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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻1号

1959年01月発行

雑誌目次

綜説

冠肺動脈瘻症に就いて

著者: 榊原仟 ,   金栄沢

ページ範囲:P.5 - P.14

Ⅰ.緒言
 冠動脈と冠静脈との間に交通があるいわゆる冠動脈瘻は症例によつては解剖的変化が簡単な割に生体に及ぼす影響が大きく,しかも比較的簡単な手術によつて著効を得ることがあるという.外科的疾患としては甚だ興味のあるものの一つである.
 本症は比較的稀なものであるだけに,その発見,従つて診断に一応の考慮を払つておくことは必要なことであると思う.

輸血腎—ことにその治療について

著者: 渋沢喜守雄 ,   丹後淳平 ,   西沢康男 ,   芦田敬治 ,   河野通弘 ,   西村菊夫 ,   真鍋圭一 ,   松浦一 ,   林久博 ,   志村保雄

ページ範囲:P.15 - P.28

いとぐち
 輸血腎transfusion kidney(Novasquez1)1940)というのは,輸血後にみられる特殊な急性腎不全の状態であろう.尿量減少・尿中色素排泄・血圧上昇および高窒素血症などを主徴とするが,これらの症状発現の基礎となるものは溶血現象である.この不適合輸血による溶血の原因は,今日では主として非定型抗体の作用によるものと解されている.不適合輸血の歴史を回顧すると,現在の考え方に到達するまでには種々の曲折を経ている.
 ABO式血液型分類法はLandsteinerによつて1900年に確立されたが,16世紀の中頃からすでに輸血が行われていたという.当時は血液型の考慮がなされず,そのため,種々の副作用があり,輸血後暗黒色の尿を排泄し,乏尿・無尿がおこり,ネフローゼ様症状から,すゝんでは尿毒症で死亡した例のあることがしられている.

急性肺水腫と神経性・体液性因子との関連性に就いて

著者: 脇坂順一 ,   矢野博道 ,   中島敏男 ,   足立正幸 ,   菅幸哉 ,   水之江槐郞 ,   堀川喜登

ページ範囲:P.31 - P.40

Ⅰ.緒言
 急性肺水腫の発生機転に関しては,種々の学説があり,未だ確たる定説をみないが,要するに肺毛細管壁よりの濾出の亢進と,濾出液の再吸收の障害とが最終的に重大な役割を演じている事は明白である.而して,濾出を左右する局所因子としては,肺毛細管域に於ける血行・淋巴行動態,ガス動態(Anoxia,Hypercapnea),血液酸塩基(pH)の不均衡,膠質滲透圧,血漿電解質(滲透圧)及び神経・内分泌性不均衡等を挙げる事ができる.
 我々はこゝ数年来,術後急性肺水腫の発生病理及び病態生理の究明に意を注いで来たのであるが,未だ不明の点が少なくない.今回は急性肺水腫の発生と神経性・体液性因子との関連性に就いての実験成績を中心に報告し,諸賢の御参考に供したいと思う.

縱隔腫瘍の診断について

著者: 武田義章 ,   中島邦也 ,   山中豊

ページ範囲:P.43 - P.56

§緒言
 胸腔内に於て腹側は胸骨背面,背側は脊椎腹面の間,左右は肺臓に囲まれた極めて不整形な解剖学的な間隙がある.この間隙の外側は肋膜に依つて境されていて,心臓,大動脈起始部,気管,食道,胸腺,淋巴腺等の本来の臓器組織があるが,此等臓器組織の異常増殖或いは先天性乃至後天性畸型等に依つて腫瘤形成が起る事がある.此等腫瘤は縦隔腫瘍の名を以つて綜括されている.
 縦隔内にある器官或いは組織は複雑なために,腫瘍の性状は極めて多種多型である.即ち頭方には甲状腺,胸腺等の肥大或いは異型増殖により縦隔腫瘍を形成する.前胸壁直下には胸腺あり淋巴管がある.背面には多数の神経要素があり,中央には心嚢,大血管,気管支等があつて夫々縦隔腫瘍の発生母地となつている.斯の如く,縦隔には生命運行に最も重要な機能を営む此れ等臓器自身に腫瘍発生した場合は勿論のこと,その隣接臓器組織に腫瘍が発生した場合には重大な障碍が惹起される.腫瘍が発生する幸か不幸か縦隔腫瘍は発生速度必ずしも速かでないために,重要臓器組織に与える障碍は極めて緩除で,代償作用によつて機能障碍は屡々打ち消されている.この事は臨床症状発現を遅延せしめ,引いては診断治療をも亦遅延せしめる.

術技

乳児横隔膜裂孔ヘルニア開胸術式の経験

著者: 田村啓太 ,   堀出礼二 ,   吉栖正之

ページ範囲:P.57 - P.60

 欧米では多くの横隔膜ヘルニア症例がみられるに反し,わが国では非常に症例が少なく,その手術例は更に少ない.その理由は判然としないがわが国では患者に対する組織立つた系統的検査がそれ程普及されていないこと,又内科医と外科医相互間の知識の交流とか1つの治療目的に協力し合う態度にも欠点があるためではないかと愚考している.
 我々は最近生後1歳4ヵ月の高度な貧血と衰弱を伴つた女児の先天性横隔膜ヘルニアに対して,全身状態の改善に努め,開胸術式により,根治手術を行い治癒せしめた1例を経験したので報告する.

検査法

食道縱隔外科に必要な検査法

著者: 飯島登

ページ範囲:P.61 - P.63

 食道外科に於ける手術侵襲の程度は勿論手術術式に依つて異るが,開胸は勿論の事,開腹する場合も多く,手術は相当長時間を要し,術中の出血も多量になる事があり,又手術の対象となる疾患の多くが悪性腫瘍である事から侵襲量の極めて大となる事は免れ得ない.食道狭窄症状を呈する患者に於ては,長期にわたる栄養不足の為全身栄養の低下,高度の貧血を示すことが多い.従つて,侵襲量を小にし術中のショック,術後合併症発生予防の為の処置の基礎となる可き臨床検査は慎重でなければならない.
 全身の栄養状態を見る為に赤血球,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット,血漿蛋白濃度,循環血液量を測定する事は,術前のRoutineな検査として云うまでもない.肺臓,心臓の機能に関しては,胸部X線撮影,肺活量,呼吸停止時間,動脈血酸素飽和度の測定,EKGを施行する.又術後の腎臓に加わる負担が大となる為に,尿濃縮試験,稀釈試験を行つてその機能を予め確めておく事も忘れてはならない.これ等の検査に依つて障碍があれば,夫々の治療を行い,その好転を待つて手術を行い又,障碍の高度なる場合には手術の適応の有無,或はその方法も充分考慮に入れなければならない.例えば,胃瘻造設によつて患者の栄養回復を持ち,次で根治手術を施す事はその適当な例と考えられる.

統計

頭部外傷後遺症に関する2〜3の問題

著者: 尾形誠宏 ,   南部正敏

ページ範囲:P.65 - P.69

緒言
 頭部外傷後遺症については最近荒木,浅野,中村,近藤,加藤,渡辺等の報告があるが,之等は何れも頭部列傷後遺症状に悩み,その為に外来を訪れた患者を主な対象としている.然し実際臨床に携わつていて誰しも感ずるように,頭部外傷後は多かれ少なかれ自覚症状に悩まされながらも,色々の事情で之を等閑視したり,我慢をして就業しているものが潜在的に多いと思われるのである.そこで我々は頭部外傷後遺症の研究対象として,病院に再来したものだけでなく,外来及び入院で取り扱つた頭部外傷患者全員を対象として取り上げ,或る時期を経て調査してみたのである.特に教室の藤田の「身体並びに性器の発育に対する頭部外傷の影響についての実験的研究」(ラッテ)と対照して人間に於ける受傷後の性生活を調べることに重点をおいた.

薬剤

肺結核手術後の疼痛に対するプレジシルの効果

著者: 窪沢東

ページ範囲:P.71 - P.73

 フランスのクランビラ社が作り出したアセチルプロマジン(Plégicil)はクロルプロマジンのクロル基とアセチル基が置き換えられ,塩酸塩からマレイン酸塩になつたもので,その薬理作用はクロプロマジンと略々同様であるが効果が大きく副作用が少いとされ,外科手術後の疼痛に対しても有効であると報告されている1)2)3).私はこの度,三共株式会社よりPlégicilの提供をうけ,昭和33年4月以降7月初旬迄に行つた肺結核手術の術後疼痛に対して試用して少数例ではあつたが多少の知見を得たのでその効果と副作用について簡単に報告致します.

症例

胃筋腫の1例

著者: 栗原重雄 ,   野村正吉 ,   皆川博 ,   森田俊二 ,   浅野祥三

ページ範囲:P.75 - P.77

症例
 患者:○村○子,45歳,家婦.
 家族歴:祖父,食道癌,70歳で死亡,従姉,子宮癌,32歳で死亡.男児1名あり,健在.

胃線維腫の1例

著者: 金本正弘

ページ範囲:P.79 - P.81

 胃の良性腫瘍は一般に稀であるが,なかんづく胃線維腫はさらに少いとされており,本邦においても現在まで僅かに13例の報告があるにすぎない.わたくしは最近,胃切除を行つた胃潰瘍患者に胃線維腫ならびに十二指腸憩室の存在した症例を経験したので報告する.

Meckel氏憩室炎の三異相

著者: 妹尾博吉 ,   松本修

ページ範囲:P.83 - P.84

 Meckel氏憩室は1699年Lavatorが開腹により,その第1例を発表後1812年Meckelが本症を詳細に報告した.Meckel氏憩室は剖検にて約2%発見され,全生涯を通じて症状を発現しないものが多い.最近その炎症により惹起された稀有なる3症例を経験したので報告する.

特発性総輸胆管嚢腫の1治験例

著者: 日高重寿 ,   大根田昭

ページ範囲:P.85 - P.87

緒言
 本症は1817年Todd1)が最初に報告し,外国に於てはShallow(1943)2)の175例,Gross3)の小児例53例,S.Attar(1955)4)の201例等の集計があるが,本邦にては佐久間(1905)がStauungs choledochus Cysteとして報告して以来四ツ柳(1936)5)の集計54例等遂年報告例を増している.最近我々も2年2ヵ月男児の1手術治験例を得たので之を追加し,我々の集めた本邦例194例について若干の考察を試みた.

外国文献

食道静脈瘤158例の経験

ページ範囲:P.87 - P.87

 1953〜1955年の間に諸検査により確認された食道静脈瘤158例のうち,132例はLaennec肝硬変を原因とする.Laennec肝硬変患者の92%はアルコール常用者(平均17.3年)であつて,肝硬変患者は早晩食道静脈瘤破綻による出血死か,肝性コーマによりたおれる.
 大出血をおこしたものは118例(89%)で,このうち104例(88%)は第1回出血後1年以内に死亡する.平均生存期間は第1回出血後6.4月である.患者の平均年齢は51.6歳であるが,27歳という若年者もふくまれる.平均出血回数は1.9回で,1回の出血につき行われた輸血量は平均9パイント(4l)であつた.出血死の原因は続発する肝性コーマが半数以上をしめる.このような大出血をおこすことなく,直接肝性コーマで死亡するものは8例6%にすぎない.出血時にはバルーンタンポンを行うが,長いものでは72日間もこの方法をつづけた.

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全国大学教職員名簿一覧(整形外科)

ページ範囲:P.14 - P.14

〔大阪市立大学〕
教授 水野祥太郎(阪大,昭5)
助教授 小谷 勉(阪大,昭17)

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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