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文献詳細

雑誌文献

臨床外科12巻8号

1957年08月発行

文献概要

症例

陳旧性外傷性股関節閉鎖孔脱臼の1例

著者: 有泉正一1 植木繁男1

所属機関: 1飯田市立病院整形外科

ページ範囲:P.655 - P.657

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緒言
 股関節は肩関節に較べると外傷性脱臼の発生頻度は少ない(Krönlein 2%,Guret 12.09%.本名8.7%).それは寛骨臼縁に臼唇があつて関節腔を大とし骨頭の大略2/3を包んでいることや,腸骨結節から起り扇状に拡がつて関節嚢の前壁を包み大転子から転子間線に附着している強靱なY靱帯などが存在するためである.従つて,外傷性股関節脱臼の発生には常に大なる外力を必要とするものであるが,それは殆んど常に介達性で,殊に下肢をアームとする槓杆作用によるものである.即ち,強い外力に依つて股関節が生理的運動範囲以上に過度の運動を強要された際に,臼縁に大腿頸部が衝き当つて,之が槓杆支点となり,大腿骨幹が長力臂,骨頭が短力臂となつて関節嚢や円靱帯が破壊されて脱臼する.一度骨頭が臼外に出ると,尚継続する外力や,股関節部の筋肉の働きによつて更に強く転位して行く.但し,この際Y靱帯は大抵破壊からまぬがれて,骨頭の転位を或る時は抑制し或る時は一定の方向へ制約して定型的脱臼型を形成する.
 外傷性股関節脱臼を2大別し,骨頭がY靱帯の後方に脱臼したものを後方脱臼,前方に脱臼したものを前方脱臼とよんでいるが,前者は全脱臼の2/3以上,後者は約1/4の頻度である.その他にも上方,下方,中心性脱臼などがある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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