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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科16巻4号

1961年04月発行

雑誌目次

綜説

胸腔腫瘍の異常内分泌現象

著者: 渋沢喜守雄 ,   川井忠和 ,   饗庭庄一 ,   滝弘康 ,   梨本剛 ,   藤原省吾 ,   安斎徹男

ページ範囲:P.281 - P.295

はしがき
 副腎機能亢進症を吟味していると,偶然の一致以上の深い因果関係および頻度において,胸腔内腫瘍が浮んで来る.これは去る外科学会で報告された(渋沢1960,a).私たちは過去6年の短時日に成心して胸腔腫瘍の内分泌機能を検討したが,つぎのごとき例を経験しえた.すなわち肺癌に合併した女性乳房(藤原1959),女性化症候群と解されるhyperestrinism(渋沢1960),Conn症候群型の電解質代謝異常,臨床的なCushing症状を呈しない著明なhypercorticism,および縦隔neurobla-stomaに合併したカテコールアミン排泄亢進がそれで,それぞれ理解に苦んだ.そこで文献を飜し,胸腔腫瘍の異常内分泌症状の検討をこころみた.

胆石の電子顕微鏡的研究(第2編)

著者: 渡辺暉邦 ,   山崎順啓 ,   早野春生

ページ範囲:P.297 - P.301

Ⅰ.緒言
 Naunyn26)27)(1892)は結石生成は,胆汁鬱滞によつて胆道粘膜にカタル性炎症を誘発し,粘膜上皮細胞は脱落変性して胆脂化し,さらに他方胆汁中の蛋白溶解量の増加で,ビリルビン石灰が沈澱し,コレステリンの析出で結石が形成されると炎症性生成説をとなえた.
 しかしAschoff-Bacmeister3)(1909)は胆道に胆汁が鬱滞し,胆汁中のコレステリンを溶解している中性脂肪,脂肪酸等が粘膜上皮細胞から吸収されてコレステリンがLuschka氏溝内に析出結晶していくと云う非炎症説およびビリルビン石は炎症性胆石であると云う二元説をとなえた.さらにLichtwitz15)16)(1907),Schade34)(1910)により,膠質学的理論が加味され,胆石生成機転の説明に有力な根拠を与えた.三宅20)(1927),Maitensson19)(1940),村田22)(1951),等の実験的炎症性胆石生成の成功による炎症説に対し,コレステリンの胆汁内増量と食餌および新陳代謝との関係はGood-man4)(1907),Aoyama2)(1916),三宅21)(1933)により明らかにされた.また松尾門下9)36)43)45)48)49)により一連の全身性病変によるコレステリンおよび石灰の代謝異常についても研究された.

視床下部の副腎皮質調節因子に関する研究(その1)

著者: 原口亨

ページ範囲:P.303 - P.315

緒言
 視床下部が下垂体機能を調節しているということは,すでに各方面から立証されている.視床下部と下垂体前葉との間には,現在の所,視床下部と下垂体後葉との間に見出されているような,直接的な神経連絡は認められていない.しかし,特殊血管系である下垂体門脈系が見出されている(Wilsocki & King,1936,Green & Harris,1947.1949.および,Xuereb et al.,1954).Harris & Jacksohn(1952)および,Jacksohn(1954)によれば,下垂体前葉の機能は,この下垂体門脈系に左右されるとのことである.下垂体前葉の機能,とくにACTH分泌を促進する視床下部産生の体液的化学的物質が存在するのではないかと考えられ研究されている.Green & Harris(1947)が視床下部のneurohumorによりACTH分泌が支配されることを主張して以来,視床下部のACTH分泌促進物質に関する,数々の知見が得られて来た.epinephrine,norepinephrine,acetylcholine,vasopressin,oxytocin,histamine,serotoninがその物質ではないかと推論されたが,最近その重要性が減じて来ている.Porter & Rumsfeld(1956)は,下垂体門脈より採血し,その血漿にACTH分泌を促進する物質があることを見出している.

外科領域疾患における血清コリンエステラーゼの臨床的意義について(1)

著者: 三樹勝 ,   守谷林太郎 ,   大川共一 ,   田所孝 ,   田中竜彦 ,   藤島義一 ,   飯田安彦 ,   内藤委仲

ページ範囲:P.317 - P.323

緒言
 各種疾患において生体が示す反応,いわゆる病態生理の究明が疾病の診断,治療方針の決定,予後の判定等に重要な役割を演じていることは論を俟たないところであり,これら知見についての最近の進歩は日進月歩の著しいものがあるが,生体内のこれら反応機構は誠に複雑であつて,その一つを以て全てを解明するわけにはゆかない.特にこれら疾患患者に外科的侵襲の加つた場合においてはなおさらのことである.それ故わが教室においても松倉教授1-5)が血清蛋白と肝機能との関連性を臨床的・実験的に研究発表されたのを始めとし,最近においては血清遊出肝酵素,特に血清トランスアミナーゼを中心とした教室吉葉等6-8)の研究業績によつて,イレウス,胆石症等諸疾患の病態生理の究明が種々なる角度よりなされてきた.
 今回われわれは松倉教授の御指導のもとに,これら教室における一連の病態生理研究の一環として,外科領域疾患特に消化器疾患時における血清コリンエステラーゼと肝コリンエステラーゼ活性値の変動を臨床的ならびに実験的に研究したので,その研究成績を中心に血清コリンエステラーゼの臨床的意義について考察を試みてみたいと思う.

薬剤

外科的感染症におよぼすカナマイシンの態度について

著者: 長田博之 ,   大庭宗三郎 ,   宮崎昌之

ページ範囲:P.325 - P.329

 外科領域における細菌の感染に対しては,滅菌,消毒の方法によつて,疾病の治癒機転の促進をはかつて来たが,腹部内臓領域では手術部位の細菌汚染によつて治癒機転が障害され,期待した成果が見られない事実が多い.ために,腸内の無菌化は木炭,Naphtholene,Jodform,Chlorineで実験されたが,Sulfa剤,各種抗生物質の出現によつて新たな光明を得るようになつた.多くの抗生物質はそれぞれ特異的な抗菌性スペクトラムと生物学的性状をもつために,使用時には充分の検討が必要である.
 Streptomyces Kanamyceticusの産生するKana-mycin(以下K.M.と略す)も同様に特異的な抗菌スペクトラムと生物学的性状をもつ.

脊髄損傷患者の膀胱機能障害

著者: 近藤賢 ,   梶田一之 ,   福島孝

ページ範囲:P.331 - P.340

(Ⅰ)緒言
 脊髄損傷には種々の尿路疾患が合併し,それらに対する処置の適否は患者の生命を左右するほどの重要性をもち,わが国においても最近はこの重要性が次第にみとめられてきている.その尿路合併症のうち臨床上最も大切なのは排尿障害である.また膀胱尿管逆流はしばしばみられる合併症であり,進行性腎不全の原因として重視されており,その原因が膀胱壁内尿管部の異常にあるといわれている.そこでわれわれは膀胱機能障害として排尿障害と膀胱尿管逆流とをとりあげ,それらに関する臨床所見をまとめ,発生機序および治療について若干の考察を行つた.

局所麻酔剤ホスタカインの使用経験

著者: 竹林淳 ,   江村茂夫 ,   岡野正敏 ,   野口房好 ,   吉田聰

ページ範囲:P.343 - P.345

緒言
 最近の麻酔の進歩には顕著なものがあるが,局所麻酔剤の必要性は未だ失われていない.局所麻酔剤の研究も頓に進み優れたものが多数実用に供される.殊にこれらの薬剤は副作用の減少と作用の迅速な点では今昔の感がある.
 われわれは今回,日本ヘキスト株式会社からホスタカインの試供を受け見るべき成績をえたので報告する.ホスタカインはN-Butylaminoessigsäure-2-methyl-6-chlor-anilid-hydrochloridで水に易溶性の安定した化合物で,また組織内で分解したり,交感神経末梢のエピレナミン感受性を高めることもないとされている.毒性は極めて少なく,100cc以上の大量使用も行い得ると云われている.

先天性股関節脱臼整復の際におけるクロルプロマジンの応用

著者: 寺村正 ,   野口克昌

ページ範囲:P.346 - P.347

 最近では乳児の先天性股関節脱臼が早期に発見され,早期に治療されるものが多くなつて来ているが,開排位おむつ療法を行つてもなお治らないものやまた高度の脱臼に対しては整復およびギプス固定の必要な者も少くない.
 乳児の先天股脱を整復するさいに普通はエーテルによる全身麻酔を行つているのであるが,整復時の筋緊張を和らげ,整復,ギプス固定後の疼痛による不機嫌の緩和および痙攣予防の目的でクロルプロマジンを使用し,効果を挙げたので茲に報告する.

症例

Granular Proctitis(Simple haemorrhagic proctitis)の1例

著者: 三枝純郎 ,   三浦良也

ページ範囲:P.348 - P.350

 われわれは最近いわゆるGranular Proctitisと称せられるべき興味ある1症例に遭遇したので,ここに報告し諸賢の参考に供したいと思う.

強直性脊椎関節症の2例

著者: 奥茂信行 ,   佐藤隆雄 ,   工藤富隆

ページ範囲:P.351 - P.354

 強直性脊椎関節症は全身を襲うリウマチ性疾患として観察せられねばならぬが,特に好んで脊椎に局在する.1884年Strümpell,1893年Bechterew,1897年Pierre-Marieによりおのおの公示されて以来,その報告はそれほどまれでなくなつたが,なおその病像の特異性は興味を失わない.われわれは最近その2例を経験したので報告する.

Kantenabtrennungの臨床的意義について

著者: 高橋喜美雄 ,   中谷欣二 ,   勝木道夫

ページ範囲:P.355 - P.357

 脊椎辺縁分離Kantenabtrennug(以下K. Abtr. と記す)については1929年Hansonが始めて記載しているが,わが国においては片山教授の2例,板津氏の1例,村地氏の2例,土屋教授の4例,古瀬氏の4例の報告がある,土屋教授はそのうち1例については剖検の結果その本態についてSchmorl等のいう椎間板転位説に賛同している.
 私どもは過去2カ年間1312例の腰椎レ線側面像を検索した結果4例のK. Abtre. の所見を認めたので各症例について検討を加えるとともに,文献的考察を試みその臨床的意義について報告する.

頸髄損傷の際に見られる体温異常とその対策について

著者: 原田真夫

ページ範囲:P.358 - P.360

緒言
 頸髄損傷に特有な症状の一つに体温の異常がある.この体温異常は毎常起るものとは限らないが,しばしば異常に高い体温,時として異常に低い体温を見ることがある.しかしながらこの体温異常に対しては,まだその適切な対策について述べられたものなく,単に生命の危険に対する警鐘とされている.
 頸髄損傷はそのほとんど大部分が頸椎の骨折,脱臼等に合併する鈍力によつて発生するものであつて,戦時等を除いてはそれ程多く発生するものではない.しかしながら近年スポーツの隆盛とともに,水泳,ラグビー等によるものも少くなく,また交通災害,産業災害によるもの等最近では必ずしも稀有のものとはいえないうよである.

再びペニシリン・アレルギーについて

著者: 吉永直胤 ,   林田隆輔 ,   宮里典 ,   佐々木一樹 ,   峯元光明

ページ範囲:P.361 - P.363

まえがき
 ペニシリンの副作用としてアナフィラキシーショック死の他にも,猩紅熱様発疹と高熱を発して死亡する重篤なものがあるという報告が近来,霜田(昭29),藤田(昭30),わが教室の3例(昭31)および宮川(昭31,33)らによつて相ついでなされ,恐るべきペニシリン障害について注意が喚起されてきたが,私どもは最近再び同様の症例を経験しまた,他の地方病院で同様の症状の下に死亡した患者があつた事実を耳にし,かつ症状が明らかにペニシリンによる重篤な副作用であることを再確認し,したがつてその対策についても確信をえたと信ずるので,その大要を報告したい.

脈無し病

著者: 神谷喜作 ,   浄土巍 ,   大村喜八郎 ,   七野瑞穂 ,   井上章 ,   都築尚典 ,   大菅徳明

ページ範囲:P.365 - P.370

 明治41年高安氏により眼底血管の異常を主徴とする疾患が報告されたが大西・鹿児島氏により更に両上肢の脈のふれないことが追加され高安氏病といわれた.昭和23年清水・佐野両氏により本疾患の6例の症例報告とともにその全貌が詳しく紹介され,脈なし病とよばれるに至つた.この報告以来本病は多くの人の注意をひき,多くの症例が報告された.
 われわれは本症の2例を既に報告したが,今回更に2例を追加報告するとともに本疾患の最近の研究状況のあらましを述べたいと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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