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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科13巻8号

1958年08月発行

雑誌目次

綜説

肺結核外科療法の限界

著者: 西純雄 ,   高下良正

ページ範囲:P.745 - P.752

まえがき
 劃期的な抗結核剤であるStreptomycinが発見されて以来,相次ぐ化学療法の出現によつて肺結核の治療は昔日と全く異つた様相を呈してきた.外科療法においても最近10年間の進歩はまことに目覚しいものがある.即ち胸廓成形術その他の虚脱療法が主流であつた戦前の肺結核外科療法も戦後肺切除が導入されてから麻酔の進歩,優秀な抗生物質の出現,術技,術前後処置の改良などによつて治療方式は漸次変遷してきた.今日では肺結核外科療法のうちで肺切除がもつとも優れていることはその成績よりみても誰も疑わないところであろう.しかし最近われわれが外来で診る患者では肺切除が容易で安全に施行しうる症例は数年前に比して減少してきている.切除を行うにはあまり香しくない条件をそなえているものや,切除はどうもできそうにない条件を有する症例がかなりみられる.その原因についてはいろいろあるが,第1には軽症例が化学療法の適格な使用によつて改善率がたかくなつてきたことと,一般病院にても結核を收容するベット数はかなり増床され,そこに一定の設備と胸部外科の経験を有する医師がおれば肺切除のより適応の場合には処置されるようになつたことである.

肺結核の内科的治療の限界

著者: 馬場治賢 ,   田島洋

ページ範囲:P.753 - P.774

 馬場1)は前に「気胸の限界」と題して述べたことがあるので,こゝでは主として化学療法の効果の限界に就いて述べる.又「内科医は結核患者をいつ外科に廻すべきか2)」という題で述べた事もあるので一部重復するかもしれないが御了承戴きたい.
 扨て治療の限界という言葉には2つの解釈のしかたがある.

小腸絞扼性イレウス時レ線像の検討

著者: 西島早見 ,   寺內悅夫

ページ範囲:P.775 - P.781

第1章 緒言
 1911年Schwarzがイレウス時の腹部レ線所見に関してガス及び液性内容による腸管拡張像を認めるこをと発表し,次いでKloiberはイレウス時の腸管内ガス集積像と液面水平線像に着目してレ線撮影法の診断的価値を強調した.以来イレウス時の腹部単純撮影像の重要性は広く知られているが,イレウスが閉鎖性なりや絞扼性なりやの決定は必ずしも容易ではない.
 我が教室に於ては過去約3カ年間に13例の小腸絞扼性イレウス(腸重積を除く)を経験し併せて実験的観察をも行い,本症に於ける腹部レ線像に就て再検討し,興味ある成績を得たので報告する.

術技

肝と腸との吻合について

著者: 葛西森夫 ,   佐藤吉美 ,   鈴木宗三 ,   原和久 ,   高村善郞

ページ範囲:P.783 - P.790

1.緒  言
 日常我々外科医が時折遭遇し,厄介に感ずる問題に肝外胆道系の狭窄,乃至閉塞症がある.この問題に関し教室の鈴木1)等は先に胆道再建術に就き発表したが今回は更に胆嚢或は肝外胆管を使用し得ない場合の処置を臨床経験,並に動物実験を基として,2,3検討して見たいと思う.

検査法

肝臓並に胆道外科に必要な検査法(其の1)

著者: 飯島登

ページ範囲:P.791 - P.796

 肝臓は門脈系と空静脈系との中間に位し,生体に於ける中間代謝の中心とされる.そして各種主要物質の貯臓,分泌,排泄,解毒機能を営み且つ一種の内分泌臓器でもある.肝臓のこのような複雑多岐に亘る機能を理解することは臨床家にとつて重要であることは云うまでもない.ショック,外科侵襲と云つた問題に常に直面している外科臨床家にとつて肝臓機能検査は疾病の診断のみに止まらず手術の適応,手術術式の選択,術後の治療法に関して更に重大な意義を有するものと考えねばならない.今外科臨床に於て特に必要と考えられる検査法をその細部は専門書に譲りその主要点を記載する.

統計

津田外科教室における中毒性甲状腺腫の術後成績に就いて

著者: 河合経三 ,   山口益一 ,   森本浩平

ページ範囲:P.798 - P.804

緒 言
 中毒性甲状腺腫は,本邦では欧米に比較すると少いといわれるが,日常,比較的しばし遭遇する重要な外科的疾患の1つである.本症の外科的治療法は,Plummerによる古典的な,しかし現在なお有効に利用されているルゴール術前投与による前処置の導入によつて一段と進歩し,内科的療法は軽症のものに限られ,専ら外科的疾患とされてきた.しかしその後,種々の強力な抗甲状腺剤の出現により,また,最近の放射性ヨードの利用によつて内科的療法が再び擡頭し始めたが,いまだこれらによる遠隔成績も明らかでなく,目下の我が国の現況では,手術的療法を優先すべきと思われる.本症の外科的療法は,日常何れの病院でも行われているにかゝわらず,その手術成績に関する詳細な報告は少ない.今回,我々は,津田外科教室において扱つた202例の中毒性甲状腺腫について,種々な観点より統計的観察を行つたので報告する.

薬剤

前麻酔剤としてのヘキサミッドの使用経験

著者: 恩地裕 ,   荒木竜一 ,   岩井浅二

ページ範囲:P.806 - P.812

まえおき
 術前の患者の全身状態を生理的状態に維持すると同時に,患者の精神的な術前準備をも行い,手術に対する不安感,恐怖感を最少限にくい止める事が出来たならば,前麻酔の目的は達し得たものと考えて良い.即ち,適切なる前麻酔をうけている患者は,手術場へ来た時には,肉体的にも精神的にも手術をうけるに最適の状態になつており,かゝる患者は,麻酔の導入も又極めて平滑に行われるわけである.
 現在まで,モルヒネは前麻酔として欠くことの出来ないものゝ如く用いられて来たが,最近では,その使用に疑問が持たれて来た.モルヒネを用いておくと,呼吸中枢の炭酸ガス感受性が低下して,麻酔中炭酸ガス蓄積が起つても,之に対して呼吸反応が起らない事が,Eckenhoff, Helrick等により実験的に明かにされた.更にGreishei—merは,モルヒネを用いておくと,手術中血圧低下の起りやすい事を示している.

症例

成人に於ける腸重積症の7例

著者: 吉井信夫

ページ範囲:P.814 - P.816

 腸重積症の大部分は小児殊に乳幼児に多いといわれるが,昭和21年1月より昭和30年12月に至る過去10年間に本院に入院した患者中15歳以上の腸重積症の7例を経験したので之を報告する.

虫垂Myxoglobulosisによる回盲部腸重積症例

著者: 杉本雄三 ,   藤野昭三

ページ範囲:P.818 - P.819

 虫垂粘液嚢腫の一型と考えられるものに,粘液球を内容とする所謂虫垂Myxoglobulosisがある.本症は1909年Cagnettoの報告を以て嚆矢とされ,次でHansemannによって命名され,その後本邦に於ても約20例の症例が記載されている.最近我々はこの虫垂Myxoglobulosisを起点として起つた回盲部腸重積症の一例を経験したので報告する.

脾臓海綿状血管腫の自然破裂に就いて

著者: 佐藤進 ,   高橋收 ,   佐藤宮彥

ページ範囲:P.820 - P.823

緒  言
 脾臓の海綿状血管腫は文献上僅かに35例1)2)報告されているのみである.その中,外傷その他何等認むべき誘因もなしに自然破裂をした例は僅かに3例3)4)5)に過ぎない.
 我々は最近,この極めて稀有なる海綿状血管腫の自然破裂せる症例に遭遇し,全治せしめたので該症例に就いて報告し,考察を加えて見る.尚,本症例は本邦に於ける第1例であると思われる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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