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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科15巻3号

1960年03月発行

雑誌目次

綜説

人工内臓の研究(第1報)—血液ポンプの吟味ならびに体外循環時の腹部諸臓器の機能

著者: 中山恒明 ,   中村武 ,   山本勝美 ,   吉田充 ,   矢沢知海 ,   有馬忠正 ,   鍋谷欣市 ,   石島福昭 ,   草柳芳昭 ,   和田房治 ,   秋元駿一 ,   大坪雄三 ,   南園義一 ,   橫田俊二 ,   泉武 ,   飯島嘉之 ,   中島和彥 ,   高橋康 ,   山口慶三 ,   辻輝蔵 ,   山野徳雄 ,   橋詰定明

ページ範囲:P.193 - P.198

はじめに
 近時,体外循環の研究分野は急速な進歩を遂げ心臓直視下手術,大血管外科,腎臓,肝臓機能の体外における代償装置(いわゆる人工腎臓・人工肝臓)さらにまた撰択的脳灌流等の実用面において,その活動は目ざましいものがある.
 体外循環を行うにあたつて最も重要なものの一つは,循環血流動態を如何にして正常循環のそれに接近せしめるかという点である.そしてこれは生体と体外循環装置と結ぶ配管や間挿装置の条件も関係するが,体外循環の心臓部ともいうべき血液ポンプの性能が大きく作用しており,体外循環を円滑に行う上に意想外の影響をおよぼすものである.

上腹部外科的疾患手術経過と血中O2,CO2含有量に関する研究

著者: 岩崎望彥

ページ範囲:P.199 - P.213

第Ⅰ章 緒言
 近来麻酔の進歩および輸血,輸液の大量使用の合理化に伴い外科領域において,外科的技術の進歩と相俟つて手術適応範囲が著しく拡大せられるに至つた.
 しかしながら手術時における生体への影響は手術侵襲が大になればなる程甚だしいことは充分予測せられる所である.

イレウス侵襲と下垂体副腎皮質(その1)

著者: 吉葉昌彥 ,   榎本茂 ,   小島昭三

ページ範囲:P.215 - P.225

緒言
 イレウス侵襲の激甚にして一瞬にして生命を脅かし,幸に原因の除去,罹患腸管の切除または糞瘻造設等の適切なる処置を施行し得たとしても,その予後は決して楽観を許さず,忽然として鬼籍に入る事実のあることはわれわれ臨床医家の日常経験する処である.
 このイレウス死に関して松倉教授1)は第54回日本外科学会総会宿題「イレウス」においてその多年に捗る諸研究成績よりイレウス死因の有力なる一因子として松倉教授の謂うイレウス抗原を抗原とする自家抗原抗体反応によるアナフィラキシーシヨツクの発来性を臨床的ならびに実験的に立証すると共に,さらにイレウス時における血中有効物質の本態は種々なる角度より検討した結果,ヒスタミンに非ずしてアセチールコリンなることを確認され,斯くしてイレウス時生体はアセチールコリンの過剰産生により甚だ重篤なる障害を蒙り死に到るものと推察結論された.

血液型抗体の最近における知見—特に臨床的役割に就て

著者: 国行昌頼

ページ範囲:P.227 - P.232

まえがき
 今世紀の初頭,K.Landsteinerによつて始めてその幕を開かれた血液型の研究史は,1940年のRh-Hr式血液型の発見を契機として新らしい段階に入り,いくたの新知見を加えるに至つた.このいみで1940年という年は,血液型研究史の上で,ABO式血液型の発見に劣らない重要な意義ある年ということができる.
 即ち,Rh-Hr式血液型の発見は,そのいと口において血液型の生体内におよぼす臨床的影響としてABO式血液型同型間輸血の副作用や胎児赤芽球症発生への役割を明らかにしたが,このことはさらにその後の研究によつて,血液型抗原の種類によつて,生体内における抗体産生能にいちじるしい違いがあることを明らかにし,さらに血液型抗体に対する従来の概念をも一新した.

外国文献

血清アミラーゼ濃厚の病理的意義

ページ範囲:P.213 - P.213

 血清アミラーゼ値の上昇が膵の炎症性疾患の決定的な診断根拠と考えられてきた.最近3000単位以上に上昇して膵炎でなかつた2例を経験した.第1例は胃切後の上腹部痛で保存的療法を行つたが死亡,剖検で腹腔内ヘルニアであつた.第2例は保存的療法で好転せず開腹によつて胆石症であつた.診断的意味が疑わしく思われる.1000単位以上の高アミラーゼ血症を示す10人の手術例で9例は膵臓の変化がなく胆石を認めている.
 Barnes及びSt Louic市立病院の1949〜1954の統計では500単位以上で急性膵炎と診断され,手術で確認された物は760であり胆石との関係は5560であつた.アミラーゼが血中に移行する場所に膵臓実質のみならず胆道並びに肝臓実質からも可能であると考えられる.血清アミラーゼ値上昇は急性膵炎に特異的ではない.

Conference

臨床外科懇話会記録(5)

著者: 日本大学医学部外科

ページ範囲:P.233 - P.238

広汎な骨転移を来たした潜在性副腎腫の1例
 副腎腫は1883年副腎皮質の迷芽から発生した腎腫瘍としてGrawitzによつて記載されたものであるが,われわれは転移のため骨盤骨を広範に破壊され骨肉腫の疑で来院した症例につき,右第5肋骨にも腫脹を認め,その試験切除により副腎腫の転移巣であることを確かめ,さらに剖検により,その原発巣は腎皮質内の被膜に包まれた約中指頭大結節性の小さな副腎腫であることを明かにし得たので,この興味ある症例を報告したい.
 症例:平○英○郎,65歳男,職業製菓業

薬剤

整形外科領域におけるMetasolonの使用経験

著者: 中原正雄 ,   吉田邦雄

ページ範囲:P.239 - P.244

 Henchらが関節リウマチにCortisoneを使用して以来,今日まで数多くの臨床的効果が確認されているけれども,これには一定の限界があることが知られている.すなわちそれは,①副腎皮質ホルモンを使用することによる副作用,②副腎皮質ホルモンが生体の副腎を萎縮させる作用の2つである.そして,この副作用に対しては,副腎皮質ホルモンを合成することが可能になつてから,Steroid核にあらゆる変化を与えて,数百種の同族体をつくりだしている.
 合成副腎皮質ホルモンのねらいは,副腎皮質ホルモンの抗炎症作用を温存して,その他の作用を除去することにあるといつてよい.Cortisone,Hy-drocortisoneのC-1,C-2のところを二重結合にして,PredonisoneとPrednisoloneをつくり,前2者に比して4〜5倍の強力な抗炎症作用を獲得したことは,人々の耳目に新たなことである.しかし,抗炎症作用を増強すると他の作用も変化して必ずしも理想的なものではなかつた.たとえば9α-Flurohydro Cortisoneの抗炎症作用は,Hydro-cortisoneに比して10倍も増強されるが,Naの蓄積,K喪失もつよくなるため臨床的使用は制約されるごときである.

外科領域におけるParmanilの使用経験

著者: 鍋谷欣市 ,   和田房治 ,   泉武

ページ範囲:P.247 - P.255

 外科手術の施行にあたつては必ず循環系に少なからざる影響がおよぶため,術前に心機能障害を認めた症例の適応決定は重要である.また手術侵襲によつて思いがけない心性危機発生をみることもあり,殊に近年は開胸大手術が盛んに行われるようになつて,術後冠不全の発生ないし増強はしばしば経験する所である.したがつて手術施行のためには極めて確実な効果をもつ心剤は欠くことができないものである.
 私共の教室では食道癌,胃癌をはじめ多数の消化管癌患者の手術を行つているが,術前全例に心電図検査を行い適応決定の一指針としている.そして今迄は適応外とみなされたような心疾患患者にも根治手術を行い適応の拡大に努めて来たが最近におけるParmanil(Hoechst)の出現はかかる大手術施行にさいして,有効なしかも副作用の少い心剤の一つとして教室では臨床例に使用している.ParmanilはOxyaethyltheophyllinとAdenosinの合剤で,Oxyaethyltheophillin 220 mgとAdenosin 4 mgを含むものである.

パンカルの術後腸管麻痺に対する使用経験

著者: 小坂二度見 ,   戶谷拓二 ,   武田淳志

ページ範囲:P.257 - P.259

1.緒言
 開腹術後の不快な副作用の一つに術後腸管麻痺ないし蠕動不全の問題があり,患者はしばしば腹部膨満感を訴え,かなり長期にわたつて食思不振を来し術後回復を遅らせることは臨床においてよくみるところである.術後蠕動の出現をはやめ,早期に摂食させることにより経口的に栄養をとりいれることが望ましい.このような意味で術後早期の腸運動再開をもたらすべく,私達は開腹術後の患者の管理にあたり腸管麻痺という不快な副作用を軽く経過さすためにパンカル投与を試みた.
 パンカルはD-パントテン酸カルシウムであり1)ビタミンB複合体の構成物の一つで,全組織中に存在し,アセチル化能をもつ補酵素A(コエンザィムA,CoA)の一成分であり,アセチルヒヨリン形成に必要な酵素である.このアセチル化能がパンカルの自律神経系特に腸管運動に作用する薬理学的機転とされている2,3)

痔疾治療剤Lubritexの使用経験

著者: 綿貫喆 ,   島文夫 ,   諌山高雄 ,   桜井靖久

ページ範囲:P.261 - P.264

いとぐち
 わが国には痔疾患が多いことはしばしばいわれていることであるが,われわれの外科外来をおとずれる患者のうちでも痔核をはじめとして裂肛,痔瘻,肛囲膿瘍,肛囲掻痒症などの痔疾患患者が14近くを占めている.これらの痔疾患に対しては手術療法と保存療法とが行われており,手術療法によつて根治せしめることが理想と考えられるが保存療法が適当と思われる症例も多くかつ保存療法によつても治療効果を十分にあげることができる場合が多い.痔疾患のうちの大半を占めている痔核に対しては従来幾多の手術方法が考案され実施されているが,われわれの取り扱う患者の大部分は軽度の痔核患者であり,また手術療法の適応があると考えられる高度の痔核患者のなかにも炎症症状を伴つたり,疼痛や出血がいちじるしくて手術療法を行う前にある期間保存療法を必要とする症例もかなり見受けられる.
 保存療法の薬剤として従来用いられて来たものは坐薬および軟膏である.これらは,カンファーメントール,タンニン,デルマトール,ロートなどを主剤とし,これに鎮痛剤,消毒剤,賦型剤などを加えたものが大部分を占めている.

症例

鎖肛(直腸および肛門閉鎖)に対し一次的腹腔会陰式肛門形成術に成功せる1例

著者: 織畑秀夫 ,   坪井重雄 ,   伊野照子 ,   久慈直太郎 ,   野田三郎 ,   畑山道子

ページ範囲:P.265 - P.270

緒言
 すでに欧米諸国における小児外科領域における開胸開腹手術の進歩は著しいものがある.しかし日本においては未だ劣る点が少くない.新生児の開腹手術も亦その1つと云うことができる.しかし幸いなことに,近年わが国においても小児科,産婦人科の盛んな努力により,また同時に外科手技,麻酔技術,手術前後の輸血輸液および優秀なる化学療法等の進歩により漸く新生児の開腹手術が安全且つ必要なものとして発展するようになつてきた.勿論,未だ欧米に比しては相当に遅れているので,今後一層の研究と努力を要する分野である.
 われわれは昭和34年4月,日本外科学会で7例の生後1週間以内の新生児の開腹手術についての経験を報告したが,そのさい,第6例目の症例として生後19時間で腹腔会陰式に一次的に肛門成形術に成功した鎖肛(直腸および肛門閉鎖)について簡単に報告したが,このような一次的根治手術の報告はわが国では最初の例であるので,ここにその詳細を報告し,検討を加える次第である.

過剰輸血について—外傷性肝皮下破裂にさいしての1経験

著者: 大内十悟 ,   金山利吉 ,   森田建

ページ範囲:P.273 - P.278

緒言
 近代外科発展の大きな要因の1つとして,輸血輸液などの体液管理の進歩を挙げることは異論のないところであろう.とくに輸血療法はすでに,術前,術中の処理として欠く可からざるものとなり,さらに血液保存法の改良,血液銀行の設置に伴つて,大量輸血も容易に施行されるようになつた.最近の労働災害,交通事故の増加による大きな外傷の頻発,あるいは大量出血を来し易い肺,脳,心,大血管等に対する手術の増大などによつて,今後ますます大量輸血の機会は増加することであろう.一方このような大量輸血の増加の傾向は,従来の副作用発生の機会を助長させるとともに,さらに大量輸血による障害の危険性を増大せしめてきた.この大量輸血に伴う障害については,本邦においても,種々の業績が報告されているが,その多くはクエン酸中毒,高K血症,出血傾向などに関するものであり,障害の1つである過剰輸血による循環負荷の問題に対してはなお関心が薄いためか,その報告は極めて少い.
 最近,われわれは外傷性肝皮下破裂の患者に遭遇し,急激なる大出血に対し大量輸血を行つたさい,大量輸血が過剰輸血となり,特有なる症状を呈した1例を経験した.幸いにも治癒せしめ得たが,本症の発現機転,診断,治療等に関し,種々興味ある問題を有し,また反省考慮させられる点も多いのでここに報告する.

慢性出血性絨毛性滑液膜炎の1例

著者: 小野良一

ページ範囲:P.279 - P.281

 いわゆる関節血腫Haemarthrosの症状を呈するものには外傷,血友病,腫瘍などの他に,甚だ稀に慢性出血性絨毛性滑液膜炎なるものがある.私は最近,膝関節の腫脹,疼痛ならびに関節内出血を主徴として来診した本症と思われる1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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