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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科12巻7号

1957年07月発行

雑誌目次

綜説

胸部交感神経節切除術(後方到達法)の一新術式

著者: 山田憲吾 ,   服部奬 ,   阪本謙一

ページ範囲:P.537 - P.540

1.はしがき
 胸部交感神経切除術は歴史的には1899年Fra—ncois-Franckが狭心症に対し,これを実施したのを初めとし,その後1929年Adson及びBro—wnが上肢の血行障碍改善の目的で行つた.又悪性高血圧に対し1925年Rowntree等が腰部交感神経節切除術を,更に1934年Craigが横隔膜下内臓神経切除を試み,其の後胸部神経切除術が行われるに至つた.
 戸田教授は気管支喘息,多汗症,腋臭等にも胸部交感神経節切除を行つた.かくの如く本手術の対象となる疾患は多いが,現在では主として上肢の交感神経支配遮断の目的で行われている.しかも下肢に対する腰部交感神経節切除術に比較すると上肢に対する手術は一般に億劫がられるものである.

肝を通しての経皮的直接胆道系レ線撮影法の臨床的・実験的研究

著者: 鈴木礼三郞 ,   佐藤𠮷美 ,   原和久 ,   高村善郞

ページ範囲:P.541 - P.548

Ⅰ.緒言
 胆道系疾患の診断,特に閉塞性黄疸患者の胆管閉塞部位の決定,管内性か管外性か,或いは異物かの判定,良性か悪性かの鑑別,更に悪性ならばその浸潤拡大程度を術前に的確に把握しようとして,我々は経皮的に肝実質を通しての直接レ線撮影法を試みたが,その術式の確立,適応の決定等のため,臨床的実験的に検索した.

脳外傷,特にその後遺症と脳循環

著者: 高山祿郞 ,   工藤市雄 ,   增大喜八郞 ,   深瀨邦雄 ,   石井博

ページ範囲:P.551 - P.555

緒言
 脳外傷後において脳の血液循環に変調を来すであろうことは,従来の研究よりして当然予想される所であるが,これに関する研究は,未だ極めて少く,多くの未解決の点を残している.このためにわれわれはこゝに脳外傷患者について,脳循環の研究を行つたので,その成績を報告し,大方の御参考に供すると共に,御批判を乞う次第である.

気後腹膜法を併用した経脾門脈造影法の診断的価値

著者: 小幡照治

ページ範囲:P.557 - P.566

緒言
 1952年Dryer1)によつて行われた経脾門脈造影法は始め門脈圧亢進症に対する診断目的から出発した.その後Abeatici,Campi2)等は更に後腹膜新生物,肝疾患に対する診断目的で人の患者に行い,Cooper3)等は門脈圧亢進症,肝萎縮症,膵臓癌等の人に行い,本法を経脾門脈造影法transli—enale Splenoportographyと名付けた.
 一方我国でも数年来この方面の研究が進み,副島4-6)等は早くよりこの方法に注目し,経脾肝造影法translienale Hepatographyと命名し,その方法,副作用,造影所見につき発表している.小渋7)は噴門癌27例並びに正常20例の造影所見から,之が手術適応並びに根治手術可能率を推測するに足りる診断的価値あるものとして報告している.又木本8),今永9)等は門脈圧亢進症の診断と治療に関する報告で,本法が本症の診断上有力な補助診断たり得る事を述べている.

小児基礎麻醉としてのペントバルビタールソヂウム(ミンタール)の筋注に就いて

著者: 米沢利英 ,   鈴木好雄 ,   山田公彥

ページ範囲:P.567 - P.570

1.緒言
 小児の麻酔は生理的及び解剖的特徴を考慮せねばならぬが,特に成長過程の各時期に於ける手術及び麻酔に対する精神的感受性が異ること,麻酔剤及び鎮静剤の影響が異ることに留意せねばならない.
 生後1月以内の新生児では,呼吸及び循環機能が未だ安定せぬものが多く,又外界の刺戟に対する反応が少く,鎮静剤,睡眠剤は使用せぬことが多い.1月を越え発育すると共に手術麻酔に反抗的になり1年を起すと恐怖感を伴うに至る.2年を超えると漸次理解力を有するに至り,充分な説得に依り手術に協力的にすることも不可能でないが,尚お多くは手術及び麻酔に対する恐怖心,反抗心を伴い精神的状態に影響が多い,このため生後1月以上のものには薬物で充分な睡眠状態にすることに依り精神的庇護1-3)を行う一方円滑なる導入に移行させる様にせねばならぬ.この目的のために基礎麻酔が必要であるが,ペントサール,アベルチン等の直腸麻酔4-11)が多く行われ又我国に於ては最近ペントサール等の筋注11-19)等も行われている.吾々は筋注用ペントバルビタールソヂウム(ミンタール)を使用し基礎麻酔を行つた実験的並びに臨床的経験に就いて報告する.

特発性総輸胆管嚢腫に就いて

著者: 代田明郞 ,   野田潔

ページ範囲:P.571 - P.577

緒言
 総輸胆管拡張症Choledochus dilatation或は特発性総輸胆管嚢腫Idiopathische choledochus cysteとは胆汁排泄の障碍を来たす原因,例えば吾人が日常屡々遭遇する胆石の嵌頓,瘢痕,周囲の臓器組織の腫瘍による圧迫等に継発して総輸胆管が嚢状に拡張する所謂潴溜嚢腫とは異り何等認むべき原因なくして特に総輸胆管が限局して嚢状拡張を来たしたものである.
 本症は1852年Douglasによつて始めて報告された稀有なる疾患とされているもので1909年Ebner1)は本症の11例,1917年Waller2)は35例1924年Neugebauer3)は48例,1928年Willis4)は60例,1930年Willson5)は93例を,又最近ではSchallow6)が175例を文献より蒐集報告している.

頭部外傷後貽症(特に植物神経系の問題)

著者: 加藤貞三郞 ,   加藤敏昌 ,   𠮷富久吉

ページ範囲:P.579 - P.581

 頭部外傷後貽症で気脳法の効果を観察した症例が最近43例ある,之等の症例は早くて外傷後1ヵ月遅きは1年以上も経過して居り,多くは6ヵ月以上の症例である.之等の症状を大体区別して見ると次表の如くで(第1表)殆んどの例に頭痛頭重感を認めるが之れは天候気候によつて左右される事の甚しい症状で,恐らく之には植物神経系が主として関与し,脳圧や脳循環が外界の条件の変化に適応して調整されない為に起る症状では無いかと考える.併して本症状は之が為に労働し得ないので極めて重要である.又表中間脳下垂体副腎系障碍例は無いと出て居るが之は一見して分る様な本内分泌系障碍の症状を見た例は無いので,Thorn's-testは殆んどの例に水代謝試験は3例に異常を示す.仍て之等症例に気脳法を治療の目的で施行した成績を第2表に示しましょう.(第2表)即ち43例中23例51.2%に効果を認め年余の苦痛から全く解放された者も4〜5例ある.

症例

難治性潰瘍に対するデポ・カリクレイン(特に糊膏法)の効果

著者: 坂下昇 ,   久野喜八郞

ページ範囲:P.583 - P.586

緒言
 日常屡々遭遇する難治性潰瘍は吾々外科医を悩ます疾病の一つであろう.即ち潰瘍面の清浄化を計り肉芽組織の増殖をはばむと考えられる種々なる因子を取去つても仲々治癒の傾向を見ないものである.吾々はこうした症例に循環ホルモンたるカリクレインを使用し好結果を得たので諸賢の御参考に供せんとするものである.

骨盤骨折変形治癒の4例

著者: 笠井実人

ページ範囲:P.587 - P.590

はしがき
 私は昭和23年6月28日の北陸震災に際し,救護班として派遣され多数の骨盤骨折を経験して以来,骨盤骨折については興味を以て観察して来た.その一部は本誌8巻11号に恩師有原教授と共同で発表してある.その時の結論は,骨盤骨折では一般に仮骨の形成が良好で,少々の転位があつてもそのまゝでよく骨性癒合を営み得るものであり,且つたとえ変形治癒合を起しても余り機能障碍を残さないと云うことであつた.従つて観血的療法は必要でなく,ギプスベット,キャンバス懸垂帯,牽引等により非観血的に治療して充分である.
 最近高度の変形治癒を起した4例を経験し,興味ある所見を得たので,X線写真を供覧しつゝ報告する.

虫垂粘液嚢腫の1例ならびに虫垂粘液嚢腫による廻盲部腸重積症の一治験例

著者: 小川新 ,   栗原儀郞 ,   藤村顯治

ページ範囲:P.591 - P.594

緒言
 虫垂の粘液嚢腫Apendix-Mucoceleは1842年RokitanskyによりHydrops Processus Vermi—formisとして発表されて以来,逐年症例が加えられている.本邦にても1909年富田の発表以来50余例の報告があり,また最近小坂により本邦全症例による綜説的記載もある.さらに安藤は実験的に家兎を用いて比較的容易に多数の虫垂粘液嚢腫を形成することに成功した.私達も開院以来3ヵ年の間,500例の虫垂切除術を施行した際,本症の1例を経験したので,簡単に報告する.
 つぎに廻盲部腸重積症は我々外科医にとり,しばしば遭遇する疾患である.しかしながら虫垂粘液嚢腫が重積症の原因となることは,極めて稀有で,本邦においては,中島,桜井を始め数例のようである.我々は最近さきの1例につゞいて本症による廻盲部腸重積症の1治験例を得たので,これを併せて追加報告して御批判を仰ぎたい.

特発性食道拡張症に見られた食道癌の1例

著者: 秋葉知

ページ範囲:P.597 - P.600

 食道の通過障碍を主訴とする諸疾患の鑑別診断上癌腫は極めて重大な意義を有しているが癌腫が高位食道に発生した場合診断は比較的容易である.最近私は特発性食道拡張症の蔭にかくれ興味ある経過を示し生前診断不可能であつた高位食道癌の1例を経験したので報告する.

枯草菌敗血症の1例

著者: 秋元辰二 ,   石岡尚

ページ範囲:P.601 - P.602

 我々は急性化膿性右脛骨々髄炎の患者の血液培養より枯草菌を発見し,これにアイロタイシンを使用し著効を得た症例を経験したので,こゝに報告する.

診断困難なりし上腹部巨大結核結節の1例

著者: 松本功 ,   黑田学

ページ範囲:P.604 - P.605

 腹部腫瘤は日常屡々経験する所であるが,臨床診断は時に困難で,手術により決定する場合は決して少なくない.腸間膜淋巴腺が結核性病変により腫瘍化し,結核性腹膜炎の結果大網が萎縮癒合して団塊となり,腫瘍状を呈す例は珍らしくないが,最近我々は術前診断に苦んだ右上腹部腹腔内に孤立膿瘍化せる結核結節の一例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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