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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻2号

1959年02月発行

雑誌目次

綜説

先天性心疾患の外科療法の限界

著者: 榊原仟 ,   長谷健一 ,   菅間直 ,   岩淵汲 ,   高橋敬亮 ,   大沢幹夫 ,   田中孝 ,   金井美津 ,   黑田晃司

ページ範囲:P.93 - P.101

1.緒言
 先天性の心疾患,即ち心臓奇型はそれがあるからと云つて直ちに生命の危険を意味する訳ではない.
 一生何ら障碍を示さず健康者と同じ様に生活し活動することが出来るものもある.半面,心臓奇型のために死亡するものも非常に多く,しかも死亡の時期は,出生直後から可成りの年齢にまで及んでいる.

急性肺水腫発生に及ぼす脳脊髄液圧の影響に就いて

著者: 脇坂順一 ,   矢野博道 ,   水之江槐郞

ページ範囲:P.103 - P.108

Ⅰ.緒言
 近年,麻酔の発達と相侯つて,胸部手術が比較的容易に行われる様になつたが,同時に,これに伴う種々の合併症が注目せられる様になつて来た.特にその1つである急性肺水腫は,最近頓に諸家の関心を集めている1)2)3).我が教室ではこゝ数年来,術後急性肺水腫の研究を続け,その成績は屡々報告して来たが4)5)6)7)8),今回はその一端として,急性肺水腫と脳脊髄液圧との関連性に就いて,2〜3実験を行い,些か知見を得たので茲に報告し,諸賢の御参考に供し度いと思う.

手術創化膿について—特に細菌侵入経路とその対策

著者: 二宮一 ,   岩崎洋治 ,   野口晃平 ,   高橋康

ページ範囲:P.111 - P.117

 我々の教室では1956年7月より同年11月迄の5ヵ月間に一次縫合を行つた手術患者495例中約5.5%に手術創化濃が起つた.
 この手術創化膿の予防を抗生物質に頼ることは,いたずらに耐性菌を蔓延させ,この結果かえつて手術創化膿発生頻度が増加する傾向にある.

検査法

甲状腺の外科に必要な検査法

著者: 飯島登

ページ範囲:P.119 - P.122

 最も一般に見られる甲状腺の悪性腫瘍と機能亢進症に就いて外科的治療のため臨床検査法を述べよう.

統計

下肢骨々折の統計的観察

著者: 有馬純郞

ページ範囲:P.123 - P.128

 私どもの外来で昭和30年1月より32年12月迄の3年間に経験した骨折患者総数1827例中,下肢骨々折585例(32.0%)で,その中大腿骨々折180例(9.8%),膝蓋骨々折24例(1.3%),下腿骨312例(17.1%),足根骨36例(2.0%),中足骨,趾骨33例(1.8%)で,是等の下肢骨総数に対する比率は夫々,大腿骨30.8%,膝蓋骨4.1%,下腿骨53.3%,足根骨6.2%,中足骨,趾骨5.6%となる.上肢骨々折の統計に就ては先に報告したが,今回は下肢骨々折,特に骨折部位及び骨折線の統計について述べたいと思う.
 本県(宮崎県)の如く,整形外科的施設にあまり恵まれていない地方では,特に他の諸統計に比し著しい差があるように思われ,この点を究明すべく採りあげてみた次第である.

精神收容患者の虫垂炎発生頻度について

著者: 今関好晴

ページ範囲:P.129 - P.132

まえがき
 元来虫垂炎に関する知見はあますところなく究明され,これに関する統計的な報告も数多くみられ,又受刑者に関する之が発生頻度については,先に森島氏等の詳細な報告がある.しかし精神收容患者の調査報告については未だ聞いていない.私は一定の拘禁状態におかれ一定の食生活をしている彼等が,一般社会人及び受刑者に比して如何なる発生頻度を示すかを調査した.調査施設は国立下総療養所並に国立肥前療養所に於ける昭和23年より32年迄の10カ年間に発生した虫垂炎患者について,年度別に在所患者との関係,年齢別,病類性別,季別,在所期間別,病状程度別,食事との関係,治療及び予後にわたり観察した.

薬剤

各種別にみた術後症状に対するセジラニッド(Lanatoside C)の治療効果

著者: 滝原哲一 ,   三木猪太郞 ,   麻野博智 ,   太田乙治

ページ範囲:P.133 - P.138

まえがき
 近時,麻酔及び化学療法の発展,進歩等に依り,外科手術の適応範囲は漸次拡大し,特に老人手術例数の増加の傾向に伴い,術前,術中,術後の患者管理の中,循環器系に対する管理が重要な課題になつて来つつある.殊に術中,術後の患者は手術侵襲による血液量の変動,麻酔剤の影響,換気の障害,肝腎機能の抑制等がおこり,心搏出量の減少,脈搏数の変化,静脈血還流障害等により循環不全の症状が表われて来る.斯る場合,適当な強心剤を適量,適時に使用し,急性心不全特に心筋抑制による心不全の発生を防止する事は一般に実施されている所である.
 然るに外科医にとつては,突発的な急性心不全症状等に遭遇する事が多く,其の速かな処理が必要であつて,斯る際には速効性のある而も静注しうる薬剤を必要とするが,我々は此等症状にセジラニッド(ラナトサイドC)を使用し,其の効果を認めた.次に其の使用経験について述べてみたい.

Oleandomycin及びSigmamycinの使用経験

著者: 池內宏 ,   高橋庄平

ページ範囲:P.139 - P.143

Ⅰ.まえがき
 化学療法の普及した今日でも難治の化膿性骨髄炎は跡を絶たず,また一方では難治の病院感染症の問題が近年特に注意をよんでいる.これらは結局,種々の抗生物質に耐性を得た黄色葡萄球菌の感染症に対する治療の困難なことに帰すべきで,しかもこのような耐性菌は年々増加の傾向にあり,更に新しい抗生物質の出現が必要と考えられるようになつた.
 Sobin等により発見された新抗生物質Olean-domycin(以下OMと略記する)は放線菌の一種Streptomyces antibioticusの一菌株の産生する新塩基性抗生物質で広い抗菌スペクトルを有する.

症例

高年者の腓骨上端に発生した巨細胞腫瘍の1例

著者: 川原啓美 ,   川原曉子

ページ範囲:P.145 - P.148

 骨の巨細胞腫瘍は,1818年Sir Cooperにょつて初めて記載され,その後その良性腫瘍としての性格が次第に確認されて来た.1910年Bloodgoodは本疾患をGiant-cell tumorと名付け,骨肉腫とはつきり区別した.然しその後も類似疾患との鑑別の点で長く混乱状態にあり,その性格は多様性でかなり悪性のものも含み,本態については尚不明の点が多いといわれる.我々は最近腓骨上端に発生した1例の巨細胞腫瘍を経験し,且つ数年後にその経過を観察し得たのでこゝに報告し,2〜3の考察を試みたい.

馬尾神経部皮様嚢腫の1例

著者: 立石正治 ,   本多量一

ページ範囲:P.149 - P.152

緒言
 近年,脊髄造影術と椎弓切除術の普及により脊髄腫瘍の報告例は漸次多数になつた.然し,これ等脊髄腫瘍の大部分はNeurinom,Meningiomなどのように,神経組織から発生したものが主で,皮様嚢腫の報告例は甚だ少い.
 吾々は先きに31歳男子の馬尾神経部に発生した上皮様嚢腫の1例を経験して報告したが(外科の領域6巻6号),最近再び本症の1例を経験したので,こゝに追加報告する.

胃脂肪腫の1例

著者: 疋田達雄 ,   西川義彥

ページ範囲:P.153 - P.155

 胃に発生する脂肪腫は本邦に於ては非常に稀な疾患で,現在迄に1例だけしか報告がない1).我々は昭和31年11月この例を経験したのでここに報告する.

胃捻転症を惹起せる胆嚢蓄膿症の1例

著者: 関野英二 ,   土岐健五郞 ,   玉田淸治

ページ範囲:P.156 - P.158

緒言
 胃捻転症は1866年Berti8)が剖検により発見し,1895年Berg9)によつて手術治験例が報告されて居る.本邦に於ては昭和31年佐々木氏1)の報告では57例が報告されて居るにすぎなかつたが,その後の文献を渉猟するに現在迄約90例を数えた.小坂氏2)の統計では多くは特発性のものであり,複雑性胃捻転症の症例は案外少い.吾々は最近胆膿蓄膿症による癒着性胃捻転症の1例を経験したので報告する.

大腸全域の広汎な所謂非特異性潰瘍性汎大腸炎の全剔成功例

著者: 永田丕 ,   神田啓道 ,   平岩邦彌 ,   坂本和夫 ,   津布久武

ページ範囲:P.159 - P.165

緒言
 非特異性潰瘍性大腸炎は本邦に於ては,比較的少ない疾患である.従つてその症例,特に外科医の報告は槇氏等のもの24)以外極めて少ない.
 我々は大腸全域並に直腸の上部が,余す所なく,びらん性の炎症と粘膜上皮の増殖で侵され,持続的に出血し,内科的治療の無効であつた本疾患患者に対して全大腸並に直腸切除,永久的廻腸瘻造設を行ない,全治4年半を経過し,農業労働に復した1例を経験したので報告する.

結腸Polyposisの1例

著者: 潮田昇 ,   前田外喜男 ,   內藤盛徳

ページ範囲:P.167 - P.169

 結腸Polyposisは1721年Menzelによつて始めて報告され,その後1863年にVirchowが詳細な病理所見を記載している.1882年にはCrippsが同一家族中に2人の患者を発見しその遺伝性が注目され,又1890年頃より病理学者によつて癌との関係が発見されると共に前癌状態としてその報告例に大いに興味が持たれるようになつた.我々は典型的と思われる1例を経験したのでこゝに報告する.

腸狹窄に腸石嵌頓を伴つたイレウスの1例

著者: 腰塚浩 ,   泉雄勝 ,   石塚稔

ページ範囲:P.170 - P.172

 腸管内において屡々異物を核として,これに塩類の沈着が生じて形成される,いわゆる腸石は,文献上稀なものであるが,これによつて腸閉塞を惹起した症例は,一層少いものとされている.本邦においても,伊藤氏の調査(昭和28年)による腸管内結石報告例によれば,広義の腸石例中大部分は糞石で,狭義の腸石は数例に過ぎないという.又岡田氏によれば(昭和29年)腸内異物によるイレウス症例402例中腸石によるもの5例である.
 著者等は炎症性瘢痕による腸狭窄の口側に植物線維を核として腸石が形成され,これの嵌頓によつて急性腸閉塞を惹起した1例を経験したのでこゝに報告する.

十二指腸肉腫の1例

著者: 大西芳郞 ,   平井伝 ,   渡辺定男 ,   西部俊二

ページ範囲:P.173 - P.176

 腸管肉腫は稀であるが十二指腸に発生した肉腫は遙かに稀である.
 我々は最近十二指腸肉腫の剔出を経験したので,これを報告して,いさゝか考察を加えてみたい.

虫垂粘液嚢腫の1例

著者: 佐藤太一郞 ,   福嶋久夫 ,   虫明康久

ページ範囲:P.177 - P.180

 虫垂粘液嚢腫は1842年,RokitanskyによりHydrops processus vermiformisと名付け発表されて以来,内外ともに幾多の報告が為されてきた.我々も最近此の症例に遭遇したので報告すると共に,此れを機会に過去約10年間の我国に於ける虫垂粘液嚢腫の症例について2〜3の考察を加えたいと思う.

12歳の小児に発生した卵巣癌の1例

著者: 早坂滉 ,   下地晋 ,   森田福栄 ,   鈴木敏道 ,   安保秀勝

ページ範囲:P.181 - P.184

緒言
 癌腫は一般に高齢者にみられる疾患であるが,若年者にもまれにみられる.卵巣癌には,原発性癌と続発性癌とあるが,行森によれば14年間に経験した477例の卵巣腫瘍中原発性卵巣癌は25例であつたという.もちろん若年者における発生頻度は低くJ.Millerによれば20歳以下の原発性卵巣癌は2083例中31例,本邦においては,三浦4歳,秦,畑,玉木,6歳,林10歳,富塚15歳等の報告があるのみで,若年者ことに小児の卵巣癌はまれな疾患である.最近わが教室で満12歳の小児に原発性卵巣癌ならびにその転移とみられる大網の癌を経験したので報告する.

外傷性肋骨弓単独骨折の治験例

著者: 妹尾博吉 ,   松本修

ページ範囲:P.186 - P.187

 最近稀有と思われる外傷性肋軟骨単独骨折の1例を経験したので報告する.

胃潰瘍を伴える胃石の1例

著者: 田中実 ,   草川実

ページ範囲:P.188 - P.191

 植物線維腫に関する報告は,Quain(1854)が剖検で発見した椰子の実に基因するものに始り,本邦では三宅(明42)の藺草によるものを以て嚆矢とする.柿果実によるものは永富(大3)の発表以来今日迄,大凡100例を超える報告がある.私達も胃潰瘍を伴つた柿胃石を経験したので報告し,更に植物線維腫について統計的観察を加えつゝ考察を加えて見度い.

外国文献

根治不能胃癌に対する姑息的手術の効果/大腸の血管分布

ページ範囲:P.148 - P.148

 1931〜1955年にMemorial Center for Cancerを訪れた1623例の胃癌例で,手術不能19.O%,試験開腹術23.7%,姑息的手術23.4%で,根治手術を行いえたのは僅かに33.9%である,姑息的手術のうち最初は胃腸吻合術が大部に行われていたが,1945年以後に姑息的胃切除が23を占めるようになった.手術術式別の患者の生存率を比較すると,非手術群,試験開腹群,胃腸吻合群は全く差がなく,18カ月後には全例死亡しているが,胃切除群は明らかに予後が良く,18月後にもなお20%余が生存する.手術別の平均生存期間(月)は,試験開腹4.6月,胃瘻6.9月,腸瘻3.3月,胃腸吻合3.9月,姑息的切除9.0月(うち亜全剔9.5月,全剔8.2月)となる.上記3種のBy-pass法では症状の緩解はなく,外瘻のための苦悩がむしろ加わり,ほとんど利益がない,これに反し胃切除を行うときは胃症状や出血などの種々の症状が消失する.手術による症状緩解の持続期間によつて,優,良,可,否の4群に分けると,姑息的胃亜全剔により優31.8%,良24.6%,可21.2%,否22.8%となる(良は症状緩解が3月〜6月つづいたものをいう).

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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