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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科14巻9号

1959年09月発行

雑誌目次

綜説

肺切除術後における遺残腔の形成と縮小機転について

著者: 滝原哲一 ,   原田邦彦 ,   兼松晴美

ページ範囲:P.901 - P.907

まえがき
 先にわれわれは肺切除術後の遺残腔を形態学的に観察し,若干の形態とその臨床的意義について述べたが,術後の臨床経過に伴う遺残腔の変化の仕方にも問題があると思う.
 これら遺残腔の形成,縮小には,残存肺の変位,再膨脹の状態が大いに影響し,弾性体としての肺組織の伸展性,それに対する拘束性因子の多少,さらに術側胸腔の縮少,横隔膜の移動,縦隔洞壁の強弱,肋間腔の狭少化,等諸因子が関与すると考えられる.

橋本氏甲状腺炎の臨床的研究(第2報)—甲状腺機能の検討を主として

著者: 大原梧樓 ,   野口秋人

ページ範囲:P.909 - P.915

1.緒言
 われわれはさきに手術前の橋本氏甲状腺炎を主にその機能の面から検討1)を加えたが,さらに術後における臨床経過を観察し,基礎代謝率(BMR),血清蛋白結合ヨード値(PBI),I131摂取率,血清総コレステロール値,I131転換率,シンチグラムを術前におけると同様の方法にて測定,作成して遠隔時の甲状腺機能を調査し,術後機能低下症に対し考察を加えた.

輸血の臨床的観察及び副作用について(第1報)—特に保存血輸血と新鮮血輸血との副作用の比較考察

著者: 大久保正

ページ範囲:P.917 - P.921

 近年輪血の機会は激増し,これに伴う輸血副作用は決して少なくない.時には極めて重篤にして生命の危険を招くことがある.
 私は輸血施行患者を大別して3つの群すなわち腹部疾患群(胃,肝臓,腎臓,胆嚢,腸等のいわゆる腹部の疾患),胸部疾患群(肺結核,膿胸,血胸,乳癌等),その他の疾患群(骨髄炎,骨折,肉腫,外傷等)に分け昭和23年1月より昭和32年10月に至る約10年間において当院外科にて経験せる輸血副作用の臨床について統計的に観察した.なお輸血方法は昭和31年より大体保存血その以前は総て枸櫞酸加間接輸血にて行い,胸部疾患は佐久間式装置による点滴輸血,腹部およびその他の疾患は間接輸血によるものであり,正規の方法に準拠して施行したものである.

肺切除後における加圧用カニューレを用いた気管切開の応用

著者: 松井澄 ,   中野昭 ,   渡辺淳 ,   桂敦子 ,   細田哲司 ,   長谷川淵 ,   浦上正躬 ,   亀山容 ,   吉竹毅

ページ範囲:P.923 - P.930

緒言
 気管切開は主として気道確保の救急処置として日常しばしば行われている手技であるが,とくに胸部外傷および胸部手術には種々応用せられ,それぞれの場合に応じて数多くの有利な点が報告せられている1)-12),われわれも肺切除のさい,回復後ある程度以上の肺機能を期待し得ると考えられるにもかかわらず,対側肺機能著減の故に従来危険視された症例に対し,肺切除直後に吸引,人工換気などを行えば術後呼吸不全を来すことなく安全に回復せしめ得るものと考え第1図のごときカフ付きカニューレを考案し,4例に実施して多くの有利な点を認めたので茲に報告し御批判を仰ぎ度いと思う.

胃曲線の研究—特に原発性慢性胃炎手術症例の重複胃曲線について

著者: 高橋正司

ページ範囲:P.931 - P.952

Ⅰ.緒言
 胃運動の研究方法は色々あるが,臨床的に利用でき,かつ成績が客観的に記録され,ある程度数量的取扱いができる点で胃内挿入ゴム球内圧変動を描記する胃曲線法にまさるものは現在のところない.
 胃曲線の研究はBoldyreff(1904)1)によつてはじめてこころみられた.その後多くの人々によつて研究されてきたが,病的曲線を記載しているのは,Carlson(1913)2)が最初である.しかし氏は臨床診断面への応用についてはふれていない.病的胃曲線を臨床診断に応用したのは,九州大学小野寺内科教室の鐘ケ江(1925)3)にはじまる.鐘ケ江3,4)は胃癌,胃潰瘍および正常人の胃曲線を分類して,胃曲線が胃疾患診断上有力な資料であることを多数の症例で証明した.その後同内科教室では松藤および吐師5,6),沢田および藤田7,8)等によつて研究が行われ,臨床的意義が確立された3-24).さらに主としてわが国の多数の学者によつて追試されて25-45),臨床診断上の価値がみとめられたが,いまだ充分に活用されているとはいえない.

検査法

外科における心臓カテーテル検査法

著者: 飯島登 ,   浦上正躬

ページ範囲:P.953 - P.959

 右心カテーテル法はForssmannに始まり,Cournandにより大成され,今日では臨床検査として広く実施されている.さらに近年は左心カテーテル法も安全に行われるようになり,必要に応じては左右同時心カテーテル法も行われていることは衆知の通りである,すでに多数の名著もあるので,簡単に説明するに止める.

外国文献

新生児の心臓手術

ページ範囲:P.959 - P.959

 先天性心疾患で最高の死亡率を示すのは最初の1年間である.Mc Mahonらの報告によれば先天性心奇形をもつて生れた子供の34%は1カ月以内に,61%は1年以内に死亡する.しかし早期の治療,ことに早期手術によつて助け得る物も少くない.
 著者はTexas Children's Ho-spitalで4年間に120例の1年未満の乳児の先天性心奇形の手術を経験した.

統計

松倉外科教室における最近4年6カ月間のイレウス患者の観察

著者: 大島博

ページ範囲:P.961 - P.968

I.緒言
 イレウスの臨床ならびに病態生理に関してはすでにしばしば.松倉教授が詳細に発表された所である1)2)3).特に,第54回日本外科学会総会の宿題報告「イレウス」では,松倉外科教室における治療成績の著しい向上を述べられ,諸家の注目を浴びたのである.
 そこで今回,著者はわが教室におけるイレウス患者のその後の治療成績を窺わんとし,イレウス診療の状況を種々観察したので,その概要をここに報告する.

薬剤

輸血蕁麻疹に対するハイスタミンの使用経験

著者: 加藤出 ,   岩田智雄

ページ範囲:P.969 - P.972

 近年外科医学の発展に伴つて大手術も比較的簡単に行えるようになり,輸血,補液の普及に伴い保存血の利用度も益々増大しつつあるようである.それにつれて輸血の副作用も時折散見されるが,蕁麻疹,悪感戦慄などの軽い副作用は経験のない医家はないであろう.
 最近輸血による蕁麻疹に対し,エーザイ研究室製品であるハイスタミンDiphenylpyralineを使用する経験を得,良好な効果を納めたのでここに報告する.

化膿性疾患に対する新サルファ剤Abcidの臨床効果

著者: 菊地金男 ,   伊勢久信 ,   山中雅夫

ページ範囲:P.975 - P.977

まえがき
 1932年プロントジールが感染症に用いられて以来,サルファ剤の化膿性疾患に対する有効性が広く認識され,優れた化学療法剤として著しい臨床効果を挙げて来た,その間漸次改善され,抗菌性の大きな,副作用の少いサルファ剤が作成されて来たが,近年1回投与で,長時間血中高濃度を維持できる新サルファ剤が発見されるにおよんで,その価値は各方面の強い関心を呼ぶに至つた.
 われわれも1回の少量投与によつても血中高濃度を長時間維持する新サルファ剤Abcidについて臨床実験を行う機会を得,みるべき結果を得たので,その成績の概要を報告する.

加熱血漿プラスマネートの試用経験

著者: 井口潔 ,   小西芳雄 ,   東龍雄 ,   倉重正敏 ,   上村彦二郎

ページ範囲:P.978 - P.980

 最近われわれは輸血時の肝炎性ビールス伝染の危険を最小限度にとどめるものとして,米国において創られた加熱血漿プラスマネートを臨床的に追試する機会を得たが,本邦においては未だプラスマネートに関する報告がなされていないので,今回は本製品の紹介と共に,われわれが行つた臨床試用成績について報告する.
 プラスマネートは人血漿を60℃にて10時間加熱し,これを0.67%の塩化ナトリウム溶液中に混和せしめて,非変性人血漿蛋白が5%の割合に含まれるように調製せられたものである.GellisおよびMurrayの研究によれば,上記のごとく60℃において10時間加熱すれば,原血漿中の肝炎ビールス性原因は確実に不活性化されることが立証されているので,かかるプラスマネートの臨床使用によりいわゆる血清肝炎感染の危険性は極めて少いものと考えられる.またプラスマネート中に含有されている人血漿蛋白は,電気泳動法によれば,約88%のアルブミン,7%のγ-グロブリン,5%のβ-グロブリンから成り,その濃度は本溶液が人血漿と等膠質滲透圧を与える程度のものであり,その他の電解質の組成は第1表に示すごときものと報告されている.これらの組成よりみてプラスマネートにはγ-グロブリンが含有されていないので,当然抗原抗体反応は極めて少く,したがつて副作用発生は極めて少いものと考えられる.

過剰侵襲に対する副腎皮質ホルモンの効果

著者: 舘石季 ,   服部保次 ,   川島康郎

ページ範囲:P.981 - P.982

 生物が外界からの急激な侵襲に対して表わす生体反応の病態生理は極めて複雑であつて未だ不明な点が多いが,この場合生体がホメオスタージスを維持せんとする努力は主として非特異的なストレス反応の形で表われ,下垂体副腎皮質系がその主役を演ずるものと考えられる.H.Selyeによれば生体は傷害ショックを受けると間もなく警告反応Alarm Reaktionと云う態度をとり,さらに下垂体副腎系の動員によつて最も抵抗を獲得した.Stage of Resistenceの状態に達する.しかるに侵襲が余りに激しく,生体の防衛反応がこれに応ずる暇のないとき,あるいは臓器の病変とか栄養障害といつた内部の悪条件が重なるとき.生体は急激な危険状態に陥るのである.この時下垂体副腎皮質系の中抗炎症ホルモンといわれるACTHとG-corticoidsが強力な防禦効果を発揮するのである.特にG-corticoidはCortisonよりさらにPredonisolon,methylpredonisolon,Triamcinolonと進歩した誘導体が合成され副作用の憂いなく臨床的に使用できる域に達した.われわれは最近過剰の侵襲によつて危期に陥つた2人の患者をプレドニンによつて起死回生せしめることができたので此処に報告したいと思う.

症例

吐血に対する救急手術時発生せるCardiac Arrestの1治験例

著者: 寺崎平 ,   疋田達雄 ,   松本重喜 ,   島田作 ,   伊藤孝徳

ページ範囲:P.983 - P.987

 吐血を主訴として来院した患者に対し救急手術時急性心停止を来したが,直ちに心蘇生術を行い,心蘇生に成功,胃切除術を無事完了した治験例を報告する.

高齢者に見られた敗血症性化膿性心嚢炎の1手術治験例

著者: 金梅尚洽

ページ範囲:P.989 - P.992

 以前は急性化膿性心嚢炎で死亡するのは必ずしも稀なことではなかつた.Smith,WilliusによるMayo Clinicの資料では総解剖例8,912人のうち77人の死因が本症によるものである.最近は早期診断と化学療法の進歩により死亡者はかなり減つた1)2)3)4)5)6)7)8)9)10)11).Whiteによれば化学的療法の下に直ちに外科的処置を加えなければ多くの場合死命的となると云いとくに急性圧縮性心嚢炎症状を呈した場合には直ちに膿を吸引しなければ危険だと云う.私は敗血症に続発したぶどう球菌性心膿性心嚢炎のためにいわゆる心臓タンポン症状,急性圧縮性心嚢炎症状を呈した1例に外科的処置を加えて治癒した例を経験したので報告と考察を行つて見たい.

巨大な脾臓嚢胞の1例

著者: 石田堅一 ,   戶田繁久 ,   末永公明

ページ範囲:P.993 - P.995

緒言
 脾臓嚢胞は非常に稀有なもので,わが国文献上でも数例しか見出し得ない.われわれは全く巨大な脾臓嚢胞の治験例を得たので報告する.

腋窩動脈瘤剔出後,冷凍保存動脈片による血管移植の経験

著者: 安藤隆 ,   五十棲忠二 ,   南武

ページ範囲:P.996 - P.1000

Ⅰ.緒言
 心臓血管外科の発達につれ,血管外科の分野においても,移植に関する研究が急速な進歩を示した.従来より移植材料としては,異種,同種等の新鮮な,あるいは死滅した材料が用いられ,これら移植材料に関する多くの研究,検討が報告せられているが,最近では種々の代用血管が用いられる傾向にある.
 近年欧米においては,移植材料として冷凍あるいは冷凍乾燥保存の移植片を用いた血管移植の研究が盛んに行われ,好成績を挙げているようである.

足関節滑液膜より発生した所謂良性巨細胞腫瘍の1例

著者: 亀山容 ,   矢島睦夫 ,   志賀厳

ページ範囲:P.1001 - P.1003

 1956年Simon1)によりhypertrophische sa-rcomatös entartete Gelenkzotteとして報告されて以来,その病理像が多彩なことからsarcoma, pelithelioma sarcomata,fibroendothelioma,xanthoma,xanthoblastoma,giant-cell tumor,pigmentierte riesenzellen-haltige Xanthosar-kom,xanthomatische Granulom,myeloplaxo-ma,myeloid tumor,synoviomata,benign sy-novioma,chronishe haemorrhagische arthritis,haemorrhagic villous synovitis due to xanth-oma,pigmented villonodular synovitis,Angi-odysplastisches synovial Hamartom,等様々の名称で呼ばれる一群の滑液膜疾患がある.わが国においても藤野2)の報告(昭和11年)にはじまりすでに17例におよぶ報告3)-13)があるが,その多くは膝関節に発生しているものであつて他の関節に発生した報告は少ないようである.われわれは最近足関節滑液膜より発生した1例を経験したのでここに報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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