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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻10号

1959年10月発行

雑誌目次

綜説

心臓手術時の心機能障害に対する調律性電気刺戟の応用に関する研究

著者: 坪井重雄 ,   金栄澤 ,   蛯名勝仁 ,   射場立文

ページ範囲:P.1009 - P.1018

緒言
 心臓外科の進歩と共に今まで手術適応から除外されていた重症な心臓疾患の症例までも手術可能に至つた.その結果,術中術後に心臓機能障害の発生を見ることがある.心停止,心室細動に対しては従来の心蘇生法が用いられるが,術中に発生する房室ブロック等の調律異常に対しては調律性電気刺戟を与えて心搏動を維持することが行われる.われわれの教室では心室収縮の不充分な場合にもこの調律性電気刺戟法が有効であることを見出した.この機会に調律性電気刺戟法について綜説し,併せてわれわれの研究成績をも報告したい.この種の処置は将来益々必要になつて来ると思われるのである.

術後早期経腸栄養における電解質代謝—ことに脂質投与量の影響について

著者: 石田淸

ページ範囲:P.1019 - P.1037

Ⅰ.序
 近年、医学は次第に専門分化の方向に進みつつあるが,また一方各分野の進歩,開拓のために専門的知識の総合が要求される.外科学発達の重要な因子となつた手術後の栄養に関する問題もこの例外ではなく,外科学と物理化学,栄養学,食品化学などの分野との緊密な結びつきのもとに研究がすすめられなければならない.
 Amino酸の静脈内注入によつて進歩のいとぐちを見いだした静脈内栄養法1)においても,ある程度脂質の静脈内投与に解決の兆がみられたが2)−6),今日でも脂質の充分量の投与には問題が残されているので,脂質投与はなお経腸投与法にまたなければならないのが現状である.

門脈外科におけるアミノ酸代謝の研究

著者: 三浦健

ページ範囲:P.1039 - P.1068

緒言
 門脈外科における最も大きな研究課題の一つは門脈下大静脈吻合術後におけるEck氏瘻症状群発生の病態生理の追求と,その発生防止対策の樹立であつた.
 東大木本外科教室においては門脈下大静脈吻合術後の肝血流量の減少による肝機能低下にその原因があると考え,昭和24年以来,大網肝内挿入法,門脈動脈化手術,肝内動脈植込法等一連の術式を試みた結果,現在では脾臓剔出後なお門脈圧亢進を示す場合には進んで門脈下大静脈吻合術を行い,同時に肝内動脈植込法を併せ施行して肝機能不全を防止するのを標準術式とし,現在迄極めてすぐれた臨床成績を得ていることはすでにしばしば発表のあつた通りである1)2)3)4)5)6)

頭部外傷後遺症—特にその予防と治療

著者: 三河內薰丸

ページ範囲:P.1069 - P.1075

 近時,労務災害,交通事故などの激増はいちゞるしい.頭部外傷もそれと共に急激に増加し,今日では臨床家の必ず直面しなければならない疾患となつた..こうした事態にあつて,脳の外傷は身体他部の外傷と異なり,その症状は複雑多岐にわたり,これによつて起る障害も千差万別である.これは脳の外傷は脳自身の障害は云うまでもなく,精神面にも程度の差はあれ,影響をおよぼすものであるからである.
 一般に疾患を治療する場合,その病態生理を把握すれば,治療法はおのずから判明してくるものであるが,急性期脳外傷の場合はともかく,それが慢性に移行したもの,すなわち脳外傷後遺症の病態生理はまだ充分に解明されていないのが現状である.

検査法

外科的急性腎不全,および腎臓の外科に必要な検査法

著者: 飯島登 ,   上野明

ページ範囲:P.1077 - P.1081

 今日,外科的腎疾患(腎結核,腎結石水腎症等)は専ら泌尿器科分野が取扱つており,また取扱われるべきであるが,腎を含む後腹膜の腫瘤,炎症等は一般外科領域においても慎重に取扱うべき疾患であり,また術後の乏尿,無尿,ことに近来一般に実用化されてきた人工腎臓の適応とすべき他の急性腎不全は外科領域において極めて重要な問題である.ここではしたがつてこれらの点を含めて一般外科臨床にいわゆるRoutineとして行われている検査法について簡述したい.
 原則として外科的に腎を侵襲するには例えば腫瘤であればこれが腎より出たものであることを決定し,または推測された時には,1)患者の両側を含めた総腎機能障害の有無を検し,2)これがあれば反対側の機能状態を検して病変度を推定し,3)さらにこの健側が正常であることを確認する必要がある.2),3)は泌尿科医の協力を必要とする.次にわれわれがRoutineとして行つている検査法を列挙したい.

薬剤

新局所麻酔剤Epirocaineの使用経験

著者: 小林建一 ,   宮川理平 ,   坂本政直

ページ範囲:P.1083 - P.1087

 1905年,EinhornによりProcaineが合成されて以来,Procaineは安全な局所麻酔剤として一般に使用されてきた.しかしながら,Procaineには表面麻酔力の弱いこと,血管収縮作用を欠くこと,Procaineに対する過敏症もみられること等の理由で,これらの欠点をなくした局所麻酔薬の出現が望まれていた.
 1943年,スエーデンの化学者Löfgrenによつて,従来の局所麻酔剤とは異なつた構造をもつLidocaine(β-diethylaminoaceto 2,6-xylidide)が発表された.Lidocaine(販売品Xylocaine)は,血管牧縮作用はないが,Procaineよりも遙かに強力な表面麻酔力,伝達麻酔力をもつており,無痛効果は速効的で,その持続時間も長い利点をもつている.しかしLidocaineの濃度の高いものはProcaineの約2倍の毒性をもつており,この点でもまだ充分のものとはいえない.これらの欠点を改善するために,Hostacaineをはじめ,種種のLidocaineの誘導体が発表されたが,その後の研究によつて,安息香酸そのもののエステルが優れた局所麻酔力を有することが発見され,ここにEpirocaine(エーザイ製)が合成された.私どもは本剤を外科手術時の局所麻酔剤として使用したので報告する.なお本剤を胃鏡挿入時の表面麻酔に使用した効果については,先に教室森が報告している.

手術後のカルニゲン使用経験

著者: 水口公信 ,   野口照義

ページ範囲:P.1089 - P.1091

まえがき
 平均寿命の延長に伴い,高齢者に手術侵襲を加える機会は増加の傾向にある.しかもこれらの症例では癌患者が多く,したがつて手術侵襲も大きい場合もあり,術後合併症も決して少くない.特に循環系合併症は高齢者の手術死の重要な要素となつている.
 このような見地から著者はこの循環系合併症の防止対策として,高齢者の肺癌や重症腹部疾患にカルニゲンを使用し,臨床上良好な成績を得たので,その症例の概略をのべる.

リウマチ様関節炎ならびに疼痛を訴える整形外科疾患に対するアスピリン,アルミニウム塩剤の使用経験

著者: 水町四郎 ,   建持薰 ,   堀井秀和

ページ範囲:P.1093 - P.1098

 Cortisoneがリウマチ様関節炎に用いられて以来,その優れた効果のため,リウマチ様関節炎に対する薬物療法に一つの革命を来たしたとも云える.
 しかし,Steroid療法も疾患の本態に向つて治療効果を現わすものではなく,その抗炎症性,抗アレルギー作用を利用しているに過ぎず,完全に投与を中止する時は疼痛の再現を見,しかも,その後のSteroid療法も効果がうすくなり,これに加えて,いろいろの副作用があらわれるので,その使用についての可否の両論が行われるようになつた.その後,Predonisone,Predonisolone,Tri-amcinolone,6 Methyl-Predonisolone,Dexame-thasone等の出現をみているが,いずれも抗炎症作用の増強と,副作用の軽減を図つたものであるので,長期間の投与という面ではやや新しい展開を見たが,比較的小量の維持量で持続しうるような努力が払われた.でき得ればSteroidに代る副作用のより少い他の薬物に置換することがさらに望ましいことで,これにむかつての努力も払われて来た.

麻酔におけるヘキサミドの応用

著者: 青地修

ページ範囲:P.1101 - P.1105

 ヘキサミドは1954年にL.Schusteritzが始めてハンブルグのNordmark-Werke科学研究所において合成したものであり,その構造式は次の通りである(F 156).
 5,5-Phenylethyl-3-(beta-diethylaminoethyl)-2,4,6-trioxo-hexahydro-pyrimidine-hydrochlo-rideこれをPhenobarbitalおよびChlorpro-mazineの構造式と比較すると次のようである.

外国文献

小児の腸重積症

ページ範囲:P.1091 - P.1091

 Glasgow国立小児病院で最近10年間に400例の腸重積症を取扱つたが,その統計的考察の要点は次のとおりである.(1)発病後の時間経過とともに整復不能例が急に増加し,同じに死亡率も高くなる.発病後48時までは整復不能も死亡率も10%以内であるが,48〜72時間の間では半数以上が整復不能となり,死亡率も30 %をこえた.(2)手術時に回盲部リンパ節の単純肥大があり,これは重積発生と関係があるものと考えたい.患児の鼻咽腔粘膜やこのリンパ節からACPヴイールスを証明することがある.(3)年令別頻度では生後4〜5月と,2〜3歳とに2つの著明な山をみとめる.1年末満は62.5%,1〜2年は50例,2〜3年は38例である,春季の頻度は秋のそれの2倍である.(4)回結腸型53%,回盲腸型34.3%,結腸型4.5%,小腸型6.25%である.(5)便に血液をみとめるのは159例にすぎないが,直腸指診を行うと76%の高率に血液の附着をみとめることができるから,指診を省略してはいけない.レ線検査では大腸内ガスの消失と小腸内ガス拡張像に注意する.重積腫瘤は78%に触知できるが,その部位はほとんど腹部全体にある.全身麻酔を行うと触知できるようになるものが1.8%にあつた.(6)バリウム粥高圧浣腸整復法はよい方法であるが,発病後24時間以上すぎたものはこの方法にあまりこだわつてはならない.

症例

脾臓外科の経験

著者: 劉万生 ,   牧志真一 ,   小俣照信 ,   池田典次 ,   桜井二郎 ,   小菅輝武

ページ範囲:P.1107 - P.1124

Ⅰ.緒言
 脾臓外科の歴史は甚だ古く,遠くギリシアの昔において,オリンピア競技の走者は"息切れ"がしないように,好んで脾臓の摘除を受けたと言うことが伝えられている.世界文献上,最初の摘脾成功例はナポリの外科医Zacarelli1)(1549)が行つたとせられ,マラリア脾腫を有する婦人患者に手術を行い,好結果を得たと記されている.降つて17世紀には,摘脾を専門とする医師が多数現われたと言うことであり,このような,近代医学が発足する以前の記録は別としても,すでに19世記の後半には,刺創や銃創など主として脾臓の外傷にさいして.全摘出あるいは部分切除がかなり広く行われていたことは事実である.
 しかしながら,従来と全く違つた角度から,脾臓が新たに一般の関心を惹くようになつたのは今世紀に入つてからであつて,その意昧では歴史は未だ浅いと言えよう.すなわち,Micheli2(1911)が溶血性貧血に摘脾を試みたのに始まり,Eppin-ger3)(1913)の脾機能亢進症の概念の提唱,ついでKaznelson4)(1916)の特発性血小板減少症に対する摘脾の報告等と共に,機能面を対象とする脾臓外科の新しい分野が,漸く拓かれるに至つたのである.

亜急性甲状腺炎の2例

著者: 久保內一男 ,   片山勳 ,   保坂浩正

ページ範囲:P.1127 - P.1130

 警友病院外科で最近発熱を主訴とし且つ甲状腺の腫脹を伴う2症例に遭遇し,1例は手術後の病理組織学的検索から,他の1例は臨床症状から,共に亜急性甲状腺炎と診断されたので一括して報告する.

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集談会

著者: 金善彩 ,   岸英助 ,   八嶋顕 ,   織本正慶 ,   水島能衛 ,   內藤晋夫 ,   大井実

ページ範囲:P.1131 - P.1131

第577回東京外科集談会
1)肺腫瘍を疑われた肋膜の異常陰影
 胸部レ線で境界不鮮明の円形陰影がみられ,肺癌の診断で開胸をおこなうと肋膜肥厚であつた4例,鳩卵大の肋膜腫瘍であつた1例を経験した.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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