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文献詳細

雑誌文献

臨床外科16巻5号

1961年05月発行

綜説

大量輸血に伴う出血傾向に関する臨床的ならびに実験的考察

著者: 林久恵1 千葉智世1 大沢幹夫1 田中孝1 清水寿子1 岩本淳子1 橋本明政1

所属機関: 1東京女子医科大学外科教室

ページ範囲:P.397 - P.410

文献概要

はじめに
 近時外科手術の発達に伴い,大量輸血の行われる機会が多くなりその副作用もしばしば問題となつて来た.その一つとして術中・術後におこる出血傾向は大量輸血が行われた場合に起り得るとされ特に恐れられている.故にその原因の追求,治療の研究もまた重要な課題となり従来多くの研究が行われて来た.本邦においても昭和32年第5回日本輸血学会総会,および昭和34年第15回日本医学総会においてこの問題がとりあげられて種々検討されているが,その発生機序は極めて複雑であり未だ決定的な結論に達していない感がある.
 われわれは大量輸血に伴う出血傾向の成因には手術,輸血によつておこる血液凝固系の障害,血管系の障害および大量輸血が行われるさいの生体の悪条件が関係深いと考えた.そこでまず大量輸血の行われた胸部疾患,特に心臓手術症例について術前・術後の血液凝固,血管因子の変動を術中輸血量・後出血量と対比しながら検討して来たのであるが,この結果出血時間は術中輸血量・後出血量と平行して変動し,凝固時間およびその他の止血因子は大量輸血の結果多かれ少なかれ変動を示すものの,特に変化の激しかつた例に必ず出血傾向を認めると云うことがなく,むしろ局所の損傷血管が問題であろうと考えた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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