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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科12巻10号

1957年10月発行

雑誌目次

綜説

大動脈中隔欠損症の根治手術について—動脈管開存を合併し,ともに手術により治癒せしめ得た稀有なる1例

著者: 木本誠二 ,   三枝正裕 ,   浅野献一 ,   佐藤文雄 ,   風間重德

ページ範囲:P.765 - P.772

 心臓手術の数が重ねられるに従つて,珍しい症例が経験される.著者等は動脈管開存症と考えて手術を行い,異型の動脈管を切離した後も同じような持続性雑音が聴かれ,再度の手術により大動脈中隔欠損の存在を確認してこれを遮断することにより根治せしめ得た症例を経験した.本稿はまだ文献上5例しか根治手術成功例の報告されていない大動脈中隔欠損の根治例の経過を記録するのが主要な目的であるが,なお動脈管開存と大動脈中隔欠損の合併症例は,乳児を除いては剖検例としても文献に漸く1例発見し得た所であつて,この意味からも極めて稀有な手術経験の一つとして記録し度いと思う.

食道静脈瘤に対する血行遮断術

著者: 友田正信 ,   井口潔 ,   矢毛石陽三 ,   篠原啓次郞 ,   寺岡広昭 ,   大田満夫 ,   池田脩 ,   大塚正年 ,   松元輝夫 ,   政所修治 ,   古沢元之助 ,   八木博司 ,   松隈守人 ,   原泰文 ,   吉村茂松 ,   上垣宏 ,   康済普

ページ範囲:P.773 - P.788

いとぐち
 いわゆる門脈圧亢進症の外科的治療法に関しては,これまで幾多の方法が考案されたが,最近では血管外科の発達とともに,Blakemore, Whi—pple,Lintonなどによつて門脈系大静脈系血管吻合術が臨床的に広く応用されるようになり,新しい躍進を遂げた.
 本邦に於ては,木本教授によるEck手術と門脈動脈化手術の併施,大網の肝内挿入法,或は動脈の肝内植込法の併施などの研究が進められて居り,また今永教授も大網腎被包術をはじめとして興味ある方法を考案している.

下肢免荷装具の足部分の小考案

著者: 河邨文一郞

ページ範囲:P.789 - P.791

 現在広く行われている下肢の免荷装具の原理は,今さら云うまでもなく歩行鐙によつて足底を床から離し,体重を坐骨結節または脛骨近端(脛骨内顆と粗面および膝蓋骨の下縁)で受けるところにある.そして,その最大の欠点は足部の構造に存在する.
 例えば股関節や膝関節の免荷装具では,足部は浮遊しているのが普通であつて,そのため子供の場合屡々足尖を接地して歩行したがるため免荷の意味をなさなくなつたり,また長期間にわたつて装用すると静力学的尖足を来すことが少くない.後者の場合,時には観血的にアキレス腱を延長せねばならぬ場合も往々である.

キシロカインによる伝達麻酔の1000例の臨床研究

著者: 恩地裕 ,   永岡潤吉 ,   上久保康夫 ,   上山英明 ,   新田俊男 ,   內藤寬 ,   小田徹 ,   綿谷茂彌 ,   米井中

ページ範囲:P.793 - P.799

研究目的
 昭和29年10月,麻酔に興味を持ち常に連絡をとつてお互に研究しておつた著者等が当時すでに欧米においては多くの臨床研究の発表があつたキシロカインについて,我国において協同して臨床研究を行つてみようと云うことを話し合つた.以来再三会合して打合せを行つて1000例をこえる臨床例を得る事を目標にして進んだ.当時伝達麻酔手技について著者等の中ある者は熟練していたが他の多くの者が未熟であつたために,統一的,統計的な研究は不可能であつたので,研究の目的を次の様に設定した.
 (1)副作用の発生率はどの位で,どんな副作用が起るか?
 (2)日本人におけるキシロカインの使用量を夫々の伝達麻酔手技について標準を見出すこと.

ナフチオニンの止血効果に関する実験的研究(第2報)—臨床篇

著者: 渡辺正二 ,   若山正夫 ,   長岡淳一

ページ範囲:P.801 - P.805

緒言
 外科領域に於て出血は極めて密接な関係を有し,出血については最も多くの関心が寄せられている.従つて従来より出血に対し,優秀な止血剤の出現は各方面から待たれていた,我々は先に新合成止血剤ナフチオニンを使用して動物実験を行い,止血作用上認むべき効果をおさめたので,今般更に外科領域に於て臨床に応用し,次の如き経験と成績を得たので報告する.

変形性脊椎症に対するChondroitin硫酸の効果

著者: 齊藤三彥 ,   加納淸

ページ範囲:P.807 - P.810

 変形性脊椎症は消耗性変化による生理的老化現象であり,その最大の苦痛は疼痛就中,腰痛である.本症に見られる椎体の辺縁隆起叉は骨棘形成は髄核の膨脹による椎間板の前方隆起にともなう,前縦走靱帯の椎体附着部牽引のため1)2),又椎間板変性による水分減少のための扁平化,或は石灰沈着による椎間板弾性の減少2)3),椎体間,脊椎関節,椎間孔,棘突起間靱帯の変性に加わる過度の機械的刺戟による変形4)等々と云われている.従来弾性源と考えられていた髄核自身は実は弾性源でなく,髄核の化学的成分によつて,椎間板の弾性の強さを支配するらしい,その髄核中には,Hyarulon酸,Chondroitin硫酸塩等が粘液性多糖類の形で多量に存在すると云われる5)
 それに関して,最近は,Hyarulonidaseと,椎間板中の糖蛋白体との関係6),或はこのChond—roitinと抗Hyarulonidaseとの関係が,髄核の膨化に関して最近注目されつゝある.

症例

左側大腿下端に発生したNon-chromaffin Paragangliomaの一治験例

著者: 榊原宏 ,   久保田乙夫 ,   太田一長 ,   磯野貢

ページ範囲:P.811 - P.813

 Non-chromaffin Paragangliomaは頸動脈毬,頸静脈球,大動脈小体の如きNon-chromaffin Paragangliaから発生する比較的珍らしい腫瘍である.我々は大腿下端に発生した本腫瘍で臨床的に肉腫を思わせた稀有なる1例に遭遇し,之れを摘出全治せしめ得たので,いささか考察を加え,こゝに報告する.

内反上膊骨及び頸椎癒合を伴える矮小人に就いて

著者: 佐野耕三 ,   福田敏雄

ページ範囲:P.815 - P.816

 両側内反上膊骨及び頸推癒合を伴う矮小人の一例を経験したので報告する.

直腸に穿孔した卵巣皮様嚢胞の1例

著者: 中川活治 ,   池田邦太郞

ページ範囲:P.817 - P.819

 直腸に穿孔した卵巣皮様嚢胞は,稀な疾患で我が国に於いては,未だ報告をみないようであるが,欧米に於いては,E.Bacon等を始め,相当数の報告例がある.我々は最近その1例を経験したので報告する.

原発性静脈瘤様筋肉血管腫瘍例

著者: 增野宏

ページ範囲:P.820 - P.822

 原発性筋肉血管腫はVirchow(1856)の拇指筋より発生した症例を始めとして,Meyer(1898),Sutter(1905),Jones(1953),その他の報告を合せ370数例をかぞえ,本邦では30数例の報告がある.その大数は海綿様血管腫で,小数例は単純性血管腫である.
 私は最近半膜様筋の血管腫瘍で数年来坐骨神経痛として治療を受け,又椎間軟骨ヘルニアと誤診され,前後2回の手術により始めて診断の確定された症例を経験したので報告する.

脊髄麻痺をきたした血友病症例

著者: 木城卓二 ,   佐藤昭一

ページ範囲:P.823 - P.826

 血反病に関しては古くから遺伝,血液性状,療法などについて多くの業績があり,整形外科領域においても血反病性関節症等の報告は尠くない.しかし吾々メスを執る者にとつて日常の臨床に行うありふれた操作が血反病患者であるが為に思わぬ事故を惹起することがありこの点特に注意を要する.こゝに髄液腔穿刺によつて脊髄麻痺を示したと考えられる教訓的な血反病症例を報告する.

左踵骨慢性骨髄炎性瘻孔瘢痕部に発生した皮膚癌の1例について

著者: 糸原公 ,   野崎成典 ,   益満義躬

ページ範囲:P.827 - P.829

緒言
 外的刺戟が癌腫発生に大きな役割りを演ずることについてはVirchowの提唱以来一般に認められているが,とくに皮膚癌はその発生において前駆疾患とのあいだにきわめて密接な関係のあるものである.
 1889年Volkmannが本癌腫の223例について精細な報告をおこなつて以来,潰瘍,瘢痕,瘻孔,レ線照射,慢性化学的刺戟等の持続的な刺戟がしばしば皮膚癌発生にきわめて重要な要因であることが一般に信じられている.われわれは踵骨カリエスと診断され,治癒しがたい瘻孔をのこし,約8年間にわたり種々なる治療をうけて一旦治癒し,その後ほとんど無症状に経過した該部位に,ふたゝび潰瘍を発生し,ついに皮膚癌にまで進展した1例を経験したので報告する.

汎発性線維性骨炎の1例

著者: 松崎美佐夫

ページ範囲:P.831 - P.833

 Recklinghausen5)は1891年,従来,骨軟化症と称せられていた一聠の疾患の病理学的検索から,骨髄の線維性変化,骨皮質の破壊吸收,次いで,線維性組織の軟化により嚢腫を形成するもののある事を発見し,之をTumorbildende Ostitis fibrosa或はOstitis fibrosa mit cysten und braunenと名付け,骨軟化症と区別し,本疾患を更に,1個の骨に限局せるものを限局性,数個の骨を侵すものを汎発性線維性骨炎と名付けた.以来.本症について多くの報告を見るが,我が国に於ては,松丸1)の詳細な報告の他3,4例2)3)4)をみるのみである.
 最近著者は,本症の1例を経験したので報告する.

出血性乳房5例

著者: 高橋武治

ページ範囲:P.834 - P.839

 出血性乳房はReclus(1860)により詳細な臨床経過が発表され,続いてKlöse(1922)が癌先駆症なりとして乳房切断及び所属淋巴腺廓清を提唱して以来,外科医の注意するところとなり種々議論がなされた.
 本邦に於ては近藤教授(大正13年)によつて始めて注意を喚起された.

巨大膀胱結石の1例

著者: 深見照男

ページ範囲:P.840 - P.841

 膀胱結石は殆んどすべての年齢に出来るけれども,40歳〜50歳代が一番多く,又男子に多くみられる.結石の数も1〜数百個に及び,大きさも砂粒大より手拳大に達する程度まで種々あるが,統計的に1〜30gのものが最も多く,100g以上のものは本邦文献では50例に充たない程である.著者は最近150gの巨大結石が膀胱底に嵌頓せる1例を経験したので,茲に迫加報告するものである.

集談会

第85回北陸外科集談会,他

ページ範囲:P.841 - P.845

1.最近経験せる関節遊離体に就いて
金大整形外科 平井喜久男
 最近私達の経験せる関節遊離体の6例に就いて,レ線所見,手術所見摘出標本組織所見を述べ,その発生病理に就いて考察を加え,次の結論を得た.3例は外傷を誘因とする離断性骨軟骨軟骨炎により発生,他の3例はOsteschondromatosisを基礎として滑液膜より発生し,遊離体となつたものと考察する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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