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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科16巻9号

1961年09月発行

雑誌目次

綜説

変形性関節症

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.765 - P.771

 変形性関節症ことに変形性股関節症は最近非常に増加している.その理由については明らかでないが,最近増加したものの大半が先天股脱あるいは扁平寛骨臼あるいは先天股脱整復後のPerthes病様変化と非常に密接な関係があると著者は考えている.
 何故に先天股脱に関係する変形性股関節症が最近増加してきたかについては,日本における先天股脱の治療の歴史に密接な関係があると思われる.

各種麻酔による肝流血量の変動について

著者: 森田建 ,   富永幹洋 ,   鈴木良人 ,   大内十悟

ページ範囲:P.773 - P.781

Ⅰ.緒言
 従来,麻酔の肝臓にあたえる影響に関しては,主として実験的には組織学的研究により,臨床的には種々の肝機能検査法によつて検討されてきた.しかしこれらの方法による成績は,いずれも麻酔によつて肝臓にもたらされた結果の一面を示すにすぎず,ことに臨床的な報告では,麻酔の影響と手術の影響とを区別できないものも少なくない.肝機能に及ぼす麻酔の影響については,相当に肝機能を減退させるという説8)10)と,あまり影響を及ぼさないという説38)とがある.しかしクロロホルムのごとき明らかに肝臓毒とみられる薬剤を別とすれば,麻酔中に肝臓の低酸素状態を起こすことが,肝機能に及ぼす麻酔の影響の大きな原因となつていると考えられている6).肝臓の低酸素状態の有無あるいはその程度は,組織学的研究や肝機能検査などの方法で直接知ることは困難である.生体内臓器組織の酸素供給状態は,血液循環動態,特に臓器血流動態を求めて大体を推定することができる.かかる立場より,各臓器,特に心臓,脳,肺,腎臓などの麻酔中の血液循環動態は,従来より種々検討されてきている.しかし肝循環に関しては,従来応用されてきたBSP法が複雑であつたためか,報告の数も少なく内容も断片的なものが散見されるにすぎない.
 われわれの教室では,現在までに行なつてきた外科領域における肝循環の研究の一環として,各種の麻酔法による肝流血量の変動を検討したのでここに報告する.

臨床病理 リンパ節の腫瘍--病理より臨床にささげる

第5回 いわゆるHodgkin病の剖検例にもとづく病理組織学的吟味が教えるもの

著者: 所安夫

ページ範囲:P.783 - P.791

 Ⅰ.
 前回におきまして,私はいわゆるHodgkinという人名のついた疾患の歴史を古い時代にたずねて,その生い立ちの記の中にひそむ微妙な盲点にふれ,一つの疾患が歴史の事実の積み立てによつてその後どのように真理に近づいたり真理から遠ざかつたりするものか,ふとした思い付きめく先人の提言が組織学的本態のよみとりに如何ばかり不幸な采配をふるつていくものか,ともあれ人名のついた疾患をその人名でよんですませるような事態は,いかに改められねばならないか,──そのようなことをこまごまと書きならべ,──決して充分とはいえない過去の業績の一瞥すらも,病理学に課せられた臨床家への献身の厳粛さをまざまざと教えるものだ,という事を自分で自分にいいきかせ,人にも亦聞いてもらいたい,と思つたのでした.
 いわゆるHodgkin病が,今日あるがままの姿になつたその過去の履歴書は,また機会をみて将来自由に,足らざるを足し,加うべきを加えたいと念じます.

展望

悪性腫瘍に伴う異常な臨床症状(2)

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.793 - P.798

3.Hyponatremia
 a.はしがき
 外科領域では,ショックならびにひきつづく急性腎不全に典型的な低ナトリウム血症を見ることが多い.そしてこの場合の低ナトリウム血症は細胞外低張性を伴い,低ナトリウム血症自体の症状は甚だ少い.また,その成因としてナトリウム摂取の低いことは,無乏尿の場合を除けば,必ずしも明かでない.そして急性腎不全では主病変は下部尿細管にあると信ぜられる.腎不全は存しなくても,重症患者の低栄養状態では,血清総塩基濃度が低いことがある(Sunderman & Rose 1948).また小児の栄養不全では,血清ナトリウム濃度平均は正常児より低い傾向がある(Gollan 1948).これらの場合も低ナトリウム血症自体の症状は,臨床的には殆ど見出されない.一方,外科的脱水症・副腎不全などでは,著明な低ナトリウム血症を合併しうるが,低ナトリウム血症の継続・進行にともなつて,血圧低下・無力・腎血行力学障害(GFR低下・尿素清掃低下など)・NPN上昇などが顕著となり,ついにショックを呈することは,すでに周知のところである.いいかえると,低ナトリウム血症には臨床的に症状のきわめて乏しい(asymptomatic)場合と,きわめて顕著な場合とがある.
 ここに取扱おうとするのは,癌においてasymptomaticの低ナトリウム血症の見出されることがある事実である.

症例

胸腺嚢腫の一切除例

著者: 正木幹雄 ,   松井昭 ,   山中晃 ,   毛利昇

ページ範囲:P.799 - P.805

Ⅰ.緒言
 縦隔腫瘍は元来比較的稀なものとされ,剖検による症例報告が欧米文献の上で散見される程度であつたが,近年胸部外科術式,麻酔学の進歩,普及と相俟つてその報告もかなり多数見られるようになつた.しかし,良性縦隔腫瘍の中でも,胸腺に原発する嚢腫は極めて稀で,特にその摘出症例報告は欧米においてはKrech1)等の統計による6例,本邦にては入江2)の1例があるのみである.われわれは最近,縦隔腫瘍の診断のもとに摘出手術を行い,病理組織学的に胸腺嚢腫と診断された1例を経験したので,ここに報告する次第である.

転移性甲状腺腫の2例について

著者: 田中稔彦 ,   佐藤弘充 ,   小林博道

ページ範囲:P.807 - P.811

 本腫瘍の発生については,1876年Cohnheim1)の転移説の発表以来,学問的に興味ある問題として,幾多の病理学者,胎生学者,外科医の間で多年論議され各種各様の異論のあるところである.わが国においては,金森氏2),伊藤氏3),石山氏4),斉藤氏5),前田氏6),青木氏7)等の発表があり,今日まで27例の報告がある.最近われわれは肋骨,脊椎骨ならびに腸骨転移および,頭蓋骨転移の2例を経験したので,ここに報告し,文献的考察をなす次第である.

孤在性骨髄腫の1例

著者: 小野百之助 ,   草刈一友 ,   小川隆三

ページ範囲:P.813 - P.816

症例
 16歳の女工
 現病歴:昨年10月より別に誘因と思われるものもなく,左下肢の疼痛を来し,跛行をするようになつた.工場で立業後は更に左下肢痛が増強する.安静を保つと疼痛は覚えない.

肺軟骨腫様過誤腫の手術治験例

著者: 原輝夫 ,   山下守朗 ,   馬場重孝

ページ範囲:P.817 - P.819

 近来の肺外科の発達につれ肺腫瘍の発見率は増加し,手術対称とされることが次第に多くなつて来ている.また肺良性腫瘍も病的症状を現すこともあり,また悪性化する傾向をもつこともあるから積極的に手術的治療を加えるように努めるべきであろう.
 従来比較的稀なものと考えられていた肺軟骨腫様過誤腫も近来その報告例を増しているが,われわれもその1例を経験したので報告する次第であります.

非定型虫垂炎—特に蟯虫性虫垂炎に就いて

著者: 斎藤明

ページ範囲:P.821 - P.824

Ⅰ.緒言
 寄生虫が虫垂炎の原因となり得ることは,まだ定説とまではなつておらない.その寄生虫の種類に関しても,蛔虫,鞭虫,蟯虫,十二指腸虫,裂頭条虫等が挙げられている.蟯虫と虫垂炎との関係に関する報告は,外国には随分と多いものであるが,わが国には極めて少い.
 私は大阪掖済会病院に在任中,虫垂炎として手術を行つた連続症例122例の中で,いわゆる蟯虫性虫垂炎と見做される2例を経験したので,ここに報告し考察を加える次第である.

外国文献

起立に対する反応,他

ページ範囲:P.825 - P.834

 静臥位から直立すると両脚だけで500 ccの血液が前より増加する.直立30分で,おそらく血液量の15%が循環から外れる.心送血量は30%ちかく低くなる.これらに対し,正常ではbaroreceptor reflexがおこつて血管収縮し,血圧を維持することはいうまでもない.著者らは200例に起立試験を行つた.正常の若人なら収縮期血圧は一時高くなつて,それからゆるく少し低下するが20mmHg以上は変らない.拡張期血圧はやや高まる.そのころ血漿ノルアドレナリン濃度も高くなる.収縮期血圧がつよく低下し,脈搏増加し,脈圧減少,拡張期血圧正常増加はorthostatic arterial anemiaといわれ,アステニックの人に多く,血圧低下性の失神を招く.その血漿ノルアド増加は正常で,おそらくvenomotor toneの消失によるのであろう.静脈瘤,高度貧血の人にも同様の反応をみる.鬱血性心不全では起立すると拡張期血圧低下し,脈圧が上昇し,収縮期血圧には著変がない.これは心送血量増加によるのであろう.血漿ノルアドは正常人のようにふえる.vagovagalないしvasodepressor syncopeというのはふつうに見る失神で,恐怖・不安・過呼吸・出血などが増強因子である.健康に見える成人の20%はこの種の起立失神を来す.老人には少い.始め数分は血圧維持され,ついで突然不可測となる.脈圧は消失に近い.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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