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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科13巻6号

1958年06月発行

雑誌目次

綜説

日本に於ける肺切除の合併症

著者: 高橋雅俊 ,   永井純義 ,   久米公夫 ,   上野茂之 ,   村田年男 ,   桝岡勇雄 ,   最上修二

ページ範囲:P.477 - P.487

緒言
 肺結核に於ける肺切除療法は戦後の麻酔学の導入と化学療法の進歩によつて安全性が高まると共に次第に増加して今日に至つている.
 然しその当初に於いては,これ等の知識に乏しく,且つ適応の判定,手術手技に関しても不充分な点が多く,その為に合併症の頻度が高かつたが,最近では手術に対して一貫した方針のもとに治療が行われる様になり合併症も著しく減少したが,尚お或る程度までの合併症を防止することが出来ない現況である.これはひとり我国のみの現象ではなく,諸外国でも同様であるが,我々外科医の立場からその原因を究明し,合併症を根絶することが今後の肺結核外科にたづさわるものに課せられた重要な任務であろう.先ずこの問題を調査するに当つて,胸部外科を行つている全国の各大学並びに療養所97施設よりアンケートを求め,貴重な資料を提供して戴くことが出来たので,本邦に於ける肺切除の合併症の実態を伺うことが出来た.従つてその対策を樹てる為に,皆様方の資料を茲に報事告する.尚細部の問題に就いては当外科教室並びに関係病院で取扱つた1000例を対照として論述する.

当教室における頸肩腕症候群について

著者: 服部奬 ,   福田日出男 ,   霜田慶秋

ページ範囲:P.489 - P.494

緒言
 整形外科領域に於ては,一般に頸,肩を中心とした疼痛を訴えて来院する患者を屡々みるが,これらのなかには,その適確な病変が判然としないまゝ,単に神経痛あるいはリウマチとして漠然と看過されている例がかなり存在する様で,これまで特にこの方面に新しい知見が見られず,今後開拓しなければならない分野と考えられる.
 そして頸部は発生学的にも,腰仙部と同様に構築的弱点といわれる不熟な移行状態の部にあたり,更に巨大な頭部をにない,常にあらゆる運動を行うため,この繊紬な頸部に集約される動静力学的影響の存在を考えれば,この部にあらわれる症状が,腰仙部のそれに比して少いことが不思議なくらいである.

外科領域に於ける生体内総塩基の変動に関する研究—第2報 臨床並に実験的研究

著者: 內田善敬

ページ範囲:P.495 - P.508

緒 言
 外科領域に於ける生体内電解質の変動に関しては近年,数多くの業績1)−20)が報告されているが,外科的侵襲前,中,後の刻々の詳細な変動を連続的に追求したものは見当らないし,それらの様相をひつくるめて簡便迅速に理解さす総塩基の変動に就いての詳細な報告は勿論見られない.又,酸塩基平衡に関しても血清重炭酸塩を直接測定する事による同様な変動の詳細な報告は見られない.
 第一報23)に述べた如く,血清総塩基は水分,電解質代謝の指標として重要なものであり,血清重炭酸塩は酸塩基平衡状態を知る上に必須ものであるから,術前状態の改善,麻酔及び手術の管理,術後の治療を行うに当り,両者の刻々の変動を知る事は適切な治療対策を立てる上に必須である。

術後上皮小体機能低下症

著者: 野口秋人 ,   福島郁子 ,   阿孫真博 ,   渡辺薰 ,   大原梧樓

ページ範囲:P.509 - P.515

 術後上皮小体機能低下症は甲状腺外科における合併症で,治療の困難さと患者に与える心身の苦痛の為に最も嫌なものの一つであるが,手術技術の発達にも拘らず,抗甲状腺剤使用による癒着等で手術操作が複雑となつて来ており,この合併症の発生率も増加の傾向にあると云われている.
 この分野は近年めざましい発展をとげている甲状腺研究に比べて,その病態生理は未開拓のまゝであり,解明されねばならぬ多くの問題を持つている.吾々は野口病院で発生せるテタニー患者と甲状腺手術前後の上皮小体機能検査等を実施し,術後上皮小体機能異常について検討を加えてみた.

薬剤

新排泄性尿路造影剤ハイペツク(Hypaque)使用経験

著者: 高橋博元 ,   渡辺哲男 ,   福地彊

ページ範囲:P.516 - P.524

緒 言
 排泄性尿路撮影はBraasch2)等及びMalū10)によれば1923年Mayo ClinicのRowntree等が20ccの15%ヨードナトリウムを静脈注射,及び経口投与により成功したのが始めだと言われている.次いで1924年 Rosenstein とLichtenberg,又同年Volkmaann,1927年Lenardouzzi及びPeccoもこの方法により尿路の描出を追試した.然処,本法によつては腎孟の描出が不明瞭で判読に不便であり,大量の沃度により副作用を伴うこと多く,実用に適せぬ事が明らかとなつた.
 1928年Rosenoは沃度ナトリウムを尿素と結合せしめ満足すべき排泄性尿路撮影を行い,本造影剤をPyelognostと命名したが,本剤は実用に供するには毒性の強すぎることが明らかになつた.

各種血管造影剤の使用経験—特にUrografinによる心肺血管造影に就いて

著者: 滝原哲一 ,   藤原等 ,   三木猪太郞 ,   原田邦彥 ,   高橋淳二

ページ範囲:P.525 - P.534

まえがき
 近時,胸部外科手術の進展に伴い,血管心臓造影法が益々繁用される機運になつているが,我々も亦,開胸手術予定の者に対し主として肺血管の態度を検索する目的で,各種の血管造影剤を用いて,血管造影法を施行した.血管心臓造影法施行の初期には,副作用の報告例が比較的多いが,此等は実施方法の差異によるというよりも寧ろ,注入された造影剤の性状によるものと考えられて居り,現在では,造影剤研究の進歩の結果,造影能もよく而も副作用の僅微な造影剤を使用して,全身麻酔等を使用しないで,造影剤の大量急速注入を行い得るようになつた.
 然し,現在でも有機沃度造影剤は,高濃度で而も明快な造影像を得るためには大量を急速に注入する必要があるために,不快な副作用を惹起する事がある.我々もこの点に徴して血管造影法実施に際して発現する副作用中2,3の事項について検索を行つた.

イルガピリンの臨床治験

著者: 円山一郞

ページ範囲:P.537 - P.539

 イルガピリンが神経痛,リウマチ性疾患等疼痛を主訴とする疾患に著効を奏することは今までに内外より多数に報告されており,又私も先きにその使用方法,治験例,副作用等につき再三学会並びに誌上に於て発表してきたが,今回は昭和29年11月下旬より昭和32年12月に到る3ヵ年間に亘る総使用症例につき検討を加えたいと思う.

メルカゾールによる甲状腺機能亢進症の治療効果に就いて

著者: 太中弘 ,   望月昭 ,   高橋常和 ,   小松悟

ページ範囲:P.541 - P.549

1.はしがき
 従来吾が国では甲状腺機能亢進症,特にバセドー氏病の術前処置或いは保存的療法として,主にThiouracil(邦製メチオジール)とルゴール液が用いられていた.しかるに1947年Astwoodによつて,さらに強力な抗甲状腺剤であるイミダゾール誘導体のタパゾール(Tapazole)が発見され,その効果はThiouracilに比べて十数倍であると言われている.
 最近吾が国でも同じ製剤が中外製薬からメルカゾールとして発売されるようになり,吾々も会社の好意でメルカゾールの提供を受け,機能亢進症特にバセドウ氏病患者に対して主に手術前処置として用うる機会を得た.メルカゾールの構造式は
 (図省略)
で,メチオジールとは全然異なつたイミダゾール誘導体である,この薬剤が如何なる機転で効を奏するかは今のところ不明であるが,吾々が1年有余にわたつて使用した経験では,認む可き効果があつたので,従来の諸家の報告と比較して考え合わせ,諸賢の御批判を仰ぐ意味で報告する次第である.

症例

尿道直腸瘻を伴える鎖肛

著者: 砂田輝武 ,   佐藤訓三 ,   平尾喜茂

ページ範囲:P.551 - P.556

緒言
 先天性鎖肛は臨床上なかり屡々遭遇する畸形であつて,単に肛門が外部に開口しないということだけのものはあえてまれとするに足らないが,内瘻特に尿道直腸瘻を伴う鎖肛は稀有なものである.Anders12)によれば鎖肛の頻度は6,000〜15,000人に1人の割であり,同氏の集計した鎖肛100例中瘻を有するものは45%であるが,そのうち尿道直腸瘻を有するものは45%にすぎなかつた.
 最近当教室において尿道直腸瘻を伴える鎖肛の1例に遭遇し,手術により治癒せしめたのでこゝに報告し,併せていさゝか文献的考察を加えたいと思う.

特発性総胆管嚢腫に就いて

著者: 長野政雄 ,   大塚敏文 ,   友野忠之

ページ範囲:P.557 - P.564

 特発性総胆管拡張症(特発性総胆管嚢腫)Idiopathische Choledochuszyste.congenital cysticdilatation of the common bile duct,は1852年Douglassによつて始めて報告された疾患である.Mayo clinicに於ける1926年以前の17,381例の胆道疾患で手術を受けた患者中本疾患は2例であり10),Presbyterian Hospital(New York)の757,000人の患者の中では唯の2例にすぎず15),Whittington Hospital(London England)では26,520人の患者の中わずか1例であると報告されている11).これら報告の示すごとく稀有なる疾患である.然しながら外科学の進歩発達につれて,その報告は次第に増加し現在では300例を算している.我が教室に於ては胆道疾患手術378例中本疾患6例を経験しており,新潟大学外科教室に於ては226例の胆道系疾患手術中2例に本症を認めている32).之等は本邦に於ける他の報告者も述べている如く欧米に比し我が国に本疾患の比較的多い事実を物語つている.最近我々もその1例を経験したので報告すると共に,文献的考察を加えた.

胎生性腎混合腫瘍の1例

著者: 長野政雄 ,   石田茂年 ,   小泉俊郞 ,   大塚敏文

ページ範囲:P.566 - P.571

緒 言
 胎生性腎混合腫瘍(Wilm's Tumor)は小児で腹部腫瘤の認められる際には先ず考えねばならない疾患の1つである.1872年Eberth1)が初めてその1例をMyoma Sarcomatodes renumと命名報告したのに創まり1894年Birch Hirschfeld2),1899年Wilm's3)等により詳細な発表が行われ欧米は勿論我が国に於ても其の報告数が年々増加している.我が国に於ても明治32年中山16)が4年5ヵ月女児の両腎に発生した腫瘍を腎臓胎生腫として発表して以来現在迄に既に177例に達している.近来外科学の進歩発達につれてその治療成績も向上を示しているが,尚予後の不良な疾患である事は事実であり今後の研究が望まれている.松倉外科教室に於ても先に谷口17)が5年10ヵ月男児の本症例の1例を報告しているが,最近我々も1年6ヵ月の男児の右腎に発生した1例を経験したので,茲に報告する.

籠球中衝突による腎破裂

著者: 渋田八郞 ,   新島昭二 ,   高橋正二郞 ,   白取良助

ページ範囲:P.572 - P.573

まえがき
 近時吾国のスポーツの隆昌は,各競技に複雑化スピードを増し,或程度の危険を伴い,従つて大なり小なり傷害を来す事もある.而してスポーツ外傷と言えば,捻挫,打撲,骨折,或は腱断裂と限定してよい位であるが,吾々は最近高校生が,バスケットボール練習中,選手同志が衝突し,内臓損傷の疑で,開腹手術の結果,右腎破裂を知つた.此のスポーツ外傷が発生機転上極めて稀有な症例と考え報告する.

Honvan(Diethyl dioxy stilben diphosphate)に依る前立腺癌の治療経験

著者: 原正義 ,   辻村明

ページ範囲:P.574 - P.577

I.緒 言
 前立腺癌は外国では男子の癌の中で最高率を競う重大な疾患と考えられ剖検例から50歳以上の男子の15〜20%という大きな発生頻度を挙げておるが,本邦に於てもこれ程ではないにしても老人性疾患の中では前立腺肥大症と共に重要な疾患として取扱われていることに異論はない様である.ところがこの前立腺癌の治療に関しては化学療法の発達した今日に於ても他の臓器の悪性腫瘍と同様早期発見と根治手術が根本原則であることに変りはないのであるが,実際問題としては私共臨床家の日常経験するものゝうちにはこの根治手術非適応例が非常に多いのであつて,この根治手術非適応症例に対してはHuggins & Hodges等の創めた抗男性ホルモン療法が賞用せられて来たのであり,又その他にも幾多の補助的療法も考案されてはいるが他の臓器の癌に於けると同様,私共臨床家の満足し得るものは甚だ少いのである.
 然るに最近ドイツに於てはH. Druckrey,P. Danneberg,D. Schmähl等によつて創められたホンバン療法が行われて目覚ましい効果がおさめられているが,私共も最近同療法を試みこれがまことに劃企的な療法であることを経験したので,こゝに報告する次第である.

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第84回北陸外科集談会(32.9.30)

ページ範囲:P.578 - P.579

盲腸における単純性潰瘍の1例
農協滑川病院外科
鶴井源太郎
43歳,男,会社員
 盲腸周囲膿瘍の臨床診断のもとに開腹した所盲腸自身が巨大なる円形潰瘍(3×5cm)を呈し,その底に更に大豆大から小豆大の小潰瘍が4コ存在していた.組織学的には単純性炎症性潰瘍で盲腸壁は全般に肥厚して結締織の増殖があり粘膜下層には炎症性浮腫が著るしく白血球が瀰漫性に浸潤し潰瘍底に近い小動脈には閉鎖性の動脈内膜炎を伴つていた.特異性炎症像及腫瘍の所見はなかつた.
 

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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