icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科15巻12号

1960年12月発行

文献概要

綜説

黄疸を伴なう外科的患者における肝流血量に関する臨床的研究

著者: 世耕克巳1

所属機関: 1日本大学医学部第一外科学教室

ページ範囲:P.993 - P.1005

文献購入ページに移動
緒言
 肝臓は生体内物質代謝の中心的臓器であり複雑多岐な機能を営んでいる.外科領域においても,肝機能の重要性に関しては多くの業績があげられている.すなわち,手術や麻酔後における肝機能障害の発生が知られ,ときにはかかる肝機能の破綻が致命的な結果をもたらし,いわゆる肝臓死,肝腎症候群として恐れられてきたところであり,術前肝機能の良否は手術の予後決定に関与する重要な因子と目されるに至つている.ことに肝の重要な機能の一つであるビリルビン代謝における障害の標示である黄疸の発現に際しては,(従来から指摘されているごとき肝機能の障害に解離性があるとしても),多かれ少かれ,そのたの肝機能も障害されるものとされ1),大野2)は「肝障害のない黄疸はない」とも述べている.また外科的黄疸に際しては肝機能障害の程度が強く,術後肝不全,肝臓死を来たすことが稀でないことが三宅3),桂4)等によつて指摘されている.
 一方近年,臓器循環の重要性が認識せられてくるとともに,臓器循環の障害は臓器の無〜低酸素症を惹起し,臓器機能に多大の障害を与えることが知られ,肝臓においても肝のアノキシアは術後の肝機能障害,肝不全あるいは肝臓死の要因として,またFine5),あるいはShorr6)の説にみられるごとく不可逆性シヨツクの因子として重要視されてきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?