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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科16巻2号

1961年02月発行

雑誌目次

綜説

Hürthle cell tumorについて

著者: 渡部道郎 ,   山崎郁雄

ページ範囲:P.109 - P.115

Ⅰ.緒言
 1907年Langhans1)は,小濾胞性甲状腺腫の一特殊型を5例集めて報告し,これにgrosszellige kleinalveolare Strumaの名を与えたが,その後同様の甲状腺腫が実に種々様々の名称で呼ばれている.しかしながら1919年Ewing2)が同様の腫瘍をHürthle cell tumorと呼称して以来,その後の多くの報告には主としてこの名称が用いられている.そもそもHürthle celleというのは,1894年Hürthle3)が子犬の甲状腺に見出したものであるが,この細胞はHürthleに先立つ17年前に,すでにBaber4)によつて記載せられている.Baber,Hürthleの記載は総て犬においてであるが,Askan-azy5)は同様の細胞を始めて人のtoxic thyroidに認めたことから,Askanazy cellと呼ぶ学者も多い.要するに甲状腺に発生する好酸性微細顆粒状の原形質を有する大型細胞から成るAdenomaをEwing以来Hürthle cell tumorと呼ぶのであるが,若し人名を冠するならば,当然Baber cellあるいは少くともBaber-Hürthle cellあるいはむしろAskanazy cellと呼ぶのが至当であろう.その名称の不適性に関しては殆んど総ての報告者が論文中に強調しているのであるが,今日なおHür-thle cellの名称が通用している.

小児腸重積症の不手術的療法

著者: 大矢裕庸

ページ範囲:P.117 - P.125

緒言
 さきに2回にわたつて全国のイレウス症例17,654例を集め,過去20数年にわたる本邦のイレウス症例の概況を述べた.横瀬はその第1回蒐集例中の腸重積症2,171例について統計的観察を行ない発表した.そこで著者は第2回蒐集例を合算して得られた腸重積症3,162例と,この観察期間における教室の110例とについて検討した.教室例については詳細な記録をもとにして,とくに全国統計では得られ難いような項目にわたつて調査を追加した.
 その結果は既に最近発表した.ここでは内外の文献についての記述はこれらにゆずり,実地臨床に最も関係深いところの小児例について,しかもその不手術的療法に重点を置いて再検討を加えてみようと思う.

胃カメラによる胃潰瘍の良性,悪性の判定について

著者: 藤井喬夫 ,   島谷信人 ,   中村正人

ページ範囲:P.127 - P.129

1.緒言
 われわれが,いわゆる癌年齢の患者において胃潰瘍をレ線検査によつて発見した時,この潰瘍に対する治療方針は,この潰瘍が悪性潰瘍であるか,良性潰瘍であるかを明確に鑑別することにより初めて立てられうるのであつて,勿論,悪性潰瘍であることが明らかとなつたものは,早期に胃切除術を行なうのが理想である.しかし,このような場合,これらの潰瘍をレ線検査により悪性か良性かを実際に鑑別するのは必ずしも容易ではない.
 従来から多くの研究者によつてレ線検査上悪性潰瘍の徴候が種々挙げられているが,実際に正確な鑑別診断がなされえない例が少くないのであつて,島田,中谷,卜部らは組織診断で明らかに悪性潰瘍であつた81例の症例中,レ線検査で良性胃潰瘍と誤診したものが31例にも及んだと報告している.

切除せる虫垂の造影撮影による閉塞ならびに狭窄の検索

著者: 井上淳

ページ範囲:P.131 - P.135

緒言
 虫垂炎の発生機序については,いろいろの仮説が云われているが,定説はない.虫垂炎の発生原因は荻原1)によれば,
 Ⅰ)血行感染説

薬剤

外科領域における水溶性プレドニン(Prednisolone sodium succinate)の使用効果について

著者: 斉藤純夫 ,   安斉徹男 ,   臼井竜 ,   塩崎秀郎 ,   大塚浩之 ,   朝日孝幸 ,   川村豊文 ,   高野晃寧

ページ範囲:P.137 - P.141

 外科領域において副腎皮質ホルモンの使用適応は可成り広範囲であるが,急性副腎皮質不全,手術侵襲ショックが絶対的適応とされる.こうした危急時には経口投与が不可能で速効性の静脈内投与,筋肉内投与が望ましい.副腎腫瘍に対する副腎剔除,衰弱患者や老年者の手術,外傷などに伴う術中・術後のショック症状には速効性の副腎皮質ホルモンが奏効する.さらに,重症感染症,肝障害に対する抗炎症作用効果が知られている.水溶性プレドニン(Prednisolone sodium succinate)は水溶性で,上述の如き危急時の静脈内注射に使用し得る利点がある.以下,われわれが経験した症例について,その作用効果を検討した(第1表).

ヒナルゴン・リニメントの使用経験

著者: 副島義彦

ページ範囲:P.143 - P.146

Ⅰ.緒言
 諸種慢性関節痛症に対するヒナルゴン軟膏療法は,先に発表したように(臨床外科,第11巻,第10号),その疾患の初期においては相当の効果が期待出来たが,なお陳旧例,特に運動障害,高度の症例にては十分でなく,また塗布後の灼熱感あるいは皮膚粘稠感等,比較的な欠点として認められたのであるが,ここに再びヒナルゴン・リニメントとして(田辺製薬提供)これら関節痛症に対する臨床上の検討を試み,またその主成分であるNonylic acid,VanillylamideおよびNicotinicacid-β-butoxyethylesterの薬理作用から,本剤が塗擦部分の静脈血およびリンパの還流を促進し,あるいは動脈血の輸入を昂進せしめ,あるいは筋肉,腱,神経等を刺激するなど,その治療対象組織に与える作用が甚だ大であるのに鑑み,外傷後の筋力回復,関節機能の改善の目的で,若干の症例についての使用経験を得たのでここに報告する.

症例

閉鎖孔ヘルニアの2症例

著者: 荒川亮 ,   竹内慶治 ,   中井達雄 ,   矢本潔

ページ範囲:P.147 - P.150

緒言
 本邦における閉鎖孔ヘルニアの報告例は,大正15年に川瀬が報告して以来,現在迄わずか16例が報告されたに過ぎない.最近経験した2例を追加し,総計本邦報告例18例について文献的に考察をしてみたいと思う.

悪性頸動脈毬腫瘍の1例

著者: 佐藤進 ,   高橋浩一 ,   山本健治 ,   渡辺哲夫

ページ範囲:P.151 - P.153

 頸動脈毬腫瘍は極めて稀有なる疾患であるが,またその手術は非常に困難である.すなわち殆どの場合,頸動脈を結紮することなしには腫瘍の摘出が困難である.頸動脈,特に内頸動脈を結紮した場合非常に高率に脳軟化症等の重篤なる合併症を併発するので摘出に成功した生存例は非結紮例をも含めて僅かに4,5例のみである.最近われわれは悪性頸動脈毬腫瘍の1例に遭遇し総・内・外頸動脈を結紮し腫瘍を摘出全治せしめたのでこれを報告する.

膀胱穿孔を合併せる巨大膀胱結石の1例

著者: 尾崎健次 ,   角鹿尚敏

ページ範囲:P.155 - P.157

まえがき
 巨大膀胱結石が,長期間,自覚的に無症状であつたり,軽度の場合には,放置されていることがある.
 かかる場合には,しばしば,結石が膀胱底に嵌頓して尿閉を起し,初めて判明することがあるとされている.

接種結核の1例

著者: 吉友睦彥 ,   山中通弘 ,   篠崎拓

ページ範囲:P.158 - P.160

 接種結核は,比較的稀なものであり,本邦においても,昭和4〜5年頃より,天野氏はじめ,7〜8例の報告に接する以外は,昭和21年5月,兵庫県道場小学校において,チフスワクチン予防接種に際し,接種結核の集団発生をみたのを除けば,京大徳岡氏の報告例,すなわちペニシリン注射,および路傍での外傷に,直接結核菌侵入したと考えられる幼児の数例があるが,私達は,此処に,膿瘍切開手術後,結核菌感染したと考えられる接種結核の1例を報告,御批判を乞う次第であります.

肺に広汎な転移を示した脂肪肉腫の1剖検例

著者: 石田堅一 ,   戶田繁久 ,   中川浩 ,   末永公明

ページ範囲:P.161 - P.163

緒言
 われわれは,下腿に発生した腫瘍を剔出した後4年を経て,肺に広汎な腫瘍を認め,この両者が共に比較的稀とされている脂肪肉腫であつた事から,下腿腫瘍の転移と思われる1例を経験したので,臨床的事項と共に報告する.

外国文献

発癌と炎症,他

著者:

ページ範囲:P.153 - P.153

 慢性炎症巣から発癌しうることは周知のところで,慢性胃炎は胃癌の前変化であるといわれる.さて,Menkinは炎症巣の傷害細胞はいくつかの化学物質を遊離して炎症の生物学的性状を規定するという有名な説をたてているが,そのうち,たとえば肋膜炎滲出液エキスやウサギの耳に数カ月注射すると,注射をやめたあとに,局所に結節状の腫瘤をつくり,軟骨膜増殖が著しくなる.この腫瘤形成にはnecrosinもふくむ滲出液エキスが必要である.ここに紹介される論文は,Menkinの炎症巣エキスが発癌において演ずる役割を,彼らの研究から取りまとめたもので,きわめて興味ぶかい.ひとくちに云うと,炎症巣から抽出されるgrowth-promoting factorが発癌にきわめて重要であるということになる,発育促進因子はペプタイドで,組成アミノ酸にはロイシン,バリン,リジン,α-アラニン,グリシン,アスパラギン酸,セリンで,さらにグルタチオンを含むが,おそらくnucleopeptideであろうと想像されている.nucleopeptideが乳腺に腫大,乳管上皮過形成,管腔拡張を招くので,慢性乳腺症様の所見を発生せしめうると見ることができるから,発癌性炭水化物と併用すると,発癌物質といつてもよい.耳には前のような軟骨および皮膚に過形成をつくる.この物質は透過性で耐熱性である.

懇談会

第1回東京小児外科懇談会記録

ページ範囲:P.165 - P.166

 第1回東京小児外科懇談会は,11月29日午後6時より日大板橋病院第1講堂において,日大外科若林修教授の司会のもとに開催された.参加者は外科,小児科,産科,麻酔科学関係各科より約200名にのぼり,最近の小児外科に対する各科の関心の大なることが如実にうかがわれ,本会の発足が誠に時宜を得たものと感ぜられた.
 まず最初に,司会の若林教授より開会の挨拶として,本会を開くに至つた経過と,本会の主旨とが述べられ,参会者一同の自由で活溌な発言を希望されたのち,「新生児,未熟児における緊急手術を要する疾患の診断を中心として」というテーマでパネルディスカッションが行われた.

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集談会

著者: 中栄敏郎 ,   倉西久雄 ,   坪川孝志 ,   野田暉夫 ,   荒木欽平 ,   中谷欣二 ,   門馬良吉 ,   寺畑喜朔 ,   綿谷一郎 ,   中島昭男 ,   木元正二 ,   松井繁 ,   小林長 ,   広瀬竜夫 ,   牧野久弥 ,   田崎喜昭 ,   三浦勇 ,   谷口茂 ,   大田英夫 ,   中川栄一 ,   仲井信雄 ,   小泉嘉之 ,   真岸武郎 ,   古野美喜夫 ,   村田勇 ,   中川昭忠 ,   吉友睦彦 ,   山中通弘 ,   篠崎拓 ,   奥田幸造 ,   藤田健伍 ,   松田貞治 ,   藤田健五 ,   泉海一 ,   塩谷謙二 ,   山田浩 ,   東田紀彦 ,   重信弥八 ,   志羽孝 ,   赤松久郎 ,   藤沢正清 ,   山本信二郎 ,   坪川孝志 ,   長田文男 ,   西山好樹 ,   中永金弥 ,   小野孝 ,   池端昭夫 ,   小田崎喜昭 ,   綿谷一良 ,   大和一夫 ,   柳瀬茂宣 ,   藤川良文 ,   小坂政一 ,   山崎信 ,   奥田外来雄 ,   平泉逸郎 ,   本庄一夫 ,   富村義夫 ,   内田法光 ,   菅節士 ,   飯島嘉之 ,   饗場庄一 ,   木内啓之 ,   林久博 ,   依光好一郎 ,   高田準三 ,   真山信郎 ,   有馬道男

ページ範囲:P.169 - P.175

第98回 北陸外科集談会
1."メッケル氏憩室内飜による回腸5筒型重積症の1例"
 最近メッケル氏憩室内飜による回腸5筒型重積症を経験し,腸切除術により治癒せしめたので報告した.11歳の女児で,2〜3カ月間にわたり,しばしば腹痛を経験したが,さしたることもなく放置していた所某日早期より腹痛,漸次劇烈となり頻回の嘔吐を伴ない,午後になり臍部に移性の大きいバナナ型の腫瘤を形成すると共に虚脱状態に陥入り送院する.直ちに回腸重積症の疑いで開腹,回盲弁より約2cm口側に整復不能な下行性腸重積症を認め腸切除術を施行す.経過良行4週目に歩行退院す.切除標本は内翻したメッケル氏憩室を先行端とし,しかも5筒型を形成していたもので,未だ本邦に報告されたるを知らない稀有なる回腸重積症であつた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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