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綜説
実験的急性腎不全の病態生理に関する研究
著者: 芦田敬治1
所属機関: 1群馬大学医学部渋沢外科教室
ページ範囲:P.1163 - P.1194
文献購入ページに移動腎不全には,内科的に取扱われる糸球体腎炎,ネフローゼ,萎縮腎などのほかに,外科的急性腎不全ともいうべき一群の急性腎不全症候群があつて,第2次大戦後とくに注目されるようになつた.
1917年Borst1),Hackradt2)は第1次大戦中,戦傷後に乏尿ないし無尿となり,尿毒症症状を呈して死亡した症例の病理学的知見を報告した.その後しばらく注目すべき報告がなかつたが,第2次大戦中,ロンドン空襲傷害患者の中から,Bywa-ters3)(1941)が圧挫創のあとに致死的な腎不全の成立しうることを報告し,これをcrush syn-dromeとよんで以来,この方面の研究開拓が急速に進展した.その後これらの変化はcrush syn-dromeにのみ特有なものではなく,重傷筋外傷,重傷熱傷,異型輸血,火傷,妊娠中毒症,植物性および化学的毒物による中毒,アルカロージス,ズルファミン中毒などでも同様の変化がみられることを,Lucké4)(1946)が病理組織学的に明らかにした.つづいて,この方面はMallory5)(1947),Bingold6)(1950),Zollinger7)(1952),Oliver8)-10)(1949〜1953),重傷者研究班11),最近では朝鮮戦線におけるTeschan12),(1955),Smith13)(1955)等の病理学的および病態生理学的研究によつて漸次明らかにされてきた.
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