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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科15巻2号

1960年02月発行

雑誌目次

綜説

胃全摘患者の食餌嗜好の変化について

著者: 池田恵一

ページ範囲:P.113 - P.118

 胃は消化器系における第1の関門であつて,塩酸,酵素等を分泌する他に,摂取食餌の貯溜混和等の重要な機能を有している.したがつて胃を全摘出すると,食餌摂取に関係する諸事項,すなわち,食餌摂取量,摂食回数,食餌の種類,食餌の嗜好,さらに摂取食餌の消化吸収状態ないし能力等が変化する.
 最近,胃全摘術が比較的安全に施行されるようになり,したがつて無胃患者における物質代謝の研究が盛んに行われつつある.胃全摘後における患者の食餌嗜好の変化は,胃全摘患者の摂取食餌の質と量とに直接影響をおよぼすものであつて,術後管理上からも常に関心を払う必要のある事項であるが,かかる食餌嗜好の変化については,時に断片的記述が見られるのみで,その系統的報告には未だ接しないようである.私は友田外科教室において手術を施行された胃全摘患者約80例について,術前後における食餌嗜好の変化を調査した所,興味ある成績を得たので茲に報告する.

外国文献

Hirschsprung's disease in infant/舌癌の治療

著者:

ページ範囲:P.118 - P.118

 本病は慢性便秘を主症状とするが,最近Dorman等は重症爆発型を報告している.Buffalo children Hospitalの10年間の26例をあげる.いずれも生後1カ月以内に発病し,6カ月以内に急性症状のため入院している.入院時期により3群に分け各特有の症状がある.
 Ⅰ群 入院(出生→6日)主症状はイレウスで診断は容易.単純撮影で大腸の拡大,バリウム注腸で直腸S状結腸の狭窄を証明するかあるいは排出障害を見る.

Conference

臨床外科懇話会記録(4)

著者: 日本大学医学部外科

ページ範囲:P.119 - P.125

腸管断裂の1治験例
 交通事故により腹部を強打し腸管の皮下完全断裂をきたしたが臨床経過が緩慢なため6日後に開腹し,これを確認し治癒せしめた興味ある1例を報告する.
 患者:17歳 男子.

統計

胃肉腫の統計的観察

著者: 足立正幸 ,   唐原豊樹 ,   高山嶺生

ページ範囲:P.127 - P.131

緒言
 胃肉腫は,胃の悪性腫瘍の1〜3%であると云われているが,最近各方面から報告17)-19)されている所からみて,一般に考えられている程には稀なものではないようである.われわれも最近1年間に3例の胃肉腫を経験したので,症例の報告に併せて統計的観察を試みた.

乳腺症の統計的観察

著者: 玉井恭子 ,   有富寬

ページ範囲:P.133 - P.139

 乳腺症の統計的研究に関しては,今日までその試みが数多くなされている.私達の今回の観察の対象は,従来の諸家のそれと比べて特に異つておるものではないが,生検材料を対象として症例数の蒐集につとめ,その調査事項を多岐にわたり詳細に進めてみたので,多少とも従来の知見を補うことができると信じ,ここに報告したいと思う.

薬剤

特発性脱疽に対するカリクレイン糊膏法追試例

著者: 早川潤太郎 ,   大窪利男

ページ範囲:P.141 - P.142

緒言
 カリクレインは循環ホルモンで外科領域においては四肢の循環障害に有効であり,さらに治癒困難な創傷,仮骨形成の遅延せる骨折などにも好結果が得られることは周知の通りである.私も特発性脱疽にカリクレインを使用し効果顕著であつたので報告する.

症例

頭蓋骨を自然穿破せる脳膿瘍の1例

著者: 瀬藤晃一 ,   村瀬和夫

ページ範囲:P.143 - P.145

 突然悪感戦慄および高熱を以て発病した原因不明の脳膿瘍が複雑な経過を辿り,明確な診断のなされぬ儘4カ月を経過し,頭蓋骨を自然穿破して頑固な排膿を呈し,遂に側脳室に破れて死亡した興味ある一例に遭遇したのでこれを報告し,これに臨床症状,手術所見および剖見所見より種々の考察を加えてみた.

肺切除術中に発生した急性肺水腫の1治験例

著者: 遠藤三郎 ,   中島季陸

ページ範囲:P.147 - P.150

 肺切除術の普及に伴い術後合併症として多数の報告があり,その中でも急性肺水腫の発生は85〜60%1)-4)が死の転機をとり,肺外科手術の直接死亡率の約10%の高率5)6)を占める合併症である点において特に注目され,この研究についても亦多数の報告7)-12)があるが,本症が単一の因子によつておきるものでないことがこの予防および治療を困難ならしめている原因の一つである5)6)
 最近,気管支拡張症に対する肺切除術中に発生した定型的な急性肺水腫を治癒せしめ得た一症例を経験したので報告する.

食道手術の経験

著者: 油屋繁樹 ,   松田保典

ページ範囲:P.151 - P.152

 食道手術による直接死亡率も幾多先人の努力により漸次低下の傾向にあるとは言え,現在でも中部食道手術は必らずしも平易,安全な手術とは申されず,手術死亡率は10〜40%,平均25%前後を示している現状である1).犬において食道手術を実施し種々検索しているさい,偶々一症例を得手術の機会に恵まれたのでここに報告する.

孤立性内軟骨腫の2例

著者: 伊藤友正 ,   金原宏之

ページ範囲:P.153 - P.155

 孤立性内軟骨腫は指骨,中手骨,中足骨を好発部位とする良性骨腫瘍として成書に記載されてはいるが,内外の文献にもその報告例は稀である.われわれは最近その典型的な2例を経験したので報告する.

上腸間膜血管閉塞症3例の経験について

著者: 本間正和 ,   青木三郎 ,   葉梨脩一 ,   加藤出 ,   鈴木良人

ページ範囲:P.157 - P.161

Ⅰ.緒言
 腸間膜血管閉塞症はTiedmann(1843),Virchow(1847)などの発表が初めてであつて,その後Elliot(1895),Sprengel(1902)が本症の手術的療法の成功例を報告して以来,欧米においては多数の報告が見られ,本邦においても大正3年藤井が初めて報告してより現在までに56例の報告がみられている.われわれは最近本症の3例を経験し,1例は術後不幸にして死の転帰をとり剖検を行い,2例は腸切除により治癒せしめえたのでここに報告する.

踵骨骨髄炎の3例

著者: 西能正一郎 ,   中谷欣二

ページ範囲:P.163 - P.165

 一般に,踵骨骨髄炎は比較的稀なもので,本邦においては,八代,塩川,中野,西尾,石崎,江良の諸氏のそれぞれ数例の報告をみるにすぎないが,われわれもまた,本症の3治験例を経験する機会を得たので報告する.

ヘルニヤおよび痔核に対する注射療法の危険

著者: 彌永耕一 ,   米田礼之 ,   田尻進

ページ範囲:P.167 - P.170

はじめに
 ヘルニヤおよび痔核に対する注射療法は古くから行われ,相当良い成績が挙げられているようではあるが,無選択に本療法がなされることは甚だ危険である.事実,その注射薬剤による障害,あるいはその適応や注射手技が誤られることによつて生ずる危険な合併症ないし後遺症に遭遇することが遺憾ながらしばしばあることも事実である.われわれはこの1年位の間にこうした合併症や後遺症で来院した幾つかの症例を経験したので,その各々について簡単に紹介すると共に本法の危険性について述べたいと思う.

全身皮下に多発せる交感神経節細胞腫の1例

著者: 伊藤紀克 ,   田辺達三 ,   佐野量三

ページ範囲:P.171 - P.173

緒言
 交感神経節細胞より発生する腫瘍は1870年Lo-retzの胸部交感神経より発生したGanglioneuromaの記載に始まり,1891年Marchandにより最も未分化なNeuroblastomaの起源が明らかにされ,さらに1901年Benekeによつて両者の移行型Ga-nglioneuroblastomaの存在が知られ,交感神経細胞腫瘍の系統が解明された.
 Ganglioneuromaは交感神経細胞の存するいずれの部位にも発生し得るが,就中副腎,胸腹部等の交感神経節に好発する.しかし全身皮下に多発した例は極めて稀で内外の文献を通じて1898年Knauss,1902年Kredel & Benekeの2例にすぎない.われわれは最近皮下に多発原発したとみられる本症の1例を得たので報告する.

巨大柿胃石の1治験例

著者: 岡本孝之 ,   高橋禎子

ページ範囲:P.175 - P.177

緒言
 柿胃石は本邦においては大正3年永富の報告以来数十例が報告されているが,最近私達は5歳女児の巨大柿胃石の1例を経験したので報告する.

上腸間膜静脈に血管移植術を併用した膵頭部癌手術1治験例

著者: 鈴木常正 ,   小崎英次 ,   井上一次

ページ範囲:P.179 - P.181

症例
 患者:63歳,男.家族歴,既往歴に特記すべき事なし.約2カ月前,全身痩痒感,心窩部に不快感,38度前後の発熱を訴え,1カ月半前より更に黄疸を認め種々治療を受けたが之等諸症状は次第に増悪を示すに至り,本院放射線科に入院,膵頭部癌として当外科に転科した.
 全身所見:稍々羸痩,皮膚黄疸著明で乾燥,体温36.7度,脈搏数60整調,血圧168〜82mmHg,胸部其の他全身所見に異状は認められなかつた.

腸管脱出を伴つた外傷性腹筋皮下断裂の1治験例

著者: 小島稔豊 ,   森野勝

ページ範囲:P.183 - P.185

 近時災害の増加と共に,腹部内臓の皮下損傷については数多くの報告が見られるが,腹筋の皮下断裂については余り報告されていないようである.われわれは最近外傷により,皮膚および腹部内臓には異常ないが,体壁腹膜および腹筋が断裂哆開し,同時に広範囲の皮下剥離を伴い,その為に腸管が皮下に脱出した症例を経験した.而も,この筋断裂は直達外力よりもむしろ受傷時の筋緊張によつて惹起されたと考えられるもので興味深い.ここに症例を報告し,その発生機序についていささか卑見を述べてみる.

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集談会

著者: 花岡 ,   川瀬 ,   堀江 ,   永島 ,   木本誠二 ,   片岡一朗

ページ範囲:P.186 - P.186

第578回東京外科集談会
1)多発性血管腫を伴う多発性軟骨腫の1例
 51歳男子,身体発育悪く12歳頃より全身疲労感強く,15歳に両側関節の腫瘤に気付いた.25歳より増大し,暗赤色の結節,悪臭ある潰瘍形成.手足の変形,レ線で骨にも病変および,殆んど全身におよび運動障害がある.組織的には35年におよぶも悪性化のない軟骨腫であつた.多発性血管腫を伴う多発性軟骨腫の診断で切断を行つた.

再び研究書の出版について

著者: 金原一郎

ページ範囲:P.187 - P.187

 待望の所 安夫博士の「脳腫瘍」がいよいよ出版されることになつた。A4判974頁・挿図874個・図表157個・18,000円の大冊である。一冊18,000円と云うと日本では最高価の書籍であり,医学書として勿論前例のない豪華版である。もつとも外国の医学書では一冊30,000円や50,000円のものは,そんなに珍らしいことではない。Schmolka:Cytodiagnostik B5判161頁で12,000円に較べれば,まだ安い方である。最近入荷したものではMoellendorff:Mikroskop. Anatomie Bd. 4 Teil 4. 31,800円Lubarsch:Handbuch Bd. 13 Teil 3. 29,800円の如きがある。
 それでも研究者にとつては必読書なので,高い本だとこぼしながら買い求めざるを得ないのである。この4月医学書院で開催した外国医書展示会でLubarsch:Handbuch(既刊分だけ562,660円)Bergmann:Handbuch(既刊分だけ248,680円)など陳列まもなく売切れてしまつた。私が毎度申し上げる言葉であるが(良いものは必ず売れる,必要は高価のものを買わしめる)と云う学術書の鉄則がここでも如実に示されている。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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