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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科15巻6号

1960年06月発行

雑誌目次

綜説

小児の手術—1123例の検討

著者: 柳沢文憲 ,   矢沢知海 ,   和田雍人 ,   有馬忠正 ,   本間康正 ,   長崎進 ,   加藤穰 ,   鈴木恵之助 ,   鎌田忠夫 ,   中神恒男 ,   岩塚迪雄 ,   伊藤敏夫 ,   中島和彥 ,   飯島嘉之 ,   松崎功 ,   小林健次 ,   牧野耕治 ,   山野徳雄

ページ範囲:P.477 - P.484

 爾来,小児の手術がRisiko-Chirurgieとして敬遠されていたが,近年手術手技の改良,麻酔,術後管理の進歩により,著しく発展して来た.
 そこで最近迄,われわれが中山外科において経験したことを述べてみる.

胃癌術後縫合不全の発生について

著者: 志村秀彥 ,   岡沢猷夫

ページ範囲:P.487 - P.493

Ⅰ.緒言
 手術手技の改善および抗生物質の発見に伴い胃癌の直接死亡率は最近著しく減少しつつある.九大三宅外科最近10年間の推移を見ても昭和24.25年には比較的高率であつたが,その後漸次改善され最近では5%以下である.特に目立つのは胃全摘後の死亡率の低下であり最近では殆んど部分切除と同様の成績を示している.津田外科の統計でも同様な成績を挙げており,昭和22年から24年迄の死亡率が比較的高率な理由としてこの時期は戦後の混乱期に当り栄養不全,術後の管理の不備に帰している.
 直接死亡原因はいろいろのものが考えられるが非切除例では肝機能不全,出血によるものが最も多く切除例では汎発性腹膜炎または横隔膜下膿瘍膿胸等縫合不全に原因を持つものが67%近くを占めている.従つて胃癌の手術死亡率を減少させる為には縫合不全発生を予防する事が肝要である.若し完全にこれを予防し得れば手術死亡率は1%以下になし得ると思われる.以下胃癌胃切除後の縫合不全の発生について原因,病状予後および予防対策について検討を加えたい.(第1表)

外科領域における血清遊出肝酵素(その2)—特に血清トランスアミナーゼに就いて

著者: 吉葉昌彥 ,   榎本茂 ,   大塚敏文 ,   小島昭三 ,   石郷岡政彥 ,   大石孟男 ,   飯岡一彥 ,   安田慶太郎

ページ範囲:P.495 - P.501

 前報においては各種消化器疾患時における血清トランスアミナーゼと従来の部分的肝機能検査成績との相関関係および消化器疾患患者の入院時における血清トランスアミナーゼについて得た研究成績について報告したが,今回は主として消化器疾患手術前後の血清トランスアミナーゼの変動を中心としておさめ得た成績について述べる.

胆石の赤外線吸収スペクトルによる分析及びその臨床所見の研究(その1)

著者: 田中宏幸

ページ範囲:P.503 - P.515

緒論
 胆道系疾患は,上腹部外科疾患の1つとして,極めて重要なものであるが,臨床的には,胆石,胆嚢炎,胆嚢ヂスキネジー等の諸症状,更に肝障害が合併して,多彩な症状を呈し,その病態の把握に苦しむ場合が少くない.しかし,近年,X線診断法の進歩,Maltzer-Lyon氏法による十二指腸液分劃胆汁採取の普及,並びにその胆汁の位相差顕微鏡等による形態学的検索により,確定診断率も著しく向上して来た.一方治療面に於いても抗生物質の導入,外科手術手技の進歩により著しい発展をみるに至つた.
 しかし,胆石症の成因,本態或いは,その臨床所見の多種多彩な点については,幾多未解決の問題が残されている.

外国文献

急性上部胃腸管出血の鑑別診断のための脾髄圧測定法,他

ページ範囲:P.484 - P.484

 食道胃静脈瘤出血は急性上部胃腸管出血の20〜25%を占める.静脈瘤出血では初めての出血で30〜50%が死亡する.静脈瘤の存否を知る方法として極めて簡単な脾髄圧測定法を応用して好成績を得た.No.18の脊髄穿刺針を第9肋間,後腋窩線より脾内に刺入し圧を測定する.開腹時の門脈圧と優れた相関関係がある.113例の患者で試み66例の静脈瘤出血を診断した.静脈瘤出血患者の圧は平均413 mmH2Oで他の部位の物は175 mmH2Oであつた.290 mmH2O以上の患者は全部静脈瘤性,250 mm以下は全部他の部位からの出血で,中間の11名中4名が静脈瘤性出血であつた.血圧の低下及び出血による血液量の減少にも拘らず門脈圧は維持される.
 Splenic pulp manometry as anemergency test in the differentialdiagnosis of acute upper gestroi-ntestinal Bleeding.

Conference

臨床外科懇話会記録(8)

著者: 日本大学医学部外科

ページ範囲:P.517 - P.524

めずらしい第1肋骨骨折の1例
 患者:沢○祐○ 78歳 ♂
 初診:34年12月10日

統計

小児骨折の統計的観察

著者: 佐野精司 ,   佐藤勤也 ,   小室健

ページ範囲:P.525 - P.528

 近年における種々外傷の多くなつた理由は日常および各種工業の機械化,高速度化せる交通,さらに種々のスポーツによる外傷などのためと考えられている.したがつて発育しつつある小児期においては大多数が実際に種々な外傷の危険に曝されている.われわれは日本大学医学部整形外科における4年6ヵ月間(昭和30年1月〜昭和34年6月まで)に経験した小児骨折334例について統計的観察を試みたので報告する.この統計をとるにあたつて小児期とは満15歳以下の義務教育年齢までとした.なお頭部骨折および病的骨折は除外した.

薬剤

肺結核外科におけるオロトンサンの肝機能への影響について

著者: 近江谷淳一

ページ範囲:P.529 - P.534

第1章 緒言
 広汎多岐にわたる肝の機能はすべての新陳代謝に関与すると言つても過言ではない.従来肝への関心がたかまるにしたがい,数多くの肝庇護剤が発見され,内科医は勿論のこと外科医にとつてもこれたいする関心は次第に深まり,外科的大侵襲時にはこの肝庇護がもつとも重要な関心事となつて来た.
 なかんずく肺結核手術の大侵襲時にはその予後が肝機能に左右されるところ甚だ大で,術前術後の肝機能はもちろんのこと,その回復の状態は肝機能の正常化であるとまで極言されるにいたつてきた.

症例

頭部外傷後胃出血および子宮出血を来した1例

著者: 白石幸治郎 ,   野崎英夫

ページ範囲:P.535 - P.537

 近来交通災害その他による頭部外傷の頻発に伴いその病態生理や合併症が臨床的にも実験的にもかなり解明されつつある.中でも頭部外傷に際して胃出血を来すことがあることは従来から知られているが1,2),その程度が致命的でないことや随伴する口腔や鼻,咽腔粘膜などの外傷による血液の嚥下などのために実際には看過されている場合が多いのではなかろうか,著者らは頭部外傷直後に来したと思われる吐血とさらに子宮出血をも合併した1例を経験したので報告し,その発生機序について少しく考察を加えて見た.

後腹膜奇形腫の1手術治験例

著者: 中沢省三

ページ範囲:P.539 - P.541

 後腹膜腫瘍は,元来比較的稀な疾患であり,その予後も,極めて不良なることが報告されているが,最近教室においても,極く典形的な後腹膜奇形腫の1手術治験例を経験したので,ここに報告する.

虫垂腺腫の穿孔性腹膜炎を起した1例

著者: 平山圭一郎 ,   久保内一男 ,   片山勳 ,   保坂浩正

ページ範囲:P.542 - P.544

 虫垂の腫瘍についての報告は数少く,最近10年間の本邦文献によつても良性腫瘍として僅かに皮様嚢腫,粘液嚢腫の記載を見るのみで,悪性腫瘍では腺癌,カルチノイドの少数例を見るに過ぎない.
 私達は虫垂穿孔による限局性腹膜炎と考え,手術を行つた所,虫垂の中央部より尖端にかけて内腔に花キャベツ状に増殖した腫瘍が尖端部で穿孔し,さらに切除病理組織標本で乳嘴状の腺組織の増殖で,浸潤像を認めない腺腫の稀有な1例を経験したので報告する.

原発巣症状を現わすことなく切断後7年治癒状態を続ける大腿骨副腎腫例

著者: 高木俊夫

ページ範囲:P.545 - P.548

 ヒペルネフロームの報告は1883年Grawitzにより初めて記載されてより,臨床の各分野に見られさほど稀なものではなく,病理学的にはなお種種の論議があるが,その悪性腫瘍であることは諸家の一致する処である.
 私は原発巣症状を欠き左大腿骨病的骨折により発見され,病理組織学的に本腫瘍と診断を受け,大腿切断術を施行し,7年後の今日なお健康にて日常勤務に従事している興味ある例を経験したので報告する.

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ソ連の医学者から注目されている日本の医学書

著者: V.コートキン

ページ範囲:P.551 - P.551

 モスクワの広場の一つヴォスターニェ(蜂起)広場に,ソ連保健省附属の国立中央医学図書館がある.ここには凡そ100万冊以上の東西古今の医学文献が収集されているが,その中に,日本医学文献の特別セクションがある.
 二村氏の「局所解剖学」,土肥氏の「誤診し易き皮膚疾病と性病」,冲中重雄氏の「脳の血液循環の障害」,またホルモンの理論的,臨床的研究にかんする同氏の著作はよく読まれている.その他多くの日本医学と共に,日本語に翻訳されたロシア人医学者の著書もたくさん収集されている.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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