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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科17巻2号

1962年02月発行

雑誌目次

綜説

実験外科におけるいわゆる"輸血反応"の研究—犬における輸血反応の原因とその対策および体外循環における意義

著者: 太田喜義

ページ範囲:P.85 - P.96

緒論
 従来犬の血液型はuniversalと考えてよいものとされ凝集素の自然に存在する率は割合低く,またその凝集価も低いことが報告され8),47),また事実一般の実験的研究に犬を使用する場合には交叉試験を行なわずにdonorの血液を用いることが多いと考えられるが,それにも拘らず輸血によつてショックがおこり,かつ血液型には関係のないらしいことが徐々に認められるに至つた.ことに近年実験的体外循環の研究が盛んになるにつれてdonorの血液を用いることが多くなり,それに従つて輸血反応の問題がその方面にたずさわる人々の間で注目され始めたようである.
 現在迄に幾つかの説明ないし仮定がこの輸血反応の原因について挙げられてはいるが,いずれも決定的なものとは思われず,また事実われわれは現在の処如何なる犬の血液が如何なる犬にショックをおこすかをあらかじめ予知する方法を持つていない状態である.

Polybreneのヘパリン中和作用について—実験的,臨床的検討

著者: 志水浩 ,   吉田茂 ,   北村斉 ,   河合進 ,   重本弘定 ,   津田弘純 ,   森本接夫 ,   大野致

ページ範囲:P.97 - P.104

緒言
 直視下開心術,胸部大動脈瘤手術における人工心肺,腎不全,肝不全における人工腎臓,人工肝臓またある種の進行した悪性腫瘍にたいする制癌剤の局所灌流療法,さらには抗凝固療法にさいして,生体内,装置内の血液の凝固を阻止するためヘパリンを使用するが,終了後はすみやかにヘパリンを中和して血液に正常な凝固性を回復させ,術後出血を防止することが必要となる.
 従来この目的のため主としてプロタミン硫酸塩が用いられてきたが,最近4級アンモニウム塩の重合体(C13H30Br2N2)Xであるポリブレン(Polybrene)(1,5-dimethyl-1,5-diazaundecamethy-lene methobromide)(Hexadimethrine Bromide-Abbott)がすぐれたヘパリン中和作用を有することが知られ,われわれもポリブレンを使用する機会をえたので実験例,臨床例について検討を加えた.

臨床病理 リンパ節の腫瘍--病理より臨床にささげる

第12回 全く自覚症状を欠き偶然発見される,一見悪性腫瘍にみえて実は良性の逸脱した胸腺腫をまねる,縦隔洞リンパ節の,不思議な腫大/第13回 頸部のリンパ節腫大を模倣した原基下降不能の再発性頸部胸腺腫

著者: 所安夫

ページ範囲:P.105 - P.114

12回 全く自覚症状を欠き偶然発見される一見悪性腫瘍にみえて実は良性の逸脱した胸腺腫をまねる縦隔洞リンパ節の,不思議な腫大
 Ⅰ.
 殆ンド全ク自覚症状ヲ欠キ,従ツテ偶然健康診断ナドデ胸部レ線写真ニヨツテ発見サレル,縦隔洞肺門部附近ノ腫瘤陰影.
 概ネ20歳台ナイシ30歳台ノ人.

展望

小腸憩室症とMalabsorption Syndrome

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.117 - P.128

はしがき
 糞便に多量の脂肪を排出する腸管機能障害は,ふつうCross(1953)以来,malabsorption syn-dromeとよばれる.いうまでもなくsprue,spruesyndrome,steatorrhoea syndromeなどという呼び方の方が,わが国ではもつと親しみぶかかつたかとおもわれる.これらは,あたかも臨床的な完全な診断であるかのごとき感を与えるが,実は,それは既知・未知の原因による諸状態群であろう.したがつて,いくつかの"疾患"にわけて考えなくてはなるまい.たとえば,熱帯スプルーは,たとえ非熱帯スプルーと截然とは区別しえない近似性があつても,熱帯・亜帯熱に発生するmalab-sorption syndromeに限つているがごときである.非熱帯スプルーは,米国の文献ではnontropicalsprue,英国の文献ではidiopathic steatorrhoeaという呼び方が多いようである.Anderson(1952)が小児のいわゆるcoeliac diseaseに無グルテン食(gluten-free diet)の効果を確かめてから,成人の非熱帯スプルーにおいても,無グルテン食の効果が確認され(French 1957),本症の惹起物質はグルテン中のgliadin分屑(ポリペプタイド)であろうと見られるようになつた(Frazer 1956).つまり,gliadin代謝の酵素系に欠陥があると見るべきである.

症例

腸間膜血管閉塞症の1例

著者: 古本雅彦 ,   津田昭次

ページ範囲:P.129 - P.131

 腸間膜血管閉塞症については1843年Tiedesmanがはじめて報告しているが,わが国では大正3年藤井の報告以来未だ40例に満たない.本症は急性腹症として外科的に重要な疾患である許りでなく,腸の広汎切除による術後の栄養問題にも多くの考慮を必要とする.また近年の血管外科の発達によるこの方面での新しい治療法の確立が要望されるという点でも興味深いものがあると思われる.
 著者は最近胃切除後に発病した上腸間膜動静脈閉塞症に対して腸の広汎切除を行い,幸い救命しえた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

打撲による十二指腸後腹膜部破裂の1治験例

著者: 富畑清 ,   奥村堯 ,   林敏夫 ,   俞吉植 ,   森稠 ,   安積和夫 ,   山本健一

ページ範囲:P.132 - P.134

まえがき
 外傷性腸管皮下破裂は日常しばしば経験されているが,Rowland(1923)の腸管皮下破裂381例の破裂部位別頻度は十二指腸23例(6%),空腸157例(41%),廻腸158例(41%),大腸43例(12%)で皮下十二指腸破裂は僅か6%で一般に稀れなものである.本邦における外傷性十二指腸皮下破裂の報告例は極めて稀れで,われわれが渉猟せる最近30年間に僅か渡辺(26年),沖(30年)の2例の報告を見るに過ぎない.われわれはたまたま極めて稀れな外傷性十二指腸後腹膜部破裂の治験例を経験したので報告する.

幼児睾丸腫瘍の1例

著者: 大山正信 ,   金子輝夫 ,   多田慶介

ページ範囲:P.137 - P.138

緒言
 小児の睾丸腫瘍は小児腎腫瘍と共に最も悪性の腫瘍である.私共は幼児睾丸腫瘍の1例を手術,その後1年8月経過し,今なお経過観察中の症例を報告する.

所謂側頸部迷入性甲状腺腫について

著者: 石井守 ,   矢内謙

ページ範囲:P.139 - P.140

緒言
 甲状腺がその本来の位置以外の所に存在する場合,それは迷入性甲状腺腫か,転移性のものかのいずれかであり,両者は臨床的に区別できるのが普通であるが,いわゆる側頸部迷入性甲状腺腫so called Lateral aberrant thyroid tumorsについては,その本態に関し,種々議論のある所である1).著者は最近,定型的な本症例を経験したので症例をのべ,2,3検討を加えてみたい.

脾嚢胞の1例

著者: 北脇脩 ,   北沢知夫 ,   岡松義光

ページ範囲:P.143 - P.148

 脾嚢胞は1829年Andralにより初めて報告されたのであるが,一般に脾臓は他の腹腔臓器および後腹腔臓器に比して,嚢腫性病変をみること稀有であると考えられている,而も術前の鑑別診断は臨床上極めて困難である.われわれは最近原因不明の脾腫と診断し,開腹により始めて脾嚢胞であることが判明した興味ある1例を経験したので報告する.

乳腺結核の3例

著者: 柏倉橘郎 ,   岸陽一 ,   栗原英夫

ページ範囲:P.149 - P.150

 乳腺結核は稀有な疾患であり,わが国においては1829年2例の報告がなされているが,精密なる報告は1839年における中山1)の5例が初めてのもので,現在まで約100例の報告があるのみである.われわれは最近,その3例を経験したので報告する.

外国文献 一般外科,化学療法

輸血赤血球の運命,他

ページ範囲:P.153 - P.159

 アイソトープFe59で調べたのでは不完全で,理論的にはN15で見るのがよいが,これは高価非実用的で,ふつうCr51を使うことになる.Na2Cr51O4を静注して42日後の脾Cr51活性度は4日目の5倍になるから,赤血球のこわれた部にCr51がたくわえられるとおもわれる.著者はイヌ赤血球をCr51で印し,輸血された赤血球運命をCr51で追求した.フェニルヒドラジンで赤血球をこわすと,イヌ循環血球量は数日激減するが,その後ははね返つて来る.しかし循環Cr51放射能は激減したつきりでリバウンドを示さない.一度放出されたCr51はFe59とは異つて再び血球に入ることはないのであろう.脾剔をしておいてもこの関係は変らない.Cr51は赤血球が生きている限り付着しており,死滅すれば急速に離れて再び赤血球に入ることはない.それで赤血球の生存を知るのにCr51が適切であろう.Cr51を印した赤血球がここに死滅しやすいという所見はない.こうして輸血された赤血球は4〜42日の生存を保つらしいが,これは新に採血してCr51をつけ,すぐ輸血したものであるから,臨床的な新鮮血輸血に近いものとおもわれる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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