文献詳細
特集 乳腺腫瘍
乳腺における前癌性変化の組織化学的研究
著者: 谷口積三1 安井徹志1 広瀨俊太1 大植直樹1 村上綠葉1 竹田津永昌1 今西幸雄1 森下智1 杉本侃1
所属機関: 1大阪大学医学部第二外科
ページ範囲:P.917 - P.930
文献概要
乳腺に於ける前癌性疾患としては,古くから慢性乳腺症なる疾患が論議されて来たのであるが,近年久留教授21)22)23)が臨床的並びに病理組織学的見地から,其の重要性を強調されて以来,本邦に於ても一層深い注目を浴びるに至つた.其の癌化率についても多数の報告があるが最も多い数字としては,Konjetzny5)(1954年)の50%,比較的少い数字としてはSchimmelbuschの7%を挙げる事が出来る(第1表).
本疾患はAschoff及びMoszkowiz14)15)等も記載している如く,その発生原因には内生殖腺の機能異常が大きな関聠を持つものと考えられ,其の上皮及び結締織の増殖の程度は,下界に於て生理的変化と明らかに境界を定め得ないものから,上界に於ては癌前期或は肉腫前期とも見るべき程度に至るまで各種の段階が存在し得るのである.従つて其の分類に於ても極めて多数の人々3)5)6)7)9)11)12)13)23)31)30)によつて,それぞれ独自の立場から行われ 或は其の悪性化の程度に従い,或は又組織形態学的変化に従つて為されて居り,実際的問題として,其のいずれに依るべきか甚だ困難を感ぜざるを得ないのである(第2表).
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