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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科15巻5号

1960年05月発行

雑誌目次

綜説

肺切除術後における遺残腔の形態的観察ならびに臨床的意義

著者: 滝原哲一 ,   原田邦彦 ,   兼松晴美

ページ範囲:P.389 - P.394

まえがき
 肺切除術後は切除肺の元来占めていた空間が遺残腔となるが,残存肺や胸膜の状態に応じて,air leak,後出血,胸膜炎等が種々の程度に起ると遺残腔に空気,血液,滲出液の貯溜等を伴い,遺残腔は元来切除肺の占めていた空間とはその大きさ,形態等を異にした状態で認められることが多い.従つて臨床的にしばしば問題となるのは,比較的大きい遺残腔が永く残つて,容易に縮小しないで,(1)術後肺合併症,殊に膿胸あるいは気管支瘻等を併発する場合,(2)術後肺機能の低下を伴う場合の2点である.
 依つて先ず前者に関連して,肺切除術後の臨床経過に従つて遺残腔の形態的観察を試みた.

外科領域における血清遊出肝酵素(その1)—特に血清トランスアミナーゼに就いて

著者: 吉葉昌彥 ,   榎本茂 ,   大塚敏文 ,   小島昭三 ,   石郷岡政彥 ,   大石孟男 ,   飯岡一彥 ,   安田慶太郎

ページ範囲:P.395 - P.402

緒言
 最近の外科臨床において病疾の診断およびその治療上に著しい進歩をもたらしたものの1つとして疾患若しくはその手術をも含めたいわゆる外科的侵襲により生体の示す諸種の反応を特に酵素学的に観察し,さらにこれをその他の病態生理学的諸変化と綜合考察して対処しようとする試みを挙げることが出来よう.
 ここにおいて私共は松倉教授指導の下に教室の消化器疾患時における酵素学的研究の一環として血清遊出肝酵素特に血清トランスアミナーゼに就いて研究し些か興味ある知見を得たので報告する.

腹部大動脈瘤について

著者: 砂田輝武 ,   稲田潔 ,   勝村達喜 ,   木山敞

ページ範囲:P.403 - P.409

 最近における血管外科の進歩は著しく,とくに代用血管の発展により,血管移植が容易に行えるようになつて以来急速に普及したといえる.腹部大動脈瘤や大血管の閉塞性疾患に対する切除,血管移植手術は欧米では日常どこでも行われている手術であるが,本邦では未だ報告例も比較的少い1-4).これは,この様な疾患が絶対的に少ないためでもあろうが,未だ一般の認識が十分でないため発見されないか,あるいは診断されても外科的療法が考慮されないのも一因であろう.
 著者等は最近1年間に腹部大動脈瘤の3例を経験し,うち2例では動脈瘤を切除,血管移植により良好な結果をえたので報告し一般の注意を喚起したい.

外国文献

Transfusion of Cadaver Blood,他

ページ範囲:P.409 - P.409

 1930年ソヴィエトのSklifoso-vsky研究所でYudin.S.S.は初めて死体血輸血を臨床に実施した.
 死体の赤血球は死後6〜8時間酵素運搬能力を持ち,白血球は死後10時間,食菌能力を保つている.従つて死後6時間以内に採取した血液は機能的に有効である.次に急死した人の血液には線維素融解現象が見られる.このため抗凝固剤を加えなくとも保存でき,又大量チトラート血を輸血した時に見られる副作用も起らない.保存した死体血は形態学的,生化学的に一般の保存血と殆んど変りがない.死体血は路上その他で急死した死体から取るが成人では2,000〜3,000cc採血できる.死体血は冷蔵庫に保存し血液型,Rh因子,細菌検査その他を行い,一方死体は精密に剖検し,支障のない事がわかつて初めて使用する.

Conference

臨床外科懇話会記録(7)

著者: 日本大学医学部外科

ページ範囲:P.411 - P.416

Chondro-Osteodystrophie(Typus Morquio)の1例
 症例 坂○茂○ 男性 16歳.
 主訴:両側股関節および膝関節痛による歩行障害.

薬剤

SPAの整形外科領域における使用経験

著者: 中村裕 ,   挾間章典 ,   児玉利武

ページ範囲:P.417 - P.418

1.緒言
 整形外科領域において,神経痛様疼痛,ロイマチス様疼痛に対しては,種々の治療法が従来より行われているが,なかなか思うような鎮痛効果が得られず,医師としてその処置に困却する場合が多い.幸いにして今回参天製薬から,鎮痛作用を主目的にした注射薬SPAの提供を受けたので,これら頑固な疼痛を有する症例に使用し,少数例ではあるが,可成り満足すべき結果を得たので,報告する次第である.

胃癌手術患者におけるソーアミンの使用経験

著者: 小野正員 ,   小田晧二 ,   笠原潤二

ページ範囲:P.421 - P.424

はしがき
 最近における外科手術の進歩は,手術手技,麻酔,輸血,輸液,ならびに合理的な術前,術後の管理によることは勿論であるが,術前,術後の栄養管理の進歩に負う所もまた大である.
 一般に外科手術患者は疾患の種類によつても異るが,術前すでに低蛋白状態のものが多く,手術侵襲および術後の組織蛋白の崩壊などのため,その状態はますます悪化し,ひいては術後治癒の遷延,縫合不全,ショツクなどの致命的合併症の原因となることがある.すなわち術前,術後の低蛋白症に対する治療が外科手術の予後を左右すると云つても過言ではない.

ミンタールと腰椎麻酔の併用法

著者: 石井誠 ,   新沼竜之助

ページ範囲:P.425 - P.429

緒言
 ペントバルビタールはバルビタール剤のうちでは短時間作用性に属するものであり,ペントバルビタールカルシウムはラボナ錠としてひろく使用されており,ペントバルビタールナトリウムは静脈麻酔剤ミンタールとして使用に供されている.ミンタールの全身麻酔の導入,笑気麻酔の維持などにおける使用についてはいくつかの報告があるが腰椎麻酔との併用法についての報告はほとんどみられない.私共は100例の腹部手術にミンタールと腰椎麻酔の併用法をこころみたので,ごく臨床的な観点からその使用経験について述べる.

症例

鼻尖部悪性肉芽腫の1例

著者: 西村菊夫 ,   川井忠和

ページ範囲:P.431 - P.436

 鼻部悪性肉芽腫は1897年Mc Bride20)によつて初めて記載された極めて悪性な,また稀な疾患である.Hultberg17)は10例の自験例を報告し,Spe-ar29)およびStraatsma30)は従来の報告例よりそれぞれ39例,44例をあつめて考察を加えている.これら以外には諸家の報告を散見するにすぎず,また本邦ではいわゆる進行性壊疽性鼻炎という名称のもとに約80例の報告例を見,近年多少,増加の傾向がある.われわれは最近,鼻尖部に発生した悪性肉芽腫の1例を経験したが,コーチゾン療法で極めてよく反応した.

潜在性甲状腺癌の1例—いわゆるLateral Aberrant Thyroid

著者: 江口忠夫 ,   武田直衛

ページ範囲:P.437 - P.439

 甲状腺に原発する悪性腫瘍の診断は必ずしも容易ではないが,特に潜在性甲状腺癌の側頸部リンパ腺転移による腫瘍の場合には術前診断を誤ることが多い.左側頸部に生じた3個の腫瘍を混合腫瘍として手術し組織学的検索によつて甲状腺癌転移なることを確認したが,術後2ヵ月再び転移腫瘤が手術部に現われ,原発巣たる甲状腺癌根治手術によりKing and Pembertonのいう甲状腺癌のリンパ腺転移説を裏付ける症例を経験したので報告する.

頸肋骨を伴つた蝶形椎体の1症例

著者: 岡田進

ページ範囲:P.441 - P.443

緒言
 脊椎々体矢状披裂,すなわち蝶形椎体は比較的稀な奇形で,1914年Fretsが始めて報告して以来,本邦においても未だ10数例を数えるに過ぎない.私は最近,われわれの外来を訪れた一患者の頸胸椎移行部に本症を認めたので,ここに報告し多少の文献的考察を加えた.

ヘルニア手術後に発生した膀胱縫合絹糸結石について

著者: 井上淳

ページ範囲:P.445 - P.446

 4年前鼠蹊ヘルニア手術をうけ,そのさい膀胱に縫合糸がかかり,結石を作つた症例を報告する.

左腎盂乳嘴様癌の1例

著者: 春原輝正 ,   千葉孝之 ,   伊藤理仲 ,   酒井清澄

ページ範囲:P.447 - P.450

 腎臓腫瘍として一般に認められているものは,Grawitz氏腫瘍,混合腫瘍,癌腫,肉腫,脂肪腫,乳嘴腫,線維腫,筋腫,腺腫,軟骨腫,骨腫,内皮細胞腫,等であるが著者等は最近腎盂乳嘴様癌を経験したので,文献上比較的稀なるものと認めここに報告する.

大網膜嚢腫の1例

著者: 刈屋善隆 ,   西垣彰夫

ページ範囲:P.451 - P.453

 大網膜嚢腫は稀な疾患で1852年Gairdnerに依つて始めて発表されて以来世界文献総数は漸く100例を越える程であり,またわが国で大正3年吉武報告の第1例から僅かに25例を算えるに過ぎないようである.ここに吾々が治験した1例を報告する.

Brodie氏骨膿瘍の3例

著者: 橋本竜夫 ,   倉本一

ページ範囲:P.455 - P.458

緒言
 いわゆる,Brodie氏骨膿瘍は1830年にBen-jamin-Brodieが脛骨に見た9例の報告を初めとして,海外にはThomson,Henderson,Simon等の報告があり,本邦においては昭和5年,玉木の報告以来,最近に至る迄81例の多きを数えている.本疾患は必ずしも稀有なるものではないが,その特徴として症状が軽微で,且つ症状の発現が間歇的で永続することが少なく,診断は必ずしも容易ではないとされている.
 最近当教室において,その3例を経験したのでここに報告する.

癌と誤まられた直腸エンドメトリオージスの1例

著者: 木村忠 ,   松本重喜 ,   渡辺真幸 ,   田中竜男

ページ範囲:P.459 - P.462

 エンドメトリオージス,子宮内膜症は組織的,機能的に正常子宮粘膜と同一の組織が子宮腔内面以外に増殖する状態を云うが,本邦外科領域では余り注目されない.われわれは最近子宮筋腫の手術中偶然発見した直腸壁内腫瘤を癌と考え直腸切断術を行い,組織的にエンドメトリオージスと判明した1例を経験したので報告する.(以下エンドメリオージスを「エ」と略記する).

総腸間膜症に併発した空腸憩室の1例

著者: 高木寬 ,   田中正忠 ,   西垣戶和雄 ,   国枝友雪 ,   佐藤喜久男 ,   寺門正道 ,   八木竜次

ページ範囲:P.463 - P.465

緒言
 1807年Cooperが,始めて剖検により発見し,1906年Gordineer & Sampsonが腸閉塞の開腹手術で発見し記載して以来,論議されてきた空腸憩室は,現在欧米においても300例におよび,わが国においても野口,槇殿,高田の考察により10数例の報告をみている.
 その多くは,文献上50歳以上の高齢者にみられ,性別には特別の関係がなく,普通は無症状に経過し,時に慢性の消化不良,腹痛,下血,あるいは穿孔性腹膜炎,腸狭窄,腸閉塞等を起し,レ線像上,あるいは開腹手術に際し偶然に発見されることが多い.

興味ある胃内異物の1例

著者: 下河辺建五 ,   福井実三

ページ範囲:P.467 - P.469

Ⅰ 緒言
 元来消化管は,摂取食物の消化吸収を掌る器管であり,従つて消化管内容は,その目的に合致した物でなければならない.唯,嗜好および味覚を盛り上げる為に,必ずしも栄養的価値のないものが摂取される場合も比較的に多いが,これらはやはり広義には栄養吸収の目的に添つたものと解すべきであろう.所がこの消化管内に,栄養吸収とは全く無縁のもの,ないしは消化管に器質的に障害を与えるもの,時には生命をも脅かすものが介在することがある.かかるものは消化管異物と称せられるのであるが,われわれは偶々福岡県戸畑市の下河辺共立病院において,1精神異常者が量的にも質的にも驚異に値する程の異物を胃内に嚥下していた症例を経験したが,しかもこの場合異物による胃穿孔をも来たして居り,手術によつて1次的に治療せしめ得たので,ここに報告すると共に,消化管内異物に関し若干の文献的考察を加えたいと思う.

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集談会

著者: 平間栄生 ,   青柳芳昭 ,   渡辺和雄 ,   岡部郁夫 ,   伊藤庸二 ,   小原昭 ,   林田健男 ,   三穂乙実 ,   小林茂 ,   西垣戶和雄 ,   神田三男 ,   山内弘二

ページ範囲:P.470 - P.471

第579回東京外科集談会
1)初めて山形県人に証明されたフイラリヤ症例
 山形県にうまれ他府県に移動したことのない26歳男.16歳頃より無痛性の右下肢腫脹に気付き,国立病院において象皮症の診断で手術を受けたが,3月後に歩行障害のない同様症状現わる.29歳に至り根治手術すべく入院.左側は正常であるが右下肢は腫脹し,尿はやや溷濁.血液所見は好酸球増多以外は正常.静脈血による染色でフイラリヤは発見し得ず,象皮症の診断でHoudleyの手術施行.経過良好,退院.組織学的に真皮にも浸潤したフイラリヤ発見.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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