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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻12号

1959年12月発行

雑誌目次

綜説

術後急性肺水腫と肝障害との関係

著者: 脇坂順一 ,   矢野博道 ,   酒井正見

ページ範囲:P.1257 - P.1262

いとぐち
 外科侵襲に伴う生体反応は,侵襲前の状態によつて大きく影響される.例えば,術前,著しい脱水状態が存在すると,手術侵襲によつて下垂体抗利尿ホルモンの分泌が過度に亢進して,肺水腫,脳浮腫,乏尿,発熱等を招く原因になると云われている1).また,外科的ショツクの予後に無酸素性肝傷害(Shorr)や肝よりの細菌性毒素の産生(Fine)が大きな役割を演じていることも知られ,術後の肝機能の良否は直接生命を脅かし,手術の予後を左右する重要なものであるとも云われている.
 私共は術後急性肺水腫の発生病理並びに病態生理の究明に多年意を注いで来たのであるが2)-6),その一環として,かかる侵襲前の異常状態の中,肝障害時に,肺切除,大量輸液と云う侵襲を加えて,術後急性肺水腫の発生に及ぼす肝臓の影響に就いて観察し,さらに実験的術後急性肺水腫発生時における肝機能の消長についても検討を加えてみたので,茲に報告し,諸賢の御参考に供する次第である.

Conference

臨床外科懇話会記録(2)

著者: 日本大学医学部外科

ページ範囲:P.1263 - P.1267

1)脊椎披裂の手術治験例
 症例:絵○哲○,♂ 生後10カ月.
 主訴:腰仙部の胡桃大の無痛性腫瘤.

薬剤

ブタゾリジンの臨床

著者: 高橋純 ,   川村次郎 ,   橫関嘉伸 ,   松本淳 ,   景山孝正

ページ範囲:P.1269 - P.1273

まえがき
 1946年にGeigy社より発表されたイルガピリンは,抗リウマチ剤として非常に注目され,その内服.注射の報告は,内外多数にわたつている.当時一般的にイルガピリンの大量投与が行われたが,浮腫などの副作用のために,次第に少量投与が行われるようになつてきた.イルガピリンの一成分であるブタゾリジンの効果についても,外国においては数多くあつたが,本邦においては,伊藤・矢野および小林氏等によつて試みられ,その低量長期療法がすすめられている.
 われわれも過去1カ年間,関節リウマチをはじめ,関節症などに本剤を投与し,同時に出来るだけ多症例についてその血中濃度を測定し,臨床的効果と血中濃度の関係を観察し,いささかの所見を得たので報告する.

術後腸管麻痺に対するパンテノールの使用経験

著者: 勝部寬二 ,   大塚治 ,   芦村正昭 ,   渡辺昭朗

ページ範囲:P.1275 - P.1277

Ⅰ.緒言
 日常,腹部内臓に対し外科的侵襲を加えた場合,われわれは術後の各種の不愉快な症状を経験する.その一つに腸管麻痺の問題がある.従来,われわれはこの腸運動管理の目的に対し種々の理学的療法,あるいは高張食塩水,プロスチグミン等の薬物療法に頼つて来たのである.
 近来,パントテン酸の代謝面の重要性が頓に脚光を浴びるに到り,その作用機序も逐次解明されつつあるが,1943年H.Pfaltzは,初めてパントテン酸のアルコール誘導体を合成し,その大量投与が腸管の蠕動を著しく促進することを認めた.

化膿性肋骨骨髄炎の1治験例

著者: 相良吉郎 ,   池上信夫 ,   川井田孝 ,   市来斉 ,   白尾哲哉 ,   內山一雄 ,   相良史 ,   西郷成誠

ページ範囲:P.1279 - P.1281

緒言
 肋骨の化膿性骨髄炎は極めて稀な疾患であり,本邦における報告例は松田1)(1950年)が自家症例に文献蒐集例を加えて報告した28例と,われわれが蒐集し得たその後の6報告例2)-8)とを合計しても34例に過ぎない.
 われわれは最近,10歳の男子の右第5肋骨骨髄炎の一治験例を経験したのでこゝに報告する.

症例

先天性気管食道瘻の1例

著者: 楠原淳郎 ,   林源信 ,   島崎和郎 ,   桜井昭彥 ,   高草木作衛

ページ範囲:P.1283 - P.1287

 最近われわれは,胃穿孔を伴つた先天性食道閉鎖(Atresia of the Esophagus)の稀有なる一例に遭遇した.本例は開腹術後に診断を確定し,さらに開胸手術に依る根治手術を行つたが,不幸術後27時間にして死の転帰をとつた症例である.
 文献に依れば食道畸形の中で,気管食道瘻(Tracheo-esophageal fistula)を伴う先天性食道閉鎖は,1642年Schawに依て,初めて記載されて以来外国においては,本症の報告がしばしば見られ,またその手術治験例も現在においては尠くなく,Menghetti,Michaud,Jaubert,Gudbjery,Au—brespy,Roberts,Gross等の報告を見ている.本邦においては大正13年内村の報告を初めとし,現在迄数多くの報告があるが,多くは剖検例で,未だその治験例の報告に接しておらず,唯田村等の胃瘻造設術に依る43日の生存例の報告を見るに過ぎない.本邦では根治手術を行つた症例をきかないので,ここに本症例を報告し御批判を仰ぐ次第である.

肺ジストマ症の外科的療法について

著者: 塚田朗 ,   花房節哉 ,   谷口薰 ,   熊野道夫

ページ範囲:P.1289 - P.1293

緒言
 最近の胸部外科の発達に伴い,肺結核あるいは,肺腫瘍の診断のもとに肺切除術を行い,偶然肺ジストマ症であることが判明したと云う症例報告に接することがあるが,術前,肺ジストマ症の診断で,積極的に手術的療法を行つた報告は見当らない.最近われわれは,喀痰検査の結果確認された2例の肺ジストマ症に対して肺切除術を行い好結果を得たので,これらの症例を報告すると共に,若干の考察を加えてみた.

横隔膜レラクサチオの1手術例

著者: 水口公信

ページ範囲:P.1295 - P.1299

1.緒言
 横隔膜レラクサチオはCruveilhierがEvent-ratio Diaph.の名称で,またWieting,BergmannはRelaxatio Diaph.と記載して以来,本邦においても次第に注目されて来た.本症は従来考えられたほど珍らしい疾患ではないが,手術報告は極めて少い.
 最近われわれは本症の定型的な1例を経験し,その手術成績を主として心電図上の所見から検討を加えたので報告する.

外傷性横隔膜ヘルニアの1治験例

著者: 小島稔豊 ,   森野勝

ページ範囲:P.1300 - P.1302

 遠藤(昭33)によると,本邦における外傷性横隔膜ヘルニアの報告は,氏の追加した1例を加えて38例で,うち32例が手術され,26例が根治している.これらを年齢的に見ると,26例中20例が20歳以上の成人で占められ,2歳以下の小児は僅かに1例に過ぎない.われわれは最近1歳6ヵ月の小児に見られた外傷性横隔膜ヘルニアの1例を経験し,根治せしめることが出来たので報告する.

臍帯ヘルニアの1治験例

著者: 佐藤正

ページ範囲:P.1303 - P.1305

 臍帯ヘルニアOmphaloceleは臍部腹壁癒合障害により腹部内臓が臍帯内へ脱出,すなわち胎児性体腔上皮Coelomepithel,ワルトン氏膠質物,羊膜に被われて半球状または球状をなしたものである.ヘルニア内容は多くは小腸盲腸等であるが,実際には正中線腹壁披裂たる内臓大脱出症Ex-omphalusを合併していて,肝の大部分・脾・胃・腸等が内容となる場合もある.わたくしは,臍帯ヘルニアの1症例を経験し手術によりこれを治癒させ得たのでここに紹介する.

巨大なる乳児後腹膜畸形腫の1治験例

著者: 井上幸万 ,   鈴木恵之助 ,   小林誠一郎 ,   大久保恵司

ページ範囲:P.1307 - P.1310

 後腹膜部に原発する畸形腫は稀有なるものとされているが,外科診療上これが3歳以下の乳幼児に多く発現し,しかもこの治療は外科的手術の絶対適応であるにも拘らず,手術死亡率はなお相当の高率を示している.最近われわれが経験したような生後2ヵ月の乳児に発生した後腹膜畸形腫の手術治験例は本邦において未だ報告を見ない.われわれはこの症例を報告すると共に,文献的考察を試みたいと思う.

特発性総輸胆管嚢腫について—腸重積症と疑診された手術治験例

著者: 井出裕雄 ,   平野四郎

ページ範囲:P.1311 - P.1316

まえがき
 特発性総輸胆管拡張症あるいは特発性総輸胆管嚢腫とは胆石の嵌入,狭窄,腫瘍等により総輸胆管が続発的に拡張したものでなく,先天性素因により総輸胆管が嚢腫状異常拡張したと解せられる疾患で,idiopatic or congenital choledochus dil-atation,congenital choledochus cyste,congenital cystic dilatation of the common bile duct,con-genital diverticulum of the common bile ductまたはMegalocholedochus等種々の呼称がある.
 本症は1723年Vaterにより記載されたが,1852年Douglas1)は本症を始めて確認報告し,爾来その報告は洋の内外を問わず逐年増加し欧米にてはShallow(1943)2)は文献上175例を,さらにAttar(1955)3)は201例の多数例を蒐集報告した.

人工腎臓によるメプロバメイト・ブロバリン中毒の1治験例

著者: 西村菊夫

ページ範囲:P.1317 - P.1322

 人工腎臓が腎不全に伴う内因性諸代謝異常をよく改善し,同時にその症状をも好転せしめることは,わが国では渋沢教授一門26)-30)によつてくわしく研究発表されている.また内因性の異常のみならず,外因性異常,たとえば薬物中毒などについても著効を呈する場合のあることは同じく渋沢・丹後26)によつて報告されているごとくである.最近,自殺の目的でメプロバメイトおよびブロバリンを大量に服用して意識を失つて運びこまれた患者に,著者は人工腎臓を応用して著効を得,救うことができた.

ポリープによりて生ぜる腸重積症

著者: 卜部高史 ,   武田覚 ,   晒明 ,   鳥梅勝男

ページ範囲:P.1323 - P.1325

緒言
 比較的少いとされている成人の空腸上部に生ぜるポリープに依る小腸重積症ならびに小腸下部に生ぜるポリープ様腫瘤に依つて起れる回盲部重積症のそれぞれ2例を経験しました,而も診断困難で手術の結果判明した次第であります.

腰椎カリエスの流注膿瘍が股関節に穿通した興味ある股関節結核の1例

著者: 武田昭典

ページ範囲:P.1327 - P.1330

いとぐち
 脊椎カリエスも股関節結核もごくありふれた骨,関節系統の結核で,両者の併発することもそれほど少なくはない.しかし,多発性骨,関節結核では,主としてそのおのおのが血行性経路によつて発生するということも周知の通りである.著者はこうした意味での股関節結核ではなく,脊椎カリエスの流注膿瘍が股関節に穿通して発生したと考えられる興味ある1例を経験したので報告する,

腹腔内遺残ガーゼの2症例

著者: 守谷林太郎

ページ範囲:P.1331 - P.1336

緒言
 先に教室代田,島津1)等(昭28)は腹腔内遺残ガーゼの3症例を報告しているが,その後私は当教室においてさらに本症の2例に遭遇する機会を得たので,その大略を追加報告して自他戒心の資とする次第である.

Hanging-Castによる上腕骨骨幹部骨折の治療経験

著者: 鷲谷澄夫 ,   池袋弘範 ,   稲村訓昌

ページ範囲:P.1337 - P.1340

 言う迄もなく,骨折の治療にさいし,観血的治療は出来る限り避けたい.特に上腕骨骨幹部骨折は,橈骨神経麻痺の惹起と偽関節を起し易いことのため,この点が強調されなければならない.
 私共は,本邦ではあまり用いられてない,整復固定を同時に行い得るHanging-Cast(Caldwell 1940)により治療した3症例を経験したので報告する.

右大腿骨嚢腫の1例

著者: 太田寿一

ページ範囲:P.1341 - P.1343

緒言
 元来骨嚢腫は独自の疾患としてある外に色々の骨疾患に附随して発生し得るもので今日なお色々と論議せられて居る所であり,その本態発生原因に関しても種々の説が述べられ論議憶説の絶えざる所である.
 而して本邦における成書を繙くに何れもOstitis fibrosa localisataの一型であると記載せられ諸家の報告もその大多数はこれに賛意を表して居るようである.

先天性橈尺骨癒着症の1例

著者: 島田信義 ,   中村正一郎 ,   亀谷雄次

ページ範囲:P.1344 - P.1346

 先天性橈尺骨癒着症Synostosis radioulnaris congenitaは胎生期分化の欠落によつて,分裂すべき前腕骨が上端部,中央部,下端部において橈尺骨の骨性癒合を呈した一種の奇形である.大半は上部癒着Synostosis radioulnaris superiorで下端のみのものはない.
 最初にLennoire(1827)が報告し,以来X線の発達と共に症例も多くなつた.Chasin(1932)は文献上156例をあつめ,自家の4例を追加している.本邦においては田代(1925)の報告以来,最近安藤・井戸等の手術例の報告がある.

鎖骨変形治癒骨折によるCostoclavicular Syndromeの1治験例

著者: 石橋恒夫

ページ範囲:P.1349 - P.1351

 腕神経叢は肩甲帯の解剖学的また,機能的複雑性により種々の機転で容易に障害を受けるが,就中頸肋症候群,および前斜角筋症候群はよく知られているところである.表題のCostoclavicular Syndrome(肋骨鎖骨症候群)もこれ等と近似の症候を呈するもので,鎖骨と第1肋骨間の病的狭少状態により,この間に位置する腕神経叢,鎖骨下動静脈が圧迫されて惹起される症候である.
 私は右鎖骨変形治癒骨折による本症候群の1例を経験したのでここに報告する.

外国文献

急性胆嚢炎,他

ページ範囲:P.1330 - P.1330

 急性胆嚢炎のさいに保存的療法でのぞむか,早期手術を行うか,という問題の解決のため134例の自験例につき検討を加え早期手術が最も良いと結論している.胆嚢炎時,胆嚢には出血充血,浮腫の消失する2〜3日頃に線維化が起り,9〜10日に幼若線維組織が著明となり,成熟し遂に萎縮,2〜3カ月で融解する.故に手術は始めの10〜12日がやり易く,それをすぎた物は3〜4カ月待つた方が良い.壊疽,穿孔,蓄膿限局性膿瘍等の合併症は早期手術でさけることができる.穿孔の92%は胆嚢管に嵌入した石のため閉塞が起り,胆嚢は拡張し壁が局所貧血に陥入るため発生す.残りは炎症と胆嚢動脈の閉塞によつて起る.炎症は普通閉塞により浮腫状になつた壁へ細菌が侵入して二次的に起る.動脈の閉塞は老人や血管病の患者に来る.
 患者の性別は女が62%で多い.年齢は60歳以上が39%,死亡の71%壊疽穿孔の64%はこの群に含まれる.手術は胆嚢剔出が選択的で重症の場合は胆嚢造瘻術を行う,総胆管切開は結石の存在が確実な時のみ行う.死亡率は12%,その94%は血管病の共存した患者であつた.

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「臨床外科」第14巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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