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綜説
肺水腫の病態生理,特に吸収面を中心にした肺水腫の進展に関する考え方
著者: 脇坂順一1 倉本進賢1 坂本幸彦1 矢野千鶴子1
所属機関: 1久留米大学医学部脇坂外科教室
ページ範囲:P.1003 - P.1010
文献購入ページに移動肺水腫の研究は外科手術適応の拡大に伴う術後急性肺水腫の出現によつて,最近外科医の間に関心を集めている.本症の発来機転や病態生理に関しては,古くから数多くの研究報告1)-10)があるが,その病態が複雑なために未だ明確なる解答は得られていない.しかしながら,肺水腫が肺における特異な病態を主とすることから,心肺血行動態の変化が中心をなすものであろうとする考えが最近強いようである.肺胞腔内への水腫液の濾出という本症の主病態を局所的に考えると,結局Altochule5)の説のように発来機転の如何にかかわらず,濾出と吸収のアンバランスということになる.そして肺毛細管からの濾出を促進させる因子としては,肺毛細管圧の上昇,肺毛細管透過性の亢進,血液膠滲圧の低下等が考えられ,また吸収能の減退は肺リンパ系と直接肺胞系より肺静脈系への吸収障害が考えられる.すなわち,肺水腫が発生した場合には濾出の増加か,吸収障害か,あるいはその両者が存在したと考えてよい.若しこの場合に,発生機序に明らかな相異があれば,濾出された水腫液の性状に何らかの差異が見出されるであろう.さらに肺水腫の原因が吸収障害によるとした場合に,その吸収障害を起すのは一体何であろうと考えた.このような考えから出発して,最近水腫液の性状と水腫液の吸収について2,3の実験と考按を行つたので茲に発表し諸賢の御高批を得たいと思う.
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