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文献詳細

雑誌文献

臨床外科12巻6号

1957年06月発行

文献概要

症例

腸閉塞様症状を呈したIlitis regionalisの1例

著者: 梶間寬1 奥豊吉2

所属機関: 1日本赤十字社中央病院第3外科 2青山外科病院

ページ範囲:P.523 - P.526

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はしがき
 限局性廻腸炎Ilitis regionalisと云う病名は耳慣れない病名であるが,これは廻腸が限局的に急性炎症々状を呈するものゝ総称であつて,この内最多くは廻腸終末部を冒されるために,終末廻腸炎乃至は廻腸末端炎Ilitis terminalisとして知られている.然し我々がこゝで謂うIlitis regio—nalisなるものは狭義のIlitis regionalisであつて,廻腸終末部より遙かに遠隔せる高位廻腸に於て,同様の炎症々状を呈するものを意味する.廻腸末端炎は現在では左程稀有な疾患ではなく屡々遭遇する機会もあるので診断的にも他の疾患と区別することが必ずしも至難ではなくなつて来たが廻腸の他の部即ち末端部より遠隔せる部位が冒された狭義のIlitis regionalisなるものは報告例も甚だ尠く,その発現する症状は急性乃至亜急性の腸閉塞様症状を呈し,腹部の自圧痛部位も一定しないため,開腹前に確診することは極めて困難であるとも云える.然し乍ら一度本症を経験すれば,既往症の有無,発症の状態,自他覚症状の軽重等の諸要因を元にして慎重な態度を以て臨めば,術前に本症を診断することも絶対不可能とは謂い難い.我々は最近偶々亜急性腸閉塞様症状を呈して来院した患者を開腹して本症を発見する機会を得,少なからず教えられる所があつたので,この貴重な経験を記載報告し,大方の御教示を賜り度いと念願する次第である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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