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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻6号

1959年06月発行

雑誌目次

綜説

乳癌根治術後淋巴浮腫の成因考察

著者: 真鍋欣良 ,   戶根昭彦 ,   村尾伝蔵

ページ範囲:P.589 - P.594

 乳癌根治手術後に上肢の腫脹を来たすことは可成りあり,Halsted1)は1921年これをElephan-tiasis Chirurgicaとして報告しているが最近はpostmastectomy lymphedema(以下P.L.と略す)或いはpostmastectomy swellingと呼ばれている.しかしてこれらの中には重篤で疼痛や諸種の不快を訴えときには明瞭な淋巴管炎をともなうものもあるが多くは軽症で無症状のものやほとんど訴えのないものもまた多い.従つて実測しないと観過されることがありMacDonald2),Hol-man3),Villasor4),Fitts5)等も注意して調べると高率にみられると述べている.

橋本氏甲状腺炎の臨床的研究(第1報)—甲状腺機能の検討を主として

著者: 大原梧樓 ,   渡辺薰 ,   野口秋人

ページ範囲:P.595 - P.600

1.緒言
 慢性甲状腺炎は主に病理学的見地から,リーデル型,橋本型,de Quervain型亜急性甲状腺炎の3者に分類されている.われわれは野口病院において過去20年間に手術した112例の非特異性慢性甲状腺炎を,第1表のごとく橋本型,リーデル型,リーデル橋本混合型,de Quervain型の4者に分類したが,この中橋本氏甲状腺炎1)は最も多く93例で全体の83%を占める.しかし橋本氏甲状腺炎の初期と考えられるいわゆるfocal Hashi-moto2)および結節性甲状腺腫にして橋本型の組織所見を有する症例はこれを除外した.われわれはこれ等の橋本氏甲状腺炎を主に甲状腺機能の面から種々検査を行つて術前の臨床症状を検討した,なお術後および遠隔時の機能と手術に関しては引続き発表の予定である.

門脈外科における肝内動脈植込法に関する研究

著者: 鈴木茂

ページ範囲:P.603 - P.631

緒言
 1936年Rousselot1),Whipple2)等は肝硬変症やBanti氏症状群の際の門脈床の病理学的変化と門脈圧との関係を追求し,門脈床のいずれかの部位における閉塞機転に注目して門脈圧亢進症なる概念を提唱した.その後血管外科の進歩にともない,1945年Whipple3),Blakemore,Lord4),1947年Linton5)−6)等によつて本症に対する門脈圧低下の根本的対策として門脈系大静脈系吻合術が試みられてから,多くの系統的研究と臨床的応用が行われる様になつた.
 当教室に於ても昭和24年以来,門脈圧亢進症について綜合的な実験および臨床的研究を重ねて来て,その成績については木本教授7)−19)67)によつてしばしば発表されて来た.

検査法

輸血に必要な検査法

著者: 飯島登

ページ範囲:P.633 - P.635

 血液は生命の根源となる重大な体成分でありその循環外への逸脱は直ちに生活力の減衰,栄養の低下,血液循環障害を惹起し大量の失血ではすなわち失血死に終ることは今更述べるまでもない.さて入体における全血液量は体重の約1/13乃至1/20とされ1.5乃至2.0立の血液が短時間に失われれば危険となる.日本人のショック発生出血量は体重の大約2%,循環血液量の20乃至25%と見なされている.しかし出血ショックはまた出血の速度に大いに関係するものであり,緩慢に出血する際には相当量の出血でも堪え得るものである.女子は一般に男子に比較して出血の抵抗力が強く,回復もまた迅速であるが小児,老人は危険が多い.手術は出血を除外して論じ得ない以上術前における諸種の臨床検査によつて術前準備としてまた術後の嘔吐,胃液の吸引誘導によつて失われる体液の予想外に大量なることを思えば輸血は術前術後の栄養とも関聯して重大なる問題であることは明白である.
 単に輸血は体液ならびに栄養の補給のみでなく内分泌液,酵素,補体の補充の他に止血,凝固機転の促進,造血器官の刺戟作用によつて血液の再生促進,代謝および諸臓器機能の促進を行うことが知られている.

薬剤

整形外科領域における静脈麻酔剤(Eunal)の使用経験

著者: 栗原宏介 ,   佐藤勤也

ページ範囲:P.637 - P.640

緒言
 簡単で効果的な麻酔法として,静脈麻酔は広く使用されている.特に短時間で済むような手術に対しては,いわゆるultra short actingの麻酔剤による静脈麻酔は極めて有効である.ultra short actingの麻酔剤としては,従来Barbiturates系の麻酔剤がその中心であつたがこれらの薬剤は呼吸抑制,血圧下降,蓄積作用および副交感神経刺戟作用などの欠点があるので,時に重篤な偶発症を惹起することは衆知のことである.
 最近,呼吸循環器系に対し障害の少ないThio—barbituratesについて盛んに研究されているが,また一方Barbiturates系以外の静脈麻酔剤に関する研究も大いに進められている,すなわちホルモン作用を有しないSteroid系のViadrilや,Eugenolの誘導体である,Eunalなどは,その成果の一つと思われる.

肺結核外科に於ける合成止血剤Sodium Naphthionateの使用成績—特に出血と輸血の問題に関連して

著者: 岩瀨敬治 ,   井上スミ ,   兪長昌 ,   中島芳郞 ,   仙田善朗

ページ範囲:P.641 - P.647

緒言
 肺結核外科,特に肺切除術においては,比較的大量の出血を招来する場合が多く,その出血の大部分は癒着剥離に伴うものである.
 従つて,手術手技において如何に綿密を期しても多量の出血をまぬがれ得ない場合も少なくない.

汎発性カンジダ症に対するマイコスタチン療法について

著者: 河村栄二 ,   內田忠男 ,   秋山洋

ページ範囲:P.649 - P.652

 最近,抗生剤療法の普及とともにいわゆる菌交代症の一つとして真菌症の増加が問題視されるに至つた.殊にその治療面において表在性,限局性のカンジダ症には有効な抗真菌剤が発見されているが,一方深在性汎発性カンジダ症に対しては特殊治療法が確立されていない現状である.
 われわれは昭和33年6月,食道下部,膵尾部に浸潤した噴門癌に対し,胃全剔,膵脾合併切除術を行い,術後の感染予防および併発した膿胸治療のために抗生剤療法を行つた後に発生した汎発性カンジダ症に対し長期間に亘るマイコスタチン療法を行い良転せしめ得たと思われる1例を経験したので,その臨床経過ならびに細菌学的検査成績について大要を報告する.

症例

ABO式血液型不適合輸血2例とその検討

著者: 室裕之

ページ範囲:P.653 - P.655

緒言
 近時輸血の治療医学に占める分野は,極めて大きくその使用量も激増の一途を辿つているが,その反面,輸血による副作用の症例報告も次第に増加してきた.そして各国においては,これが安全実施に対して種々研究検討が加えられているが,未だ充分満足しうる成績は見られない.なかんずく,異型不適合輸血時には,最も重篤な副作用たる溶血性反応を来たし,しばしば死を招くことすらある.さらに,Rh-Hr式血液型をはじめ多くの新しい血液型が発見されている今日,輸血はABO式血液型が同型であるからといつて決して安心すべきものでないことが理解されるようになり,輸血前の交叉試験の実施がこれの防止対策の一大手段として強調されるようになつた.
 然るに,この輸血前の交叉試験を行わなかつたため不幸にも2例の異型不適合輸血を経験したが,その症状経過に興味が持たれた故ここにその概略を述べ併せて教室における保存血使用後3年間の異型輸血の原因ならびに頻度に考察を加えた.

Hürthle cell adenomaの1例

著者: 矢內謙 ,   遠藤健七郞 ,   石井守

ページ範囲:P.657 - P.660

 1881年,Baber1)が特有の明るい好酸性の多角大型細胞を有する甲状腺例を報告したのを始めとし,1894年Hürthle2)が幼弱犬甲状腺中に,上述の細胞を発見,その後,Langhans3)の報告もあり,この特別な細胞型の腫瘍に対し,1924年,Ewing4)により,Hürthle cell tumorなる名称が与えられた.爾来,この種の報告は,今日迄,外国では,約200例を数えるが,本邦においては少く,その発生源の問題,良性悪性の問題に関しては,幾多の未解決の問題が残されている.最近,われわれも多発性嚢腫性甲状腺腫の診断の下に,剔出術を施行し,組織学的検査の結果,その1例を経験したので報告し,文献的考察を加えた.

非観血的整復を試みた五筒性回盲部腸重積症の1例

著者: 池田典次 ,   酒井達二

ページ範囲:P.661 - P.664

緒言
 乳幼児における腸重積症の治療は観血的および非観血的方法に大別され,それぞれの利害得失については従来,種々論議せられているところであるが,われわれは最近,単純な回盲部腸重積症の診断の下にレ線透視下バリウム注腸法を施行し,これのみによつて完全に整復されたものと誤り,ために手術時期を徒らに遅延せしめて不利な結果を招くに至つた五筒性腸重積の1例を経験し,本症の非観血的療法の成否を判定するにあたつては特に慎重を期さねばならぬことを反省,痛感せしめられたので,ここに症例を報告し,失敗の原因等について若干の考察を試み,今後の参考に供したいと思う.

睾丸奇形腫の1例

著者: 増田茂則

ページ範囲:P.665 - P.668

はしがき
 睾丸に原発する腫瘍は,他臓器の腫瘍にくらべ比較的稀である.睾丸に原発した奇形腫は,片山(1899)の第1例を始めとするが,良性の睾丸奇形腫の報告例は,現在までに僅か50余例にすぎない.著者は,最近,良性の睾丸奇形腫の1例を経験し,組織学的に確認し得たので報告し,あわせて文献的考察を加えてみたい.

所謂口蓋唾液腺混合腫瘍の1例

著者: 遠藤健七郞 ,   矢內謙 ,   外田茂雄

ページ範囲:P.669 - P.671

 口腔に良性悪性を問わず腫瘍の発生することは他の一般組織と異ならないが,特異なものの一つとして唾液腺混合腫瘍が挙げられる.本腫瘍の多くは耳下腺に発生することは周知の事実であるがその他,顎下,舌下,口蓋,口唇等にも原発し,かつ特殊な組織学的構造を持ち真の意味のそれと区別して一般にいわゆる混合腫瘍として取扱れている(Willis1)).著者等は口蓋に発生したいわゆる唾液腺混合腫瘍の一例を経験したので報告し,いささか考察を加えたい.

右橈骨に発生したエオジン好性肉芽腫の1症例

著者: 奥茂信行 ,   守屋万喜男 ,   佐藤隆雄 ,   工藤富隆

ページ範囲:P.673 - P.675

 エオジン好性肉芽腫はエオジン好性球の強度の浸潤を特徴とする良性腫瘍に属するが,外傷あるいは感染が起因となつて発生するといわれ頭蓋骨,肋骨,四肢骨,骨盤等に見られる.レ線所見で海綿質および骨皮質に軽度の骨破壊があり一部皮質膨隆,内外性骨新生像が見られ,一見悪性腫瘍が疑われるが流血中にエオジン好性球の増多があるのが特徴で,予後はほとんど良好,掻爬ならびにレ線照射により治癒するものである.われわれは最近右橈骨に発生した本症の1症例を経験したのでここに報告する.

外傷性乳糜胸の1治験例

著者: 佐藤宗夫 ,   近田昭彦

ページ範囲:P.677 - P.679

 外傷に起因する乳糜胸は極めて稀なる疾患にしてわが国における報告例は5例に過ぎない(第1表).外傷性乳糜胸は胸管の損傷によつて発生するものにして,胸管の損傷は手術の場合は大部分頸部および胸腔内手術に併発し,外傷の場合は脊椎,肋骨の骨折等強い胸部損傷に併発するものである.われわれは最近下部胸椎,肋骨々折の患者に右側乳糜胸を合併した重篤な症例を経験し,開胸排液大量の輸血輸液によつて治癒せしめたので報告する.

溶血性連鎖球菌筋炎の1例

著者: 佐々木忠重

ページ範囲:P.681 - P.683

緒言
 多発性筋炎は欧米においては報告例の少い疾患であるが,わが国では可成り古くから,臨床的にも実験的にも多くの文献が見られる.特にその成因に関しては種々の説が提唱され,未だ諸家の意見は一致しない所である.小沢教授は本邦に多いことから,白米常食によるビタミンB1欠乏によるものだとしているが,白羽,古川,西脇,奥田の諸氏は,多発性筋炎患者,および実験的に多発性筋炎を起させた家兎についてのビタミンB1定量を行つて,その値は総て正常範囲内であつたと述べている.しかし乍ら白羽教授は,ビタミンB1欠乏時に筋組織の間質細胞の増加,筋線維断裂,変性などが見られるという間島氏の報告や,鈴江教授らの脚気心のアレルギー発生説から考えて,化膿性筋炎におけるビタミン欠乏と,アレルギーとの間には何等かの密接な関連があるかも知れないことを示唆している.また古川氏はミオグロビン抗体が筋膿瘍に際して血清中に出現するので,このミオグロビン抗体によつて起つた局所過敏症が中核となり,これに流血中の生菌が侵襲して,多発性筋炎が起るのであると云う.

腹壁デスモイド(Desmoid)の1例

著者: 米津穆

ページ範囲:P.684 - P.687

緒言
 デスモイドについては欧米では多数例の報告をみるが,我が国では意外に少く,最近田辺等1),根本2),塩沢3)の報告のあるほか2〜3の報告を散見するにすぎない.著者は最近前報壁に発生し腹腔内に発育した巨大なデスモイドの1例を経験したので,こゝに詳細を報告し諸賢の御批判を仰ぐ次第である.

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集談会

著者: 石白佳正 ,   近藤孝 ,   三樹勝 ,   池田貞雄 ,   千葉上 ,   細部一 ,   吉川謙蔵 ,   田村竜男 ,   古味信彥 ,   秋山義明 ,   阿部千秋 ,   楠原淳郞 ,   湯浅昂 ,   矢後謙一 ,   坪井重雄 ,   木下祐宏 ,   宮崎秀樹 ,   染谷守 ,   赤沢喜三郞 ,   三浦のり子 ,   竹內辰五郞 ,   饗馬庄 ,   近藤進 ,   宗健六 ,   織本正慶 ,   羽田野茂 ,   中川昇 ,   金田亮 ,   森下健 ,   古瀬三弘 ,   高橋寺美雄 ,   野村進 ,   勝木道夫 ,   成田英三郞 ,   中谷欣二 ,   村田勇 ,   吉友睦彥 ,   木元正二 ,   斎藤三彥 ,   河內直治 ,   福山殖 ,   鶴井源太郞 ,   神山文也 ,   門馬良吉 ,   山本芳彌 ,   富田国男 ,   相野田芳教 ,   小川茂樹 ,   疋島巖 ,   坪田謙 ,   熊野豊彥 ,   吉田実 ,   勝木育夫 ,   大田英夫 ,   手井喜久男 ,   古戶節郞 ,   西浦幸男 ,   清水真澄 ,   片岡玲典 ,   深瀬宏 ,   高橋喜美江 ,   山本信二郞 ,   北川勳 ,   谷口茂 ,   小坂政一 ,   小林録郞 ,   能登佐 ,   河原宏 ,   奥田幸造 ,   長谷部佑継 ,   才川清 ,   高崎義一 ,   岸本文雄 ,   米沢繁男 ,   小原春夫 ,   井村慎一 ,   伊藤戍 ,   河合勝 ,   河合卓一 ,   森川幹久 ,   高橋喜美雄 ,   高瀬 ,   橋本誠二 ,   水野襄一 ,   宮島孚 ,   新野武吉 ,   高瀬武平 ,   古野美喜夫 ,   卜部美代志 ,   春木靖男 ,   坪川孝志 ,   小林喜順 ,   荒尾正明 ,   西能正一郞

ページ範囲:P.688 - P.703

第573回東京外科集談会
1)ミクリッツ症候群とパロチンの関係について
 四肢に冷感,チアノーゼ,皮膚温低下,血行障害,白血球増多,趾骨末端の肥厚および舌下腺の腫脹のあるミクリッツ症候群に対して,パロチン1回3mg,週15mgの使用により舌下腺は次第に縮小し,36mgで鳩卵大となり,好酸球は51%から31%に減少したが45mgの使用で副作用の発生のために中止した.以後レ線照射全量1600rで反対側の腫脹消失し白血球も7500に減少し3200rで好酸球は15%にまで減少し殆んど治癒した.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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