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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科12巻2号

1957年02月発行

雑誌目次

綜説

胆道疾患に対するファーター氏乳頭部分的切除術と乳頭部の病理組織学的変化

著者: 槇哲夫 ,   福島高文 ,   久保七郞 ,   中村豊 ,   津島惠輔

ページ範囲:P.65 - P.73

Ⅰ.まえおき
 我国に於ては所謂無石性胆道疾患は極めて多い.そしてこれ等無石例に於ては総胆管の拡張を伴うものゝ多いことは我々のこれ迄の研究に依つて明らかにせられた.1),2),3),4)又胆石症で例え結石が胆嚢に所在する場合でも,ビリルビン石灰石に於ては総胆管の拡張が認められることの多いことも既に指摘した5).そしてこれ等胆道疾患の遠隔成績に於て,総胆管の高度拡張を伴うものが一般に胆嚢剔出後も愁訴を残し,不満例の多いことが知られて居り,このことは当教室に於ける調査成績でも同様であつた6),7).即ち我国の胆道疾患では胆嚢それ自体よりもオッヂ氏筋の異常攣縮乃至はその病変に真の原因を有しているものゝ多いことが推定出来る.然るに我国に於てはこれ等疾患の場合胆嚢剔出術に終始し,オッヂ氏筋に対する手術の企ては殆ど見られなかつた.

最近4ヵ年間の本院外科手術時に於ける麻醉法の統計的観察

著者: 黑田秀夫 ,   牧安孝 ,   松本浩生 ,   田中庸介

ページ範囲:P.75 - P.81

緒言
 最近の麻酔学は,文字通り日進月歩の発展をとげ,その理論は次第に複雑となり,またその術式も多岐を極めて,応接に暇がないと言う現状である.
 殊に米国に於ける閉鎖循環式麻酔法の完成と,フランスに於ける薬物冬眠理論の確立に依つて,外科手術上の多くの困難が克服されてから,手術侵襲の許容範囲が著しく拡大されて,外科学一般の進歩が促されて居る.

手術侵襲と基礎代謝

著者: 松崎美佐夫 ,   松田健一

ページ範囲:P.83 - P.84

 基礎代謝に関しては,従来多数の報告がなされているが,手術との関係に就いては甚だ少なく,近藤,森永等の報告があるにすぎない.私達は胃癌患者12例,胃潰瘍患者12例,肺結核患者(肺葉切除施行)5例,その他5例,合計34例に就いて,手術前後の基礎代謝率を測定し,手術侵襲に伴うその変動を追求した.測定には福田式基礎代謝率計を使用し,術前及び術後第1日目より第7日目まで毎日,その後は10日目,14日目,21日目の計10回にわたり,基礎代謝測定条件のもとに,1分間の酸素消費量を求め,基礎代謝率を算出した.
 その成績は,第1表及び第1図に示す如く,術後第1日目に著明な上昇を示し,以後時日の経過と共に基礎代謝率は漸次減少し,その間,発熱等もなく順調な経過をとるものでは一般に10〜14日目にて術前値に復する.健康者の基礎代謝率は,先輩諸氏の業績によると,平均3.3%で,体温其の他の生活条件による変動を考慮に入れても±10%を正常範囲と見做す事が出来よう.佐藤の実験によると,基礎代謝は薬物によつても影響される様であるが,かゝる著明な上昇は,主として手術侵襲そのものによると解すべきであろう.

縱隔洞の病態生理(特に吸收能力)について

著者: 毛受松壽 ,   吉永帰一 ,   吉野信行 ,   酒井昭義 ,   岩崎望彥

ページ範囲:P.85 - P.89

はしがき
 胸部外科の発達に伴い,縦隔洞に対する手術操作が比較的容易に行われる様になり且つその疾患の診断に際しては種々なる体位によるレ線撮影,断層撮影或いは縦隔造影法等10)11)12)13)が研究され,又気縦隔法(Pneumomediastinum)7)14)により,その病変の存在部位或いは拡がりに対しては,かなり確実なる診断が可能になるに至つた.然し乍ら縦隔洞の生理,特に病態生理については未だ不明の点が多く,これらの点に関する文献は殆んど認められない.我々はこの点を明確にする目的で家兎及び犬を用いての実験成績により2,3の点を明らかにし得たが,之は臨床的にも開胸縦隔洞操作後に於ける経過を知る為に重要なことであるので今回はその正常時並びに炎症時の吸收能力について研究の一端を報告する.

乳幼児外科に於ける補液について

著者: 葛西森夫 ,   陳武 州 ,   高橋浩一 ,   山形昭 ,   坂井毅

ページ範囲:P.91 - P.99

 最近に於ける本邦の外科学の進歩は目覚しいものがあるが,乳幼児外科については米国の現状に比して立遅れて居り,此の方向の急速な進歩に努める事は我々の急務であると考える.米国に於ては幼若者に屡々大手術が行われ,而かも成功すること多いが,斯様な進歩は手術手技,麻酔,抗生物質の向上によることも勿論少くないが,乳幼児に於ては手術後の管理,特に補液が果す役割が非常に大きい.乳幼児は成人を小さくしたものではないと言われるが,此の法則は補液についてもあてはまる.

イレウス時に於ける乏尿機序について

著者: 代田明郞 ,   山崎泰弘 ,   村田耕治 ,   井出裕雄 ,   平間毅 ,   橋谷田一郞 ,   長野政雄 ,   小泉俊郞 ,   石田茂年

ページ範囲:P.101 - P.122

Ⅰ.緒言
 イレウス死因の本態に関しては中毒説,細菌説,塩化物減損説,体液減損説,神経性反射刺戟説,機械的心臓障碍説等幾多の学説があるが,1922年Gerard1)がヒスタミン中毒説を唱えてより本説はイレウス死因の本態として多大の興味を呼び或は毒物の本態に関し或は毒物の発生機転に関し幾多の重要なる研究業績が発表されるに至つた.
 かくして毒物の発生機転はさておき,毒物の本態に関してはヒスタミンを主とするところの一群の毒物即ち所謂イレウス毒素と総称せられる一群の毒物が生体内に発生してそれによるところの中毒症状であるとの見解はこれまでイレウスを説くものゝ一般に認めるところとなつていた.

骨関節結核の関節機能の恢復と筋肉の所見

著者: 丸毛英二 ,   打保美津 ,   沢田フサ

ページ範囲:P.125 - P.129

 骨関節結核に対する化学療法下の観血的手術は,極めて優秀な成績を示すけれども,之によつて関節機能の恢復を期待するには種々の条件が具備されていなければならない.即ち,固定法と,その期間の長短,罹患関節の病変の強弱,骨破壊の程度,関節周辺の軟部組織の状態,膿瘍,瘻孔,或は瘢痕形成の有無が大きな関聠性を持つ.吾々は,之等の中でも関節構成体としての筋肉の状態を特に重要視して,之と関節結核の手術後の運動状態との関係を検索した.

クロルプロマジン(コントミン)の使用経験

著者: 大塚哲也 ,   中脇正美 ,   林瑞庭 ,   山田栄 ,   香川徹 ,   中村博光 ,   山縣時房 ,   本田進

ページ範囲:P.131 - P.134

Ⅰ 緒言
 クロルプロマジンは1951年,H.Laboritにより初めて人工冬眠麻酔に用いられ,次いで1952年J.Delay,P.Denikerにより精神科領域に,又1953年D.G.Friend,J.F.Cumminsにより悪心,嘔吐に試みられ,その後各科領域に広く使用されるに至つた.以下整形外科領域に於ける使用経験に就いて報告する.

労働災害による上腕骨々折の小計

著者: 関原敬次郞 ,   森永亨

ページ範囲:P.135 - P.137

緒言
 吾々は九州労災病院開院以来の7年間に於ける上腕骨々折患者77名に就いて,統計的観察を行つた.骨折の統計はその発生地域の特長,患者を收容した病院の性質等により大いに趣を異にする事は勿論であるが,此の統計も業務上負傷による労災保険患者の特性を示すものと思われる.調査の対象は当院入院の上加療した44例で,陳旧例36,新鮮例8である.

症例

リグラ状幼裂頭條虫寄生による腹壁腫瘍

著者: 內山淳夫

ページ範囲:P.139 - P.142

緒言
 1881年Scheubeが京都に於て28歳の馬丁の尿道口より排泄された乳白色帯状の虫体を発見報告し,その翌年Mansonが支那人の剖検に際して同様の虫体を検出してCobbold10)に鑑定を依頼した所,これをリグラに属する一条虫であるとしてLigula Mansoniと命名した.2)3)それ以来多くの業績があるが,本症は東洋殊に日本,支那,朝鮮に多くて欧米には少いとされている.我が国では京阪地方に頻発し,その他,九州,中国地方にも見られる.この条虫は本来犬,猫,狐等には普通の寄生虫であるが,人体に見られるものはLigula Mansoniの幼虫であつて従来,マンソン弧虫Sparganum Mansoniとして知られている.そのためその名称についても区々であり,マンソン氏孤虫,或はリグラ状幼裂頭条虫と記載されたものもあつて一定していない.

Xylocaineによる上膊神経叢遮断—クーレンカンプ氏上膊神経叢傳達麻醉

著者: 宇山理雄 ,   足立政喜 ,   野口和彥 ,   中野邁 ,   飯田瞳

ページ範囲:P.145 - P.148

 我国に於ては上膊神経叢遮断法による上肢の麻酔は外科臨床に於て他の麻酔法ほど盛には用いられていない.之は麻酔手技に熟練を要する事も原因の一つであるが,それ以外に局所麻酔剤としての理想を満足させる優秀な薬品が発見されなかつた事がその発展を妨げる大きな原因をなしていると考えられる.
 従来の教科書には上膊神経叢伝達麻酔法に2%Procaine 40ccを要すと記載されており,我々が実際に注射して見ても麻酔効果は本法に余程熟練した人でないと充分と云う訳に行かないし且又,麻酔持続時間が短いと云う救い難い欠点を持つている.局所麻酔剤としてProcaineの外にCoca—ine,Dibucaine,Tetracaine等種々合成されているが之等は麻酔持続時間の長い点に於てProcaineに勝つているが毒性の強い点に於て欠点があり,上膊神経叢遮断に応用されるに到つていない.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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