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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科16巻3号

1961年03月発行

雑誌目次

綜説

本邦における術後急性肺水腫の臨床統計的観察

著者: 脇坂順一 ,   内田雄幸

ページ範囲:P.193 - P.207

Ⅰ.緒言
 最近,医学の画期的な発達,進歩に伴い,胸部外科の発展も亦目覚ましいものがあるが,手術症例の増加と共に,その合併症の一つとして,術後急性肺水腫が多数見られるようになつて来た.術後急性肺水腫は,一旦発症すると重篤な症状を呈し,しばしば不幸な転帰をとる合併症である.
 肺水腫に関しては1752年,Maloet1)が初めて記載して以来,多くの臨床的・実験的研究が報告されて来たが,術後急性肺水腫の臨床例について,その臨床像の詳細な統計的観察についての報告は意外に少なく,石川2),長石3)等の報告を見るにすぎない.

胆石の電子顕微鏡的研究(第1編)

著者: 渡辺暉邦 ,   山崎順啓 ,   早野春生

ページ範囲:P.208 - P.212

Ⅰ.緒言
 胆石の生成に関しては,現在迄幾多の研究がなされて来たが.その原因も,過程も複雑で今日なお未解決の点が多い.
 胆石の生成機転に,初めて科学的説明を加えたNaunyn26)27)(1892)は,胆汁が鬱滞すると胆道に慢性カタル性炎症が起り,胆道粘膜上皮細胞が脱落変性し,さらに胆汁中の炎症産物が加わつて核を形成し,これにコレステリンの分泌過多による沈着,ビリルビン石灰の附著で胆石が形成されると,炎症説を提唱した.

高齢者虫垂炎について

著者: 藤村密 ,   小山芳雄 ,   窪田泰和

ページ範囲:P.215 - P.219

緒言
 虫垂炎は,現在においては広く人口に噲灸した疾患であり,われわれ実地の外科業務にたずさわる者では,最もしばしば日常の診療中にタッチする疾患であるが,概して青壮年期に多いもので幼年者および高齢者に少い.種々の統計をみても,年齢の増加と共にその数を減じ,且つまたその症状は特異的となる.
 われわれは現在1小農村病院における虫垂炎の実態について,臨床的方面より種々の検討を加えているが,そのうち60歳以上の高齢者の虫垂炎について,症状・診断・治療についての考按を試み,いささかの知見を得たので報告し,諸賢の御批判を仰ぎたい.

統計

教室における若年者胃癌の統計的観察

著者: 有馬道男 ,   羽生富士夫 ,   伊藤敏夫 ,   坂田早苗

ページ範囲:P.221 - P.225

 一般に40歳・50歳台が癌年齢であり,この年代に多発する所から,若年者に起る胃癌は稀であるとされ,ややもすれば看過されて早期治療の時期を失するものが少くないように思われる.この点より古くから若年者胃癌に関する報告は数多く行われている.教室においても昭和21年より昭和34年に至る14年間に,入院した満30歳未満の若年者胃癌症例が53例に達したので,これについて統計的観察を行つてみた.
 発生頻度:この期間に教室に入院した胃癌患者総数は,噴門下部食道部1118例を含めて2921例であり,これに対する若年者胃癌の比率は1.82%となる.諸家の報告では第1表に示すように大体0.7〜4%程度であり,特に本邦の報告中ではわれわれの比率は最も低い方であつて,若年者胃癌は決して稀ではないことを示している.

Conference

臨床外科懇話会記録(12)

著者: 日大医学部外科

ページ範囲:P.227 - P.233

先天性食道閉塞症の1例
 最近新生児の手術も多く行なわれるようになつてきたが,その手術成績はあまり芳しくないようであり,とくに先天性食道閉塞症については本邦ではまだ手術成功例は1例も報告されていないようである.われわれは最近本症に遭遇し,手術を行い救いえたかと考えたが,術後10日目残念ながら肺炎を合併し遂に死亡した1例を経験したので報告する。
 病例:高○明○,生後4日目,男子

薬剤

新しい局所麻酔剤2-chloroprocaineの臨床的使用価値について

著者: 西邑信男

ページ範囲:P.235 - P.237

 Procaineの新しい誘導体として,2-chloroprocaineが使用されたのは1952年Foldes等によつてである.それ以来Ansbro,MooreおよびBonica等によつて広く臨床的に使用され,特にアメリカにおいては,もつとも理想に近い局所麻酔剤として高く評価されている.
 私は174例について2-chloroprocaineを使用したので,一応,この臨床的使用価値について考察してみる.

新局所麻酔剤オスモカインの臨床成績

著者: 長山寛 ,   継行男 ,   荏原光夫 ,   地引明美

ページ範囲:P.239 - P.243

 局所麻酔剤の歴史はかなり古いが1860年NiemannおよびLosstnによりCocaineが実用化され1900年EinhornによつてProcaineが発見されて以来,外科領域における局所麻酔の適応は広汎なる範囲におよぶに至つた.しかもこれまでに用いられた薬剤はその優劣を問わず多数にのぼつていることは周知の如くである.局所麻酔剤はその目的から高度の安定度と適確なる効果,しかも副作用の少いことが期待されるのは当然である.近来Xylocaine,Carbocaine等の薬剤についでCopeおよびHancockの創作になる局所麻酔剤ヘキシルカインHexylcaineの登場をみるに到つた.当教室では最近持田製薬株式会社より(商品名オスモカイン)の提供を受け,外来小手術に使用してその臨床成績を検討する機会を得たので少数例であるが報告する.

ホスタサイクリンの腹腔内使用について—特に腹膜癒着形成におよぼす影響について

著者: 長谷川明男 ,   糸井純三 ,   石原義郎

ページ範囲:P.245 - P.248

緒言
 化学療法剤および抗生物質の進歩普及にともなつて腹膜感染の防止,腹膜炎処置の目的で種々な薬剤が色々な方法で使用され検討されているが,局所使用法の一つとして腹腔内投与法があり,その効果が認められている.
 近時使用法が容易でかつ組織損傷の危険なしにすぐれた耐薬性を有する非経口用製剤としてPyrrholidino-methyl-tetracycline(PRM-TC)が提供され,これが静脈注射のみならず腹腔内に散布して使用することも可能といわれている.

症例

Hürthle cell tumorの2例

著者: 稗貫博 ,   本田哲朗 ,   高野教泰 ,   宮城秀文

ページ範囲:P.249 - P.252

緒言
 われわれは最近結節性甲状腺腫の臨床診断のもとに甲状腺切除術を施行し,組織学的検索の結果わが国では比較的まれなHürthle cell tumorなることを知つた2例を経験したので,これについて報告する.

原発巣不明のPancoast腫瘍の1例

著者: 円山一郎 ,   朝比奈静二 ,   中村博

ページ範囲:P.253 - P.255

 Pancoast腫瘍とは,H.K.Pancoast(1924)が特異な症状を呈する胸部のApical Tumorにつき記載し,これに対しSuperior pulmonary sulcus tumor(1932)と命名したのにはじまるが,Pancoastなる名称はClarkeにより始めて与えられたものである.わが邦における本腫瘍についての報告は極めて少く,桑原,鳥潟,黒羽,五十嵐らの数例をみるに過ぎない,而してうち2例は剖検例となつている.
 私どもも最近Pancoast腫瘍と思われる症例を経験したのでここに報告する.

孤立巣を呈した骨髄腫の2症例

著者: 坪川孝志 ,   野田暉夫 ,   荒木欽平

ページ範囲:P.257 - P.260

緒言
 多発性骨髄腫は,本邦において1915年に報告されて以来,40年間に73例の報告がある4).多発性骨髄腫と組織学的に全く同一のPlasma Zellen Myelomaの形態を有しているにもかかわらず,弧立性病巣をしめす骨髄腫のあることが,1930年頃より,Geschicker3),Rutis-hauser9),Mathias6),Cutler et al1).Tennent10)等によつて,Solitary Myeloma,Plasmocytomaとして指摘されている.この弧立性骨髄腫には転移,多発化しないものがあることが注目され,多発性骨髄腫とは異つた疾患単位であると考えられたり,一方この弧立巣を切除した症例でも結局多発化,汎化をまぬがれない場合のある事実から,多発性骨髄腫の初発の状態をとらえているものであると考えられたりしている現状である.最近,私共は孤立性に発生した骨髄腫の2症例の孤立巣切除後,1例は多発化したのを経験したので,多発性骨髄腫との関係について,二三の考察を試みた.

外国文献

産褥期乳腺膿瘍,他

著者:

ページ範囲:P.255 - P.255

 産婦に乳腺膿瘍が流行的に多発したという報告があり,staphylo-coccus aukusことにphage type 80というのが原因としてあげられた.授乳をはじめた産婦の乳腺膿瘍が近来ますます増加しているようである.Soltauらの報告はロンドン,サウザンプトン地域の1957年の乳腺膿瘍流行を取扱つている.例数37例.うち26例は初産婦,平均年令26歳.大多数は正常分娩.何れも授乳し,入院中から退院直後に乳腺膿瘍発生.入院中ペニシリン注射13例,クロランフェニコール8例,テトラサイクリン5例というように1種の抗生物質が大多数に与えられた.膿瘍は皮下のものもあつたが.多くは切開排膿を必要とし,催炎菌はさきのようにphage type 80のブドウ球菌である.この菌は60年以前に多くみとめられた.深部に膿瘍をつくるもので,ふつうペニシリン耐性,テトラサイクリン耐性である.クロランフェニコールやエリスロマイシンには感受性がある.入院時腟培養では全例この菌陰性,鼻汁に保菌したもの1例のみである.新生児で哺育室に入らなかつた29例のうち21例の母親に本症があらわれた.哺育室が感染源とは考えられない.新生児は出産4〜5日ごろ鼻咽喉に本菌を保存するようになる,膿皮症のような皮膚感染は14児にみとめられ,うち12児がphage type 80であつた.3児は同菌の敗血症に陥つた.

講演

H.N.Harkins教授の熱傷治療に関する講演

著者: 田中大平

ページ範囲:P.261 - P.263

 第8回国際輸血学会夜の部会として,9月13日,H. N.Harkins教授を囲んで,熱傷の治療に関するコンファレンスが行われたが,以下はその時の講演の飜訳である.講演後に行われた質疑応答の一部も採録した.
 私は日本を訪れて今日この会に出席するのを心から嬉しく思います.日本を訪れたのはこれが始めてですが,最後でないことを望みます.また諸君の大勢の方々がシアトルを訪問して下さることを望んでおります.第二次大戦中私はドイツの外科に興味を持つており,当時ドイツを訪れてその進歩を見て来ました.

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集談会

著者: 徳岡淳一 ,   尾形利郎 ,   鳥海達弥 ,   久留幸男 ,   鈴木恵之助 ,   石川 ,   佐伯勝男 ,   木本誠二 ,   横山栄三 ,   織本正慶 ,   熊沢博久 ,   竹中文良 ,   吉岡一 ,   仲地紀仁 ,   田中隆 ,   中神恒夫 ,   西村菊夫 ,   蟹田一夫

ページ範囲:P.265 - P.267

第586回 東京外科集談会
1)非特異性限局性腸炎の1治験例
 27歳男子.7年前虫垂切除,1月前より回盲部痛.右季肋部痛を訴え発熱39℃,回盲部より右季肋部に手拳大腫瘤を触れ,血沈中等度促進,X線検査で結腸肝彎曲に狭窄を認めた.開腹するに上行結腸より肝彎曲に手拳大の,大網と癒着せる腫瘤がみられ,結腸右半切除組織学的に悪性の所見なく,慢性炎症が原因と思われるが,結核菌も証明し難い,文献的考察を加えた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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