綜説
横隔膜下盈気像よりの術後気腹の観察
著者:
新橋義一1
上条信次1
加藤允1
服部光男1
田中勝治2
所属機関:
1浜松赤十字病院外科
2慶応義塾大学医学部外科学教室
ページ範囲:P.659 - P.664
文献購入ページに移動
開腹術後の合併症のうち,案外看過されているものに術後気腹がある.術中腹腔内に入つた空気が術後若干残存することは当然であるが,通常は短時日に吸収されて問題とはならない.しかし時として異常に大量かつ頑固に残存することがある.これが術後気腹症(postoperative pneumope-ritoneum)と名付けるもので,甚だ不快な症状を発現することがある.術後気腹に関してはすでに1922年Lewisの研究をはじめW.H.Gerwig(1940および1944),J.E.Bannen(1944および1945),D.Keiser & K.Lemmertz(1947),S.A.Sergievskiy(1947),I.Harrison & H.Litwer(1957)等の報告があるが,わが国では比較的関心が薄く,僅かに国見(1952),石山(1953)の少数例の報告に接するのみである.われわれは偶然定型的術後気腹症の1例に遭遇したが,当初その気腹の空気量が余りに大量であるので,その診断に苦しみ甚だ困惑したことを動機として,術後気腹の認識不足を痛感し,後述のごとき観察を試み,いささか知見を得たのでここに報告して諸賢の御批判を仰ぐ次第である.