icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻5号

1959年05月発行

雑誌目次

綜説

術後Hepatargiaに関する研究

著者: 八田秋 ,   石川学 ,   鈴木和彥 ,   田北宗明

ページ範囲:P.465 - P.473

Ⅰ.緒言
 術後のHepatargiaは外科医にとつて最も不愉快な合併症の一つである.即ちひとたび発症すれば,従来は之に対する抜本的療法はなく,手を拱くほかはなかつた.
 現今といえどもなおHepatargiaの発生機作に関しては不明の点が多いが,PawlowのEck瘻による肉中毒説(1893),Mangioの肉中毒の本態に関するアンモニヤ中毒説1)(1934),Weil Mal-herbeのグルタミン酸によるアンモニヤ中毒の防止法の提唱(1950),更にWalscheの肝性昏睡に対するグルタミン酸の効果2)(1953)等の一連の研究により肝性脳障害と蛋白代謝異常の関係が示唆され,更にアミノ酸のDeaminationによつて生じたアンモニヤがHepatargia発症に重大な役割を演ずるであろうことが注目されるに至つた.

術技

末梢循環障害及び難治性創傷に対する酸素動脈並びに皮下注入療法について

著者: 井口潔 ,   八木博司 ,   坂口正昭 ,   中村輝久 ,   長沢和明 ,   小林迪夫 ,   中村望 ,   齊木秀彥

ページ範囲:P.475 - P.484

Ⅰ.緒言
 末梢循環障害の治療としては,従来,交感神経遮断術,また補助的療法として諸種薬物療法等が試みられ,それ等は一応かなりの治療成績を収めているが,症例によつてはかかる療法が一時奏効したとしても持続的効果を示すに至らず,従来の療法をうけ尽して何等の対策もなく,暗然と日を送る患著も少くない現況である.
 我々は,或る種末楕循環障害患者に対して,酸素並びにオゾンの皮下及び動脈内注入療法を行い,特に従来の療法によつてなお満足すべき結果の得られなかつた患者に対しても可成りの成果を収め得る場合もあり,また長期にわたる褥創患者に対しても本療法を試みてその効果を認めているので,これは一応臨床上試みらるべき療法と考え,ここに報告する次第である.

検査法

末梢血管の手術に必要な検査法

著者: 飯島登

ページ範囲:P.485 - P.488

 血管の外科的疾患において一般的なものとしてRaynaud症候群,Burger氏病,動脈瘤,動静脈瘤,血管腫,静脈瘤,静脈炎,動静脈血栓症等を挙げることが出来る.血管外科の近年における長足の進歩は代用血管移植によつて更にその外科手術適応の範囲が拡大せられつつあることは云うまでもない.勿論代用血管を使用する腹部胸部大動脈瘤の移植術においては手術,開腹,開胸そのもの或いは血流遮断,と云つた大きなストレスに関する種々の全身的な検査は充分に行わねばならない.ここでは実地外科医にとつて日常取扱う末梢血管を主として,簡単に施行し得る検査法について述べる.臨床医家にとつての第一の問題はそれが機能的なものであろか,器質的なものであるか,閉塞あればその位置とその範囲,側副血行の発達程度を知ることであるう.それと同時に対症的及び外科的治療を加えた後で循環障害が改善されたかどうかを決定することが必要である.勿論血管の解剖,生理的特色に基く基礎理念を充分に把握することは今更述べるまでもない.血管系の疾患においては一般に患者の疼痛の訴え,表面温度の変化,知覚異常,「だるい」「つれる」「疲れ易い」「冷え性だ」と云つた自覚症状の他に脈搏の微弱化または消失,皮膚色調の変化,潰瘍,脱疽と云つた他覚的所見の一つでも充分注意する心掛が必要であろう.

統計

蛔虫によるイレウスについて

著者: 岩沢貞

ページ範囲:P.489 - P.493

緒言
 本邦における蛔虫の蔓延について,森下教授は1930〜1947年の寄生率は34.7〜60.4%で,特に第2次大戦直後は実に驚くべき増加の傾向を示したが,その後は生活環境の改善に従つて漸次減少に向いつつあるという.しかし農村地帯においては現在もなお相当の寄生率を有しており,槇教授は最近の市部における寄生率20〜40%に対して,農村においては60〜80%に達すると述べている.
 蛔虫に関する研究は内科領域においては勿論多くなされているが,外科領域においても蛔虫の機械的或いは化学的作用,異所的迷入,また所謂蛔虫アレルギー等の機転により,しばしば重篤なる症状を呈するので,従来より幾多の研究がなされている.そしてこれ等は所謂外科的蛔虫症として重要な研究題目であつて,その一項目である蛔虫によるイレウスも亦外科臨床において興味ある問題である.

薬剤

心臓制止後開胸心臓マッサージにより完全恢復した1例—γアミノ酪酸使用例

著者: 平賀洋明 ,   笠置商次 ,   側見鶴彥 ,   山中純一郞 ,   菅野凞

ページ範囲:P.495 - P.498

 最近麻酔術の発展と外科手術適応の拡大,特に心臓外科の発展により,急性心臓制止の発生はむしろ増加の傾向にあり,従つてこれに対する適切な処置,即ち蘇生法の実施が今や欠くべからざる手段の一つとなつている.この問題は心臓外科に限らず他の部の外科においても時に経験される問題であるがその報告は極めて少く,しかも蘇生法実施による完全回復の報告は林等11)による1例以外みあたらない.
 我々は最近肺切除の目的で気管内挿管閉鎖循環エーテル吸入麻酔後急性心臓制止例に直ちに開胸,心臓マッサージを行い完全回復をみた1例を経験したので報告する.

キシロカイン(高比重)による脊椎麻痺法の経験

著者: 松山公三

ページ範囲:P.499 - P.501

 今日の外科学は手術手技の改良という歴史的な背景は勿論であるが,抗生物質,化学療法剤の発見,並びに麻酔学の発達によつて飛躍的進歩をとげた.手術を正確円滑に遂行し得るには最も手術し易い様に麻酔が施されることが大切である.今日気管内麻酔法の発達によつて,殆んどメスの及ばざるところなしと云つてよい程あらゆる部位における手術が可能になつてきた.しかし今日なお腹部以下の手術においては軽便安全にして麻痺効果の確実である点,また安価に実施出来る点において脊椎麻痺法は外科医に最も愛好される麻酔法の1つである.
 1885年CorningがCocaineを用いて犬の脊椎麻痺法実験を行い,Bierがこれを人間に始めて応用して以来,注入薬の改良,麻痺法術式の進歩を繰返しながら次第に安全に実施し得るに至つた.注入薬はCocaineよりTropacocaine,Novocaine,Nupercaine,Pontocaineと変遷し,これ等の比重も低比重が高比重の何れかを使用することが安全であることが分つて来た.また術式も1946年Lemmonは持続脊椎麻痺法を,1947年Sakladは脊椎分節麻痺法を発表し,応用範囲の拡大をみるに至つた.

ビタミンEによる静脈血栓症の予防と治療

著者: 橋本義雄 ,   川原啓美

ページ範囲:P.503 - P.507

いとぐち
 近年血栓栓塞症,特に術後血栓症に対する外科医の関心は次第に高まつて来ている.即ち,従来外科手術最大の合併症であつたシヨツクと感染が,いずれも種々な対策の進歩によつて次第にその重要性を失いつつある今日,それにかわつて大きな問題となるのが術後血栓症なのである.というのは,本疾患が肺栓塞という致命的な可能性を持ちながらも,その予防及び治療の点において依然として未解決のものを多く含んでいるからである.
 ビタミンEは,1948年Zierler10)によつて,Antithrombin作用のある事が提唱され,その後Ochsner6),Kay3)等によつて迫試されて以来,術後静脈血栓症に対する予防あるいは治療効果が検討されている.然しそれらの結果は互に矛盾し,作用機序についてもまだ一致した結論は得られていない,私共は,α—Tocopherol (ビタミンE)を用い,次の如き動物実験及び臨床経験により,静脈血栓症に対するその効果を認めたのでここに報告する.

胸部(肺結核)外科手術におけるカルニゲンの使用経験

著者: 林田隆輔 ,   上野昭 ,   田中二秀 ,   稲田正雄 ,   鐝光雄 ,   野沢文基

ページ範囲:P.509 - P.512

1.まえおき
 外科臨床上,胸部疾患に対する外科的侵襲が他領域の手術に比較して極めて大であり,且つ手術逐行上には,近代的麻酔設備と技術,進歩した手術管理法の駆使が絶対不可欠条件である点極めて印象的である.肺結核に対する外科的療法においても,たとえば胸廓成形術における縦隔変位,開胸手術における胸部大静脈のPoolingによる血液還流障害,不均等換気などの呼吸抑制或いは大量の出血,長時間にわたる手術侵襲などの特異な手術的条件を克服することが必要である.
 われわれは,最近外科領域の使用について中山,西邑,田中,川田等によつて報告されたカルニゲンを肺結核外科手術の管理上使用したので,手術中の強心昇圧剤を中心とした薬物導入の問題の一つとしてここに報告し,併せて2〜3考察を行いたい.

Plégicilの使用経験

著者: 村上衞 ,   登米実 ,   斎藤隆雄 ,   奥秋晟 ,   遊佐津根雄 ,   佐藤光男

ページ範囲:P.513 - P.521

緒言
 1950年フランスのLaboritが薬物冬眠を紹介して以来Phenothiazine誘導体を主剤とする強化麻酔乃至人工冬眠が盛んに行われるようになつた.患者にとつて大きな侵襲となる手術,比較的小手術だが患者の反射興奮性が高まつていたり或はこれが予想される手術等に対しては術前から使用し,また所謂術後植物神経症候群に対して使用して,数多くの成果を挙げ,近来の外科学の発展に多大の貢献を納めた.
 しかしこれらの目的に完全に一致し,しかも副作用の全くないPhenothiazine誘導体は現在のところ見あたらず,いろいろな薬剤が提供されている.今回われわれは三共製薬の御厚意によりPhenothiazine誘導体の1つであるPlégicilを入手し,ラッテ及び臨床例に使用していささかの知見を得たのでここに報告する.

プレジシルの強化麻酔に於ける使用経験

著者: 黑田秀夫 ,   佐貫和正 ,   龍田憲和 ,   牧田泰正 ,   伊藤盛夫

ページ範囲:P.523 - P.527

 アセチルプロマジン(プレジシル)は,フランス,クランビラ社によつて創製された新しいフェノチアジン系誘導体で,下記の如くクロールプロマジン(以下Cpと略記)に類似した構造式を有しているが,その作用は,Cpより数倍張力で,且毒性が少ないといわれている.
 吾々は,それに「自律神経遮断剤を用いての麻酔法」(臨床外科,第11巻,第2号)及び「乳幼児麻酔の新しい試み」(臨床外科,第13巻,第4号)に於て,Cpを主体とした麻酔法を発表したが,今回,三共株式会社の厚意により,プレジシルの提供を受け,50例に於て強化麻酔として使用する機会を得たので,茲にその大要を報告し,Cpと比較検討したいと思う.

新痔疾用軟膏Lubritex(A-40)の使用経験

著者: 長田博之 ,   安住新太郞 ,   飯田純

ページ範囲:P.528 - P.531

1.緒言
 現今,痔核を主とする肛門疾患に対して,一般に手術的療法が行われているが,炎症症状を伴い疼痛や出血の激しい痔核や,或は痔裂に対して,手術的療法に先立つて,優れた肛門軟膏や坐薬による治療の必要なことは衆目の一致する所である.
 我国で従来使用されていた痔核への薬剤の多くは,カンファー,抱水クロラール・メントール,タンニン,ロート,デルマトール等を主剤とし,これに鎮痛剤,創傷消毒剤,創傷治療剤を配し,賦型したものである.近時エフェドリン,プリビン,酒石酸アドレナリンを主剤に配した薬剤の出現を見た.従来痔核に対してアドレナリン坐薬が有効であるといわれており,日本薬局法に塩化アドレナリンの項を見ることが出来るが,本剤は不安定であること,アドレナリンの血圧に対する不愉快な副作用があること等の欠点の為に,日常の使用には多大の困難を感じていた.

キシロカイン脊麻の臨床的研究

著者: 前田昭二 ,   滝田博

ページ範囲:P.533 - P.539

緒言
 近時,外科学の急速な発展に伴い,麻酔法の進歩も著しいものがあるが,全麻の進歩に伴い脊麻も改めて再認識されつつある.我が国の現状に於ては,手技の比較的簡単な脊麻1回注入法は下腹部及び下肢の手術には欠くことの出来ない便利な麻酔法であり,尚広く使用されて居る.
 Cocaineの発見(1860)とQuinckeによる腰椎穿刺法の創案(1891)の後に,Bier〔1899〕が両者を組合せて自己の軟膜腔内にCocaineを注入したのが脊麻の初めであるが,以来脊麻に就いてはその手技及び使用薬剤に関する数多くの研究が成され,多くの脊麻用液が紹介された.我が国に於てはPercamin-S(斉藤,朴,1941)の創製により,脊髄調節麻酔法が確立され所謂Lumbalshockの危険も激減するに至り,本薬液使用による脊麻が一般化して現在に至つた.

外国文献

睡眠剤バルビツレート急性中毒の治療/末梢血流障碍に対する交感神経切除術の効果

著者: K.N.

ページ範囲:P.531 - P.531

 Copenhagenのpoisoning ce-nterには年間900例の中毒患者の入院があるが,その75%はバルビツレート急性中毒であつて,この問題は最近無視できないことがわかる.わが日本でも多数の本症発生があり,臨床家にとり厄介な問題である.しかしバルビツレート中毒は下にのべるような姑息的治療でよく救命することができるのであつて,1)呼吸気道の確保,呼吸量を350cc以上に保つこと,頭側を5°低くして分泌物の流出をたすけること.2)体内に残存するバルビツレートを急速に排除するため,胃洗滌を行い,5%糖液の静注1日3000cc程度を投与を行う.3)必要に応じ気管内挿管を行つて補助呼吸を行い,低血圧に対してはNeo-synephrineを用いる.4)感染の予防,口腔や目の衞生に注意する.排尿障害があれば導尿を行う.
 さてComaにおちいつている患者に中枢刺戟剤analepticaを用いるべきかどうかという点で相反する意見がある.

症例

Lateral Aberrant Thyroidに対する疑義

著者: 小野百之助 ,   草刈一友 ,   木村正也

ページ範囲:P.541 - P.544

 近時結節性甲状腺腫の悪性化に関する文献は枚挙に暇がないが,しかも原発巣が目立たずに,転移巣のみが増大している場合には,兎角大きい方に目を奪われて原発巣を見落しがちである.
 我々も下顎腫瘍を切除して,組織学的に検索して甲状腺癌転移である事を知り,更めて精査して始めて固有甲状腺部に結節性癌腫を見出した経験もあるが(外科宝函23巻6号日高),最近相続いで従来lateral aberrant Thyroidとして簡単にかたづけられていたものに疑義を挿むべき症例に接したので報告する.

乳児の急性化膿性肋骨骨髄炎

著者: 和田守宏

ページ範囲:P.545 - P.547

 肋骨の急性化膿性骨髄炎は,他の短骨や扁平骨と同様に,長管状骨のそれに比べると比較的稀なものであり,主として幼児に見られるものであるが,私は最近,生後9カ月の乳児に肋骨の急性化膿性骨髄炎を経験したので,臨床所見の詳細を述べ,本症に就て若干の考察を試みたい.

脾嚢腫の1例

著者: 栗原重雄 ,   松尾三千雄 ,   中村義尚 ,   島田博匡 ,   浅野祥三

ページ範囲:P.549 - P.553

 脾嚢腫は稀有な疾患で本邦にては未だ20余例の症例しか報告されていないが,我々は最近胃部膨満感,上腹部痛を主訴として来院した患者で胃部X線像により幽門部狭窄と左季肋部に石灰沈着した林檎大,円形の陰影を認め術前に脾嚢腫と診断された珍らしい1例に遭遇したので報告する.

結腸及び左腎盂に発生した重複癌の1例

著者: 中村正一郞 ,   亀谷雄次

ページ範囲:P.554 - P.558

緒言
 同一人に於ける原発性悪性腫瘍の多発は稀有なものとされている.多発性原発癌いわゆる重複癌に関しては,Billroth(1860),Schimmelbusch(1889),Goetze(1913),Puhr(1927)等によつて種々と論議され,本邦に於ても林が1907年に報告を行なつて以来,最近に於ても山口,山川等の報告がある.
 著者等は最近43歳の男子で横行結腸に原発した腺癌切除手術3年後に,左腎に発生した腫瘍を剔出して組織学的検査の結果,左腎盂に原発した定型的な移行上皮癌の1例を経験したのでこゝに報告する.

閉鎖孔ヘルニアの1治験例

著者: 比田勝一彥 ,   坂口正昭

ページ範囲:P.559 - P.560

1.緒言
 閉鎖孔ヘルニアに就いて欧米ではArnaud de Ronsil(1724)が記載して以来,可成りの臨床例が報告されている.併しながら本邦では川瀬(大正15年),深谷(昭和15年),徳重(昭和19年),大堀(昭和21年),今井(昭和24年),後藤田(昭和28年),粟津(昭和29年),丸岡(昭和32年),丸山(昭和31年),渡辺(昭和28年)の計10例の報告に止まるようである.我々は最近その1例を経験したので,ここに報告する次第である.

尿膜管嚢腫の1例

著者: 西脇勉 ,   越智功 ,   原田種一

ページ範囲:P.561 - P.563

 尿膜管嚢腫は尿膜管瘻,臍膀胱瘻と共に,胎生期に存在した尿膜管(Alantois)の閉鎖不全による疾患であり,卵黄管閉鎖不全にもとづく一連の疾患と共に,発生学上興味のある問題である.最近われわれは膀胱に開口せる尿膜管嚢腫の一例を経験し,手術的に治癒せしめ得たので報告する.

後部縱隔洞Neurinomの1治験例

著者: 斎藤憲一 ,   中村賢吉 ,   八木礼二

ページ範囲:P.565 - P.567

 最近,閉鎖式循環麻酔法,化学療法,輸血,輸液の進歩と,手術手技の向上によつて,胸部外科の著しい発達は,X線検査の普及と相俟つて,我が国でも縦隔洞腫瘍の手術治験例が急激に増加しつゝある.我々は,集団検診により発見された縦隔洞Neurinomを剥出治癒せしめた1例を経験したので茲に報告する.

術後空腸潰瘍による胃空腸横行結腸瘻の1例

著者: 百瀨孝男 ,   荻原昭

ページ範囲:P.568 - P.571

 胃十二指腸潰瘍手術後に生ずる消化性空腸潰瘍は,胃切除術を行わず胃腸吻合術のみ行つた場合に比較的多く発生するものであるが,我々は最近胃切除術後に生じた空腸潰瘍が,横行結腸に穿孔し,胃空腸横行結腸瘻を形成した珍らしい症例を経験したので報告する.

虫垂粘液嚢腫の2例

著者: 辻義夫 ,   梅山馨 ,   吉村守雄 ,   高須高

ページ範囲:P.572 - P.574

 虫垂粘液嚢腫は1842年Rokitanskyが虫垂水腫として始めて記載された疾患で,その後内外に於いて多数の報告がある.最近私共沢川外科で2例の虫垂粘液嚢腫を経験し,その1例は比較的巨大なものと考えられるので報告する.

若年者胃癌の1例

著者: 早坂滉 ,   下地晋 ,   守屋万喜男 ,   渡辺喜久馬 ,   森山元

ページ範囲:P.575 - P.577

緒言
 胃癌の発生は一般に高齢者に多いことは周知のことであるが,若年者に発生することもまれではなく,しかも近年とくに若年者胃癌症例が漸増の状況にある.わが教室においても最近満20歳の女性に胃癌を経験したので報告する.

肝管癌に対する肝空腸吻合術の1例

著者: 北川昭三 ,   平尾喜茂

ページ範囲:P.579 - P.581

 我々は最近肝管癌で胆汁排出が完全に遮断された高度の黄疸を伴う一症例に遭遇し,肝空腸吻合術を施行し鬱滞せる肝内胆汁の腸管内排出に良好な結果を得たので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?