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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科13巻1号

1958年01月発行

雑誌目次

綜説

腸線の吸収に関する研究

著者: 山地幸雄 ,   志波剛 ,   石関忠一 ,   小嶋秩夫

ページ範囲:P.5 - P.10

まえがき
 腸線縫合糸(Surgical gut,catgut)は絹糸などゝ異なり,生体内で吸収されまた臨床家にとつては,繁煩な滅菌処置を加えずに使用できる優れた縫合材料である.わが国では材料の関係上馬腸線が多く製造されており,その種類は,日本工業規格により次のように定められている.
 (1)Type A(無加工)‥‥吸収をおくらせるような特殊処置を加えてないもの.

膵臓皮下単独断裂に就いて

著者: 代田明郞 ,   国吉真敏 ,   高石敏

ページ範囲:P.11 - P.16

緒言
 膵臓の皮下損傷は該臓器の占拠する局所解剖学的位置の関係上これをみることは頗る稀れで,而も膵臓が損傷される場合は殆んど常に隣接諸臓器の損傷を伴うもので,独り膵臓のみが損傷を蒙ることは更に稀れである.
 膵臓の皮下単独損傷に就いては1895年Wilks und Moxonがその1例を報告して以来1905年Garre1)は9例を,Heineke2)は1907年19例を蒐集し,1910年Guleke3)は自已の2例を加えて30例を報告し,爾来欧米に於いては比較的多く屡々報告されているが,本邦に於いては明治41年東大田代名誉教授4)の報告を噛矢とし,以来斎藤(良俊)5)(大正14年),江崎6)(昭3年),片山7)(昭4年),渡辺・津田8)(昭11年),松尾9)(昭11年),手代木10)(昭11年),都谷・大西11)(昭14年),中川12)(昭16年),杉村13)(昭16年),奥平14)(昭17年),河合15)(昭18年),対馬16)(昭26年),向畑・水島17)(昭29年),松倉教授18)(昭30年)等僅かに10数例を算するに過ぎない.

Gynaecomastiaに関する2,3の検討

著者: 黑柳彌寿雄 ,   仙石光彥 ,   吉田穰 ,   大川浩正

ページ範囲:P.17 - P.21

 Wheeler等によればGynaecomastiaとは,「男性乳腺に於ける限局された可逆的な腫大」とみることができ,組織学的には被包化されない結締織増生,乳腺Ductの増生,慢性炎症による血管新生,細胞浸潤等が認められる.又その原因を3大別して
 (1)Hormoneの過剰投与
 (2)Physiological hormonal imbalance
  a)Adolescent Mastitis
  b)Senescent Mastitis
 (3)Pathologieal hormonal imbalance
  a)外傷又はOrchitisによる睾丸萎縮
  b)睾丸腫瘍,殊にChorionepithelioma.稀にIntestitial cell tumorでも見られる.
  c)副腎皮質腫瘍
  d)脳下垂体腫瘍
  e)肝硬変
  f)Aspermatosis,睾丸萎縮Gynaecomastiaを主徴とするKlimafelter症候群.
  g)其の他.Thyreotoxicosis,白血病,Addison氏病,肺癌等.と考えられる.

術後静脈血栓症の臨床

著者: 神谷喜作 ,   川井一夫 ,   桜井隆 ,   吉田富貴松

ページ範囲:P.23 - P.29

 術後静脈血栓症に対する認識は近年逐次たかまりつゝある.しかしその治療法は一般に依然として高挙罨法安静といつた姑息的な域を脱せず,その予防法に至つては全く等閑に附されている.術後静脈血栓症を医家が重要視する所以は勿論肺栓塞症をおこす危惧が存するからである.しかしながら術後静脈血栓症から肺栓塞をおこす率は決して高くない.各種心臓疾患に由来する動脈栓塞症の方が日常我々は接する機会が多い.肺栓塞症と異つて所謂"Postphlebitic Syndrome"として長年月にわたり下肢の腫脹,潰瘍に悩む場合は非常に多い.我々は血栓形成初期に抗凝固剤を使用することにより多くの症例について良好な結果を得ているが,これに反し単に安静療法のみをとつた患者が長年その後胎症に苦しむ事実をみて早期抗凝固剤療法の重大性について,我々の意見をのべてみたいと思う.

統計

勝屋外科教室に於ける胃・十二指腸潰瘍出血の統計的観察

著者: 岩根英一 ,   福田武 ,   岡原寿典 ,   白男川史朗 ,   隈部寿一

ページ範囲:P.31 - P.34

緒言
 胃・十二指腸潰瘍出血は吾々臨床医が日常屡々遭遇する偶発症であり,吐血或は下血を必発の症状とする.古来この問題は幾多の人により論ぜられたが,未だ其の治療方針の確立を見るに至つていない.
 吾々は昭和22年より昭和30年までに於ける潰瘍出血の入院患者について種々統計的に観察したので報告する.

術技

簡易なる脳水腫の一手術法

著者: 島本忠明 ,   本郷弘之 ,   塚崎義人

ページ範囲:P.35 - P.37

1.まえがき
 閉鎖性脳水腫の外科的治療法については一般には脳液をより多くGranulatio Pacckioniの方に誘導せんとする幾多の方法や,異物管を以て脳外を連絡する種々なる方法がある.後者は組織の異物反応によつて多く失敗を重ねたが山本,竹内,Parsohoff & Hiatt等は組織反応の非常に少いPolyethylen tubeを用いてVentriculo-Pleuro—stomyなる術式で簡単且つ優秀な成績を收めた、吾々も一度此の方法を行つたが,原因は不明であるが管腔が閉鎖された為に更に簡易な方法を行い得たので報告します.

頭蓋骨成形手術の経験

著者: 滝沢桂太郞 ,   宇津木一男 ,   木村達二郞

ページ範囲:P.38 - P.40

 我々は最近頭蓋骨欠損を伴う外傷性癲癇手術,並に前頭骨陥没骨折による陥没骨片を摘出した後生じた骨欠損部にメタアクリール系合成樹脂板を使用して威形手術を行い好結果を得たので報告する.

症例

胃壁蜂窩織炎の一治験例

著者: 小塚虎治郞 ,   小川勝士

ページ範囲:P.41 - P.44

 胃壁蜂窩織炎は剖検例でHugemin氏は7,000例に2例,Sundberg氏は11,372例に5例と報告している程稀な疾患である.Fritz Konig氏が慢性限局性胃壁蜂窩織炎の胃切除をおこない治癒せしめから,ようやく外科的に処置されるようになり,最近では急性瀰漫性のものにも根治手術を施行し,その治験例も散見されるにいたつたが,剔出標本の病理学的検索の報告はまだ微々たるものである.
 著者等は最近胃潰瘍穿孔による胃周囲膿瘍形成と診断した1症例が開腹したところ胃穿孔,膿瘍共に認められず,胃壁の著明な肥厚を認め,胃切除を行つて組織学的に胃壁蜂窩織炎であることが判明したので以下にその知見を報告したい.

非上皮性胃腫瘍の一治験例

著者: 相沢青志 ,   林亨 ,   本多正人

ページ範囲:P.45 - P.47

緒言
 胃に原発する悪性腫瘍は癌腫が多く,原発性胃肉腫は比較的稀な疾患で,Thompson11)(1950)によれば胃腫瘍の1〜2%に過ぎないとされている.胃肉腫はLondsberg(1840)が円形細胞肉腫を始めて報告して以来,Marshall12)(1950),Crile13)(1952)等の報告があり,本邦に於ては今(1901),上野,合屋1)(1940),権守2)(1942),土方4)(1951),井坂5)(1952)等の報告がある.
 最近我々は胃に原発した組織球性細網肉腫と推定される一治験例を得たので茲に報告する.

胃潰瘍と合併した胃憩室の1例

著者: 久野一郞 ,   大場徹三 ,   中田久夫

ページ範囲:P.49 - P.51

まえがき
 胃憩室に就いてはHirsch(1913年)が始めて記載しているが,本邦では1919年堤氏の報告が嚆矢で,その後レントゲン診断学の進歩と共に症例の数も多くなつては居るが,消化管憩室の中では非常に稀れで,我々の調べた処では現在迄に本邦症例は僅かに24例を数えるに過ぎない.我々は最近胃潰瘍の症状を主訴として来院した患者に,術前レントゲン検査を行つたところ,偶然胃幽門部の憩室を発見した症例に遭遇し,手術的に治癒させたので,文献的考察を加えて追加報告する.

十二指腸憩室の二手術例

著者: 金原信郞 ,   栗田邦一 ,   五味五郞

ページ範囲:P.52 - P.54

緒言
 十二指腸憩室は1710年Chomelが剖検に際して偶然発見したのを嚆矢とする.1839年のMor—ganiniの病理解剖学的報告に続き,多数の記載がある.
 最初の臨床例は1912年Baron-Barsonyがレ線学的に診断し,外科手術により確証して以来多数の報告がある.

自発性腹壁瘻孔を形成せる胆石症(胆嚢癌)の1例

著者: 黑須靖

ページ範囲:P.55 - P.57

 自発性腹壁胆嚢瘻を形成した胆石症は比較的稀れな疾患でその報告も本邦では十数例に過ぎない.我々は最近多数の胆石を有し胆嚢の底部に癌腫が発生しここに穿孔が起り腹壁膿瘍を形成し膿瘍切開を行うに瘻孔となり約1ヵ月に亘り腹壁瘻孔より多数の胆石を排出し治癒の傾向がないため胆嚢摘出術を行つて治癒せしめ組織学的に原発性胆嚢癌の存在していた1例を経験したので茲に報告する.

肋骨に転移を来した甲状腺骨軟骨肉腫の1例

著者: 細見保男

ページ範囲:P.58 - P.60

緒言
 甲状腺の悪性腫瘍中でも,未熟の非上皮性腫瘍たる肉腫は稀有な疾患に属するものである.又軟骨肉腫そのものが,その症例報告は極めて少く,Willisは1952年迄の文献に於て,1886年のWe—berを始め,Ernst,Schmorl,Fry及びSchattock,Kosa,Phenisser,Wasren,Bormann,von Re—cklinghausen,Martin,Gesickter等の11例を挙げている.本邦に於ては著者の調査した範囲では,昭和12年の片山を始めとして,鈴木(仁)及び横山,佐藤,緒方,鈴木,伊藤等の6例の報告があるのみである.
 著者は甲状腺に原発した骨軟骨肉腫が,剔出術後2年で肋骨に転移した症例を経験したので報告する.

小腸相互間の結節形成に因るイレウスの三治験例

著者: 代田明郞 ,   真木実 ,   中村典男

ページ範囲:P.61 - P.67

 腸管結節形成によるイレウスは移動性に富む二つの遊離腸蹄係が先ず交叉し一方の蹄係が他方の腸蹄係に螺旋状に纒絡して後他方の腸蹄係にて一部境せられる間隙に嵌頓することによつて成立する疾患で,本症は主としてソヴィエト及びフィンランド等で多く経験されるものである.
 例えばKallio(1932)は自験例77例と共に文献より84例計161例を集めて報告しているがこのうち150例は実にソヴィエト及びフィランドで経験され,残りの僅か11例が他国に於て経験されたものである.此れに反し本邦に於ては大正8年井深1)の報告以来今日まで僅かに20例内外を算するに過ぎない極めて稀な疾患で斎藤2)(淏)教授(昭和29年)も全国大病院,教室より蒐集したイレウス16,420例中に本症は僅かに6例に過ぎなかつたと述べている.

外科と薬剤

外科領域におけるAtraxinの使用経験

著者: 菅原古人 ,   野崎成典 ,   平井宏樹 ,   木村博 ,   谷藤和弘 ,   今川德郞 ,   田原良一 ,   露口幹彥

ページ範囲:P.69 - P.74


 戦後,医学の進歩は予測しがたいほどめまぐるしく,とくに外科の領域はいちゞるしく拡大して,以前はほとんど不可能と思われた消化器,心,肺,脳などの大手術が,比較的容易におこなわれるようになり,かつ良い結果をえている.それにつれて,一般大衆の疾病に関する常識も,しだいに向上してきたとはいえ,何人たりといえども手術をうけるということにたいする不安,恐怖,または術後の興奮,予後にたいする心配などの精神的動揺は消失するものではない.くわえて精神身体医学が高く評価されている今日,手術に関しておこる患者の精神的動揺,緊張を除くことは,手術そのものにたいしても,またその効果にたいしても,欠くべからざるものであると考える.
 1950年Ludwig & piechがPropanediol誘導体として,2・2-Methyl-n-Propyl-1・3-Propanediol dicarbamate(Miltown)を合成し,Bergerはこれが脳にたいし鎮静効果のあることを発表して以来,Tranquilizer"静める"薬として,主に精神科領域において,とくに不安,緊張状態を中心とする神経症患者に使用し,かなり良好な結果をえ,かつみるべき副作用のないことゝともに新らしい静穏剤,精神安定剤として称揚されている.

ミンタール,オピスタン併用S.C.C.分割投与に依る笑気麻酔調節呼吸

著者: 塩田亮三 ,   藤田俊夫

ページ範囲:P.75 - P.77

 最近胸部外科手術が一般によく行われる様になりそれに応じて気管内麻酔も急速に進歩して来た.然し開胸時の麻酔法としてエーテルを用いて只補助呼吸を行うと言う丈では種々の欠点がある事が判明して来た.即ち患側を上にする側臥位では只さえ換気不充分の肺結核患者などでは,換気不全に依る酸素欠乏,炭酸ガス蓄積は術中,術後の管理に重大な支障を来すものである.叉開胸に依る奇異呼吸,縦隔動揺は,自発呼吸を建前とする従来の麻酔法では防止出来ない事,又横隔膜に接しての手術操作では手術野の動揺が煩わしい等の欠点を挙げ得る.此の様にして胸部外科の麻酔の分野では調節呼吸の必要性が認められる様になつて来た.過換気,呼吸中枢抑制剤の使用或は筋弛緩剤等に依つて先ず患者の自発呼吸を停止させ,次で用手的又は自働呼吸器を行いて完全に呼吸調節を行う事は種々の利点がある.即ち充分な換気が行われ開胸時の奇異呼吸,縦隔動揺も防止され,又横隔膜呼吸を行わないので時に応じて静かな手術野が得られる等である.

アドナ(AC−17)の腓腸筋クリアランスに及ぼす影響について

著者: 神谷喜作 ,   日江井宏

ページ範囲:P.79 - P.82

 従来アドレナリンの酸化体であるアドレノクローム剤には毛細血管の透過性を抑制する作用のあることが知られている.しかしこの作用の実証は主として動物実験の成績が基盤となり1)2),人体についてもLandis氏法にたよるものが多く3),生理的状態に於ける生体局所組織の血流動態に如何なる影響を与えるかを直接的方法により検討したものはない.我々はアドナ(Adrenochrome—Monosemicarbazone)の誘導体であるAC−17を用い,これが放射性ナトリウム(Na24)の腓腸筋クリアランスに及ぼす変化を研究しこの面からその作用を追求したので報告する.

手術中循環障害に対するCarnigenの使用経験

著者: 田中早苗 ,   松田住藏 ,   三村久

ページ範囲:P.85 - P.89

 手術中および術後の循環虚脱にたいして,輸血輸液についでAdrenaline,Ephedrine,Noradrenaline,Neosynephrine(Neo-Synesin Kowa)などの昇圧剤および酸素吸入などがおこなわれる.これらの薬剤は末梢血管を収縮させて血圧を上昇させるものであるが,理想的には末梢血管収縮をきたさず血圧上昇をきたし,循環をよくすることによつて組織の酸素供給を十分にし,しかも効果が長く続く薬剤が要求される.かような要求にもとづいて作られたCarnigenは種々の循環調節障碍にたいして内科方面では広く使用され好結果をえており,多くの文が見られる.即ちE. Lindnerはモルモットの心臓でおこなつた研究で冠動脈血流量の増加と心筋の収縮力の亢進を認めており,ヒスタミン虚脱や失血虚脱に陥つている犬の血圧を上昇させ,ほとんど正常の価に復することを確めている.その作用機構としてLöschはメタ細小動脈の毛細管前小動脈の収縮と小静脈の緊張低下,すなわちO. MüllerのいうSpastischatonischer Symptomenkomplexをのぞき,他方冠状動脈の拡張と血液貯蔵器よりの血液駆出により,心筋の血流不足を除くであろうと考えられるといつている.

Reserpinの外科的応用

著者: 辻秀男 ,   中村泰也 ,   田北宗明

ページ範囲:P.91 - P.95

1.緒言
 1931年Indian1)によつて,R.serpentinaの降圧作用が始めて記載されて以来,その降圧効果が広く臨床的に応用される様になつた.1952年Wil—kinsp2)は,R.serpentinaの天然根からslmipuri—fied alseroxylon fractionとして純粋なalkaloidの分離に成功した.
 本alkaloidであるReserpinは視床下部に於て交感神経中枢を抑制して,自律神経のバランスに変調を来すとされ,卓越せる血圧下降作用の他にtrauquillizerの性格を持つものとされている.

胸部手術及び虫垂切除術におけるIrcodin使用経験

著者: 西岡久治 ,   植田昭幸 ,   別所睦美 ,   真部克巳 ,   新田俊男

ページ範囲:P.97 - P.99

緒言
 外科手術の場合,最も患者に苦痛をあたえるものは術後の疼痛であり,又,我々外科医にとつてもこの疼痛緩解に関しては常に悩まされる問題であり,従来より塩酸モルヒネ等の阿片アルカロイドが使用されているが,之等は種々の副作用を有し,その使用に十分な注意を要するとされている.
 今回藤沢薬品より提供されたIrcodinはButazolidin(0.2gr),Aminopyrin(0.3gr),CodeinPhosphoricum(0.02gr),Medomin(0.3gr)等の薬品を配分した坐薬であり,それ等薬品の協力作用及び相乗作用により,鎮痛効果を強力にするのみならず催眠作用も期待出来る新配合剤としてP. Elsner(1953),H. Mergarten(1954),WalterBirke(1954),Siegfried Fisher(1955),H. Meurer,Ch. Lieblich(1954)等によつて術後の疼痛除去に応用され,いづれもその強力な鎮痛効果のあることが報告されている.

痙性麻痺に対するAtraxinの使用経験

著者: 水町四郞 ,   黑川一 ,   佐藤和男

ページ範囲:P.101 - P.104

はしがき
 最近所謂Transquilizer(精神安定剤)と称する諸種の薬剤が研究され,その内で1950年Wollace研究所に創製されたMeprobamateと称する薬剤が強力な筋弛緩作用を有することが明らかにされた.
 Meprobamateは2.2-Methyl-n.propyl 1.3,propandiol-dicarbomate.と称すべきものであり,その化学構造式はその性状は苦味を有する殆んど無臭の白色結晶性粉末で,融点は104〜106℃で,水には僅かに溶解するが(0.34%20℃),多くの有機溶媒には可溶である.

結晶細菌蛋白質分解酵素の腹膜癒着阻止に及ぼす影響について

著者: 栗田彰三 ,   飯岡薰 ,   鈴木秀夫 ,   中安國裕 ,   島達彌

ページ範囲:P.105 - P.107

 開腹術後の腹膜癒着を阻止しようとする試みは古くはMüller,Lawenstein,Vogel,青山,窪川,高知等の諸氏により,最近では木本及び松葉,VanDyk,Dauidson,佐藤,山川等の諸氏により数多く行われて来たが,未だに確実な方法は見出されていない.
 吾々も数年来,腹膜癒着発生機序並びに,その各段階に於ける癒着阻止方法を検討して来た.その一つとして術後腹腔内に滲出するFibrinを分解せしめれば癒着を或る程度阻止し得るのではないかとの考えにもとずき,2,3の実験を行つて,さきにその結果を発表したが,今回は長瀬産業より結晶細菌蛋白質分解酵素剤"Nagarse"の提供を受け,次の如き実験を行い,この薬剤が癒着阻止に良効果をあげることを知り得たので,こゝに報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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