研究によつて,副腎皮質が地味ではあるが非常に重要な機能を営んでいることを知り,この認識に立つて本機能の庇護法或は強化法について研究を進めて来た.今日までの成績はその都度学会或は誌上に報告したが,我々の云う「副腎庇護」の概念が,我々の怠慢の故もあつて未だ充分には理解されていない様である.そこでこゝに稍詳細に説明を加えて責を果すと共に,新しい2,3の知見をつけ加えて見たい.

痔核に対するWhitehead氏手術の遠隔成績並びにその後胎症について

著者: 石山俊次 ,   高橋宏 ,   櫻井階宏

ページ範囲:P.9 - P.17

Ⅰ.緒言
 Langenbeck氏法並びにその変法による痔核切除術に対する最大の不信は,その再発にある.これについて,Peters 2%,Lederer 3.3%,Sara—foff 3.5%,渡辺6.3%等の報告あり,長期観察例における再発実数は恐らく更に多いものと思われる.これに対し1882年にWhiteheadが提唱した術式は,痔静脈叢の根治的除去にあり,痔核そのものの再発防止に有意義であるが,手術侵襲が大で,術直後の愁訴,遠隔成績における後貽症の発生が問題になつている.これに関し本邦で渡辺の38例,井波の22例,川口の53例についての報告あり,その他木村,Lewis,Sarafoff,Pete—rs,Teney,Stones等の報告があるが,その効果は必ずしも一致していない.この報告は昭和27年3月より,30年10月迄に,当科で,本手術をうけ,術後6ヵ月以上経過した110例の調査成績,並びにその後貽症に対する治療結果である.切除進路は概ね図示する通りで,その他手技については従来報告されている以外,特に変つた方法は行つていないが,余分な組織は極力障害しない事を原則としている.

各種消化管瘻の栄養学的検討

著者: 中村武 ,   山本勝美 ,   広田和俊 ,   田宮達男 ,   磯垣弘 ,   增田覚之

ページ範囲:P.19 - P.25

緒言
 各種消化管瘻の研究は術後病態生理究明に対し一つの重要なる要素を形成するのみならず,他方栄養学的見地より経口的食事摂取不能場合に於ける栄養瘻としての意味をも有し,極めて重要なる諸問題を提供して居る.特に教室では末期的食道噴門癌,胃瘻の姑息的手術療法として,或は又,術後吻合部の狭窄や穿孔等の合併症併発の為,全く経口的栄養投与を断念しなければならない様な事態に到達した際,止むなく,胃瘻や空腸瘻造設術を行い,積極的栄養補給法を実施し,好成績を得て居る.
 此の胃腸瘻造設術も,原因となるべき疾患に依つて永久瘻か一時瘻としての意義が附せられ,設置部位や手術手技が自ら異つて来るわけである.此等栄養補給路としての各部消化管瘻に関する研究は,設置部位に依る栄養学的価値の差異や,合理的食餌投与法の規準,又栄養瘻のみの食餌投与で招来される欠損症状,更には生存し得る限界等,極めて興味ある問題を包含して居るわけである.勿論,此等に関する研究は,未だ接見しない.私共はこの問題に関し,主として消化と吸收の面より研究を重ねて来たが,特に度々報告して来たCr2O3標識による消化吸收試験法を採用した事がこの分野の開拓に与つて力となつた.

対称性胃・十二指腸潰瘍について—附.線状潰瘍

著者: 佐野開三

ページ範囲:P.27 - P.31

緒言
 胃及び十二指腸潰瘍に関する統計的観察は,従来諸家により種々検討され,その成績は枚挙に遑がないが,こゝにわが津田外科教室において,昭和19年より昭和28年に至る10年間に,根治的胃切除の行われた胃及び十二指腸潰瘍457例について,切除標本よりみたいわゆる対称性胃・十二指腸潰瘍60例(全例の13.1%)を集めて統計的観察を試みた.
 こゝにいわゆる対称性胃・十二指腸潰瘍(Kiss—ing ulcer)とは,小彎を中心に対称的に存する潰瘍で,潰瘍相互間に線状の潰瘍又は瘢痕が存在するとしないとに拘らず,第1,2,3,4,5図に示す様な潰瘍をいゝ,第4図に示す様な小彎上に一個の潰瘍存し,それを中心に対称的に胃の前後壁に現われた潰瘍(この例は十二指腸潰瘍をも併用す)次に第5図に示す対称性十二指腸潰瘍等である.

先天性股関節脱臼の遺伝

著者: 古庄敏行

ページ範囲:P.33 - P.36

 先天性股関節脱臼は一般には歩行の遅延,又は跛行に依つて気付かれるが,実は新生児期より存するもので,その症状がはつきりしないためかわからないのである.
 この関節部の異常状態は大腿骨頭と寛骨臼との異常摩擦乃至圧迫を起し該部がなお軟骨性なる乳児期に於て化骨遅延を来して,そのために寛骨臼の変形を生じて,ますます股関節の固定を妨げ関節嚢の弛緩を来して,起立歩行するようになると尚一層はつきり現われてくるのである.この先天性股関節脱臼は,Hippokrates,以来知られていたが近代に至るまで治療的効果はあげる事が出来なかつたのでありますが,19世紀の末に至つて,Lorenzが非観血的療法を創始するに及んで,好成績をあげ,今日の治療法の基礎をなしたのである.

症例

Methiocil長期過剩投与による甲状腺腫の1例について

著者: 井坂功

ページ範囲:P.37 - P.39

緒言
 1928年Chesney,Clausenが長期間に亘り甘藍を家兎に投与して,甲状腺が肥大増殖する事を報告し,次で1941年Mackenzie,Mc Collum等により,抗甲状腺剤であるThiouracilにょる甲状腺腫の発生が立証されて以来,その報告は多数にのぼつて居り,最近に到りそれらの誘導体,例えばMethylthiouracil等の抗甲状腺剤を長期に亘り投与すると,甲状腺腫が発生する事が報告されて居るが,未だその成因機構の解明には疑義がある様である.
 これらの甲状腺腫の成因に関連して,最近吾々の教室で経験したMethiocil長期過剰投与による甲状腺腫の1例と共にその説明の一助として,鼡にMethiocil投与実験を行い興味ある成績を得たので之に報告する.

甲状腺乳嘴腺癌(所謂Abevant Thyloid)の1例

著者: 井出愛邦 ,   渡辺徹 ,   大西則之

ページ範囲:P.41 - P.42

 甲状腺腫瘍の臨床的鑑別診断はしばしば困難で就中,側頸部に発生する"Lateral Aberant Thyloid"はその発生部位,腫瘤形態等より往々術前診断を誤らせるものである.しかもReams等によれば,悪性甲状腺腫のうち最高位を占めると云われ,腫瘍発生を中心として腫瘍学的にも興味ある対象でありながら本邦文献は比較的少い.
 最近私達の経験したその一例を些かの考察を附して報告する.

後腹膜畸形腫1治験例

著者: 松尾武男 ,   津山肇

ページ範囲:P.43 - P.44

 畸形腫はさまで稀れなる疾患ではなく,我国でも数多くの報告が有る.著者も其の好発部位である後腹膜に発生せる畸形腫に遭遇し,X線により形態を認め,手術全治せしめた一例を得たので報告する.

盲腸單純性炎症性腫瘤の2例

著者: 森芳典 ,   山田勳男

ページ範囲:P.45 - P.46

緒言
 腹部の単純性炎症性腫瘤は比較的稀な疾患であるが,発生する場合は廻盲部に好発し,ときに腹膜,大網等にも発生を見る.廻盲部に生じた場合には,同部の限局性腹膜炎,癌,結核,アクチノミコーゼ,卵巣嚢腫,慢性虫垂炎,慢性腸重積,腹筋炎等との鑑別診断が甚だ困難であり,多くはこれらの病名のもとに手術され,組織検査の結果によつて始めて本症であることを発見する場合が多い.
 吾々は最近岡山大学医学部第1陣内外科教室に於て盲腸に生じた興味ある本症の2例を経験したので,こゝに報告し,あわせて文献的考察を試みた.

硬膜下血腫2死亡例の検討

著者: 鈴木二郞 ,   永沢泰

ページ範囲:P.47 - P.50

緒言
 先きに本誌に於て発表した様1)に桂外科教室に於ては10例の亜急性及び慢性硬膜下血腫を経験し,その内の2例を失つている.その中1例は空気脳室造影術後,全身痙攣頻発,意識不明,低脳圧症となり,血膜除去後,意識不明のまま遂に呼吸麻痺のために死亡したものであり,他の一例は脳血管撮影後,呼吸麻痺のために死亡している.今回はこの2死亡例に就いてその死因を追求し,併せて脳血管撮影による危険及び両側性硬膜下血腫に就いても言及した.

脊髄空洞症の1例

著者: 東谷光郞 ,   平川寬

ページ範囲:P.51 - P.52

 脊髄空洞症に関する報告は文献上時に散見するが,整形外科的治療法の記載は少く,僅かにPuu—seppと岩原教授が脊髄縦切法を提唱されているに過ぎない.わが教室に於いても脊髄腫瘍として手術を行い,本症を確認した1例があるので報告する.

腸出血を主徴とせる惡性絨毛上皮腫の1例

著者: 石川中 ,   森福淸

ページ範囲:P.53 - P.55

 悪性絨毛上皮腫は諸種悪性腫瘍中でも最も転移が速かで且つ広範囲に見られる点に於て最も悪性であるとされている.然しながら半面自然治癒の傾向も見られる点で特異な疾患と考えられる.
 悪性絨毛上皮腫についての諸家の統計的観察からその頻度,転移の部位等について考察して見よう.

幼児及び小児の穿通性及び穿孔性消化性十二指腸潰瘍の2手術治験例

著者: 三浦慶造 ,   木村秀枝 ,   陳武州

ページ範囲:P.57 - P.61

 我が教室は,昭和29年迄に,2例の乳小児消化性胃十二指腸潰瘍を経験しているが,最近,其の2治験例を追加し得たので報告する.更に,現在迄の本邦に於ける15歳以下の本疾患症例22例を集め得たので,当教室経験例4例を此等と比較し,当教室に於ける外科的小児疾患に対する治療成績の一端を示したい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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