icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科13巻12号

1958年12月発行

雑誌目次

甲状腺腫の治療—外科的療法の限界について

著者: 丸田公雄 ,   志田寬

ページ範囲:P.1129 - P.1134

甲状腺腫の外科臨床的分類
 甲状腺腫を外科臨床的に取扱う場合,その外科臨床的分類が必要であつて,我々は甲状腺腫を第1表の如く分類している.
 甲状腺中毒症:甲状腺の機能亢進を伴うものを広い意味で甲状腺中毒症と総称し,これ等のうちで眼症状を有するものをバセドウ氏病とし,広義の甲状腺中毒症よりバセドウ氏病を除いたものを狭い意味の甲状腺中毒症とする.

甲状腺の内科的療法の限界

著者: 鳥飼龍生

ページ範囲:P.1135 - P.1139

 近年甲状腺に関する研究は,基礎および臨床の両方面において著しい進歩を示したが,これは主としてI131の出現,抗甲状腺剤の発達およびョードの臨床的微量定量法確立等に基づく.これに伴つて甲状腺疾患の内科的治療法も格段の進歩を示した.以前は甲状腺機能低下症の治療を除けば,内科的に有効な治療法は殆んどなかつたと言つても過言ではない.甲状腺疾患の内科的療法は現在まだ発達の段階にあり,したがつて今その限界を引くことは困難であるが,一応これについての考察を試みることとする.

検査法

腸の外科に必要なる検査法

著者: 飯島登

ページ範囲:P.1141 - P.1146

 腸内容を採取検査に供するには十二指腸ゾンデを嚥下させ深く挿入して行うが,口腔,胃及び膵臓の分泌液,胆汁,腸液の含んだ腸内容として取出されその中の酵素の検査液は複雑であり場合によつては腸内細菌の検査も行われるが,日常の外科臨床では実用的価値は少い,腸の外科に必要なる検査は主として腸の運動機能に関するものであろう.腸の運動亢進は腸雑音の増加,排便回数の増加,運動抵下によつて,麻痺は雑音の減弱,消失,鼓腸,排便又はガス排出の減少停止等の臨床所見より推察されその詳細は更にレ線検査法によつて診断される.腸疾患に於ては糞便検査が重要であることは今更云うまでもない.排便回数,糞便の量,硬度色調,臭気,血液,粘液或いは膿の有無,場合によつては結石その他の異物の有無,虫卵,腫瘍組織片,潜血反応等を検査し臨床所見と併せてその診断に供す可きことは勿論である.殊に虫卵検査は腸吻合術後に関して予めその対策を施す可き根拠を与える.開腹術一般に必要なる肝機能検査,血液検査殊に腸吻合術が密接な関係のある低蛋白症の術前に於ける発見は云うまでもなく,手術方法,手術適応に就いてもこれらの検査は忽にす可からざるところである.

薬剤

外科領域に於ける最近の止血剤,特にマネトールについて

著者: 林久恵 ,   千葉智世 ,   大沢幹夫 ,   田中孝

ページ範囲:P.1149 - P.1152

はじめに
 大量出血及びそれに伴う大量輸血が生体に及ぼす影響に関しては種々の問題が挙げられて居る.先般,輸血学会に於て我々は出血性素因を起する因子について種々の検討を加えて発表した.その結果,出血時間の延長と術後出血量との間に平行関係が認められたが,輸血量と血液検査成績との間には関係が少く,むしろ患者の状態によつて出血性傾向を生じ得る状態,即ち血液の変化よりも血管壁の変化の影響が大であると考えた.そこで我々は,此等の治療の目的を達成する事により逆に出血性素因の本態が何処にあるか,その一断層をとらえ得るのではないかと考えて,先づ止血剤の効果について検討を加えて見たのである.
 この目的で,最近市販されて居る止血剤のうちマネトール及びタコスチプタン,アドナ,アドレゾン,ヘスナ,ナフチオニンを使用し,その結果二,三の問題について昭和32年11日臨床外科医会に於て発表したのであるが,こゝに特にマネトールについて我々が検索した若干の興味ある所見を報告して見たいと思う.

新血圧上昇剤Methoxamineに就いて

著者: 河村謙二 ,   塩田亮三 ,   靑地修 ,   藤田俊夫 ,   谷向光

ページ範囲:P.1153 - P.1159

 Sympathomimetic Amineの一つとして,現に米国では血圧上昇剤として,手術中の血圧下降時或は腰椎麻酔による血圧降下の予防及び治療或はショック治療に頻繁に使用されているMethoxamineを紹介したいと思う.青地,塩田は本剤が米国では,血圧上昇剤としてNeosynephrine,Norepinephrineと共に常備されているを見,その優秀性,速効性を自ら体験して来た.米国では本剤はVasoxylとして発売されているが,我が国でもこれと同一製剤Mexan(日本新薬)が発売されている.
 本剤はMethoxamine Hydrochlorideで,化学的にはβ-Hydroxyβ(2,5-dimethoxyphenyl)isopropylamine HClである.合成品であつて,文献上では1948年以後にあらわれている.

新局麻薬Epirocainの臨床使用経驗

著者: 神谷喜作 ,   福田浩三 ,   鈴木寬 ,   大村喜八郞 ,   重富克美

ページ範囲:P.1161 - P.1163

 局所麻酔薬は1884年に始めて使用されたCocaineに始まり,Procaine,Nupercaine,Metycaine,Pontocaine等を主剤としてその他極めて多数のものが発表せられて来た.その中Procaineは毒性が少く習慣性がなく滅菌が容易で長期保存も可能であるなどの長所があつて広く使用せられて来たが,その欠点として表面麻酔力の弱いこと過敏症のあること,麻酔持続時間の比較的短いこと等が数えられている.その他のものも矢張り長所と同時に短所もあり,これらの欠点を無くした優秀な局後麻酔薬の出現が待たれていた.
 1943年Löfgren等によつて発表せられたLidocaine(Xylocaine)は,従来の如何なる局麻薬よりも安定であること,伝達麻酔力に於ても表面麻酔力に於てもProcaineを上回る作用を有し,且つ作用が迅速で長い理由から広汎に使用せられるに至つた.我々の臨床使用経験よりしてもこのLidocaineは秀れた麻酔剤であるとの印象を持つているが,たゞ毒性がProcaineの約2倍にあたりこの点まだ十分でないと云われている.

肺切除術の麻酔に於ける国産笑気ガスの使用経験

著者: 蜂谷徹 ,   石島恵次

ページ範囲:P.1165 - P.1169

 近年全身麻酔法は長足の進歩をとげてきたが,なかでも気管内麻酔の発達によつて従来困難とされていた開胸術はほとんど危険がなくなり,従つて肺切除術が広く一般に行われるようになつた.
 我々は肺切除術に於て麻酔の導入,維持に主として笑気を使用してきたが,最近国産(昭和電工製品)で高純度のものが得られるようになつたのでこの笑気を使用した麻酔の臨床経験について報告する.

症例

舌咽神経痛の1治験例—附 多発性腸管憩室

著者: 喜多村孝一 ,   朝倉哲彥 ,   丸岡三夫 ,   宮里良康

ページ範囲:P.1171 - P.1176

 舌咽神経痛(glossopharyngeal tic douleureux)は三叉神経痛(trigeminal tic douleureux)にくらべればはるかに稀なものではあるが諸外国においては臨床上一つの独立疾患として治療の対象となることはさほど珍しくない.しかるに本邦においては我々のしる範囲では殆どその臨床治験例をみないようである.
 我々は最近本症の1例を経験し頭蓋内舌咽神経切断術を行つたのでその臨床経過について述べるとともに,本例の経験にもとづき舌咽神経の嚥下運動への関与について一言触れてみたいと思う.
 さらに本例では死後剖検にさいし偶然にも稀有な腸管の多発性憩室が発見されたので併せて報告しようと思う.

両側先天性橈尺骨癒合症の1治験例

著者: 久本欽也 ,   藤井正成

ページ範囲:P.1177 - P.1179

1.緒論
 先天性橈尺骨癒合症は,稀な疾患であつて,橈尺骨は前腕骨中枢部での癒合が過半を占め,稀に中央,又は中枢末梢の両端部に於て,骨性癒合をなす先天性一次性発育抑制奇形である.
 本疾患は,外国に於ては,Lennoireにより1827年,初めて剖検例として報告されて以来,幾多の症例が示されたが,我が国に於ては,1925年故田代教授が本症の1例を報告したのに始まり,我々の調査によると,現在迄合計35例が報告されている.我々は,最近本症の1例を経験し,観血的治療により,前腕の機能を改善せしめ得たので,文献的考察を加え報告する.

孤立性原発性ヘルニア嚢結核の1例

著者: 倉俣英夫

ページ範囲:P.1181 - P.1184

 ヘルニア嚢が内容或は周囲組織と全く無関係に結核性病変に侵されて居るものを,T.Jonnescoは孤立性原発性ヘルニア嚢結核と称んで,腹膜結核の一部分症として見られるヘルニア嚢結核と区別して居り,其の報告例は稀有のものである.最近,私は3歳の幼児に本症を経験したので此処に報告し,諸氏の御参考に供する次第である.

胃切除術後に起れる胃捻転症の1治験例

著者: 天瀨文藏 ,   矢野進

ページ範囲:P.1185 - P.1186

 胃捻転症は稀有な疾患で,本邦に於ては明治44年山村の報告に始まり,最近には自験1例を加え本邦40症例を蒐集せる小坂教授1)に次ぎ,山田及び河田2),清水及び竹中3)等各1例の報告がある.余等は最近胃癌患者の胃切除術後,これに引続き起れる本症の1例を経験したので茲に報告する.

皮膚結石症の2症例

著者: 袴田章二 ,   井阪功

ページ範囲:P.1187 - P.1188

はしがき
 皮膚に於ける結石,即ち石灰沈着については,幾多の報告,発生についての学説があるが,詳細はなお不明である.現在一般に承認されて居るものとしては,皮膚及び皮下組織に生じた良性腫瘍が退行変性によつて壊死を来し,更に石灰化を来したものであると云われて居る.最近かゝる症例の2例を経験したので報告する.

Morquio-Brailsford氏型Chondroosteodystrophyの1例

著者: 吉峰泰夫 ,   大石刀一 ,   末沢登 ,   佐藤義重 ,   中野喜宜

ページ範囲:P.1189 - P.1192

 最近当病院外来において,本邦では比較的稀とされているMorquio-Brailsford氏型Chondro—osteodystrophyの症例を経験したので,その臨床像及びレ線像について報告する.

全国大学教職員名簿一覧(整形外科)

ページ範囲:P.1184 - P.1184

--------------------

「臨床外科」第13巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?