文献詳細
文献概要
展望
悪性腫瘍に伴う異常な臨床症状(2)
著者: 渋沢喜守雄
所属機関:
ページ範囲:P.793 - P.798
文献購入ページに移動3.Hyponatremia
a.はしがき
外科領域では,ショックならびにひきつづく急性腎不全に典型的な低ナトリウム血症を見ることが多い.そしてこの場合の低ナトリウム血症は細胞外低張性を伴い,低ナトリウム血症自体の症状は甚だ少い.また,その成因としてナトリウム摂取の低いことは,無乏尿の場合を除けば,必ずしも明かでない.そして急性腎不全では主病変は下部尿細管にあると信ぜられる.腎不全は存しなくても,重症患者の低栄養状態では,血清総塩基濃度が低いことがある(Sunderman & Rose 1948).また小児の栄養不全では,血清ナトリウム濃度平均は正常児より低い傾向がある(Gollan 1948).これらの場合も低ナトリウム血症自体の症状は,臨床的には殆ど見出されない.一方,外科的脱水症・副腎不全などでは,著明な低ナトリウム血症を合併しうるが,低ナトリウム血症の継続・進行にともなつて,血圧低下・無力・腎血行力学障害(GFR低下・尿素清掃低下など)・NPN上昇などが顕著となり,ついにショックを呈することは,すでに周知のところである.いいかえると,低ナトリウム血症には臨床的に症状のきわめて乏しい(asymptomatic)場合と,きわめて顕著な場合とがある.
ここに取扱おうとするのは,癌においてasymptomaticの低ナトリウム血症の見出されることがある事実である.
a.はしがき
外科領域では,ショックならびにひきつづく急性腎不全に典型的な低ナトリウム血症を見ることが多い.そしてこの場合の低ナトリウム血症は細胞外低張性を伴い,低ナトリウム血症自体の症状は甚だ少い.また,その成因としてナトリウム摂取の低いことは,無乏尿の場合を除けば,必ずしも明かでない.そして急性腎不全では主病変は下部尿細管にあると信ぜられる.腎不全は存しなくても,重症患者の低栄養状態では,血清総塩基濃度が低いことがある(Sunderman & Rose 1948).また小児の栄養不全では,血清ナトリウム濃度平均は正常児より低い傾向がある(Gollan 1948).これらの場合も低ナトリウム血症自体の症状は,臨床的には殆ど見出されない.一方,外科的脱水症・副腎不全などでは,著明な低ナトリウム血症を合併しうるが,低ナトリウム血症の継続・進行にともなつて,血圧低下・無力・腎血行力学障害(GFR低下・尿素清掃低下など)・NPN上昇などが顕著となり,ついにショックを呈することは,すでに周知のところである.いいかえると,低ナトリウム血症には臨床的に症状のきわめて乏しい(asymptomatic)場合と,きわめて顕著な場合とがある.
ここに取扱おうとするのは,癌においてasymptomaticの低ナトリウム血症の見出されることがある事実である.
掲載誌情報