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綜説
幼小児に於ける麻酔
著者: 西邑信男1 野村公子1
所属機関: 1東京逓信病院麻酔科
ページ範囲:P.693 - P.700
文献購入ページに移動 現在の麻酔学の進歩はめざましいものがある.我々が麻酔の選択にあたり,麻酔は患者に対して安全で,精神的にも生理的にも出来るだけ害がなく充分な麻酔がえられ,その上外科手術に都合のよいものでなければならない.しかし幼小児の麻酔には未だ幾多の困難がある.即ち幼小児では解剖学的死腔1)が非常に大きく,それに反して幼児の呼吸量は非常に小さい.この比較的大きな解剖学的死腔に対して,更に少い生理的な呼吸気量2)を少しでも減少することは出来ない.もし減少すれば,肺胞換気量の著明な減少にともなつて,hypoxia及びCO2蓄積を来して来る.
近来まで,唯一の麻酔法として幼小児に対して使用されて来た.エーテルによる開放点滴麻酔は非常によい方法ではあるが,導入期に酸素不足,CO2の蓄積を伴うことが多く,術中気道分泌の増加を来し,種々の循環,呼吸及び体内代謝の変化を伴い,術後長い期間にわたり不快な合併症として,悪心,嘔吐を伴う他,回復時間が長く,エーテル臭気を伴う.而し一方広い安全閾を持つており,麻酔の深さに相当し,典型的な徴候を持つので,比較的広く用いられて来た.幼小児では生理的平衡の範囲が狭いため,いかに短い時間でも正常な状態からはずれることは非常に危険である.
近来まで,唯一の麻酔法として幼小児に対して使用されて来た.エーテルによる開放点滴麻酔は非常によい方法ではあるが,導入期に酸素不足,CO2の蓄積を伴うことが多く,術中気道分泌の増加を来し,種々の循環,呼吸及び体内代謝の変化を伴い,術後長い期間にわたり不快な合併症として,悪心,嘔吐を伴う他,回復時間が長く,エーテル臭気を伴う.而し一方広い安全閾を持つており,麻酔の深さに相当し,典型的な徴候を持つので,比較的広く用いられて来た.幼小児では生理的平衡の範囲が狭いため,いかに短い時間でも正常な状態からはずれることは非常に危険である.
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