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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科15巻9号

1960年09月発行

雑誌目次

綜説

術後急性肺水腫の発生機転並びに早期診断法

著者: 脇坂順一

ページ範囲:P.717 - P.735

Ⅰ.緒言
 手術後に高度の呼吸困難,泡沫性血性喀痰,胸部の湿性ラ音聴取,全身のチアノーゼ等の特有の症状を伴つて急激に招来されるいわゆる術後急性肺水腫は,その約90%が胸部手術後に合併され,これ等の約60%という大半が本症の為に死亡し,しかも本症による死亡は肺外科の直接死亡率の約10%強を占めるという真に厄介なしかも重篤な合併症である.私共はこの術後急性肺水腫について過去7年半にわたり,一連の研究を続けてきたが,今般第60回日本外科学会総会の宿題報告を担当するにあたり,主として本症の発生病理,病態生理,早期診断法等について研究の一端を取纒めて述べることとする.

術後急性肺水腫—特に中枢神経系との関連について

著者: 卜部美代志

ページ範囲:P.737 - P.758

はしがき
 肺水腫に関する研究は極めて多いが,術後急性肺水腫の問題と真正面から取組んだ研究は,殊に欧米においては極めて少く,ほとんどないといつてよい.最近になつてわが国において2,3の研究報告をみるようになつた程度である.その理由として術後急性肺水腫の発生が急激で,かつ重篤のため,臨床上の精細な検索を行うことが甚だ困難なことがその1つであり,術後急性肺水腫を実験的に作ることが,また困難なことがその2つであろう.私共は上に述べた困難を種々に工夫克服し術後急性肺水腫について臨床的ならびに実験的に研究して一応それを体系化し得たものと考える.次にその大要を記述したい.

外国文献

An Evaluation of the Common Channel as a Factor in Pancreatic or Billary disease,他

ページ範囲:P.758 - P.758

 19世紀に犬で胆汁を膵管に注射し実験的膵臓炎を作る事に成功しその後膵臓壊死の剖検例の多くに胆石がVater氏乳頭に嵌入している事実から膵臓炎の成因は乳頭部の閉塞により総胆管,膵管の共通部分すなわちCommon Channelを介して胆汁の膵管への流入であると云う説がとなえられ,また逆に膵液の胆管への流入が急性胆嚢炎を起すという説もある.
 Common Channelは89%に存在するが実際に逆流は起りにくいという研究,逆に胆道撮映により胆汁の膵管への流入はしばしばある事実とする報告など賛否色々の意見がある.

術技

横隔膜レラキサチオの手術療法

著者: 高橋喜久夫 ,   米本仁 ,   中川利一

ページ範囲:P.761 - P.767

いとぐち
 横隔レラキサチオは横隔膜が菲薄となり,全体あるいは部分的に挙上している状態に対して与えられた臨床的命名で,定期的な健康診断が広く実施されるようになつた現在においては,本症に遭遇する機会も多く,宮林1)によれば0.15%に相当するという.しかし,本症に対する外科的修復術施行の報告例は極めて少なく,本邦では中谷2)(1944)の報告以来わずかに13例を数える程度に過ぎない.われわれは従来報告された種々の手術術式とともに,われわれの考案した修復術式を中心に述べ,自験例をここに報告する.

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修復外科に用いられたアロプラスチックス(1)

著者: 北上幸雄 ,   ペトロフスキー

ページ範囲:P.767 - P.767

 モスクワのセーチェーフ記念第1医科大学の外科診療所の私のところに1人の患者がやつてきた.
 彼女の病気は先天性のもので,横隔膜の左彎曲部が全然なかつた.年ごとに加わる苦痛と,ひんぱんに起る発作は,発作時間も長くなり,若い女性にとつて耐えきれぬまでになつていた.さまざまな治療の努力も治療効果がなく,こうして最後に私のところにやつてきたのであつた.

Conference

臨床外科懇話会記録(9)

著者: 日本大学医学部外科

ページ範囲:P.769 - P.774

外傷性横隔膜ヘルニアの1例
 患者:宮○芳○ 25歳 男
 主訴:左胸部重圧感

薬剤

胃腸管穿孔による汎発性腹膜炎の化学療法—特にPyrrholidinomethyl-tetracycline(Hostacycline)の効果について

著者: 柴田清人 ,   由良二郎 ,   神尾辰郎 ,   大河内正敏

ページ範囲:P.775 - P.779

まえがき
 胃腸管穿孔による汎発性腹膜炎は,穿孔臓器によつて多少の相違はあるが,一般に激しい疼痛とシヨツク症状を呈し,できるだけ早く,手術的処置を加えると共に適切な治療を加えなければ生命に重大な危険を及ぼす重症疾患である.多くは潰瘍性の変化によるもので胃または十二指腸潰瘍,チフス性潰瘍が穿孔する.あるいは急性炎症のために壊疽性となつた虫垂胆嚢また絞扼性イレウスで壊疽性になつた腸管が破れるものである.
 従来はこの穿孔性汎発性腹膜炎はかなり高度の死亡率を有したものであるが,手術手技の進歩,術前術後の管理殊に輸液輸血の普及,麻酔の改良,抗生物質を主とする化学療法の発達により最近は余程の時間的に手遅れのない限り生命を救うことができるようになつた.

Carnigenの急性低血圧症への応用

著者: 楊大鵬 ,   北村勉 ,   高津郁男 ,   皆川博 ,   北代勇夫 ,   林金土 ,   亀井良次

ページ範囲:P.781 - P.785

緒言
 外科に限らず臨床的に遭遇するいわゆるショックと称せられる状態は,その一部は心原性のものもあるが,大部分は血原性の中に含まれいわゆる末梢性循環障害で,急激な血圧降下を主徴とし,体内の血管床の容積とそれを流れる血液量の不均衡が種々な原因で起ることは一般に知られている事実である.ショックの成因として種々な説があげられるが,畢竟その本態は生体内の血液分布の変動であり,血管トーヌスの低下により来る血液の鬱滞,他方では血液供給の減じた貧血せる領域が生ずる為である.これらの循環失調の状態が持続する場合には,生命保持上重要な器官が貧血を増し,二次的にAnoxiaに陥り,呼吸循環中枢の機能不全,あるいは心臓を中心とする循環不全をも併発して来る.ショック時の代謝異常はこの血液分布の変動と因果関聯してこの代謝産物がさらに循環を悪くし,ショック状態をますます重症化し,何としても回復できない全生活機能の衰弱へと移行することは当然である.
 従つてその治療対策としては,絶対的あるいは相対的に減少せる有効循環血液量を適正な量に迄補給してやることと,他方ではこの絶対的あるいは相対的に拡張した血管床を循環量と釣合うように収縮せしめることは極めて重要なことである.

症例

高度の動脈硬化症を伴う気管支癌の1例

著者: 奥田義正 ,   鮫島夏樹 ,   伊部和幸

ページ範囲:P.787 - P.791

緒言
 近年わが国においても気管支癌の診断および治療に著しい進歩が見られ,それと共に気管支癌の増加が多くの人々に強調されている.著者等は最近高度の動脈硬化症を伴い,興味ある経過をとつた気管支癌の一症例を経験したので,主に病理解剖学的事項を中心に報告する.

火傷による瘢痕に対し,植皮術施行後に発生した脂肪腫

著者: 保川博 ,   富永通裕 ,   大橋規男

ページ範囲:P.793 - P.795

 クラウゼ氏植皮術は関節等の瘢痕拘縮に対してしばしば応用されるのであるが,われわれは火傷後の瘢痕拘縮部にこのクラウゼ氏植皮術を受け,間もなく移植床に脂肪腫瘤を生じたため,成形手術を希望した例を経験したのでここに報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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