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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科13巻3号

1958年03月発行

雑誌目次

綜説

肺手術前後の栄養

著者: 小出来一博

ページ範囲:P.213 - P.221

〔Ⅰ〕緒言
 肺結核に於ける栄養の重要性については古来民間医学より記載があり,特に脂肪の重要性に就ては古くはHippocratesの牛乳療法がある.近年目覚しい発達を遂げた結核化学療法以前に於ては栄養と安静が肺結核の根本療法で,本邦に於ては昭和7年熊谷教授1)の内科学会宿題報告で内科方面の系統的な基礎的研究が発表され,大森,中村2)3)29),岩鶴5)15)50),勝木5)6)44)氏等により研究が進められてきた.化学療法の進歩した現在に於ても矢張り栄養は重要であるが,化学療法と栄養の関係も論議6)7)が進められ,又外科療法も化学療法の進歩に従い虚脱療法より直達療法にと侵襲は増大し,手術適応も拡大してきた.これに伴う肺手術前後の栄養の重要性についても異論はないが,この方面の系統的な研究ことに経口栄養の研究は少い8)9).第2次大戦後広汎に亘る物質代謝の解明により,病態栄養学は急速な進歩を遂げてきたが,外科領域の栄養問題にも俺幾多の問題点があり,その解決により更に適応の拡大,手術の安全性の確立,合併症の減少及び順調な経過を期待出来る.われわれは福田保教授の御指導のもとに従来習慣的でややもすると消極的に流れ易い経口栄養を中心として外科領域に於ける栄養の研究を系統的に行つているが10)11)12),こゝでは肺腫瘍を含む肺手術前後の栄養についてわれわれの成績を中心にして問題点を総括的に論議してみたいと思う.

老人の麻酔—循環系及び副腎皮質機能を中心としての考察

著者: 西邑信男 ,   山城幸子

ページ範囲:P.223 - P.229

 我々は東京逓信病院麻酔科で行われた60歳以上の老人の手術時に於ける麻酔管理について観察した.各例に於いて出来得るかぎりの術前に胸部レントゲン写真.心電図をとり,麻酔中及び麻酔後にわたり,好酸球数,心電図,ヘマトクリット,血中Na及びKの定量,血糖量の測定をおこなつた.
 我々は老人に於ける麻酔管理上もつとも大切なことは1)呼吸管理,2)循環系管理,3)水分,電解質代謝管理及び,4)内分泌系の管理にあると考え,それぞれに対する処置を行つた.

胃切除術後の通過障碍について

著者: 淸水堅次郞 ,   大內十悟

ページ範囲:P.231 - P.237

緒言
 胃切除術を施行するに当り,術者がその適応,技術等において万全を期し,Billroth Ⅰ法,Ⅱ法(以下BⅠ,BⅡと略す)の何れの術式を選んで行つた場合にも術後時に不慮の通過障碍を見ることがある.
 昭和23年2月当教室開講より32年2月までの満9カ年間に施行した胃切除総数は305例で,その病別,術式別による分類を表示すれば第1表の如くである.内術後通過障碍症状が著明に出現し,再手術を施行した症例は15例で4.9%に相当する.而してこれ等症例のうち腸内嵌頓症4例については既に第15回日本臨床外科医会総会において発表したが,こゝには其の後の通過障碍症例を加え文献的並びに統計的観察を試み,その対策等についていささか検討を加えて見たいと思う.

軽度熱傷の生体に及ぼす影響

著者: 飯塚積 ,   平沢進武 ,   早川和夫 ,   大塚恒治 ,   岡田義春 ,   山中昭男 ,   宇治恒明 ,   本多東俊

ページ範囲:P.238 - P.244

 熱傷患者における生体の反応については既に多くの研究発表があるが,これらは主として比較的重症例を対象としているので,われわれは受傷範囲20%以下の熱傷患者を中心として,その生体に与える影響についていさゝか系統的に諸検査を施行した.よつてこゝに報告する.

術技

直腸癌根治手術—特に肛門括約筋保存に就いて

著者: 鋤柄秀一

ページ範囲:P.245 - P.256

1.緒 言
 凡ての手術法式は根治性を第一主義とするのは勿論であるが其の術式は安全性と簡易化が合理化されなければならない.特に癌性疾患に於いて然り.
 故に標準術式と云うからしには,一般外科医界に安全に普遍化され得る可能性がなければならない.更に術後後貽症を残さない事に於いて始めて理想的手術方法と云う事が出来る.

統計

胃癌穿孔について

著者: 野崎成典 ,   益満義躬 ,   森山元 ,   福田睦

ページ範囲:P.255 - P.260

緒言
 われわれが日常しばしば相遇する胃,十二指腸潰瘍の穿孔に比して,胃癌のそれはきわめて稀れである.胃癌穿孔については,1824年Laennecがはじめて記載し,Thiede,Jaisson,Hanke,Hornらの報告,ならびにChavannaz u.Radioe—vitch,Airdらの統計的観察があるが,わが国においては,大正5年斉藤の報告以来,徳毛,服部,宮崎,君島,清水,宮地,太田,村田らの報告があり,永富,岩月,中島,佐々木らの統計的観察がある.われわれは最近その2例を経験したので大要を報告し,調査しえた63例の本邦記載例を含めて,いさゝか統計的に考察を試みた.

当教室に於ける乳腺腫瘍に関する2,3の知見

著者: 新津勝宏 ,   金野宏太郞 ,   村井英夫

ページ範囲:P.261 - P.268

1.緒言
 乳癌は年々増加する傾向にある様で,此れは,最近の社会生活が内分泌学的領域,或いは,産婦人科学的領域に種々の変調を与える事が多くなつて来た故であろうとも推定される.又,乳癌は表在性癌であるにもかゝわらず,その初期には良性腫瘍との鑑別は,全く困難であり,試験切片診査以外には適確な診断法はない.
 我々のとりあつかつた乳癌と乳腺症の症例について,統計面と病理組織像について検討し,いさゝかの知見を得,又,早期診断の一助としてアイソトープに依る診断法を実施し,多少とも成果を挙げ得たので報告する.

薬剤

マネトールの使用経験

著者: 大塚哲也 ,   香川徹 ,   中脇正美 ,   林瑞庭 ,   山田栄

ページ範囲:P.269 - P.271

1.緒言
 手術時の止血は最も大切な処置の一つであるが,此の目的には器械的止血法や,血液凝固促進物質の投与が試みられている.後者に属する止血剤の或るものは血管を収縮し,又他のものは損傷箇所の血栓形成を促進する作用を有している.
 マネトールはこの両者を兼ねた臓器製剤で,幼弱屠殺獣の脊髄から作製されたもので,前述の血管収縮刺戟を与えると共に,他方血液凝塊中のフィブリンを著しく増加させるので,比較的大きな血管も閉塞される.又血小板の増加も認められ,出血時間は短縮されるが,凝固時間は変化を示さないとも云われている.

整形外科領域に於けるAlinamin加Procainの局注療法

著者: 中村登喜雄 ,   佐藤悌二 ,   油川啓一

ページ範囲:P.273 - P.275

まえがき
 臨床上,我々は所謂腰背痛症及びその他の疼痛を訴えて来院する患者に接することが非常に多い,これらの中には諸富教授の提称された筋・筋膜性腰背痛症を始めとし脊椎過敏症,変形性脊椎症,根性坐骨神経痛,陳旧性脊椎圧迫骨折,五十肩等の諸種の疾患が認められる.
 その療法も又夫々の原因に応じて適切に行うべきであることは論を俟たないところであるが,時としてその原因の不明なもの,或は根本的な対策が講じられていない様なものには,対症療法が行われている.これらの疼痛緩解に対しての対症療法は古くより理学的・薬物的に数多くの方法によつて行われて来て居り,その中薬物療法は全身的,局所的に非常に多くの薬種が試用され,これをあげれば枚挙にいとまがない程である.一般に局所的には麻酔剤及び消炎剤が用いられ,更に現在ではこの両者の混合による多種多様の薬品が使用されている.即ち0.5%ProcainとV. B1の混合による局所療法,中教授のビタカイン療法等がその1例である.

整形外科外来に於けるFinalgon軟膏(F81)の使用経験

著者: 伊丹康人 ,   山中英夫 ,   原田雅弘 ,   鈴木忠次郞

ページ範囲:P.276 - P.279

緒言
 整形外科外来に於ては変形性脊椎症,同関節症,リウマチ性疾患その他疼痛を主訴として来院する疾患が多い.これらに対し各種の薬物療法を始めとして整形外科的理学療法に至るまで各種の治療が行われているが,塗布剤に関しては未だ効果的なものがなかつた.今回,田辺製薬の提供によりFinalgon軟膏(F81)を使用する機会を得,可成りの効果を認めたのでこゝに報告する.Finalgon軟膏とは皮膚温感器官を刺戟するNo—nylic acid vanillylamide 0.4%及び皮膚中に滲透し血管を拡張させるNicotinic acid—β—but—oxyethyl ester 2.5%の混合物で悪臭なく,被服を汚染する事もない軟膏として調製されたものである.

症例

イレウスを疑わせた巨大なる大網腫瘤の1例

著者: 足立敬二 ,   林亨

ページ範囲:P.281 - P.282

 大網の原発性腫瘍としては皮様嚢胞,血管腫,淋巴管腫,漿液性又は粘液嚢胞,血液嚢胞,包虫嚢胞等があるが,炎症性腫瘤としては,結核,徽毒,アクチノミコーゼ等の特殊炎症によるものは少く,急性,慢性虫垂炎,胆嚢炎,大腸炎等腹腔内臓器の炎症時に網膜に炎症性腫瘤を作る場合,ヘルニア,虫垂炎等の手術後結紮糸を中心として炎症性網膜腫瘤を生ずる場合が多いとされている.我々は虫垂切除後に発生した巨大な大網の炎症性腫瘤の1例を経験したのでこゝに報告する.

先天性空腸閉鎖症の1例

著者: 伊藤佐喜男 ,   安藤不二夫 ,   佐々木郁次 ,   森田俊二 ,   浅野祥三

ページ範囲:P.283 - P.286

緒言
 本症は小児消化器系畸型の中でも極く稀な先天異常であり,而も非常に死亡率の高い疾患とされていたが,最近進歩した診断法及び優れた手術法に依り死亡率は減少している.私達は未熟児で本症を併発した患者に胃腸吻合術を施行したが,術後不幸にも嚥下性肺炎を併発して遂に死亡した1症例を経験したのでこゝに報告する.

化膿性尿膜管嚢腫の一治験例

著者: 一本杉秀雄 ,   足立正幸 ,   菅幸哉

ページ範囲:P.287 - P.289

はしがき
 尿膜管に基因する疾患は比較的稀とされているが,吾々は最近尿膜管嚢腫の化膿した症例に手術を行い全治せしめた1例を経験したので報告する.

胆嚢捻転症の1例

著者: 佐藤淳寿

ページ範囲:P.290 - P.291

緒言
 胆嚢捻転症は極めて稀有な疾患で,本邦では,昭和9年,横山氏がその第1例を報告してから未だ,12例を数えるにすぎない.私もその1例を経験したので追加報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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