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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科16巻12号

1961年12月発行

雑誌目次

綜説

上腹部大動脈縮窄症,とくに腎動脈狭窄による高血圧の外科的治療について

著者: 木本誠二 ,   和田達雄 ,   野原不二夫 ,   石田幸三 ,   若林明夫 ,   髙田真行

ページ範囲:P.993 - P.1000

序言
 腹部大動脈縮窄症は,いわゆる異型の大動脈縮窄症と称せられるものに属する疾患であるが,欧米においてはこの異型の大動脈縮窄症が極めて稀なものとされているのに対し,本邦において比較的多く認められることは,すでに著者等が本誌上に発表したところである1)
 腹部大動脈に縮窄症の存在することは,古くから知られており,すでに1847年にQuain氏2)が,ついで1861年にPower氏3)がこれを記載しているが,1960年のSenning氏4)等の集計によれば,総数29例で,このうち狭窄部位が腎動脈分枝部,もしくはそれより中枢側に存在するいわゆる上腹部大動脈縮窄症の範疇に属するものは16例にすぎない.

肺水腫の病態生理,特に吸収面を中心にした肺水腫の進展に関する考え方

著者: 脇坂順一 ,   倉本進賢 ,   坂本幸彦 ,   矢野千鶴子

ページ範囲:P.1003 - P.1010

Ⅰ.緒言
 肺水腫の研究は外科手術適応の拡大に伴う術後急性肺水腫の出現によつて,最近外科医の間に関心を集めている.本症の発来機転や病態生理に関しては,古くから数多くの研究報告1)-10)があるが,その病態が複雑なために未だ明確なる解答は得られていない.しかしながら,肺水腫が肺における特異な病態を主とすることから,心肺血行動態の変化が中心をなすものであろうとする考えが最近強いようである.肺胞腔内への水腫液の濾出という本症の主病態を局所的に考えると,結局Altochule5)の説のように発来機転の如何にかかわらず,濾出と吸収のアンバランスということになる.そして肺毛細管からの濾出を促進させる因子としては,肺毛細管圧の上昇,肺毛細管透過性の亢進,血液膠滲圧の低下等が考えられ,また吸収能の減退は肺リンパ系と直接肺胞系より肺静脈系への吸収障害が考えられる.すなわち,肺水腫が発生した場合には濾出の増加か,吸収障害か,あるいはその両者が存在したと考えてよい.若しこの場合に,発生機序に明らかな相異があれば,濾出された水腫液の性状に何らかの差異が見出されるであろう.さらに肺水腫の原因が吸収障害によるとした場合に,その吸収障害を起すのは一体何であろうと考えた.このような考えから出発して,最近水腫液の性状と水腫液の吸収について2,3の実験と考按を行つたので茲に発表し諸賢の御高批を得たいと思う.

甲状腺癌の外科的治療成績の検討

著者: 降旗力男 ,   牧内正夫 ,   丸山智道 ,   山口友安 ,   大塚満洲雄 ,   隈寛二 ,   寺島銀之輔 ,   妹尾亘明

ページ範囲:P.1011 - P.1018

 甲状腺癌は従来比較的稀な疾患とされ,臨床医家の間でも余り注目されていなかつたが,近年癌治療に関する問題が社会的関心を呼ぶようになつてから,私どもを訪れる甲状腺癌の患者は年々増加の一途を辿つている.
 甲状腺癌に関する研究業績ないし綜説は本邦においても多数みられるが1)-5),その外科的治療成績について長期間にわたつて観察した報告は本邦においては見当らない.

小児虫垂炎の臨床的観察

著者: 高松新一 ,   児島保

ページ範囲:P.1021 - P.1025

 虫垂炎は外科臨床において最もしばしば遭遇する疾患であり,虫垂炎に関する報告は枚挙にいとまのないところであるが,小児虫垂炎に関する報告は意外にその数が少いようである1)-12).これは小児虫垂炎の頻度が少く,小児科あるいは外科においても余り重要視されていないことに起因しているのであろうが,小児虫垂炎の診断は困難であり,その治療成績は必ずしも満足すべきものではない.このような小児虫垂炎の特殊性にかんがみ,私共は教室開設(昭和23年6月)以来,昭和34年末までの11年7カ月間に経験した10歳(満10歳を含み正確には11歳未満)以下の虫垂炎90例について臨床的観察を試みたので,その概要を述べ少しく考察を加えて見た.

臨床病理 リンパ節の腫瘍--病理より臨床にささげる Probeの診断に迷う頸部リンパ節腫大と腸間膜リンパ節腫大の変つた型

第8回 Iatrogenic anticonvulsant-drug lymphadenopathyについて/第9回 いわゆるMesenteriale Lymphadenitisについて

著者: 所安夫

ページ範囲:P.1027 - P.1033

 コノタビハ,真ノリンパ節ノ腫瘍デハアリマセンガ,フトシタ不注意カラ,大事ナ判断ノタメノ手掛リヲ見ノガスコトニヨツテ,ドウヤラ腫瘍デナイコトノ見当ハツイテモ,サテソノ腫大リンパ節ノ本態ヲ正シク診断スルノニズイ分苦労シ,苦シマギレニタダ炎症性ノ腫大トダケ言ツテ,イイ加減ニスマシテシマウヨウナ,シカモソレ自体ソンナニシバシバ出アウモノデハナイニシテモ,是非トモ私共ガ熟知シテイナケレバナラナイヨウナ,ソノヨウナ注目スベキリンパ節ノ腫大ニツイテ,アル意味デ代表的ナ双壁ヲココニノベタイト思イマス.時アツテソレハ悪性リンパ節腫瘍ヲマネルコトスラアルノデスカラ,仇ヤオロソカニハデキマセン.

展望

活性気管支カルチノイド

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.1035 - P.1049

はしがき
 カルチノイドは消化管粘膜の基底部に散在するenterochromaffin細胞(Kultschitzky)から発生する,通常良性の腫瘍で,転移をいとなむことなく長い経過をとり,たとえ転移を稀に形成しても癌様悪液質に陥ることなく,転移を抱いたまま長く生存を許すものと解されている.いうまでもなく,虫垂カルチノイドが最も多く,全腸管カルチノイドの80〜90%を占める.その虫垂カルチノイドは転移を形成することがきわめて少く,おそらく,今日まで虫垂カルチノイド転移の症例は文献に30例を越えないと思われる.したがつて,カルチノイド一般が,経過の長い,良性の腫瘍であるという印象を与えるのは,当然であろう.筆者は別の機会に(1957,1958 a,b,1961 a,b,c,d),消化管各部位のカルチノイド症例を文献から広く展望をこころみたが,回腸・空腸・盲腸などのカルチノイドはすでに虫垂カルチノイドと,その転移形成頻度・腫瘍細胞の嗜銀性・腫瘍の内分泌学的代謝学的活性度・臨床カルチノイド症状発生頻度において著しく異ることを痛感した.ことに,胃・胆道・直腸などの非好発部位におけるカルチノイドは,虫垂カルチノイドの与える概念・印象とは遠く遠く隔つているといわなければならなかつた.

外国文献

癌の5-fluorouracil療法,他

ページ範囲:P.1051 - P.1058

 5-fluorouracilは下のような構造をもつantimetabolite.静注で無痛.
 ふつう15mg/kgを5日連用.1日量1gを越えぬ方がよい.その副作用は骨髄抑制で,7割近い数は第1回注射から16〜21日ごろ起る.Staleyらの論文は50例の,すでに他に化学療法のないものをえらび通計130コースの5-f治療を行つた.結腸癌9例では6例に一過性軽快(腫瘤縮少・疼痛軽減・滲出減少・転移巣縮少)があり,その2例は明らかに生命を延長しえた.胃癌6例には他覚的改善なく,4例は自覚的軽快を告げた.乳癌3例は何れも客観的に改善した.膀胱癌3例のうち1例は腹腔内転移巣が触れなくなつた.黒色腫3例には無効.肺癌5例には客観的改善なし.口腔・咽喉等の癌12例は何れも疼痛去り全身状態は良くなつたが,転移巣縮少は著しくない.その他3例無効.Vaitkeviciusらは170例の末期癌を本剤で治療.155例に多少とも副作用あり,白血球減少98,下痢・口腔炎・悪心など.白血球2000以下61例という頻度であつた.ために敗血症を招いた1例あり.また低K血症・消化管出血を招いた5例あり.結腸癌45例では20例に客観的な腫瘍縮少あり.うち9例は何ら副作用なし.乳癌21例では9例に腫瘤縮少.胃癌19例では6例に腫瘤縮少あり,うち2例はかなり改善を見た.卵巣癌11例では7例改善.

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臨床外科 第16巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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