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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻3号

1959年03月発行

雑誌目次

特集 腹部外科 綜説

術後急性肺水腫に関する諸問題

著者: 脇坂順一 ,   河野凡

ページ範囲:P.197 - P.230

Ⅰ.緒言
 手術後に高度の呼吸困難,全身のチアノーゼ,泡沫性血性喀痰の喀出,胸部の湿性ラ音の聴取等の特有の症状を伴つて,急激に招来される所謂術後急性肺水腫は,その約90%が胸部手術後に合併され,これらの約60%という大半が本症の為に死亡し1),而も本症による死亡は,肺外科の直接死亡率の約10%強を占めるという,真に厄介な而も重篤な合併症である2,3)
 勿論,急性肺水腫はLuisada4)等(1956)によつて示された様に,手術とは関係のない,所謂心血管疾患(腎性疾患も含む),中枢神経系疾患,肺疾患,アレルギー性疾患,中毒性疾患,感染,ショック,其の他種々の疾患にも合併されるのであるが,今,これらについての合併頻度はというに,まずCameron5)(1948)は肺水腫を発生した100例の剖検材料,及び特に肺水腫を発生し易いと思われる疾患々者500例の肺水腫発生頻度を調査し,(第1,2表),心冠疾患,中枢神経系疾患,肺疾患に特に多いと述べている.その他本邦では斉藤6),勝木7)等の剖検材料から見た統計があり,斉藤6)等は中枢性疾患や,心疾患を有するものに,70〜80%の高率に見られたと言い,勝木7)等(1955)は中枢性疾患中で,特に脳橋部障碍を伴つた場合とか,心疾患々者に夫々約44%,72%の高率に肺水腫の合併を見たと言つている.

症例

好酸性細胞浸潤を伴う胃肉芽腫の1例

著者: 谷向茂作 ,   高島義顕 ,   橋本博 ,   村田弘行 ,   隅本彰 ,   小田富雄

ページ範囲:P.231 - P.235

 胃内に発生する腫瘍は非常に多いものであるが,エオジン嗜好性細胞浸潤を伴つた肉芽腫の報告は極めて稀である.
 文献においてその報告例を見ると,1937年Ka-ijser1)が初めて胃内肉芽腫を報告して以来,消化管系統に発生した肉芽腫は1951年迄に報告されたものは,僅かに30例に過ぎない.又我が国においても,1951年中馬8)が1例報告をしているのみである.

原発性胆道癌の1例

著者: 藤田孟 ,   土岐健五郞 ,   大高興

ページ範囲:P.236 - P.238

 原発性胆道癌は長与,Kirschbaum & Kozoll等によると全悪性腫瘍中約3%で比較的少いものといえる.治療としは胆道切除が望ましく腫瘍の周囲組織への浸潤又はその発生部位によつて各種の術式が試みられている.然し手術成績は一般に不良なものが大多数である.
 之は黄疸が発現してから初めて発見されるもので通常肝機能が高度になつてから手術を受ける例が多いからであろう.我々も最近肝管胆のう管合流部より総胆管に及ぶ原発性胆道癌に対し,胆道切除を行い胆管十二指腸吻合を施行して軽快せしめ得たが,数ヵ月後黄疸再発し肝内胆管空腸吻合を施行したが肝内胆管転移のため遂に死亡した1例を経験したので報告する.

Kalkmilchgalle(石灰乳胆汁)の1例

著者: 樋口哲司

ページ範囲:P.241 - P.243

 Kalkmilchgalle,或いはLimy bile,milk of ca lcium bileと呼称される疾患はVolkmann3)の発見に始まるが本症は所謂,白色胆汁とは異なり,粘稠なゴム様物質,或いは亜鉛白様物質と表現される物質の集合体であり,其の多くのものはコレステリン石灰石を伴うと言われる,最近吾々はコレステリン石灰石を伴なつたKalkmilchgalleの1例を経験したのでここに報告する.

特発性破綻により腹腔内出血を来せるヘパトームの1例

著者: 豊岡茂

ページ範囲:P.245 - P.246

 本邦に於けるヘパトームの発生頻度は,欧米に比し甚だ高いが,その腹腔内出血を来せる報告例は非常に稀である.術前確診を得る事は極めて困難であるが,私も開腹手術,更に組織学的検索により特発性破綻を来せるヘパトームの1例を経験したので茲に報告する.

慢性虫垂炎に併発していた腸管膜様包裹症の1例について

著者: 小川益雄

ページ範囲:P.247 - P.248

まえがき
 腸管膜様包裹症(Peritonitis fibrinosa incapsu-lata chronica)は,ロシアのQuetschnikow(1907)によつてはじめて記載された疾患であつて,わが国では,権藤氏(1925)がはじめて発表してから,現在までに,約80例の報告を数えている.
 わたくしは,さきに結核腫を伴つた腸管膜様包裹症の1例を報告したが,最近慢性虫垂炎に併発していた本症の1例を経験したので,ここに報告する.

先天性廻盲部閉塞の1例

著者: 安川恒信

ページ範囲:P.249 - P.250

Ⅰ.緒言
 先天性腸狭窄又は閉塞は稀な畸形であつて,16700出産に1人と云われているが,三谷は死産児1900例中に本症を0.58%認めている.小坂は症例報告と共に内外の文献の渉猟を行い臨床的対象となるものは非常に尠く,従つて予後不良と報告している.
 高島病院に於ても昭和25年度より32年度迄に2例を経験致しました.1例は先天性十二指腸狭窄例で,他の1例は非常に稀な先天性廻盲部閉塞例を経験し得ましたので報告する.

メッケル憩室の臨床経験及び統計的観察

著者: 滝田博 ,   前田昭二

ページ範囲:P.251 - P.254

緒言
 メッケル憩室はそれほど稀有なものではなく,思いがけぬ種々の続発症を起すことにより,それを通じて発見される場合が多い,ベバリー,ホスピタルでは過去10年間に21例のメッケル憩室が観察されているが,この21例中の13例はメッケル憩室の続発症のために,また残りの8例は他の目的で手術が行われた際に偶然発見されたものであつた.著者は最近永寿病院においても本症の1例を偶然観察したので,以下にその興味ある幾つかの症例を加えて報告すると共に,メッケル憩室の概要を述べることとした.

廻盲部細網肉腫先行による腸重積症の1例

著者: 亀卦川滋 ,   雨宮久雄

ページ範囲:P.255 - P.256

 腸管に肉腫が発生することは稀であると云われているが,最近当院に於て廻盲弁部に原発せる細網肉腫の先行により腸重積を惹起した1例を経験したのでその症例を報告すると同時に,些か文献的考察を加えてみたい.

空腸,廻腸滑平筋肉腫の1例

著者: 青木春夫

ページ範囲:P.257 - P.263

緒言
 1895年,Morpurgo1)は滑平筋に母地を有し,悪性に発育した腫瘍をLeiomyoma malignumと唱えて発表した.以来小腸に発生したLeio-myosarcomaの報告は比較的稀有で,Ripsten(1952)2)によると69例,本邦では河村九十九3)の報告した廻腸上位に発生した本腫瘍を第1例として,今日迄僅かに18例4)−20)の報告があるだけである.
 吾々は最近69歳の婦人の空腸及び廻腸に発生した滑平筋肉腫の症例を経験したので茲に報告する.

小網に発生せる淋巴管嚢腫の1例

著者: 喜井淸之助 ,   栗田弘 ,   大前典俊

ページ範囲:P.265 - P.266

 腹膜に発生する嚢腫は比較的稀有なる疾患に属し,1507年Benivieniによつて,初めて報告されて以来,欧米及び本邦に於て,相次で報告されている.最近私達は小網に発生せる淋巴管嚢腫に遭遇し,之を剔出手術する事が出来たので茲に報告します.

廻盲部及び虫垂を内容とした左外鼠径ヘルニヤ嵌頓の3治験例

著者: 太田寿一 ,   寺尾知道

ページ範囲:P.267 - P.268

緒言
 各種ヘルニヤの中で最も多いものは鼡径ヘルニヤで小川氏は85%Berger氏は96%といつて居る.ヘルニヤ内容としては小腸,大腸,大網其の他諸種の臓器があるが回盲部を内容としたものは1812年Scapaの報告が最初である.而して左鼡径ヘルニヤに回盲部の脱出する事は比較的珍らしい様である.
 私は小児の先天性外鼡径ヘルニヤ嵌頓で手術を行い,ヘルニヤ内容が回盲部及び虫垂であつたもの,3例を経験したので之を報告し多少の考察を加えたい.

臍帯ヘルニアの1例

著者: 岡田和親 ,   渡辺鉄夫 ,   飯田宗穂

ページ範囲:P.269 - P.270

 臍帯ヘルニアとは臍輪又はその附近で固有の壁を欠き,只菲薄透明な羊膜を以て被われて居るものである.之は畸形の一種と看做されて居り,その頻度は3000〜5000例に1回と云われている.吾々は最近かかる症例に遭遇したので報告する.

膀胱全剔除術による膀胱癌の1治験例

著者: 白石保夫

ページ範囲:P.271 - P.272

緒言
 膀胱全剔除術の場合の尿管腸吻合術は1878年Smithによつて萎縮膀胱の治療に応用せられ,又Maydlは両側尿管下端を膀胱三角部と共に切除し,これをS字結腸彎曲部に移植することに成功して,その用途が見出された.1910年Coffeyが犬の粘膜下斜行管形成法に成功し,1911年Mayoがこの方法を臨床的に応用してから急速な普及が見られ,Cordnnier,Nesbit,Kerr and Colby等によつて種々の改良法が実施された.最近の手術手技の進歩は,化学療法や麻酔の進歩と相俟つて尿管処理を著るしく安全且つ容易ならしめ,膀胱癌に対する手術的療法も積極的となり,膀胱全剔除より更に進んで骨盤腔内臓器全剔除まで行われるようになつた,私は最近膀胱癌の1症例に遭遇したので,これに全剔除術を施し良好な成績を経験したのでその経過を報告し,併せて尿管処理の問題について考察を加えてみたいと思う.

結腸結核に就いて

著者: 竹林淳 ,   高津郁男 ,   岡裕三 ,   野口房好 ,   岡野正敏

ページ範囲:P.273 - P.276

緒言
 腸結核をHippocrates や Galenは肺結核患者にくる重症赤痢と考えたが1816年Bayleが結核結節の特異性を提唱して以来多くの発表がなされた.腸結核に関する文献は古今東西枚挙にいとまがないが結腸結核に関する報告は極めて少く,本疾患がかなり稀有なものである事を物語つている.
 著者は今回上行結腸結核性潰瘍の1治験例を経験したので現在までの発表文献に就て簡単な総括的考按を加え愚見を試みた.

腸管嚢腫の1治験例

著者: 代田明郞 ,   三樹勝 ,   国吉真敏

ページ範囲:P.277 - P.281

Ⅰ.緒言
 腸管嚢腫に関する文献的記載は,既に古く1813年Tiedemann1)によつてなされ,次いでHousto(1814),Raesfeld2)(1853),Wyss3)(1870),Henning4),Sänger u. Klopp(1880)等の報告があるが,本症の自家経験例と共に系統的詳細なる報告をなしたのは,1881年Roth5)である.爾来欧米に於てはColmers6),Gfeller7),Lauche,Steammler8),Kettel9,31-54)等比較的多く報告されているが,本邦に於ては松岡10),田村11),木村12),上野13),田中等14)−30)20数例の報告に接するに過ぎない.
 而して本症は臨床的に術前適確なる診断を下すことは先ず困難で,イレウス症状,腫瘤其の他種種なる臨床症状を呈して開腹され,或は剖検に際し,或は他の疾患で開腹された際偶然発見されるものである.

交叉性腎変位(非融合性)の1例

著者: 勝見正治 ,   北原昭親 ,   一宮源太

ページ範囲:P.283 - P.285

Ⅰ.緒言
 交叉性腎変位は極めて稀に発見される泌尿器畸形の一つであり,昭和28年楠の報告に依れば本邦報告は未だ8例を算えるのみである.吾々は最近其の1例を経験したので報告する.

結石を伴える馬蹄鉄腎2例

著者: 斎藤淸 ,   丹野愛一 ,   松原宏

ページ範囲:P.286 - P.288

 馬蹄鉄腎は稀ではないが,最近,結石を伴える馬蹄鉄腎2例を経験したので報告する.

膀胱の血液タンポンを惹起せる間質性腎炎の1例

著者: 井上武夫 ,   黑田鉞郞

ページ範囲:P.289 - P.291

緒言
 腎出血は腎腫瘍,腎結核,腎結石に最も多く見られ,尚臨床上原因不明の腎出血として特発性腎出血として命名されている一群もある.軽度の血尿ならば,そのまま放置せられて,本態性腎出血に属すると思われる1例が,高度の血尿により膀胱の血液タンポンで尿閉を惹起し,引続き血尿高度の為止むなく腎剔出術を受け,組織学的に間質性腎炎と判明せる1例を報告する.

巨大膀胱結石症に合併せる右腎膿腫の十二指腸穿孔例

著者: 小野田一男 ,   村田由一 ,   渋谷敏男 ,   辻尚司

ページ範囲:P.292 - P.294

 巨大膀胱結石については既に内外に幾多の報告があるが,吾々は167gの巨大膀胱結石に合併した腎膿水腫が十二指腸部に穿孔して汎発性化膿性腹膜炎を起した稀有なる一例を経験したので報告する.

先天性膀胱外反症の1例

著者: 三上淸一 ,   葛西銀郞 ,   笹村雅人 ,   布施淸一 ,   三上正俊

ページ範囲:P.295 - P.299

 膀胱外反症に対し,尿管を含めた膀胱三角部とS字状結腸吻合術をなした1手術例を経験した.患者は術後19日目に肺炎のため死亡したが,剖検によりいささか病理学的知見をも加え得たので併せて報告する.

睾上体結核を合併せる睾丸畸型の1例

著者: 豊田利明 ,   佐藤淳一 ,   八角正司

ページ範囲:P.301 - P.302

 分類に困難を感じた睾丸畸型の1例を経験したので之を報告し,諸先輩の御教示を乞う次第です.

睾丸腫瘍(Teratocarcinoma)の1症例

著者: 古谷幸雄 ,   秦資宣

ページ範囲:P.303 - P.305

緒言
 睾丸腫瘍は臨床的に又病理組織学的に甚だ重要且つ興味ある疾患群の一つであり,古くから多くの人々によつて研究されている.発生頻度については,Gilbert & Hamiltonは全人口の0.0013%に見られると云い,Hinmanは男子入院手術患者の0.06%を占めると云い,更に東大泌尿器科の過去10年間の統計によれば全男子外来患者数25747例中34例(0.13%)を示すと報告されている.即ち比較的頻度の少い疾患である.病理組織学的研究については各学者間に異論があるが,Friedmen,Dixon & Mooreの1030例に対する組織学的研究は非常に価値あるものである.
 私共は最近本症の1例を経験し,病理組織学的に興味ある所見を得たので報告する.

稀な重複腫瘍(皮膚紡錘形細胞肉腫と胃腺癌)の1例

著者: 野口俊和 ,   大槻道夫 ,   礒利次 ,   宮坂知治 ,   鈴木愼二

ページ範囲:P.306 - P.309

 悪性腫瘍の多発は1869年Billrothがはじめて発表して以来,これに関する報告は比較的多いが,異種臓器に癌腫と肉腫の合併することは稀である.われわれは最近,皮膚に出来た肉腫を治療後胃癌の発生をみた症例を経験したので報告する.

先天性腸管閉塞症の1例

著者: 井上正 ,   田中勝治

ページ範囲:P.310 - P.312

 先天性腸管閉塞症は,Winderhofer(1859)が最初に記載したといわれ,Fockens(1911)1)によつて初めて手術成功例が報告されたが,DaWin(1939)によると欧米においては既に500例以上の報告があるという2).またEvans3)によれば本症はおよそ2〜4万の出生に対して1人の割合にみられるという.
 飜つて本邦においては,明治36年岡田4)の最初の報告以来,昭和14年大野5)の手術成功例があり,小坂6)は狭窄例を含めて本邦症例78(うち閉塞40例)を集めて詳細な統計的観察を報告している.

一部肉腫化せる胃線維腫,胃脂肪腫の1例

著者: 西村辰男 ,   矢野薰夫 ,   福島淸 ,   石田望

ページ範囲:P.313 - P.315

緒言
 術前腹腔内腫瘍,特に大網膜及び小網膜腫瘍と診断し開腹の結果小彎部より発生せる巨大なる夫々3種の性質の異る腫瘍にして病理組織検査の結果一部肉腫化せる症例を経験したので此処に報告する.

多発性頭蓋骨骨髄炎の1例

著者: 湊俊夫 ,   渡辺俊光 ,   石川育夫 ,   寺谷進 ,   安藤不二夫

ページ範囲:P.316 - P.317

緒言
 急性骨髄炎は日常屡々経験されるが統計上扁平骨,特に頭蓋骨に多発した骨髄炎は非常に稀である.我々は最近大阪市大沢田外科に於て経験した頭頂骨並びに後頭骨に多発した急性骨髄炎の1例を報告する.

薬剤

骨関節結核に於けるHydronsan(INHG)の使用経験

著者: 高山瑩 ,   佐藤二郞 ,   大戶煇也 ,   三好邦達 ,   井上仁 ,   朝日弘正 ,   小沼三郞 ,   本多量一 ,   長谷川芳男

ページ範囲:P.319 - P.323

緒言
 1952年INAHが発見されて,抗菌力が優れ且つ副作用の少いところから,広く抗結核剤として用いられている.然し,本剤と難も,大量に投与するときは,諸種の副作用が報告1,2)されているので,副作用の少い誘導体の研究が行われてきた.
 今回,吾々はINAHのGlucuronolactone誘導体のNa塩であるHydronsan,即ちSodium Glucuronate isonicotinylhydrazone(INHG)を骨開節結核患者に使用して,経過を観察し,2,3の知見を得たので報告する.

所謂五十肩に対するコンドロイチン硫酸関節内注入療法の臨床経験

著者: 佐藤和男 ,   緒方宏 ,   十市欣一 ,   矢野英雄 ,   高口洋郞

ページ範囲:P.324 - P.330

緒論
 老人の肩関節の疼痛及び運動制限を訴える患者を我々は日常相当多く診療しているが,所謂五十肩と称すべきものが大多数である.本症の定義については種々の考察がなされ,三木によれば五十肩とは明らかな原因を証明しにくい初老期肩関節の有痛性運動制限症と言いその原因も種々なものを含んでいるが,肩関節周囲炎の時に見る肩関節疼痛性制動症が最も五十肩の所見に一致すると,手術,病理組織学的検索の経験より述べている.
 又,水町はこれを分類し,1)腱性,靱帯性,2)関節性,3)神経性,4)内臓性,に分け,所謂五十肩なるものはその中腱,靱帯及び関節性のものが多く,一部に神経性のものがあると考えられるとし又肩胛部粘液嚢炎(Periarthritis scapulo-humeralis)と言うものが五十肩に一致するものとの見解をもつものがあるが,これは肩関節の周囲の粘液嚢に主たる変化を有するものであり,五十肩と別個に考えるべきであると述べている.

脊椎カリエスに対するピラジナマイド(PZA)投与による治療経験

著者: 岡崎亨 ,   小泉格 ,   吉川定雄 ,   大畠襄

ページ範囲:P.331 - P.335

緒言
 1)近年SM,PAS,INAH,Tibion等の有力な結核化学療法剤の出現により,結核の治療法が一大飛躍をとげて来た事は今更申す迄もない.我が教室に於ても,骨関節結核についてそれ等の投与成績をその都度報告して来た.今回はPZAを骨関節結核に応用して臨床経過を観察したので,主に血液所見,膿瘍瘻孔の大さ,肝機能について報告する.
 2)PZAはLederle研究所のKusher及びその共同研究者によつて合成された抗結核剤であるが,肝障碍等の副作用の為に一時見捨てられていた.然し,島本教授が再び取り上げ,内科方面では班研究として多数の症例について検討されている.

外国文献

気管枝鏡及び斜角筋淋巴腺の生体截片検査ならびに細胞学的塗抹法による肺癌の診断

ページ範囲:P.288 - P.288

 組織学的に肺癌である事を証明された42症例に対し検査が行われた.気管枝鏡による生体截切検査では40%診断され,その大部分は重層扁平上皮癌であつて,腺癌のように肺の末梢部にある場合は,本法では屡々決定できない.又‘下葉癌の大多数或いは気管枝主幹に起つたものは本法で決定されたが,上葉の場合では明白に成功率が減少する.(19例中僅かに2例)而して上葉の癌は下葉よりも一般的である故に特に意味深い.前斜角筋淋巴腺の生体截切検査法は悪性腫瘍の存在を組織学的に確定し,又,手術不能を決めるのに,該淋巴腺への転移は,癌の発生部位と組織学的性質によつて異る.即ち上葉癌或いは小気管枝や末梢気管枝に起つた癌の場合には起りやすいが下葉の場合は稀にしか転移しない.又腺癌や区別し難き細胞の癌は転移しやすく,かゝる患者の50%に見出されたけれども,重層扁平上皮癌では少なく,16例中たゞ1例のみ検査陽性であつたに過ぎない.なお本法では淋巴腺を充分とらなければならぬ事が注意されている.痰乃至気管枝分泌物の塗抹標本(パパニコロ)による細胞学的診断は69%陽性(疑陽性を加えれば88%)で,診断の価値ある助けになる.本法は肺末梢部に於ける癌では感度が減少すると云われてきたが,それでも15例中たゞ3例のみ陰性であつた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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