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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科12巻4号

1957年04月発行

雑誌目次

特集 腫瘍

胃癌における出血

著者: 梶谷鐶 ,   山田肅

ページ範囲:P.233 - P.242

緒言
 上部胃腸管出血の原因の主なるものは,胃・十二指腸潰瘍,胃炎,食道又は胃静脈瘤及び胃悪性腫瘍であるが,その大部分を占めるものは胃,十二指腸潰瘍である.
 胃癌における出血は,胃潰瘍における出血に比べると,その臨床的意義はそれ程重要ではないが以下文献を参照しつつ,癌研究会附属病院外科の症例を材料として胃癌出血の問題を概説することとする.

脳腫瘍の統計的観察

著者: 西本詮 ,   友沢久雄 ,   桑田康典

ページ範囲:P.245 - P.250

緒言
 Cushing-Bailey1)が2000余例に及ぶ脳腫瘍を手術し,分類して発表したのは,すでに30年前のことであり,いわゆる"脳腫瘍学"(主として病理学的見地より)の基礎は,このとき樹立されたといつてよいであろう.その後分類に関しては諸家が部分的に種々の意見を表明しているが,現在通用している分類は依然Cushing-Baileyの報告にもとづいているといつてよく,数の上でもこれに勝る大統計はそれほど多くは発表せられていないようである.著者は1954年より1955年にかけて欧米の脳神経外科を歴訪したが,Olivecrona教授のところでは脳腫瘍手術例はすでに5000例を越えていたように記憶するし,またTönnis教授のところでもやはり5000例を遙かに越えていた.米国ではとくに脳神経外科が独立発達し,clinicの数も非常に多いが,どのclinicを訪ねても1000例以下というようなところを発見することは出来なかつた位で,欧米を通じて脳腫瘍症例の豊富さには感嘆の声を禁じ得なかつたのである.

回腸横行結腸吻合部に発生した肉芽腫の1例

著者: 中村嘉三 ,   大野善一郞

ページ範囲:P.251 - P.254

 腸管に発生した非特殊性炎症性腫瘤は比較的稀に発見され本邦に於ては58例1-9)の報告を見るに過ぎないが,最近私達は回腸横行結腸吻合部に発生し腸閉塞を惹起した肉芽腫の1例を経験したので報告する.

上皮小体腫瘍に関する一考察

著者: 桑原健造 ,   塩田亮三

ページ範囲:P.255 - P.257

緒言
 上皮小体腺腫の発生に基く上皮小体ホルモンの過剰状態に関する報告は1891年Von Reckling—hausenの"汎発性骨繊維嚢腫症"に始まるといわれているが,当時は未だこの骨変化が上皮小体の疾患に起因するという事は確認されていなかつた.
 両者の関連が発見されたのは1904年Askanazyの報告が最初である.

異所性褐色細胞腫の1例について

著者: 藤卷雅夫

ページ範囲:P.259 - P.261

 Pheochromocytoma(褐色細胞腫,或は,クローム親和性細胞腫)は,副腎髄質稀には,副腎以外のクローム親和性組織から発生し,一方その腫瘍構成分によつて機能的に,持続的,或は間歇的血圧亢進を特徴とする腫瘍である.本症は1886年Fraenkel6)の記載報告以来200例にも達しているようであるが,本邦における本症の記載は甚だ少なく僅かに,村上1),浅野2),広田3),吉村4),久野5)等の報告を算するのみである.最近教室に於て褐色細胞腫の1例を手術により剔出治癒せしめ得たので,その症例を報告する.

臀部畸形腫の1手術治験例

著者: 德山英太郞 ,   佐藤公典

ページ範囲:P.263 - P.266

 臀部畸形腫は直腸と仙骨との間に発生する胎生期の腫瘍であり,その90%は出産時既に認められる畸形であるが,又時にその悪性変化の報告もある.
 本腫瘍の手術については可成り古くから報告はあるが比較的少数である.Calbetは臀部に発生する先天性腫瘍は出産児34582人に一人の割であり更に畸形腫はその中数%に過ぎないと述べている.Ewingは臀部畸形腫をもつたものの中三分の一は死産であり残りの90%は生後間もなく死亡すると云つている.更に外科的治療の対象となる場合,乳幼時に出来ることと,部位的には骨盤腔内に発育したものは手術が困難な為,その根治手術の対象となるものは可成り少いと云えよう.

開腹術後の腹腔内炎症性腫瘤の4症例

著者: 中村弘

ページ範囲:P.267 - P.268

緒言
 開腹術後,所謂術後々遺症として炎症性腫瘤を形成する場合のある事は衆知の所であるが私は卵巣嚢腫剔出虫垂切除胃切除後に所謂Braun氏腫瘍及び腸間膜に炎症性腫瘤を形成した4例を得たのでその概要を報告します.
 元来大網膜及び腸間膜に発生する腫瘍は,その成因の如何を問わず誠に興味深いものでありますが,斯かる術後々遺症として炎症性腫瘤を形成すると言う事は稀有であるとは言え,Messer Seiteに在るものとして常に関心を払わなければならないと思います.

肺に原発巣を有する脳膿瘍について

著者: 塚本光夫

ページ範囲:P.269 - P.272

Ⅰ.緒言
 脳膿瘍は一般に近接領域よりの伝播性脳膿瘍として耳性に形成されることが最も多く,遠隔領域より血行を介して形成される転移性脳膿瘍はこれに較べれば比較的少い.私は最近肺に原発巣を有すると思われる転移性脳膿瘍の興味ある1例を経験したのでこゝに報告する.

嚢腫性骨結核に就いて

著者: 松森茂

ページ範囲:P.273 - P.276

 最近経験した稀有な嚢腫様骨結核を中心に本症に関する簡単な文献的考察を試み度い.

口腔底に発生したOncocytomaの1例

著者: 斎藤純夫 ,   高橋宏 ,   米山博 ,   川井忠和

ページ範囲:P.277 - P.279

 Oncocytomaは1931年にはじめてHamperlが唾液腺に見られることを発表した良性の極めて稀な腫瘍である1).Oncocytomaの腫瘍形成細胞は特異的なOncocyteよりなつている2),3).症例も非常に少く現在迄外国にも10例内外の報告を見るにすぎず4),5),本邦では未だその発表例を見ない様である.われわれは最近舌下腺より発生したと思われるOncocytomaの1例を経験した.

胃に転移を来したと思われる後腹膜巨大滑平筋腫の興味ある1治験例

著者: 溝口実

ページ範囲:P.281 - P.286

緒言
 後腹膜に於ける筋腫は非常に稀な疾患で,外国文献には散見するが,我が国に於いては,私の調査した範囲では僅か3例にすぎない様である.私は最近,当教室に於いて後腹膜より発生したと思われる巨大な肉腫性変化を伴つた滑平筋腫と,更に叉胃大彎部前壁にも恐らく転移によると思われる同種滑平筋腫の併存した1例を経験したので,茲にその概要を報告し後腹膜筋腫及び胃腸管筋腫について少しく考察を加え度いと思う.

幽門部に発生せる有茎ポリープと潰瘍癌を共有せし1例について

著者: 三田穰

ページ範囲:P.287 - P.288

 胃ポリープ及び潰瘍癌は時折見受けられるが,共存せる例は少いようである.私は幽門部に両者を共存せる例を経験したので,報告したいと思う.

綜説

肺結核手術後の死亡例の検討

著者: 関誠一郞 ,   芥川光男

ページ範囲:P.289 - P.299

I.はじめに
 肺結核に対する積極的治療法として現在は化学療法と手術療法が2大流をなしている.後者を今後さらに普及発展させるには手術に基因する死亡を極力減少させることが最も肝要である.厚生省医務局国立療養所課ではその方策を立てるための指標にする目的で,昭和30年度に全国の国立結核療養所から手術後3カ月以内の死亡例について詳細な記録の提出を求めた.この集計の大要は昭和31年10月第11回国立病院療養所綜合医学会において尾崎課長1)によつて発表された.
 この調査は手術後の死因の調査としては比類のない大数の観察であり,この種の統計の欠点として勿論ある程度の誤差が含まれているとしても。斯学の発達に稗益するところ甚大であると考えられるので,我々は更に数種の観点からこの調査について検討を加えてみた.

胸腔内操作に伴う反射障碍防止について

著者: 脇坂順一 ,   猪口嚞三

ページ範囲:P.301 - P.311

Ⅰ.緒言
 第二次世界大戦前後より長足な進歩を遂げた麻酔学の裏付けにより,元来,難治性のものと看做されていた,心,肺,食道疾患等の胸部外科領域も比較的手術操作の容易なものとなり,新な発展の段階を辿りつゝある.現状である然しながら,胸腔内操作の機会が増加するに伴い,術中の急激な血圧降下や重篤な呼吸循環障碍或は稀に,心動停止さえも招いた症例の報告も亦,同時に数多くみられる様になつた1-7).これは誠に遺憾に耐えない問題であり,多くの人々によつて注視され,その発生機転及び予防法についての研究がなされている.その結果,重要な原因として,術中の大量出血及び換気不全に伴うHypoxia或は心臓の様な重要臓器への機械的刺戟等が挙げられているが,その他,胸腔内操作に伴い易い反射性因子によるものと解釈されているものも多く,この内の一つとしてVago-vagal reflexが提唱されており,Weeks2),Gullickson8)その他によつて多くの臨床例が報告されている.
 抑々Vago-vagal reflex症候群とは一過性のものであり,容易に恢復するため,臨床上,等閑視され勝ちのものであるが,種々の悪条件が重なる場合にほ重篤な呼吸循環障碍或は心動停止さえも招来するものである.

硬膜外麻醉の再検討

著者: 西邑信男

ページ範囲:P.313 - P.318

 1885年Corningによってしめされた硬膜外麻酔の可能性は1901年フランスのSicard及びBa—thelinにより仙骨管を通して,1921年Pages次で1931年Dogliotti等により胸膜部よりの硬膜外麻酔として実現された.
 その後Hingson,Hess,Odomにより一般化された硬膜外麻酔は脊髄麻酔の如く広く行われるにいたらなかつた.しかしこの数年来再び米英及び我国においてとりあげられ検討されつゝある.私はこゝに我々の行つた硬膜外麻酔よりえた結果を中心として硬膜外麻酔を論じてみた.

骨折と関節機能

著者: 服部奬 ,   大石刀一

ページ範囲:P.319 - P.323

まえがき
 一般に骨折と関節機能とは密接な関係があり,関節機能を度外視した骨折の治療はあり得ない.しかしながら骨折の治療原則たる一定期間の固定は如何なる骨折にも避くべかざるもので,これが関節機能に悪影響を及ぼすことは何人も否定することは出来ない.
 1940年Küntscherが髄内固定法を発表し,加うるに抗生物質の発展,無刺戟性金属合成の発達に伴い,長管骨々折の治療に一新時代を劃するに至り,機能的予後は以前よりも著しく改善されつつあり,近年この方面の研究報告は枚挙にいとまがない.

外科領域に於ける新鎮痛坐薬イルコジンの使用経験

著者: 長瀨正夫 ,   大保亮一

ページ範囲:P.325 - P.328

 疼痛殊に手術後の疼痛を如何にして緩解するかということは外科医の日常よく直面する問題であつて,この目的の為に作られた薬剤も枚挙にいとまがない程数多くあるが,而もなお理想的な薬剤がないというのが現状であろう.
 ところが今回我々は新鎮痛坐薬イルコジンを使用する機会を得た.特にこのものが坐薬であるということが我々の興味を惹いたのであるが,これを昭和30年8月以降約1ヵ年の間に,入院患者89名に対して延96回使用した結果を報告する.

新抗甲状腺剤Mercazole使用によるバセドウ氏病の外科的治療

著者: 降旗力男 ,   志田寬 ,   広野穰 ,   島田寔

ページ範囲:P.329 - P.333

 バセドウ氏病の外科的治療はThiouracilが手術前準備に用いられるようになつて以来,極めて安定なものとなつたが,Thiouracilには時として無効例も見られ,且つまた前準備期間が多少長びく欠点があるので,一層強力な抗甲状腺剤の出現が望まれていた.ところが1—methyl−2—merca—ptoimidazoleなるイミダゾール誘導体が強力な抗甲状腺作用のあることが判り,欧米に於てはすでにTapazole,Methimazole等の名前で発売され,本邦に於ても最近中外製薬よりMercazoleとして発売されるようになつたので,私共は主としてバセドウ氏病の術前準備に使用し,良好な成績をおさめ得たので報告する.

症例

破傷風治療のウインタミン使用の1症例

著者: 谷口憲弘

ページ範囲:P.335 - P.336

Ⅰ.まえがき
 Chlorpromazineは1951年フランスのRhone-Poulenc研究室で合成された自律神経遮断剤であり,抗アドレナリン作用,鎮静作用,代謝降下作用,抗痙攣作用等極めて広範な薬理作用を有している.1951年H. Laboritに依り始めて人工冬眠療法剤として使用されて以来,その臨床的応用範囲が著しく拡大され,各科領域に広く使用されている現況である.Chlorpromazineの中枢神経に及ぼす作用のうち抗痙攣作用,鎮静鎮痛作用を利用し破傷風の治療に応用しようとする試みはフランスに於てJanbon M,Bertrad L,Aoustin J等によつて行われ好成績を報告しているが(1952)吾々も最近破傷風の1例にchlorpromazine(製品名Wintermin)を使用する機会を得たのでその成績を報告する.

野兎病性リンパ腺炎に対する「レ」線治療の小経験

著者: 高山修 ,   島田孝幸

ページ範囲:P.337 - P.339

 野兎病患者は腋窩,肘,上膊内側等のリンパ節の腫脹を主訴として医療を乞う者が多く,現今之に対する最良の治療方針としては,抗生物質に依り,急速にリンパ節の腫脹が消失して治癒に趣くものを除き,之が併用に依る外科的療法である.併し本症と非常に類似する結核性リンパ腺炎に対しては,「レ」線照射が極めて有効なことから,金沢大学放射線科平松教授の御教示に依り厳正に適応を選び慢性の経過を辿る本症の一例に「レ」線照射を行つて処著効を見たのでこゝに報告する.

破傷風に対する冬眠療法の経驗

著者: 神谷喜作 ,   山口恒夫 ,   小山正

ページ範囲:P.340 - P.344

緒言
 Laborit等により始められた,薬物冬眠療法は、広く各国で用いられ,その成果が種々報告されている.Chlorpromazineが,初めて破傷風に用いられたのは,1952年Janbon等によつてであるが,私達は,2例の破傷風患者に,Wintermin単独でなく,所謂カクテルとして用いた症例を経験したので,ここに報告する.

ミクリッツ氏病を疑わせ,両側特発気胸と合併した1例について

著者: 林寬治

ページ範囲:P.345 - P.347

 最近,我々は印刷工の所謂"ミクリッツ氏病,かと思われる1例を経験した.その職業が常時鉛を取扱うものであり,ミクリッツ氏病と鉛中毒との相関々係については,従来より諸説があるところなので,こゝに御報告する.

2年7ヵ月の女児に見られた急性膵臟壞死の1例

著者: 久野一郞 ,   中田久夫 ,   上田太

ページ範囲:P.349 - P.351

1.まえがき
 従来,急性膵臓壊死が稀れな疾患であるとされていたのは,頑固な胃痙攣,胃乃至十二指腸潰瘍,急性虫垂炎,胆嚢炎,高位腸閉塞等との鑑別診断が困難で見逃されて,他の疾患と誤診される事が多かつたためで,最近では診断技術の進歩と共に,本症への関心がたかまつて,内外共に多数の報告を見る様になり,これ迄考えられていた程稀れな疾患ではないとされるに至つている.
 しかし本症は文献によると大体20〜50歳台に多く,幼小児には欧米でも,本邦でもその発生は非常に少ない.最近我々は満2年7ヵ月の女児に発生した本症を開腹によつて確めた1例を経験したので,従来の幼小児に見られた本症の文献を渉猟検討して,幼小児に於ても膵臓壊死の存在する事を一応念願において診察すべきであると強調したい.

Mondor氏病について

著者: 井口昌憲

ページ範囲:P.352 - P.355

 1939年Mondorは前胸壁乳腺周囲,上搏等に無痛性皮下索状物を形成した症例を発表したが,その後同様症例を一般にMondor氏病と呼んでいる.欧米ではかなりの本症報告例があるが,我が国に於ては一般に未だ気付かれていないものと思われ,私が昭和31年3月第17回米子医学会が初めて本症の3例を報告した後,外賀の2例が報告されているに過ぎない.私は教室に於て5例の本疾患を経験したのでこゝに報告する.

乏尿に対する塩酸プロカイン静注療法

著者: 古本雅彥

ページ範囲:P.356 - P.359

緒言
 塩酸プロカイン(以下「塩プロ」と略す)は1905年Einhornによつて合成されて以来,優秀な局所麻酔剤として広く使用されている.之を血管内に初めて使用したのはBier(1909)であり,その後Lericke,Lundy,Gordon,Allen,Winterらの多くの人々によつて特発性脱疽,気管支喘息,血清病,外傷又は術後疼痛などに用いられその効果が認められている.又本邦においても伊藤,岩森,福原らによる特発性脱疽などの末梢血管障碍関節炎その他の疾患に対する有効例が報告されている.一方本療法が乏尿,無尿に有効であつたという報告はLangeron(1946),Darget(1947)によつて行われているが,Marchand(1949)は火傷ショック後の乏尿に有効であつた症例を発表,又Serwer(1954)は31例の妊娠中毒患者の乏尿に塩プロ静注療法を行い,21例に著明な利尿効果を得たと報告している.著者は当教室に入院中種々の原因で起つた21例の乏尿患者に本療法を試み,第1表の如く著効4例,有効6例,無効2例の結果を得たので報告し,併せて人工腎臓の未だ広く普及していない現在,乏尿に対する本療法の御追試をお願いする.

脈無し病の1例—閉塞動脈の組織化学的檢索を中心に

著者: 神谷喜作 ,   今成順一 ,   水谷忠男 ,   山口勇 ,   黑岩常泰

ページ範囲:P.360 - P.365

 嘗つて本症は高安氏病として,主に眼科領域で報告されていたが,清水教授が本症を命名し,詳細な検索を行つて以来,既に50余例の報告をみており,一方,ひとり本邦に特有で稀な疾患とされていたが,1952年Caccamise,1954年Tar—vellの報告があり,最近Davisも興味ある類似の1例を報告している.このように脈無し病に関する報告は,必ずしも稀ではないが,最近経験した本例に於て我々は,両側頸動脈球を剔出して,或程度症状を軽快させ,同時に両総頸動脈の閉塞部を切除し,組織化学的に精査し得たので報告する.

若年者に認めたPaget氏病

著者: 高橋武治

ページ範囲:P.367 - P.369

 主として女子の乳頭或いは乳輪を侵し,長期間発赤,糜爛,分泌,落屑を繰返す慢性湿疹様変化が普通の湿疹と異なり長期間の後に乳癌を発生する特異な疾患をJames Paget(1874)が臨床病理学的立場より癌先駆症として発表して以来"Paget's disease"の名称で呼ばれる様になつた.
 本邦に於ては近藤教室関口(明治44年.1910)の発表を嚆矢とし以来症例の報告をみている.臨床家は癌先駆症説,病理学者は原発癌説を唱えて長い間の論争の焦点であつたが,現在大なる乳管より生ずる髄様癌として一般に認められて居る.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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