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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科16巻5号

1961年05月発行

雑誌目次

故都築正男先生

ページ範囲:P.375 - P.375

 東大名誉教授,日赤中央病院院長都築正男博士は,昨年6月より東大木本外科に入院中であつたが,4月5月午前8時18分肺癌のため逝去された。謹んで先生の御冥福をお祈りする。

綜説

Gastro-Photo-Scopy

著者: 島田信勝 ,   福井光寿 ,   前田昭二 ,   湯浅鐐介 ,   椎名栄一 ,   吉崎聰 ,   馬場正三

ページ範囲:P.377 - P.383

 胃疾患研究の手段として,レ線検査および胃液検査と共に,胃鏡検査は欠くべからざるものとして日増に普及発展しつつあるが,この検査法による胃粘膜像の解釈は観察者個人の主観に左右されることが多く,得られた診断は客観性に乏しく,且つ記録として残し得ない欠点があり,これを補う目的で従来多くの胃粘膜撮影法に関する研究が行われて来た.
 LangeおよびMeltzing1)(1898)はゴム・チューブの先端に小型カメラを装置して胃内に挿入し,初めて胃粘膜撮影を試みたが,満足な結果は得られなかつた.その後,Back1)(1929)はGastrophotorと称する軟性ブージーの先端に附したピンポールを利用して,アーチランプを点滅させる撮影装置を考案したが,得られた写真は一枚毎に異り,診断上役立たなかつた.Aschner2)(1930),Schindler3)(1937)もGastrophotorの改良を行つたが結果は不満足なものであつた.Henning4)(1931)は,Schin-dler型硬性胃鏡の接眼部にMirror-Reflex-Cameraを主体とする独自の装置を施し,初めてほぼ満足すべき白黒写真の撮影に成功し,その後,Keil-hack5)(1938)と共に初めて胃内天然色撮影を行つたが,彼等の装置は光源系統の不備から軟性胃鏡には応用できなかつた.

剖検記録による肺水腫の統計的観察

著者: 脇坂順一 ,   内田雄幸

ページ範囲:P.385 - P.395

Ⅰ.緒言
 急性肺水腫の発生機序は極めて複雑で,種々の因子が組合わされて発生するものであるが,術後の極めて重篤な合併症の一つである術後急性肺水腫の,予防ならびに早期診断の重要性を考える時その発生因子の追求は最も大切なことである.発生因子に関しては,幾多の研究報告があり,私共も本誌前号に報告した"術後急性肺水腫の臨床統計的観察"の中で,推定発生因子についても検討を加えたのであるが,本編においては,剖検記録に基いて,基礎疾患ならびに直接死因と肺水腫との関係を統計的に観察し,疾患別・死因別に,肺水腫・肺鬱血・肺炎の合併率を検討した結果,種種の興味ある知見を得たので茲に報告し,御参考に供したいと思う.

大量輸血に伴う出血傾向に関する臨床的ならびに実験的考察

著者: 林久恵 ,   千葉智世 ,   大沢幹夫 ,   田中孝 ,   清水寿子 ,   岩本淳子 ,   橋本明政

ページ範囲:P.397 - P.410

はじめに
 近時外科手術の発達に伴い,大量輸血の行われる機会が多くなりその副作用もしばしば問題となつて来た.その一つとして術中・術後におこる出血傾向は大量輸血が行われた場合に起り得るとされ特に恐れられている.故にその原因の追求,治療の研究もまた重要な課題となり従来多くの研究が行われて来た.本邦においても昭和32年第5回日本輸血学会総会,および昭和34年第15回日本医学総会においてこの問題がとりあげられて種々検討されているが,その発生機序は極めて複雑であり未だ決定的な結論に達していない感がある.
 われわれは大量輸血に伴う出血傾向の成因には手術,輸血によつておこる血液凝固系の障害,血管系の障害および大量輸血が行われるさいの生体の悪条件が関係深いと考えた.そこでまず大量輸血の行われた胸部疾患,特に心臓手術症例について術前・術後の血液凝固,血管因子の変動を術中輸血量・後出血量と対比しながら検討して来たのであるが,この結果出血時間は術中輸血量・後出血量と平行して変動し,凝固時間およびその他の止血因子は大量輸血の結果多かれ少なかれ変動を示すものの,特に変化の激しかつた例に必ず出血傾向を認めると云うことがなく,むしろ局所の損傷血管が問題であろうと考えた.

視床下部の副腎皮質調節因子に関する研究(その2)

著者: 原口亨

ページ範囲:P.411 - P.418

5.中視床下部ハイドロコーチゾン注入の影響.ことにその直後にストレスを加えた場合の尿CRFの変化
 (1)実験方法
 雄性イヌ(体重10kg)を用い,東大脳研式脳定位固定器で固定,長さ15mmの14注射針を中視床下部中央隆起に刺入,1側にhydrocortsione 10mg,他側に10mg,合計20mgを注入した.注入後直ちに,左大腿にtourniquetを行い,30分持続後解除した.tourniquet解除後,直ちに,血漿170HCS濃度を測定(注入後30分)し,つゞいてその後30分にも再び測定(注入後60分)した.注入後3日間,さらにつぎの3日間の尿を集めて,尿CRF,尿170HCS,尿17 KS排泄量を測定した.

座談会

日本外科学のあけぼの

著者: 塩田広重 ,   中谷隼男 ,   斉藤淏 ,   島田信勝

ページ範囲:P.419 - P.428

 斉藤 先生今日はどうもありがとう存じます.日本外科学のあけぼのということで色々先生にお話し願いたいと思いますが,先生から何か引き出そうとしたら,いろいろなことがあるのだけれども.
 塩田 何も忘れているから駄目だ

展望

いわゆるendocrine ulcer—(1)下垂体腺腫をふくむ多内分泌腺腺腫症の消化性潰瘍

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.429 - P.436

はしがき
 消化性潰瘍の成立について,ホルモンの演ずる役割はGray(1943),Kirsner(1953,1956),Eise-man(1960)などによつて精しく論ぜられ,すでに周知のところである.潰瘍症成立の内分泌因子は多くの方面から観察されなければならぬが,ここで取扱いたいのは,上皮小体腺腫,膵ラ島腫,下垂体腫瘍などの内分泌腺機能亢進症に,潰瘍症が合併する事実である.たとえば上皮小体腺腫に合併した潰瘍症はRogers(1946)によつて初めて認められ,ついでBlack(1951),Alright(1952)などが追加している.またラ島腫瘍に合併した潰瘍症はWilder(1927)によつて初めて記載され,以後Sailer(1946),Gordon(1946)などの報告をみる,そうした1内分泌腺の腫瘍に潰瘍の合併する現象は,ここではひとまず措いて,1種のみでない多種内分泌腺に同時に腫瘍が存し,そして潰瘍症の合併する場合のみを考えてみたい.つまりpolyglandular adenomatosis with peptic ulcerであつて,潰瘍という面からみればKirsner(1960)の提唱するen-docrine ulcerであり,内分泌腺腫瘍からみればulcerogenic endocrinopathiesである.

薬剤

外科におけるAndrostanolone使用の検討—(第2報)術後早期使用の成績

著者: 小出来一博 ,   福島義郎 ,   斉藤昭 ,   檜山嘉也 ,   藤森顕 ,   生形圭

ページ範囲:P.437 - P.441

Ⅰ.いとぐち
 われわれは外科手術患者について,β-Andro-stanoloneを術前において使用し,先に予報として発表したが1),その結果を総括すると次の如くである.
 ①β-Androstanolone75〜100mgを経口的に5〜7日投与し,体重の増加をみた.②血清蛋白濃度の上昇,殊にAlbuminの増加によりA/G比の増加をみた.③尿量は増加し,水分平衡は正の傾向を示した.④窒素の排泄量の減少により窒素の体内蓄積を起し,窒素平衡は正の傾向を示した.⑤B.M.R.の下降,必要熱量の減少により熱量の蓄積が認められた.

当整形外科教室におけるコンドロイチン硫酸ナトリューム(コンドロン)の長期使用経験

著者: 竹光義治 ,   井上知憲 ,   石川巖 ,   坂本淳

ページ範囲:P.443 - P.447

 軟骨を主とし,すべての結合織の基質の重要成分であるコンドロイチン硫酸(コ硫酸と略)は,他のAcid Mucopolysaccharideと共にこれらの組織における,水分電解質の維持調節,創傷治癒,感染に対する防禦,線維成分の安定,弾力性の維持その他多くの生物学的役割を荷つている重要物質であることは今まで多くの研究者によつて明らかにされ4)7)8),とくに近年結合織疾患の研究が進むにつれて,一段とClose upされつつある.われわれ整形外科領域においても,この物質は軟骨,骨等の生理的変化,病的過程を知る上に常に考慮すべきものであるが故に,甚だ興味あるものである1)
 支持組織,殊に軟骨が老化変性して来た場合これを化学的に調べると,何よりもまず,コ硫酸の含有量が減少することは,多くの研究者が報告している.殊に老人性変形性関節症の軟骨では,コ硫酸含有量の著明な減量が見られることは松永氏が詳細に報告している10)

リウマチ熱兼クローン氏病の1症例についての考察

著者: 山本孝 ,   山本貞 ,   佐久間健

ページ範囲:P.449 - P.453

緒言
 1932年Crohnらが回腸終末炎の臨床像,診断,治療,病理につき発表して以来数多くの報告があり,その本態に関して種々論議されているが,未だ何れも決定的でない.著者らは最近リウマチ熱患者の開腹例に遭遇し,クローン氏病と思われる腸管病変を認めた.よつて文献的考察を加え両者の関連性に論及して報告する.

外国文献

心筋血行再建手術,他

ページ範囲:P.455 - P.461

 心筋阻血の外科には,心筋外から血液を心筋へ誘導し,血液を阻血部へより有効に分布せしめる目的がある.大網を心室壁に植えこみ,大網の血管10-12本が冠動脈基始部附近に流れる様にする方法が古くから有効とされている.著者らは大網固定法を,Beck第1法,Vinebergのスポンジ法,左肺動脈結紮法,心照射法と比較した.Beck第1法は心室壁を三塩化酢酸・アスベストなどで縦隔脂肪にくつつける方法,Vineberg法はイバロンスポンジを薄片とし心筋に縫つて心膜をとじる方法,肺動脈結紮はLittlefied老案で気管支動脈から心血行を促す方法.まずイヌで左前下行放を狭窄して心阻血をつくり,4手術法で,生存日数・心筋血流量を比較する.大網固定法では10頭中の7頭,Beck法では3頭,Vineberg法と照射法ではそれぞれ1頭が生存したにすぎない,すなわち大網固定法が最もすぐれている.心筋血流はSev-elus & Johnsonや法でしらべ,4群有意の差はなかつた.生存しえたものは正常値に近い値を示す.それで,心筋血流量は大網固定法が一番よいとは云えなかつた.しかし大網固定法では生存数が最も多く,心筋阻血防衛作用が最も著しかつた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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