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綜説
甲状腺の小細胞性悪性腫瘍—小細胞癌とMalignant Lymphoma
著者: 藤本吉秀1
所属機関: 1東京大学木本外科
ページ範囲:P.471 - P.488
文献購入ページに移動 甲状腺の悪性腫瘍の中で未分化の小細胞より成るものは,小細胞癌にしろMalignant Lymphoma(リンパ肉腫,細網細胞肉腫)にしろ,いずれも頻度からいつて比較的少い上に,従来これらは予後が非常に悪いものと頭から決められていたので,その病理組織や病態生理に関する研究は極めて寥寥たるもので,一般臨床医の関心は恐らくなかつたものとみてよいと思う.所が最近われわれの経験したMalignant Lymphomaの症例の殆んどが予期に反して非常に手術後の経過がよいので奇異に思い,欧米の文献を調べたところBrewer(1953年),Kenyon(1955年),Ranstrom(1957年)らが同じく長期生存例のあることを述べており,Waltら(1957年)がMayo Clinicの過去26年間の手術成績を報告しているのをみても,小細胞癌の12例はすべて術後2〜19ヵ月で死亡しているのに対して,Malignant Lymphoma 18例では2年以上の生存者が9例あり,その中6例は5年以上も生存しており,両疾患の間に予後に関して非常な相違のあることを強調している.
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