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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科17巻1号

1962年01月発行

雑誌目次

綜説

軟部組織の好酸球肉芽腫について—12例の経験と文献的考察

著者: 綿貫喆 ,   粟根康行

ページ範囲:P.5 - P.17

いとぐち
 好酸球浸潤をともなつた肉芽腫は,骨,皮膚,胃腸管,皮下軟部組織などに出現するが,これらは一般に好酸球肉芽腫(eosinophilic granuloma)と総称されている.これらの病因については不明な点が多いが,いずれも予後は良好であり,その上に比較的まれな疾患であるためにそれぞれの全貌はすべて明らかにされているわけではない.しかもこれらの疾患はしばしば同一面上で論じられる場合が多く,一括して考えられる傾向が強い.たしかにその組織像においては好酸球浸潤をともなう肉芽腫という共通の形態を示し,また流血中の好酸球動態は同傾向の態度を示すにしても,疾患の発生する場はそれぞれ異なつたところであり,それぞれ別のclinical entityを想定する方が種々の混乱発生を防ぐことが可能であろうと思われる.外国において報告例も多く組織学的追求も進んでいる骨に発生するものは骨好酸球肉芽腫(eosinophilic granuloma of the bone)として,また皮膚のものは皮膚好酸球肉芽腫(eosinophilic gra-nuloma of the skin)として明らかに別のentityとして分類されている.
 皮下軟部組織に発生し1つのまとまつた臨床像を呈するものは本邦において好酸球肉芽腫としてすでにいくつかの報告例があるが,その記載には多少の混乱が認められる.

瘻孔をのこした骨髄炎に対するPrednisoloneと抗生物質の併用療法

著者: 河野左宙 ,   倉田和夫 ,   吉岡丹迦穂

ページ範囲:P.19 - P.22

 抗生物質の画期的な発達により,骨髄炎の症状,経過,治療法は大きな変化をきたし,治療成績は改善された.しかし骨髄炎の治療にあたつて,その経過中耐性菌出現の問題,閉鎖しがたい遷延する瘻孔形成,再三にわたる再発等なお困難な問題を残している.
 私たちは治癒が遷延する瘻孔形成に対して,抗生物質投与下のPrednisolone(以下Pr.と略す)併用法を試み,みるべき効果をあげているので,これについてのべてみたい.

座談会 教室のあゆみ

九大外科教室の生立ち—後藤七郎先生を囲んで

著者: 後藤七郎 ,   三宅博 ,   広瀬信善 ,   友田正信 ,   島田信勝

ページ範囲:P.25 - P.34

 島田 先生,きようは九大の外科教室の発展の模様と九州地方の外科学の発達の模様を少しお伺いしたいと思います.実は日本全国の外科教室のそうした歴史を集めたものがないんでございます.それでこのさいは九大からという話がありまして伺つたわけでございます.固いことは要りませんから,ザックバランに思い出されるままをお話し願いたいと思います.
 後藤 どうぞおらくに,上衣をぬいで,アグラをかいて…….

臨床病理 リンパ節の腫瘍--病理より臨床にささげる

第10回 癌の局所リンパ節に,転移病巣の予想を裏切つて発見された,結核様(サルコイド様)病変について/第11回 所謂Boeck病,つまりサルコイドーシス(サルコイド,サルコイド様変化,サルコイド反応様式,サルコイド素質)を如何に考えたらよいか

著者: 所安夫

ページ範囲:P.37 - P.46

第10回
Ⅰ.最初の動機
 スグル日,乳癌ノ患者カラ,ソノ腋窩淋巴節ノ一ツガ,私ノ手元ニオクラレマシタ.勿論,転移ノ有無ヲ調ベルヨウニ,トノイイ付ケデス.
 トコロガ,ソノリンパ節ヲミテ,迷イマシタ──トイウノハ,ソコニハ,癌ハナク,代リニ,丸デ一見ミタ所デハisolierte sporadische Tuberkuloseトデモイイタイヨウナ,類上皮細胞ト巨細胞トカラナル小結節ガ,散在シテイタノデス.

展望

胸腺腫の特殊性

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.47 - P.61

はしがき
 胸腺腫瘍が縦隔腫瘍のうちで特に注目されるのは,その解剖学的な位置関係と,そのおよそ20%におよぶ重症筋無力症発呈とによるのであろう.胸腺腫を伴つた成人男子の筋無力症の手術成績は,Mount Sinai Hosp.の成績でも,Johns Hopkins Hosp.の成績でも,Mayo Clinicの成績でも,Massachusetts General Hosp.の成績でもまた英国のKeynes一派の成績でも甚だしく不良である.筋無力症の外科はわずかに若い婦人の胸腺過成形においてのみ,保存療法に有意にまさる良成績を収めうるにすぎない.してみれば,胸腺腫が胸部外科で特別の関心をひくのは当然の当然であるであろう.
 しかし,ここでは筋無力症を発呈した胸腺腫に注意を向けようというのではない.筋無力症という大問題を別にしても,胸腺腫は外科臨床において不可解なるいくつかの難問題を提供しているのである.内分泌学においてそうであるように,外科領域においても,胸腺腫は甚だしい謎である.ここではそうした点のみを取上げて,胸腺腫の特殊性を強調したい.

症例

皮下肝損傷治験例

著者: 寺崎平 ,   疋田達雄 ,   渡辺真幸 ,   島田作 ,   木内啓之

ページ範囲:P.63 - P.66

緒言
 腹部皮下損傷の数は最近ますます多くなつてきている.これは1つは産業の機械化および交通機関の発達によるものであろう.戦時では開放性の腹部損傷が多いことはもちろんであるが,平時では皮下内臓損傷が多い.その主な原因は自動車事故であり,米国では1954年に36万人が死亡し125万人が不具となつている1).重工業および建築作業による事故も多くなつている.東京都内の交通事故も逐年増加の傾向をたどり警視庁交通部の調査によれば次のごとくである.

分娩と関連し破裂したと考えられる腹部大動脈瘤の1例

著者: 天野景明 ,   岡厚 ,   山崎巌

ページ範囲:P.67 - P.70

 大動脈瘤破裂に関しては,古くより種々の報告が行われているが,適切な治療方法が確立される以前には,ただ傍観して,死を待つのみであつた.しかし近年血管外科の著しい進歩により,1951年Dubost氏が始めて大動脈瘤の切除,同種保存血管置換に成功して以来,大動脈瘤のみならず,その破裂例をも手術することが可能となり,多数の成功例が報告されている.最近著者等は分娩と関連して破裂したと考えられる腹部大動脈瘤の1例を経験した.開腹手術前診断出来なかつたため,不幸にも救命しえなかつたが,分娩直後の大動脈瘤破裂は文献上殆んどその報告がみられないので,ここに症例を報告し諸賢の批判を仰ぎたいと思う.

外国文献

シヨックの冠・末梢血行,他

ページ範囲:P.73 - P.79

 イヌを用い麻酔下に股動脈から採血して血圧30mmHgとする.開胸し,右鎖骨下動脈にカニューレを入れ,圧測定,採血に用いる.心膜をひらき,冠洞が右房に入るところで縫いつけ,右房アッペからカテBardic No.12を洞へ送り,血流量の測定に用いる.シヨック期には冠洞血流量は激減し,血圧30mmHgでは正常の54%となる.股静脈血流量は正常の45%.冠動脈の末梢抵抗は正常の53%となるから,その代償性拡張がおこるとおもわれる.総末梢抵抗は正常の102%で,末梢血管収縮がおこることはいうまでもないが,高度ではない.直ちに輸血し70〜80 mmHgのとき,冠洞血流量は正常の86%,冠抵抗は95%である.つまり血圧70〜80mmHgまでは冠血管拡張はおこらない.つぎに不可逆相をつくつてから採血量の血液を輸血したnormovolemic hyp-otensionでは冠血流量92%,冠抵抗60%で,冠血管拡張が著明である.末梢血流量は94%,末梢抵抗は81%.ノルアド静注の効果は,はじめの輸血のさいには冠血流238%,抵抗40%である.つぎの輸血(不可逆相normovolemic hypotention)では冠血流147%,抵抗41%.つまり,出血でhypovolemiaがあるときは冠血流を著明に増加しうる.これは末梢血管収縮・心送血量増加にもよるのであろうが,冠血管拡張が大きい意味をもつ.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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