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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻7号

1959年07月発行

雑誌目次

綜説

末梢血行障害を伴う血管炎の臨床

著者: 神谷喜作

ページ範囲:P.709 - P.720

 末梢血管閉塞を惹起する原因には神経性のものもあるが,その大部を占めるのは血管炎に由来するものであろう.
 一口に血管炎といつてもその原因は種々であつて,化膿性動静脈炎もあり,また梅毒,結核による血管炎もある.動脈硬化症も一種の血管炎と考えることが出来る1).これらは一応その本態が明かであるが,ここに最近注目をあびているのが膠原病という概念に含まれる血管変化である.膠原病という病名を臨床的につけることは当をえていないので,むしろその血管の変化に重きをおいて眺めた方が臨床的に把握し易いし,また実際的である点から"血管炎"という新しい概念に一括した方がよいという提案2)もある.この提案の主旨には賛意を表するが,単に"血管炎"というと字句的には化膿性血管炎等の原因のはつきりしている血管炎をも含めることになる.原因のはつきりした群は夫々独立させておけばよい.原因のはつきりしない群には夫々何か適当な名を与えておくのがよいと思う.

胃結核症

著者: 朝倉哲彥 ,   高橋一洋

ページ範囲:P.721 - P.727

 胃結核症は,1824年Backhausenにより,初めて記載された疾患であるが,臨床上非常に稀なものである.われわれは,ここに胃結核症の一例を報告するが,この症例は国立東京第一病院外科における約2000余の胃切除例中,はじめて経験したものである.

術技

原発胆道癌の手術例—新肝門空腸吻合

著者: 青地修 ,   塩田亮三 ,   安住修三 ,   桑原健造

ページ範囲:P.729 - P.731

Ⅰ.まえがき
 原発性の胆嚢および肝外上部胆管癌は極めて稀有な疾患とは現在ではいい切れない.1772年にMaximilianが始めて2例を報告して以来,胆道手術中に見出だされる頻度はKehr,FinneyおよびWarren and Balch等に依れば1.5%〜3%に及ぶとされる.然し乍らこれが治療については専ら対症的に処置されて居り,根治手術に成功せるものは,わが国における本症約100例は勿論,諸外国においても皆無である.われわれは最近胆道3者分岐点を中心とし,胆嚢および上下総胆管に及べる単純癌の一例に遭遇し,これに対して理想的根治手術に成功したので,この際行つたわれわれの胆道再建法である肝門空腸吻合の新術式と共に,諸兄の御批判を仰ぎたいと思う次第である.

検査法

心臓大血管造影法

著者: 飯島登 ,   上野明

ページ範囲:P.733 - P.737

 血管撮影法の中,末梢動静脈撮影の方法,手技については既に述べたが,今回は心臓,ならびに大血管の造影法を詳述したい.今日,心血管撮影法は手技,および造影の進歩,ことに副作用の少い造影剤が使用されて以来,重篤な合併症も減少し漸く広く一般臨床医にも応用される時期に来たものと思われる.それでもなお,血管撮影は外科医にとつて慎重を要すべき検査法の1つである.単に造影剤による影響のみならず,麻酔剤のみによつても急性危険症の発することもあり,殊に後述する経腰的腹部大動脈ではその性質上,後出血,臓器損傷を起す場合のあることは常に念頭においておかねばならない.しかし,血管撮影はこれが旨く行つた場合はその判定は極めて容易であり,診断学上決定的な結論をうることが少くない.本稿においては従つてその必要材料,方法,その他注意を要する点を述べる.
 心臓,大血管の撮影の方法は末梢静脈内に直接造影剤を投入するか,あるいはカテーテルを用いて目的の部位迄これを挿入するか,また動脈,ことに腹部大動脈の場合は太い穿刺針により,いわゆるBlindで穿刺するか等の3方法で大体その目的を達しうる.

統計

癌研究会附属病院外科に於ける結腸癌の統計的観察

著者: 高木国夫

ページ範囲:P.739 - P.747

1.緒言
 結腸癌は消化管悪性腫瘍中,胃癌,直腸癌についで多く,その統計的観察の報告は多いが,本邦においては未だその遠隔成績に関する検討が少いように思われる.われわれはここに癌研外科の1946年9月〜1958年8月の12年間における結腸癌102例の統計的観察および遠隔成績を報告する.

日大第一外科教室における痔核手術の遠隔成績

著者: 青木三郞 ,   神森真一郞 ,   加藤出

ページ範囲:P.749 - P.753

Ⅰ.緒言
 われわれは昭和23年4月当外科教室開設より昭和32年12月に至る約10年間に入院手術を行つた痔核手術症例210例にたいする遠隔成績を調査し,いささかの知見を得たのでここに報告する.

薬剤

トロスチンに関する知見—臨床的,実験的検討

著者: 杉原博 ,   阪田光昭 ,   志水浩 ,   小野晶美 ,   吉田茂

ページ範囲:P.755 - P.759

 われわれの教室において止血剤を必要とする症例は,肺,縦隔洞腫瘍,食道癌手術時などの癒着剥離面よりの後出血,胃癌手術時の広汎リンパ腺廓清巣よりの後出血などが大多数を占め,また黄疸などの肝障害を合併し,このため凝固時間の延長を示す手術患者,バンチ氏病などの際に術前より投与する例である.少数ではあるが最近の手術侵襲の拡大とともに,保存血大量輸血に伴う出血傾向発現例があり,これは多くの場合致命的合併症であつて強力な止血剤を必要とする.現在多数の止血剤が市販されているが,その止血機構に関与する性質が異り,従つて臨床的な適応も自ずと分れてくる.
 われわれは最近中外製薬よりTrostinの提供をうけたので,本剤の止血機構に対する作用機序と臨床効果について検討を加えてみたい.

高位腰麻時のメキサン使用経験

著者: 陣內伝之助 ,   小坂二度見 ,   松田住蔵 ,   戶谷拓二

ページ範囲:P.761 - P.763

序論
 麻酔中特に高位腰麻施行時における低血圧の予防およびその処置として,1.血管収縮剤の使用,2.酸素の供給3.輸液等が用いられる.そのうちでも高位腰麻時の循環動態の主変化はDrippsが云つている様に80%が血液の末梢の分散である.それに対しては血管収縮剤が最もよく奏功する.1897年AbelがEpinephrineを発見して以来Ephedrine,Noradrenalin,Neosynephrine,Me-thedrine,Cobefrine等の血管収縮性昇圧作用をもつPhenyl-ethylamine-syntheticsが多く発見され合成されて来た.
 血管収縮剤には心臓および循環系に対する作用機序から大別して次の2群に分けられる.即ち1つは交感神経促進性に働く(心臓に対しても同様)EpinephrineおよびEphedrine等と,他は直接末梢血管に作用しその収縮を来たして血圧を上昇さすNeosynephrine,Noradrenalin等である.

腹部神経症に対するコンドロン腹腔内注入経験例

著者: 槌谷薰

ページ範囲:P.765 - P.767

緒言
 開腹術後の後遺症状として腸管癒着の為,腸閉塞症以外に,腹痛,慢性便秘,鼓腸を訴えるものが甚だ多い.かかる症状群に対して荒木教授は腹部神経症と名付けた.
 本症の原因である腸管癒着を予防する為に,古来幾多の研究が行われ最近では,山田,堀口はナイトロジエン・マスタード,劉等はナイトロミンを使用し,栗田はACTHを,又栗田,北野等はトリプシン(持田)を佐藤等はジエラチン膜,人羊膜を用い,又ACTHが有効ではないかと報じ,松葉は尿素を,竹内等はアドナ・ルチンの使用を報告しているが,末だ確実なる方法が見出されていない.

外国文献

食道癌の姑息的療法としてのプロテーゼ/多発性骨折のearly care

ページ範囲:P.763 - P.763

 切除不能の食道癌に対する姑息的な治療法として病巣部にプロテーゼを入れ通過障害を軽減しようとする試みがある.Souterは1927年食道の閉塞部に経口的にチューブを挿入しようとした.まずブジーで拡張しておいてゴム管チューブを挿入する.麻酔と胸部外科の発展に行い,開胸,食道を露出し病巣部のすぐ口側からプロテーゼを入れることも行われた.
 然し,以上の方法は瘻孔形成,膿胸,チューブの滑脱の危険性多く一般的ではない.ことに末期患者には試験開胸すら侵襲が大きすぎる.

症例

肝左葉ゴム腫の1手術治験例

著者: 石田道太郞 ,   黑岩純 ,   山本隆彦

ページ範囲:P.769 - P.772

 肝臓ゴム腫は比較的稀有なる疾患にして,駆梅療法の進歩せる今日その数は著しく減少しており,臨床的に遭遇することは極めて少なく,また看過され易いものである.McCraeの統計によれば27,000人の外来患者の中,僅か56例,全例中の0.2%に過ぎず,また屍体解剖により見出されたものは3,300例中46例,すなわち1.5%であつたと述べている.われわれは梅毒血清反応を誤認した為肝腫瘍の疑いで開腹し,摘出標本の検鏡により初めて肝臓ゴム腫と確認した1症例を経験したので文献的考察を加え,ここに報告する.

小児後天性斜頸の4例—特に外傷性環椎廻旋亜脱旧について

著者: 大山郁雄 ,   後藤澄

ページ範囲:P.773 - P.777

 後天性骨性斜頸は頸椎カリエスによるもの最も多くその他梅毒,あるいは外傷による頸椎の脱臼骨折が挙げられる.外傷性のもののうち上位頸椎では,環椎弓の単独骨折,軸椎歯状突起の固定靭帯断裂,特に歯状突起骨折による環椎の前方脱臼が多くみられ,脊髄損傷の危険性も極めて大きいとされる.
 われわれはそれらとやや趣を異にする,主として偏側性の環椎廻旋亜脱臼による斜頸4例を,最近ひきつづき小児において経験したので,ここに報告するとともに2,3の考察を試みた.

閉鎖循環吸収式麻酔器を使用して重症ペニシリン・シヨツクを救助せる1例

著者: 吉岡三郞 ,   卞在二

ページ範囲:P.779 - P.780

 最近,ペニシリン・シヨツクの症例が増加し,これによるシヨツク死の報告も漸次増加の傾向にある.
 われわれも,最近,重症のペニシリン・ショツクに遭遇し,これに閉鎖環吸収式麻酔器を使用し気管内挿管による人工呼吸を約1時間30分続けることにより,漸く患者の生命を救助し得たので,茲に症例報告する.

若年者直腸癌の1例

著者: 中作修 ,   松尾源一郞 ,   佐々木郁次 ,   重本裕 ,   野村正吉

ページ範囲:P.781 - P.783

 一般に癌腫は成年以後に発生し20歳以下の若年者に発生するのは極めて僅少であり,殊に癌腫を直腸に限定すれば,日常臨床に遭遇することは甚だ稀である.われわれは最近17歳の少年に発生した直腸癌を経験したので報告する.

若年者胆石症の1手術治験例について

著者: 井出裕雄 ,   小川瀞也

ページ範囲:P.784 - P.787

緒言
 板倉外科教室の胆石症症例における好発年齢は30〜50歳代が最も多く全体の75%以上を占め20歳以下は僅に一例を算するに過ぎない。私共は最近下谷病院外科において4歳頃よりしばしば上腹部痛に悩まされ,蛔虫症あるいは胃腸炎等として医治を受けていた16歳の女子における胆石症の一例を経験したのでいささか若年者胆石症につき考察すると共にこれを報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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