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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科16巻6号

1961年06月発行

雑誌目次

綜説

甲状腺の小細胞性悪性腫瘍—小細胞癌とMalignant Lymphoma

著者: 藤本吉秀

ページ範囲:P.471 - P.488

 甲状腺の悪性腫瘍の中で未分化の小細胞より成るものは,小細胞癌にしろMalignant Lymphoma(リンパ肉腫,細網細胞肉腫)にしろ,いずれも頻度からいつて比較的少い上に,従来これらは予後が非常に悪いものと頭から決められていたので,その病理組織や病態生理に関する研究は極めて寥寥たるもので,一般臨床医の関心は恐らくなかつたものとみてよいと思う.所が最近われわれの経験したMalignant Lymphomaの症例の殆んどが予期に反して非常に手術後の経過がよいので奇異に思い,欧米の文献を調べたところBrewer(1953年),Kenyon(1955年),Ranstrom(1957年)らが同じく長期生存例のあることを述べており,Waltら(1957年)がMayo Clinicの過去26年間の手術成績を報告しているのをみても,小細胞癌の12例はすべて術後2〜19ヵ月で死亡しているのに対して,Malignant Lymphoma 18例では2年以上の生存者が9例あり,その中6例は5年以上も生存しており,両疾患の間に予後に関して非常な相違のあることを強調している.

臨床病理 リンパ節の腫瘍--病理より臨床にささげる

第1回 これからとりあげる全ての課題の展望/第2回 Malignant Lymphomaという考え方(その歴史,その内容,その価値)

著者: 所安夫

ページ範囲:P.490 - P.502

第1回
 これからとりあげる
 全ての課題の
 展望
Ⅰ.はじめに申しそえます
 ハジメニ申シソエマス.
 私ニアタエラレマシタ課題ハ,――リンパ節ノ腫大――トイウ尨大ナ領域デアリマス.

展望

Endocrine Ulcer(その2)

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.503 - P.519

Ⅱ.上皮小体,ラ島および副腎腫瘍からの観察
A.上皮小体機能亢進症について
1.いとぐち
 上皮小体機能亢進症における消化性潰瘍の合併はHanke(1932),Herzenberg(1933),つづいてRogers(1946)によつて記載され,潰瘍を伴なう内分泌亢進症の最初のものである.上皮小体機能亢進症が,骨変化・腎結石より早く消化器症状を呈することは,最近ようやくひろく知られるようになり,ときに潰瘍様の症状を合併(潰瘍形成なし)しうることもすでに知られている(Gut-man 1934).諸文献によれば,第1表のごとく,上皮小体機能亢進症に潰瘍の合併する頻度は4〜28%である.筆者の集計した上皮小体機能亢進症820例では,74例(9.0%)の潰瘍頻度で,これはOstrow(1960)の集計427例について9.1%の成績によく一致する.すなわち,上皮小体機能亢進症に潰瘍の合併する頻度は9%附近である.一般人口における潰瘍頻度は,Am.J.Med.(Nov.1960),およびGastroenterology(Nov.1960)のシンポジウムで精しく論ぜられているように,1〜4%以下と推定される.したがつて上皮小体機能亢進症では,潰瘍合併頻度が一般人口におけるより有意に高いとおもわれる.

症例

脊髄腫瘍と不整脈—神経鞘腫の1例

著者: 手島宰三 ,   宮本茂 ,   早田正己

ページ範囲:P.521 - P.525

緒言
 脊髄・脊椎の腫瘍による脊髄圧迫症状を観察していると,唯脊髄圧迫症状だけでなく神経根症状殊に自律神経障害症状を認めることがある.例えば脊髄損傷患者では不規則な発汗異常があつたり,椎間板ヘルニア患者でさえ膀胱直腸障害即ち排尿に際して強い腹圧を要し,膨満感強く,排尿・排便の感覚が減退し,性感の消失・減退を認めることがある.
 最近胸髄部に発生した硬膜内髄外腫瘍の一例を経験し,この患者の心臓機能に不整脈を認め,腫瘍剔出により不整脈は消失し,狭心症様愁訴がなくなつたので興味を感じた.

特発性後腹膜腔血液嚢腫の1例

著者: 村山洋平 ,   佐藤麟太郎 ,   大沢一郎

ページ範囲:P.527 - P.531

 後腹膜腔血腫が吸収されずに存続する場合には,血球崩解産物および後腹膜腔脂肪組織溶解の刺激によつて血腫周辺部に線維組織増殖が起り,結合織被膜で被覆されるにいたる.このような後腹膜腔血液嚢腫は非常に稀で,本邦においては現在までに6例1)-6)しか報告されていず,外国においても10例程度7)-14)が散見されるにすぎない(表).私達はこの1治験例を経験したので報告する.

前胸壁筋肉血管腫の1例

著者: 佐藤訓三 ,   森本浩平

ページ範囲:P.532 - P.534

 原発性筋肉血管腫は稀な疾患で,欧米では,Virchow1)の記載以来かなり多数の報告があるが,本邦では極めて少い.最近教室の田辺は6例の本症例を報告したが,本邦文献では明治33年松岡が本症の2例を記載して以来,約20例が報告されているにすぎないと述べている.
 われわれは最近当教室において大胸筋に原発した筋肉血管腫で結石を有する1症例を経験したが本例は診断上興味ある症例と思われるので報告する.

乳児の縦隔血管腫1例

著者: 斎藤晃 ,   那波邦雄

ページ範囲:P.535 - P.537

 近時胸部外科における長足の進歩に伴つて,縦隔腫瘍の手術例も増加の途を辿り,多くの知見が得られつつあるが,縦隔に発生する血管腫については未だ知られる所が少い.
 欧米における報告はBalbaa and Chesterman9)(1957)の集計によれば,彼等の自験例3を加えても,良性・悪性合して66例を算するにすぎず,本邦においては僅々数例が報告されているにとどまる.

Glomus tumorの1例

著者: 佐々木襄

ページ範囲:P.538 - P.540

 Glomus tumorは1924年にフランスのS.PierreMasson10)が精細に究明して以来,欧米には多数の報告例がある.しかし本邦では,1934年愛須1)氏が初めて左拇指未端の動脈性血管筋神経腫の名で報告して以来,現在迄に約20例の報告を見るに過ぎない.われわれは最近,稀れな大きさと局在部位を有するGlomus tumorの1例を経験したので報告する.

広範な骨転移を来した悪性黒色腫の1例

著者: 木下博 ,   重信文男 ,   長谷川芳男 ,   今田之夫

ページ範囲:P.541 - P.544

 悪性黒色腫は比較的稀な疾患であり,殊にその骨転移については余り報告を見ない.われわれは広範な転移を来した本症の1例を経験したので,その骨転移を主として報告する.

乳癌晩期再発の1例

著者: 佐藤仁 ,   横内幸造 ,   関野英二

ページ範囲:P.545 - P.547

緒言
 乳癌は乳房切断術および腋窩廓清術施行により一見他臓器に発生する悪性腫瘍に比して良好な予後を思わせるが,しかしこれの転移形態は極めて複雑で,為にその永続治癒は少い.
 最近われわれは,乳癌のために左乳房切断術を施行後13年間何等の愁訴なく経過した1例が,13年後に至つて前胸部の軽度の自発痛を訴えるようになり,さらに9年後に手術創瘢痕部に潰瘍形成を見,これが検索の結果再発と考えられた症例を経験したので報告する.

転移を顕症状とせる潜伏性乳癌の1例

著者: 西垣彰夫 ,   刈屋善隆

ページ範囲:P.548 - P.550

Ⅰ.緒言
 一般に乳癌の確診は乳房における腫瘤の発生を発見することである.しかし,極めて稀に,腋窩淋巴節の転移癌を初発症状とし,しばしば診断を困難ならしめ,根治手術の時期を失することがある.われわれは,最近,その1例を経験したので報告する.

幼児における片側性嚢胞腎の1例

著者: 池田清二 ,   小島当三

ページ範囲:P.551 - P.552

緒言
 嚢胞腎はVirchowが1855年に報告して以来注目されるようになり,わが国においても明治44年副島,矢野の報告以来すでに195例が報告され現在では余り稀な疾患ではないが,片側性嚢胞腎についての報告は比較的少いようである.われわれは最近9カ月の幼児で左片側性嚢胞腎の1例を経験したので報告する.

イレウス症状をおこした巨大水腎症を伴つた原発性尿管癌の1例

著者: 森本憲治 ,   久田正彦

ページ範囲:P.553 - P.555

緒言
 原発性尿管癌は従来甚だ稀な疾患とされていたが,泌尿器科学的検査の進歩と本症に対する注意が深まつたことにより,最近その報告例が増加したが,なお外科の雑誌に発表されることは少い.私達はイレウス症状をおこして来院した患者に手術を行い,その原因が原発性尿管癌に随伴しておこつた巨大水腎症による症例を経験したのでここに報告し,些少共外科医の注意をひくことができれば幸せである.

甲状腺細網肉腫の症例

著者: 大西韶治

ページ範囲:P.556 - P.558

 全甲状腺腫に対する悪性甲状腺腫の発現頻度は大約1〜2%だといわれ1),特に最近10年間にその急激な増加の傾向が見られ,10.7%という数字を挙げている人もある2)が,その殆ど全てが癌腫であつて,肉腫の例は非常に少くHodgeは1928例中5例(0.26%)3),Robertは3856例中15例(0.39%)4),Thomasは3644例中2例(0.054%)5)を記し,特にわが国では川島の63例6)や佐野の64例7)中何れも零で,個々の症例では僅かに20例近くが報告されているに過ぎない.しかも,甲状腺の細網肉腫として報告されたものは,1937年安保の最初の報告8)以来欧米をも含めて10数例を算するのみである.
 われわれは最近,悪性甲状腺腫の診断の下に手術した症例で組織学的に細網肉腫の診断を確定し得たので報告する.

脾腫を主訴とした異型悪性淋巴肉芽腫の1例

著者: 広津三明 ,   岡田進

ページ範囲:P.559 - P.561

緒言
 本症は以前,肉芽性偽白血病の中に数えられていたが1898年Sternberg以後明らかに独立疾患として確証された.本態に関して多数の研究があり,現在迄に腫瘍説,炎症説,中間説があり未だ意見の一致を見ない.本症の特徴は淋巴腺系統の腫脹であるが,脾,肝,骨髄等にも変化を来し,そこでHoller u.Paschkisは主な病巣の部位によつて本症を5型に分け,末梢リンパ腺腫型,縦隔腫瘍型,脾腫型,腹部リンパ腺腫型,および骨髄型に区別している.最近われわれは幼児に,巨大な脾腫を発見組織学的診断にて本症と判明した脾腫型の悪性リンパ肉芽腫の1例を経験したので報告する.

左前腕に発生したEwing肉腫の1例

著者: 稗貫博 ,   福井四郎 ,   小川秀道 ,   桑名幸洋

ページ範囲:P.562 - P.565

Ⅰ.緒言
 1921年Ewing1)は骨髄原発性円形細胞肉腫を瀰漫性内皮腫として報告したが,その組織発生,概念内容については現在なお病理学者のあいだに種々の異論がある2).すなわちWillis3)はこのような腫瘍はなく実際は神経芽細胞腫(Neuroblastom),あるいは他の腫瘍の転移であると述べ,Ewingも後に内皮腫という語の意味を拡げ,腫瘍の発生母地を血管周囲リンパ管内皮とした4)5)6).また細網肉腫の一型で,とくにこれを区別する必要はないという説もあり7),現在では本腫瘍が骨髄支柱組織,すなわち細網内皮系に由来するという見解8)がもつとも支配的である.しかしながら本症は細網肉腫とはきわめて近い関係にあるが,骨から発生する定型的細網肉腫とEwing肉腫とのあいだには臨床的,レ線学的および形態学的に種々の相違点が認められている.9)
 欧州ではAlbrecht10)(1927)がはじめて報告し,本邦では石原11)(1936)が第1例を報告して以来,中西・柳川12)の報告によれば昭和25年までに18例,昭和25年以降沼倉・野沢13)による報告までに32例,さらに著者らが文献的調査より見出した7例14)−20)を加えても現在までに59例報告されているにすぎない.

骨盤に発生せる所謂Ewing肉腫の2例

著者: 吉野良平 ,   松島政夫 ,   高橋敬二

ページ範囲:P.566 - P.569

はしがき
 Ewing肉腫は比較的稀な腫瘍であつて,1921年Ewingが骨系統に発生する原発性骨肉腫の中で特別の臨床的所見と特有の病理組織学的所見をもち,放射線に対する感受性の極めて高い悪性腫瘍を認めて,これにendothelialMyeloma of Bone.次いでdiffuse Endothelioma of Bone(1924)として記載したのに始まる.その後Kolodny(1921),Borak(1932),Conner(1926),Geschickter & Copeland(1930),Oberling(1928)等が,また,本邦においても,緒方(1939),赤崎(1943),那須(1949)および斎藤(1953)等によつて報告されている.
 吾々もまた最近骨盤に発生したいわゆるEwing肉腫の2例を経験したので,ここに報告する.

後腹膜脂肪肉腫の1例

著者: 弥政洋太郎 ,   高士宗明 ,   井上章 ,   石川修二 ,   神谷武

ページ範囲:P.570 - P.572

 後腹膜腫瘍として種々の腫瘍が発生するが,その中脂肪組織由来の腫瘍は比較的稀であり,なかんずく悪性化を呈せるものは非常に珍らしい.われわれは最近,後腹膜に発生した脂肪肉腫の1症例を経験したので,茲に報告し二,三の考察を加えたい.

胃細網肉腫の1例

著者: 伊藤稔 ,   津崎修 ,   南川紀 ,   山口峻

ページ範囲:P.573 - P.576

緒言
 胃に発生する悪性腫瘍の中で,肉腫は比較的稀な疾患であるが,特に細網肉腫の報告は少い.われわれは最近胃癌と診断し胃切除術を行い,病理組織的検索の結果細網肉腫と診断された1例を経験したので報告する.

胃乳嘴腫の1例

著者: 田村啓太 ,   堀出礼二

ページ範囲:P.577 - P.578

緒言
 胃良性腫瘍は悪性腫瘍に比較して,はるかに稀な疾患とされているが,中でも胃乳嘴腫の症例は極めて少数である.
 われわれは最近珍しい本症の1手術例を経験したので報告し,二,三の考按を加えた.

空腸脂肪腫による腸重積症の1例

著者: 内山元昭 ,   松尾広

ページ範囲:P.579 - P.581

緒言
 腸重積症は乳幼児に多くしかも回盲部に好発することは周知のところである.これに反し小腸特に空腸重積症は比較的少なく,また脂肪腫の発生に起因するものは本邦にては十数例の報告をみるに過ぎない.われわれは最近空腸粘膜下脂肪腫を嵌入先端に有する腸重積症の一手術治験例を得たので報告し併せて本症について若干の考察を加えてみたい.

胃癌切除患者に対する再手術の経験

著者: 村上忠重 ,   鈴木快輔 ,   安井昭 ,   金漢相 ,   渡辺博芳 ,   今仁剛正

ページ範囲:P.583 - P.589

緒言
 癌に対する治療法として,最近化学療法剤が進歩しその治験が喧伝されるに到つたが,未だその効果は十分でない.放射線療法についてもまた同様である.ことに胃癌に対してはこの感がつよい.したがつて現在においても,胃癌の治療法としては手術による根治的な切除より確実な治療法はないことになるが,実際はたとえ完全に切除し得たと思つても,再発のために再入院して来る患者の絶え間がないのが現状である.
 したがつて胃癌切除後に,再発が起きた場合,いかなる治療法をとるべきかが極めて大きな問題として残つているのであるが,この点に関しては現在の所ほとんど定則がない.昔風の考えにしたがえば,いかなる処置も無効であるとしてひたすら対症療法,精神療法,あるいは麻薬連用などにたよることになるが,他方先に述べた化学療法や放射線療法を用いて,患者に生への希望を持たせ,多少なりとも延命効果をはかろうとする考えも最近では有力となつて来た.

若年者乳腺悪性腫瘍の2例

著者: 落合慎一郎 ,   吉沢孝夫

ページ範囲:P.591 - P.593

 乳腺の悪性腫瘍は女子では胃・子宮に次で多いものであるが,20歳以下の若年者にみられることは非常に稀である.当院にて最近若年者に発生した乳腺悪性腫瘍2例を経験し,比較的稀と思われるので報告する.

脳髄膜瘤を合併せるKlippel-Feil氏症候群の1例について

著者: 小崎泰一 ,   松田穆 ,   斉藤邦雄

ページ範囲:P.594 - P.596

緒言
 本症候群はLes hommes sans cou,Kurzhals,Con-genital short neck等とも呼ばれ,解剖学的にはすでに1792年Columbus1)によつて報告されている.臨床的には1894年Hutchinson2),1906年Clarke3)の発表をみるが,1912年KlippelおよびFeil4)は本症候群に対して極めて詳細な臨床的,病理解剖学的報告を発表した.そのため本症候群はKlippel-Feil氏症候群と呼ばれるに至つた.すなわち彼等は46歳の男子で頸部が非常に短かく頭が直接肩にのつているようであり,頸部の運動は制限され頭髪の生え際は胸廓の上部まで拡がり,死後剖検において頸柱は4コしかなく,しかも互に癒合し後部脊椎披裂を合併せる1例を報告した.さらに臨床上の特徴として1)頸部の短かいこと,2)後頭部頭髪の生え際の低いこと,3)頭頸部の運動制限のあること,病理解剖学的特徴として1)頸椎数の減少と癒合のあること,2)脊椎披裂の存在すること,3)胸廓の上昇と頸胸廓形成をみることをあげ,二義的症候として脊椎の側彎,円背,肩胛骨の挙上,乳嘴の低下,開口困難,体駆と四肢長の不均衡等があるとのべている.

興味ある肋骨骨線維腫の1治験例

著者: 福田三男 ,   山下九三夫 ,   佃嘉和

ページ範囲:P.597 - P.600

緒言
 原発性肋骨腫瘍は比較的少いものであるが,そのうちでも肋骨良性腫瘍の報告は少く,特に肋骨骨線維腫の報告は稀有である.われわれは最近右第5肋骨後節に発生した骨線維腫で始めは肺臓腫瘍を疑つた興味ある1例を経験し,これを剔除治癒させたので報告する.

巨大な腎嚢腫を思わせた悪性腎混合腫瘍の1例

著者: 黒住公明 ,   梶木郁夫 ,   馬場隆義

ページ範囲:P.601 - P.603

 腎に発生する胎生混合腫瘍は,1872年Eberth1)により始めて記載されて以来数多くの報告があり,本邦においては中山2)が腎臓胎生腫として報告して以来,上野3),黒田4),西5),栗本—根岸6),原7),板野—金野8)等160例にあまる報告に接する.しかしながらその大部分は小児に発生したものであつて,成人になつて発生したものはわずか数例にすぎない.
 われわれは最近,64歳の男子で,約10年前より左側腹部に大なる腫瘤形成を自覚するも,何等障害なきため放置し,手術により始めて悪性腎混合腫瘍と判明した1例を経験したので報告する.

腹壁瘢痕に発生せる子宮内膜症の1例

著者: 七野滋彦 ,   佐藤太一郎 ,   前原利仁

ページ範囲:P.604 - P.606

 手術創瘢痕に発生する腫瘤には種々なものがあるが子宮内膜症(Endometriosis)は比較的稀であり,腹壁瘢痕に発生するものは更にその一部に過ぎず,またわが国においては諸外国より報告例が少いので最近経験した症例を追加発表する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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