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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科12巻3号

1957年03月発行

雑誌目次

綜説

下谷病院に於ける最近10年間の急性腹膜炎に関する統計的観察

著者: 傳田俊男 ,   何洸照 ,   佐藤知巳 ,   樋口公明 ,   伊東虓次郞 ,   野上典則 ,   波多野錄雄 ,   米山武志

ページ範囲:P.153 - P.160

 急性腹膜炎は臨床医家のしばしば遭遇する疾病の一つであつて,これに関しては戦前には塩田,河石,横田,津田の諸教授の報告を始め多数の方方によつて,色々な方面から報告されて来た.しかし戦後は,虫垂炎性腹膜炎とか,或いは胃十二指腸潰瘍穿孔による腹膜炎とか,個々の腹膜炎についての報告を散見するだけであつて,腹膜炎全般にわたつての報告は久しく見られなかつた.サルファ剤,ペニシリン(Pc),ストレプトマイシン(SM),オーレオマイシン(AM),テラマイシン(TM),クロヽマイセチン(CM)等抗生物質の出現によつて,急性腹膜炎は漸次少くなり,その様相も抗生物質出現以前に比して大いに異つて来ているので,再び急性腹膜炎全般にわたつて,その様相の移り変りを見ることも有意義と考えられるので,私共は昭和20年1月から昭和29年12月までの最近10年間の下谷病院外科に於ける急性腹膜炎788例について考按を試み,得られた2,3の知見を報告する.

外科的治療を行つた胃下垂症の術後成績

著者: 田內力 ,   永井肇 ,   永井良治

ページ範囲:P.161 - P.164

まえがき
 胃下垂症に対する治療は,内科的療法及び外科的療法共に古くより種々の方法が試みられ,多数の報告があるが,しかし,内科的治療の限界点及び,各種の外科的治療の適応等は未定にして,これが胃下垂治療の一貫性を欠く理由と思われる.外科医に於ても,胃下垂症に対して手術的治療は無効であると唱えて施行しない傾向も無いではない.これらの意味に於て,我々は昭和26年初頭より,29年末迄の4年間に今永外科教室にて扱つた,胃下垂症の内入院手術した26例につき調査したので発表する.尚26例は術前及び術後診断共に胃下垂症である.手術時に胃潰瘍が発見されたり,単に胃拡張症であつたもの等は除外した症例である.術後経過観察期間は6ヵ月より4ヵ年である.尚全例共10日内外にて退院した.

剔脾の婦人生理,特に妊娠,出産に及ぼす影響について

著者: 米川溫 ,   河原和夫

ページ範囲:P.167 - P.171

1.緒言
 1549年Zaccarelliによつてはじめて婦人に剔脾が行われて以来,多数の女性に於ける剔脾例が経験されて来た.慢性脾腫を有する症例は女性が圧倒的に多く,月経不順を訴える者が多いことはすでにDamshekが指摘している所である.又Israel and mendell或いは,Goldburgh and Gauley等の月経過多が栓球減少性紫斑病の最初の,或いは唯一つの徴候であることが多いと述べているように,女性性器と脾臓との間には何等かの関係があると推定されている.他方Zondeckは1944年脾臓は恐らく内分泌器官に属するものではなかろうかと述べ,脾抽出液が抗利尿作用を持つこと,及び基礎代謝を低下せしめることを示した.続いて脾臓の内分泌機能に関してUngarも1945年脾臓からSplenin A及びBなる物質を抽出して之がホルモン様の作用を有するものであることを実験的に確かめ,此の両者の産生は副腎皮質ホルモンによつて調節されると述べている.

臨床血液検査の一考察—殊に"白赤比"の價値について

著者: 井上利之 ,   嵯峨山隆 ,   山田厚

ページ範囲:P.173 - P.176

Ⅰ.緒言
 臨床家にとつて,患者の複雑な病態を正確に診定し,病名診断の確定と予後の推察を得る為に行われる臨床検査は必要不可欠のものであり,なお特に外科入院患者は,その殆んどが手術療法を必要としているが,これは病的状態にある患者を更にストレスを加える事になり,しかもそれによく堪えて健康を恢復しなければならない.かゝる意味で外科入院患者の術前検査は一層慎重に行われねばならない.吾々は当外科入院患者の血液諸検査を担当し,極く最近の血液一般検査成績を統計的に観察し,従来の成績と多少異つた所見を得たのでこゝに報告すると共に従来観みられていない赤血球数と白血球数の比(白赤比と仮称する)の重要性に着目し新たに"白赤比"なるものを提唱し,諸賢の御批判を乞う次第である.

地方病院に於けるスクリーニングテスト実施経験について

著者: 近藤芳夫 ,   石井好明 ,   森岡幹登

ページ範囲:P.177 - P.182

1.緒言
 最近,診断・治療に於ける客観的検査成績の果す役割は,その方法の発達普及と共に大きくなりつゝある.之により,診断が正確になるのみならず,在来の診療に於ては不可能であつた臨床症状発現以前に疾患を発見することも可能となり,合理的に対策を講ずることができるようになつて来た.又,侵されている臓器のみならず,全身状態を把握することが,特に外科の診療に於て重要なことが明らかになつているが,この為には多くの検査を必要とする.しかし,従来の方法では特殊の大病院を除いては,設備,技術等の制限の為,この要求を充たすことは不可能であり,個人的経験と主観を基にして診療しているのが現状である.我々は少しでもこの要求を充たすべく,東大分院外科及び中央検査室より発表された方法1)2)3)4)11)を根幹として,簡単に全身機能状態の客観的データーを与えるスクリーニングテストを地方病院に於て実施しているが,過去1年間,主として外科患者約300例の経験によつて,この方法が極めて役に立つことを認めたのでこゝに報告する.尚,我々がテストを実施した御殿場市富士病院はベット数150の一般病院で,臨床検査はすべて技術員1名,助手1名により行なわれている.

スクリーニングテストとしての簡易血液化学検査法の検討

著者: 飯塚裕 ,   佐治弘毅 ,   內田善敬 ,   石井好明 ,   古屋精一 ,   赤沢章嘉 ,   飯野重之 ,   森岡幹登 ,   上村実 ,   相馬智 ,   田中茂男 ,   國谷昭 ,   陶易 王 ,   堀越彌太郞

ページ範囲:P.183 - P.190

緒言
 最近の病態生理学の進歩により検査成績を中心として,異常の発見,対策の確立を試みることは既に常識となつた.従つて,短時間に多種類の結果の得られる検査方法の採用は,日常の診療に於ては切望されているが,従来行われている方法はその複雑な点,長時間を要する点等,不便な点が多い.
 われわれは,さきにMandel等による簡易血液化学検査法1)2)に着目し,これは数種の検査法3)4)5)を組合せて,少量の血液を用い,11種の検査を簡単に且つ短時間に行い得る方法を工夫し6)7),当外科の入院及び外来患者に多数施行して,この方法が臨床的に十分使用出来ることを確認したのでこゝに報告する.

Chlorpromazineの外科領域に於ける応用

著者: 平田淸二 ,   重信文男

ページ範囲:P.193 - P.196

まえがき
 Chlorpromazineはphenothiazine核にClを添加することにより,1950年に合成された薬剤で,1951年Laborit1)はこれを主体とする薬剤群を用いることにより人為的に冬眠状態とも云うべき一種の麻酔状態を得ることに成功し,次いで1953年Courvoisier及び協同研究者がその薬理作用に関して詳細に報告して以来,一躍時代の脚光を浴びるに至り今や臨床方面でも広汎に応用されつゝあるが,吾々も最近教室に於て本剤を使用した症例に就いて検討する機会を得たので若干の考察を加えてみた.

アナフィラキシーショックとその対策

著者: 陸川容亮

ページ範囲:P.197 - P.200

はしがき
 今日ペニシリンショックが問題となつているが,その莫大な消費量からみれば甚だ稀とも云う可きであろう(アレルギー程度のものは屡々遭遇する).併し乍ら漸増の傾向にあるのは事実のようであり.常に予防と遭遇した場合の対策は念頭に置く必要がある.予防が治療の第一歩であると云われる如く,予め過敏現症の有無を検して注射を行うべきことは言を俟たない.又一方chlor—promazineが諸種ショックを抑制することはよく知られており,私も屡々述べたものであるが,ペニシリンショックの予防の為に一々chlorpro—mazineを注射する訳にも参らない.アナフィラキシーに関する研究は主として動物実験に頼らねばならず,その成績よりして臨床例の類推を行わねばならぬ欠点はあるが,私は当教室の研究成績よりピックアップしてアナフィラキシーとその対策に関する愚見を述べ諸賢の御参考に供したいと思う.

仮骨形成遷延に対するデポカリクレイン及びカリクレインの使用経験

著者: 高田一

ページ範囲:P.201 - P.206

緒言
 整形外科領域に於て外傷治療上,その循環状態の保持改善については,常に種々の注意がはらわれねばならない.血液の循環は植物性神経系並びにホルモンの影響によつて調節されて居り,末梢血行を改善する薬剤も多数挙げられている.E.K.Frey及びH.Krautは生体内にこの種の循環系ホルモンを証明し,之は膵臓及び唾液腺でも形成せられ,内分泌物として血行路に入り,こゝで大部分が非活性化作用のある物質と結合し,一部のもののみが活性の形で存在し腎臓から排泄されることを認めた.この循環系ホルモンは学名をKal—likreinと称しKALLIKREINの名称(ドイツ名Padutin)で発売されている.本剤の臨床実験はE.K.Freyによつて行われ,多数の慢性及び急性の血管疾患並びに血液循環障碍を伴う疾病に有効である事が明らかにされた.

結晶蛋白分解酵素の外科的応用—特に術後療法としての價値

著者: 中村武 ,   森永宗雄 ,   渡辺昭 ,   高橋秀彰 ,   広田和俊 ,   飯島嘉之

ページ範囲:P.209 - P.215

Ⅰ.まえがき
 外科手術後に屡々みられる血胸・膿胸・癒着・更には粘稠な喀痰による閉塞性肺合併症等はその後療法の如何で予後を大きく左右する一つの因子ともなり得る.加うるに抗生物質が細菌の発育抑制に効果が認められていても,これらの予防対策に関する限りは殆んど直接的には無力に近く充分な対策が確立されていない現在であつてみれば,これらの発生は術後管理面に於ける大きな問題といわねばならない.
 教室ではこれら後療法についてたびたび報告を重ねてきたが最近蛋白分解酵素製剤が使用されるようになつてきた.実際酵素を利用するという考えは古くからあり18世紀既にJohn Hunterが壊死組織の消化作用に利用したといわれるが現在酵素製剤としてはTrypsin製剤とStreptodor—nase製剤がある.

整形外科領域に於ける手術後及び外傷後疼痛に対するイルコジン坐薬の効果

著者: 提島孝 ,   加賀完一

ページ範囲:P.217 - P.220

 外科領域に於ける鎮痛剤は一般に手術後,外傷後の疼痛に対し阿片製剤を使用する事が多い.最近之に代る鎮痛剤としてイルコジン(Geigy—藤沢)を入手し得たので約150例に使用し,その効果を検討した.
 イルコジンの組成は次の通りである.

症例

Klippel-Feil氏病の1例

著者: 関原敬次郞

ページ範囲:P.223 - P.225

緒言
 1912年Klippel及びFeilが始めて臨床的,病理解剖学的報告をした頸部の一変形性疾患はKlippel-Feil氏病(以下K-Fと略す)或はFrosch—menschと命名されたが,Feilは1919年それ迄の報告を再検討し 1.頸椎全体の癒合 2.頸椎の部分的癒合3.頸椎の減少と他部脊椎の癒合と奇形の三型に分類した.
 私は今度レ線的には頸椎数7個を認め,K-F症候群の頸椎数減少の概念と相入れないに拘らず,頸椎癒合と臨床的に一応K-F症候群を具備し,Feilの第二型に入る1例を経験したのでこゝに報告する次第である.

輸尿管吻合の治験例

著者: 隅本彰 ,   谷向茂作

ページ範囲:P.227 - P.228

 輸尿管は其解剖学的,位置的関係上,泌尿器科,婦人科,外科の手術に際し損傷を見る事が屡々であり,損傷時の処置に関し多くの研究がなされ尚輸尿管吻合術式に就いても種々研究されて居るが,輸尿管吻合術の人体の報告は少く日本に於ては木下1),赤岩2),安藤3)等の外2,3に過ぎない4)5).輸尿管外科の様な微細なる手術では操作複雑で少しの不注意も直ちに成績と予後に影響する.
 こゝに経験した方法は簡単で確実と思われるので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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