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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科16巻1号

1961年01月発行

雑誌目次

綜説

外科的疾患における術前術後のTEG

著者: 砂田輝武 ,   杉原博 ,   志水浩 ,   吉田茂 ,   北村斉 ,   重本弘定 ,   津田弘純 ,   尾崎光泰

ページ範囲:P.5 - P.10

 最近十数年間に多数の血液凝固因子が発見され,新しい凝固学説が確立されて血液凝固学は著しく進歩した.また1948年Hartertは血液凝固の模様を客観的にかつ時間的経過を自働的に記録しうる装置,すなわちThrombelastographを考案した.本装置を用いての血液凝固過程の研究は今日では本邦においても散見され,血小板減少性紫斑病,血友病,白血病,再生不良性貧血,線維素溶解現象発現などのさいには特異なThrombe-lastogram(TEG)を示すことが知られている.
 われわれは最近ドイツHellige社製のThromb-elastographを用いて51名の入院患者に対してその手術前後にTEGを行い,同時に全血凝固時間,血小板数,プロトロンビン活性を測定し,さらに輸血量とTEG各値の関連性を検討した.

老人外科に於ける循環,呼吸系並びに腎機能に関する諸問題

著者: 田中大平 ,   林進武 ,   佐藤光男 ,   飯野重之 ,   赤沢章嘉 ,   森岡幹登 ,   西野樹 ,   鈴木守 ,   青山幸次郎 ,   梅本牧夫

ページ範囲:P.11 - P.22

はじめに
 老齢患者に手術侵襲を加えるに際して,慎重な注意を要することは当然である.年齢と共に進展する臓器機能の低下,予備力の減退はHomeostasisの幅を減少し,Stressに対する感受性を亢進せしめる.そして外傷,感染,低栄養,Anoxiaおよび水・電解質変動に対する感受性の亢進が臓器予備力の減退と共に,老齢者の手術耐性を低下し,更に術後合併症発生を容易ならしめているのである.この観点から手術侵襲に対する臓器機能の変化を精細に検討し,またStressに対する感受性を追求することが老人外科における急務であると考えられる.併し乍らこの方面に関する内外の文献は比較的少いので,われわれの老齢者手術時の生体反応に関する研究の一部を報告して,多少なりともこれに資したいと思う.

調節呼吸下に行なう気管支鏡検査に関する研究

著者: 小川次男

ページ範囲:P.23 - P.31

緒言
 気管支鏡検査を局所麻酔下に行なうことは,熟練した検査医にとつては何らの支障を来たすことはない.しかしながら挿管の難易,検査医の熟練度によつては,患者に与える精神的並びに肉体的不安が大きいこと,および咳嗽刺激,検査を妨げる反射,更に使用する局所麻酔剤すなわちコカイン,キシロカインなどの急性中毒の危険を無視することができない.
 局所麻酔下に安静に行ない得ない小児に対してはエーテル麻酔の外に,ラボナール臀筋内注入法または点滴静注法1)2),冬眠法の応用3)などが報告されている.

膵管挿管法,膵管撮影及び膵管誘導手技

著者: 吉岡一 ,   斎藤慶一 ,   溝田弘 ,   勝又晃一 ,   長谷光一

ページ範囲:P.33 - P.44

Ⅰ.緒言
 膵管内にチューブを挿入して造影剤を注入し,膵管撮影を行なうには二つの方法がある.一つは十二指腸を切開し,経乳頭経過によるもの,他は膵尾部を切除し尾側端より挿管する方法である.前者はDonbilet,Poppel and Mulholland1)が1947年2月4日に初めて実施している.後者はDuVal(1954)6)が慢性膵臓炎に膵尾・空腸吻合Ca-udal Pancreatojejunostomyを造設するに先だち膵管末端の狭窄ないし閉塞を証明するために実施している.尾側より挿管する法は膵尾側切除を必要とするので特殊の場合以外,一般の診断法としては用いられていない.これに反し乳頭より挿管,造影する法は膵臓の各種疾患に実施され,これまで全く不明であつたその際の膵管の態度(狭窄,閉塞,拡張,仮性嚢胞との関係等)が一目瞭然となり,膵臓外科に一新生面を拓きつつある.殊にLucien Leger7)は近著Chirurgie du pancréasにおいて各種膵疾患におけるPancreatographieの所見を詳述している.
 膵管挿管法は単に膵管撮影を行なうための診断用手技としてのみならず治療法として利用されつつある.すなわち手術中の膵管損傷,外傷による膵断裂等においては挿入された膵管カテーテルを軸として,初めてこれまで行ない得なかつた膵管両断端の縫着修復が確実に行ない得るに至つた.

泉熱様疾患の合併症として集団発生した急性虫垂炎について

著者: 藤村密 ,   鈴木康彦 ,   小山芳雄 ,   窪田泰和

ページ範囲:P.45 - P.55

緒言
 今回われわれが経験した泉熱様疾患は,その発生の規模が大であり,痢患人員の極めて多い事が特長であつた.
 すなわち長野県松代中学校における痢患患者は,長野県衛生部の調査によれば総数923名であり,かかる多人数の流行は従来の文献よりみた泉熱の流行に比べて稀な事である.然して今回の爆発的大流行において特に特異的な事は,合併症として多数の虫垂炎患者の発生をみた事であり,今回の如く多数の虫垂炎患者の集団発生をみた事は今までにはなく,極めて興味ある事実として,その臨床経過の概略および所見の大要をここに報告して諸賢の御批判を仰ぐ次第である.

外国文献

結腸腫瘍のひろがり方と抗生物質,他

著者:

ページ範囲:P.22 - P.22

 結腸癌切除後の吻合部における癌成育を術前術後の腸管内殺菌(抗生物質投与)が高めるといわれて来た.Cohnらはウサギの結腸に,Brown-Pearce腫瘍を移植し,十分に着床し発育したころで,結腸切除,吻合を行つた.まず無菌手術法で,抗生物質を用いず,吻合を行なつた44例のうち,吻合部腫瘍生育は18例であつた.ついで腸内細菌をネオマイシン・テトラサイクリン併用,洗腸消毒で抑制した40手術例では,吻合部の腫瘍発生29例であつた.その大腸菌・レンサ球菌・ブドウ球菌・クロストリジラム等の菌数はずつと少くなつている,この実験結果では,腸内殺菌を行うと,吻合部の腫瘍発生が高率となるという成績になるようである.
 腸内殺菌で吻合部に癌発育が多くなるというVink(1953)に一致するわけであろう.Brown-pearce腫瘍の睾丸移植後の転移形成は,レンサ球菌感染で抑制されるという報告がある,これらを考えあわせると,今日外科でふつうに行われている術前術後の腸内殺菌法は再考再検討の余地を残しているようである.

薬剤

新鎭痛剤デトラン(K-120)の使用経験

著者: 小林建一 ,   渡部清隆 ,   河村純郎 ,   大井実

ページ範囲:P.57 - P.61

 新鎮痛剤デドラン(K-120,注射剤)を鎮痛の目的で種々の腹痛症例,術後症例に使用し,また麻酔前投薬としての効果についても検討したので,その結果を報告する.

ガロゲンの利胆効果に関する研究

著者: 鍬塚登喜郎 ,   橋爪陽一 ,   吉田正彥 ,   林篤彥

ページ範囲:P.63 - P.66

緒言
 クルクマの根茎成分に由来した催胆剤ガロゲンの催胆効果および臨床成績についての研究は,わが国でも諸家多数の報告がある.著者らも曩に総胆管ドレナージを設置した患者にガロゲン錠を投与し,その催胆効果の著明なることを認めている.このたび催胆作用を更に厳密に見るために,総胆管ドレナージを施した犬について研究し知見を得たので報告する.

外科領域に於けるBesacolin(Carbamyl-methylcholine-chloride)の試用経験に就いて

著者: 池尻泰二 ,   草場昭 ,   友田秀教

ページ範囲:P.69 - P.76

緒言
 開腹手術後の排気および排尿困難は,患者ならびに医師を悩ませる外科臨床日常の問題であつてなおざりには出来ない.これら排気および排尿困難は,放置しておいても時間の経過と共に,自然に回復して来るのが常であるが,時には回復が遷延して患者を著しく苦しめる結果となる事がある.このような場合,副作用を伴わず而も手術後早期に腸内ガス排出および排尿を図り得れば,それ丈益する所が多い.腸管,膀胱等の滑平筋の運動は,副交感神経と交感神経の調和の下に正常に営まれ,副交感神経末梢の神経—筋接合部に存在するアセチルコリンが活性化される事によつて,これらの滑平筋は興奮すると言う.従つて,麻痺状態に在る腸管および膀胱を興奮せしめる為には,アセチルコリンを用いるのが最も生理的ではあるが,これは体液中でコリンエステラーゼにより容易に分解されるので効果の消失が早く,純粋なアセチルコリンとしては使用出来ない難点がある.そこで,その安定化と作用強化の点から,各種誘導体の研究が行われるようになり,種々のコリンエステルが合成された.
 われわれは,最近コリンエステルの一種であるペサコリン(エーザイ)を入手試用する機会を得たので,その臨床効果をとりまとめて報告する.

蛋白同化ホルモン〜β-Androstanoloneの使用経験

著者: 徳沢邦輔 ,   川井忠和 ,   饗場庄一 ,   梨本剛 ,   河又正紀 ,   安斉徹男 ,   大塚浩之

ページ範囲:P.79 - P.88

1.はしがき
 外科領域では低蛋白症はショック準備状態として極めて危険であり,手術にあたつては血清蛋白濃度が少くとも6g/dl以上あることが是非とも望ましいことは周知の所であろう.低蛋白症の患者は手術に際しショックに陥り易いのみならず,術後,内臓の浮腫たとえば吻合部通過障害および縫合不全,手術創の治癒遷延ないし哆開,細菌感染に対する抵抗性の減弱,胃腸運動の減弱,肺化膿症など重篤な合併症を容易に惹起する.従つて,外科領域においては,術前は勿論のこと術後の低蛋白症の改善は極めて重要な治療法のひとつである.
 外科手術の対象となる疾患,たとえば胃癌の約60%,腸癌の約35%その他の胃腸疾患でも約30%は術前すでに低蛋白状態にあるといわれる.一方,生体はひとたび外科的侵襲をうけると,外力による組織の挫滅,出血による血球・血漿成分の喪失の他に,貯蔵蛋白質が侵襲反応の過程で,動員され消耗される.このような侵襲に伴うカタボリズムの期間は侵襲の程度によつて多少異るが3〜7日間は持続する.従つて,術前の低栄養・低蛋白症は術後,生体をますます低蛋白状態に陥らせるのである.

症例

いわゆるSkip Lesionを示した慢性局所性腸炎の1例

著者: 森田建 ,   鈴木太 ,   松尾建

ページ範囲:P.91 - P.95

緒言
 局所性腸炎(Regional Enteritis)は1932年Cro-hn等1)によりIleitis terminalisの名の下に発表されて以来欧米において数多くの報告をみており,またその病型も腸狭窄や糞瘻を形成し,再発を繰り返すような慢性の経過をとるものが大部分である.一方本邦では「いわゆるクローン氏病」としての報告はしばしばみられるが,その多くはいわゆる急性型の症例に関するものであつて2-10)慢性の経過をとる症例に関する報告は少く11-27),またskip lesionの形成が記載された報告は稀である18-21,28)
 われわれは最近慢性腸狭窄症状を呈し,病変部がSkip lesionのかたちをとつて多発し,組織学的に局所性腸炎と診断した1例を経験したので報告する.

多発性血管腫を件なつた(Maffucci's syndrome)高度の多発性軟骨腫の1例

著者: 花岡弘 ,   臼井亮平 ,   佐藤信

ページ範囲:P.97 - P.101

 われわれは,最近ほとんど全身の骨に異常に多発し,高度の骨発育障害と,骨変形にもとづく運動障害を伴ない,四肢の腫瘤先端には潰瘍形成を見,またほとんど全身の皮膚に小指頭大の結節(組織学的に血管腫)を伴なつた,興味ある多発性軟骨腫の1例を経験したので,ここに報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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