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綜説
開腹手術時に於ける補液の検討—特に乾燥人血漿について
著者: 登內眞1 松田信良1 吉永帰一1 櫛見剛男1 山下輝久1
所属機関: 1東京医科歯科大学第一外科
ページ範囲:P.633 - P.644
文献購入ページに移動最近の外科手術分野の拡張は麻酔の進歩並に優秀なる抗菌性物質の発現と共にショックの予防並に治療の発達に負う所が大であり,しかしてショックの予防並に治療に対する補液の重要性は勿論であり,その中最も効果あるものは全血補液であり,その臨床的価値については既に議論の余地がない.輸血は単に失血症に対する療法のみに限定されず,広く各科領域に亘つて応用され,その速効的な効果と相俟つて近代医学の新分野を確立した.然し乍らその操作が稍々繁雑であり,又副作用,保存,運搬等の点で未だ最良の補液とは云い難い.若し全血液と同様の効果を有し副作用のない補液があるとすれば,我々は安心して手術が施行され,今後の医学の進歩発達に大いに副い得るものと信ずる.此の意味で当教室に於ては種々なる補液を開腹時に於て術前,術中及び術後に使用し肝機能の点よりその影響と比較検討を行つた.今回は特に血漿補液に主眼をおき検索を試みた.
血漿補液は1862年Braducに依り創案され一時は種々なる障碍に遭遇して中断されたが,1907年Pikeに依り再びとり上げられ,その後大量生産が企図され,第二次世界大戦を契機としてその製造法に飛躍的進歩を遂げ大量生産が可能となり第一線に於て幾多貴重の人命を救うに役立つたのである.本邦に於ては1935年老川の研究があり,その後内藤が大量生産を始め,戦傷病者の治療に少なからず貢献した.
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