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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科12巻5号

1957年05月発行

雑誌目次

綜説

乳癌の内分泌的処置

著者: 桑原悟 ,   山名寬治

ページ範囲:P.373 - P.378

 乳癌またはその未期症状の寛解,治療に内科的ホルモン療法が相当の効果をあげていることは既にのべたところである.これには当然副作用があらわれてくることについても述べておいた.致命的副作用については特に強調した.のみならずひとつのホルモンだけを使用していると,効力の減弱があらわれてくる.
 以上のような理由の外に,もつとも決定的理由がある.癌の自主的発育である。故に徹底的方法として外科的療法が行われるようになつてきた.ものの順序としては内科的ホルモン療法,ついで外科的のそれに至るのが普通であるが,実際においては,両者が時間的に併行して行われるものであろう.女性乳癌の場合,たとえば去勢と同時に男性ホルモン投与を行うがごとしである.

乳幼児後腹膜腫瘍について

著者: 大森均 ,   古本雅彥

ページ範囲:P.381 - P.386

緒言
 最近麻酔学の進歩,手術手技,術前術後管理の向上などにより,乳幼児に対してもその手術可能性が著しく増大し,死亡率も減少する様になつた.事実乳幼児において可成りの侵襲に堪え順調に経過した症例は東西を問わず多数の文献にみられる.我々も最近3例の乳幼児後腹膜腫瘍を剔出治癒せしめ得たのでその症例を報告し,併せて本邦30年間の乳幼児後腹膜腫瘍44例の統計的観察を中心として聊か文献的考察を加えみたので報告する.

自律神経人為的変調時に於ける末梢血行の態度(第2報)—特に環境変化に対する順應性に就いて

著者: 天瀨文藏 ,   矢野進

ページ範囲:P.387 - P.390

 Phenothiazine誘導体特にChlorpromazine(以下CP)が所謂人工冬眠剤として,又それの広範且つ強力な自律神経遮断作用が注目されて一躍時代の脚光を浴びるに至り,又未だ尚その薬理作用を始め,幾多の不明な点が解明されずに残されている現況にも拘らず,既に臨床方面に於て極めて広範囲に応用され,我々も又その経験を重ねるに及んで,従来の自律神経特にその臨床に関する認識に就いては,一部尚再検討すべきものあるかの如き感さへ懐かしめるものがある.即ちこれらの所謂冬眠剤と,従来の自律神経毒,その他神経節に於ける遮断術等との間には,夫々の人体に及ぼす影響に於て可成りの隔りの存する事を痛感するのであるが,一方には又,後述する如き神経支配脱落血管に時としてみられる合目的から離れた反応,更に環境変化に対する順応性の減退,ひいては生活維持上の予備力低下等の問題に対しても,特に本剤の自律神経遮断作用が強力且つ広範囲に亘り,而も長期間連用される事も少くない点からみれば,茲に更に一層充分な検討を加える余地も尚あろうかと思われる.

イルガピリン坐薬の臨床経験—他の投與法との効果の比較

著者: 川村次郞 ,   田口貞文 ,   阿部光俊

ページ範囲:P.391 - P.395

Ⅰ.はじめに
 リウマチ神経痛の治療剤イルガピリンに就いては既に著者始め多くの文献2,3,4,6,7,10,23,25)があり多言を要しないが,簡単にその沿革に就いて述べてみたい.急性関節リウマチにアミノピリンの大量衝撃療法が有効な事をSchottmüllerが提唱して以来それを容易にする為の注射療法が研究された。偶々1949年Geigy社のH. Stenzlが水溶性ピラツオール誘導体phenylbutazone(Butazolidin)を合成したが,此れはアミノピリンを高濃度に水に溶解させると共に,Butazolidin自身優れた消炎鎮痛作用を有し,アミノピリンの大量衝撃療法を一般化した.
 イルガピリンは始めてスイスに於て,次いで欧米各国に於てリウマチ,痛風,強直性脊椎炎等に優れた効果を示す事が報告され,副腎皮質ホルモン製剤と共にリウマチ治療には欠く事の出来ないものとなつている.更に神経痛,癩患者の神経及び関節痛11),重症の癌患者の疼痛19)に対しての臨床効果の報告もみられる.

新鎭痛剤Ircodinについて

著者: 神谷喜作 ,   水谷忠男 ,   山本昭和

ページ範囲:P.397 - P.403

 手術後の鎮痛に関する研究は多く,又この目的に使用される薬剤も多いが,夫々一長一短がある.我々は藤沢薬品より提供を受けたGeigy社製造によるIrcodinを術後鎮痛及びその他悪性腫瘍末期の疼痛,外傷後の疼痛等に使用する機会を得たので,こゝにその大要を報告する.

結核性滑液嚢炎の1例

著者: 栗原重雄 ,   鎌田四郞 ,   楊大鵬 ,   佐々木郁次 ,   阪上嘉広

ページ範囲:P.405 - P.407

 結核性病変が実質臓器及び骨,関節に比して軟部組織に於て稀であることは,此迄多くの統計の示すところで,筋,滑液嚢,腱鞘などの結核が時時報告されているが,我々は最近左大腿部外側の無痛性腫脹の為に来院し,結核性腱鞘炎の診断の下に切開術を行い,左大転子皮下の結核性滑液嚢炎なる事を確認した症例を経験したが,成因等については諸氏の報告に詳細に論述されているので術後開放した難治性肉芽創に対する治療について言及したいと思う.

症例

難治性肉芽創に対するナガーゼの応用

著者: 志羽孝

ページ範囲:P.409 - P.412

緒言
 近年,抗生物質や化学療法剤の急速な発展に伴つて"酵素"の臨床的応用も広く行われるようになつて来た.
 酵素のうちでも特に蛋白質分解酵素の臨床的応用は,Roettig等の結核性膿胸に端を発しており爾来,その応用範囲も拡大されて各科領域で試みられている.

片側嚢腫腎の1例

著者: 大島幹雄

ページ範囲:P.413 - P.415

 本症は初生児から60歳以上までの各時期に見られるが,30歳以上が大部分を占める.発症に就てはVirchow以来多数の報告あり,本邦では明治44年以来195例の報告がある.発生原因には未だ定説はないがVirchowは胎生期の結合組織性腎乳頭炎による小集管の閉鎖で尿貯溜を来し嚢腫を形成するとし,Wilksは先天性奇形説を唱えRibbertは腎髄質,腎盂,尿管を形成する原基と皮質を作る原基との接合異常のため分泌液が流れずに貯り腎小体,曲尿細管が拡張して嚢腫を作ると報じている.又Brigidi,Serveriは腫瘍説を唱えた.私は最近右片側嚢腫腎を経験し,同時に手術的に摘出した腎輸尿管に嵌入した結石の存在を認め,本症の発生に結石の存在が機因となつたものゝ如く思われた一例を報じ諸家の御批判を仰ぎたいと思う.

混合感染を伴つたPapillary cystadenoma lymphomatosum(Warthin's tumor)の1例

著者: 星和夫 ,   陳振栄

ページ範囲:P.417 - P.421

緒言
 耳下腺は元来腫瘍の発生し易い臓器であるが,其の大部分は混合腫瘍及び悪性腫瘍である.比較的発生頻度の少い良性上皮性腫瘍の中でPapillary cystadenoma lymphomatosumは特に稀有な疾患である.本症は1910年AlbrechtとArztによつて初めて記載され,Adenolymphoma,Warthin's tumor,Onkocytoma等,種々な名称で呼ばれており,アメリカに於ては可成りの症例が報告されているが,我が国に於ける報告例は極めて少く,文献によると昭和10年松島氏の報告以来田中・並木・木村・大橋・米川氏等の数例に過ぎない.我々は最近本症の一手術治験例を経験し,而も比較的稀なる腫瘍の想定の下に詳細なる臨床的検索を行う機会を得たので,主として臨床的見地から其の大要を報告する.

異型両側性痙攣性斜頸(仮称)の1例

著者: 藤村顯治 ,   木下公吾

ページ範囲:P.423 - P.425

緒言
 私達は最近,陣内外科教室に於て,頸部の前屈痙攣を来す極めて稀有な症例を経験したので,仮に異型両側性痙攣性斜頸と名付けて茲に報告し,諸賢の御批判を願う次第である.

血族結婚による兄弟に現われた同一型式指趾畸型の1例

著者: 野島元雄 ,   円井一示

ページ範囲:P.426 - P.428

 指趾畸型は古くからその要因として血族結婚が重視されるが,私共は最近複雑なる血族結婚家系に於て兄弟に駢指趾症を略々同一型式に発症している症例を経験したので報告する.

放線状菌症の1例

著者: 山際昭男

ページ範囲:P.429 - P.430

 放線状菌症の病変拡大は連続性に蔓延し,器管組織を次々に侵すのが特異であると云われているが,我々は血行性に身体各所に転移を形成したと考えられる一例を経験した.

肺切除手術後の授動肋骨にみられた骨破壞像の1例(第2報)

著者: 大久保信雄

ページ範囲:P.431 - P.432

まえがき
 私はさきに肺切除手術後40日を経て,開胸部の切断授動肋骨の崩壊を来し,胸壁に瘻孔を形成したため,この部分の肋骨切除を余儀なくされた1例を経験し,その臨床経過と剔出骨の肉眼的所見より,これはおそらく手術時の肋骨授動の際の骨膜剥離による骨の営養障碍に起因するものであろうと報告したが,今般剔出骨(第1図)の病理組織学的検査の結果,これを確認し得たのでこゝに報告する.

肋骨腫瘍を疑わしめた乳腺肉腫の1例

著者: 原田眞夫 ,   大沢光彥

ページ範囲:P.433 - P.434

1.緒言
 乳腺肉腫は極めて稀な疾患であつて,本邦に於ける報告例も今日迄に約50例を数えるに過ぎない.われわれも最近肋骨の腫瘍を疑い手術を施行した患者で,病理組織学的検査の結果乳腺肉腫と診断された興味ある1例を経験したので,こゝにその症例を報告する.

メッケル氏憩室臍瘻の一治験例

著者: 代田克彥

ページ範囲:P.435 - P.439

緒言
 胎生期に於ける臍腸管の遺物たるメッケル氏憩室は1821年Meckelにょつてはじめて発生学的並に解剖学的に詳細に記載されたもので,爾来剖検或は開腹手術の際比較的屡々発見されると共に本憩室に拠り惹起された合併症に就いても幾多の報告がある.
 本合併症としては本憩室を直接或は間接の誘因とする腸閉塞症が最も多く,憩室炎これに次ぎ,その他消化性潰瘍,出血,穿孔,腫瘍,ヘルニア内容,外傷,異物嵌入等数多く挙げられているがメッケル氏憩室臍瘻に関する報告は本邦に於ては未だ数例に接するに過ぎない.

原発性大網膜炎症性腫瘍の1例

著者: 重森仙藏 ,   重藤己壽夫 ,   龍亮

ページ範囲:P.441 - P.443

序言
 腹腔内臓器の悪性腫瘍から続発的に大網膜に腫瘍を発生することは稀でないが,大網膜に原発する腫瘍は極めて稀である1).また大網膜に発生する炎症性腫瘍としてはSchnitzler,Braun,等の名を冠した腫瘍が知られているが,これらは既往の手術刺戟に関連し,旺盛な結合織の増殖に基因して発生するとされている1).われわれは臨床的に何等原因と考えられるものがなくて発生したと思われる.大網膜の炎症性腫瘍の1例を経験したのでこれを報告する.

父子に観察された外科的脾腫

著者: 斎藤明 ,   馬越査門

ページ範囲:P.445 - P.449

Ⅰ.緒言
 溶血性黄疸に関する報告はMurchison(1885),Wilson(1890)等の記載に始まり,Minkowsky(1900)は一家族三代八名の長期に亘る黄疸,脾腫,ウロビリン尿及び腎臓内含鉄色素沈着等を伴う症例を報告し,之が先天性素因に基き而も生命には影響の少いことを明らかにした.其の後Chauffard(1907)は本疾患に於いては低張食塩水に対する赤血球抵抗の減弱,及び微小赤血球の増力等の存在を明らかにし,こゝにMinkowsky-Chauffard型溶血性黄疸なる先天性系統的疾患の独立性を認められ,其の後記載されたWidal-Hayem型の後天性溶血性黄疸と共に現在では非胆汁性黄疸,脾腫,肝障碍,赤血球滲透圧抵抗の減弱,小赤血球或は球状赤血球の出現,網状細胞の増加等一連の特異なる症候群を伴う一疾患として取扱われている.之等に対して始めて剔脾を行つたのは先天性溶血性黄疸ではMicheliであり,先天性溶血性黄疸ではKahn u. Wynterである(Eppinger)が,Banti及びEppinger(1912)が本疾患の一次的原因を脾機能の異常亢進に基くものであるとの見地から剔脾を推奨してより吾が国に於いても極めて多数の報告例があり,少数例を除いて概して良い結果を得ている.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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